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「車旅日記」1998年夏 2日目(木曽-野麦峠-信州新町-志賀高原湯田中)-道の駅日義 木曾駒高原、木曽福島駅、木曽福島タイムリー、開田村、野麦峠扇屋、奈川渡ダム、道の駅信州新町 【伊那、木曽から志賀高原へ。気乗りのしない旅で選んだ行き先は、初夏の信濃路でございました。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 1998年

車旅日記1998年7月19日

1998・7・19 6:28 19号国道‐日義 木曽駒高原(道の駅)
オレのような朝を迎える人が結構いることに感心している。
それも中年のご夫婦が主力。

いい傾向だと思う。
車の中で迎える朝が一番自由に近い。
すぐにどこへでも行けるわけだから。
首のどこかが痛いというようなことを除けば最高だ。
お日様にも近いしな。

気分は悪くない。
腹が減った。
朝というのは、本来こうして空腹とともに迎えるものだ。

6:55 木曽福島駅 296㎞
7:00。
駅の利用客はまだ現れない。

駅前の商店も1軒を除いてまだ閉ざされている。
列車がやってくる気配も今のところはない。

ここは山間に位置した小さな町。
昔この一帯で育った木曽義仲という英雄が不意に人界に現れて天下をとった。

そんな男がここから生まれたとはとても信じられない。
当時はまさに何もないところだったのだろう。

今日もまた山間を行く。

野麦峠に惹かれる。
そんな旅。

7:44 19号国道‐木曽福島町タイムリー 300㎞
天気はあまり気にしていなかったけど、今日はどんな具合だろうか。

時折陽射しにあたるとうれしくなる。
太陽はそういう存在。

今回はオレの土地勘がやけに狂う。
どこかで冷静でいられない事情があるのだろう。
日常から引きずってきたヤツだよ。

だけど町中で迷うとそれはそれでなかなか楽しい。

木曽福島は奥が深い。
本来は車を止めて歩くべき町だ。
そうしたい気持ちもあるけど、まだ朝が早い。

8:35 月夜沢林道-開田村 323㎞
友が言うところの地図上に記された「白い道」に入り込んでいる。

少なくともオレの車はこういう道向きじゃないことは確かだ。

少しの不安があるが、それを除けば他のすべてを堪能できる。
たったひとりでこんな山の中に入り込んだことはなかった。

すぐ脇に沢があるが、そこへ下りることを一瞬ためらった。
熊でも出るんじゃないかと思ったんだ。

山の神様に祈りながら、これから野麦峠に出る。

10:09 野麦峠-扇屋 339㎞
「白い道」を抜けると、かつての難所野麦峠に至り、道は開けた。

快晴。
不安にかられながらの「白い道」の走行はとてもタフだったけど、終わってしまえば過ぎ去ったことはどうでもよくなる。

きっと素晴らしい記憶になるんじゃないか。
自信にもなった。

こうして30歳近くなってもまだオレは成長している。
でもあの道はもう2度と行かないよ。

資料館は見学に値するものだった。

最近は豊かになって、貧しい時代のことなど話に上ることもないが、この国で確かに起きていたことだ。
知っておくべきだ。

親のため。
国のため。
今は誰もそんなことを口にしない。
そういう時代だったで済ませておくべきじゃないこともあるだろう。

この街道も昔はひどい道だったのだろう。
「白い道」を走り抜けてみて、当時の女工の苦しみを理解した。

彼女たちは雪の中をこの困難な峠を越えたのだろう。
オレはこの陽気の中を車で越えた。
苦労なんて言葉は、現代を生きるオレたちに口にする資格はないのかもしれない。

現在の野麦峠は涼しげだ。

鳥のさえずりと川のせせらぎと、そして風鈴の音がする。
山に入れば無数に沢が流れている。
それがこの国。

国が考えることはおかしいのじゃないか。
オレもそう思うことがある。

10:51 奈川渡ダム 355㎞
いろんな所からいろんな人間が避暑のために集まっている。

こういう場所でライダーをよく見かけるのはどういう理由からだろう。

模範的なライダーたちだ。
文句を言うつもりはない。

みんな楽しくやってほしい。

13:01 19号国道‐信州新町(道の駅) 436㎞
川沿いの見覚えのあるルートを長野方面に向かっている。

道は順調に流れ、オレが向かう先が夏の行楽地として相応しくない一帯だということが分かる。

松本から上高地に抜ける野麦街道の渋滞はひどかった。
大袈裟でも何でもなく人々が目的地に到着する頃は日が暮れているんじゃないか。

長野県内は多くの観光客を呼んで、おおむね潤っているように見える。
不況だというが、この穏やかな雰囲気にそうした影は見られない。

安心するべきなのか、それとも他の問題に目を向けるべきなのか。

このまま宿に向かう。
以前にもそうしたように、ここでビールを飲んで昼寝をしようと思ったけど、この暑さじゃそうもいかない。

このまま流れるにまかせて、早めに宿に落ち着いて汗を流そうと思う。

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