「車旅日記」1998年夏 最終日(志賀高原湯田中-中込-東京)-湯田中、菅平湖、中込ローソン、竜王駅、道の駅甲斐大和、藤野駅、東京町田【伊那、木曽から志賀高原へ。気乗りのしない旅で選んだ行き先は、初夏の信濃路でございました。】
車旅日記1998年7月20日
1998・7・20 7:25 湯田中‐某クラブ志賀高原 486㎞
この町に着いて16時間。
もうじき荷物をまとめる。
ここには旅の疲れをとるために来たが、よくは眠れなかった。
それほど疲れていなかったのかもしれない。
去年の同じ時期に出たツアーは最悪だったけれど。
町に着くとすぐにコンビニに寄って食料を揃えた。
できれば地元の商店に金を落としたかったけど、適当な店はなかった。
外は暑くて人の姿を見かけない。
オレの記憶の中の夏と一緒だ。
ラジオから高校野球の実況でも聞こえてくれば、過ぎ去ってきたいくつもの夏に戻ることができる。
会社にこの町で育った男がいるが、ご実家はどこだろう。
ずいぶんと小さな町だ。
部屋でずっとビールを飲んでいた。
だから記すべきことなど何もしていない。
昨日もそうだったけど、日常は忘れていた。
そして朝を迎えた。
さすがに東京に帰る日ともなると日常が割って入ってくるけど、それでも今のところ考えられるのは彼女のことくらい。
正直に言えば、気になる女性は他にも数人いる。
でも彼女が微笑めば、一番のときめきを覚える。
他に言葉はいらないと思う。
今回印象的だったのは、車の中で本当に久しぶりに聴くカセットをかけたこと。
おそらく学生の頃以来だろう。
とてもノスタルジックな気分に浸った。
どれもひとりでは聞いていなかった音楽たち。
あれからずいぶんと月日が流れた。
9:12 菅平湖 530㎞
高原の冷風にあたりながらノスタルジックな気分でいた。
期待していた湖は山間に埋め込まれるように存在して、とても小さかった。
10:25 141号国道‐中込ローソン 578㎞
流れるままに前だけを見て車を走らせていた。
高原の冷気は一時的にオレの体を冷やし、下界はけだるさを思い出させた。
涼しい高原で夏を過ごすと一体どんな記憶が残るのだろう。
ルートは道々変更され、清里を経由して韮崎に出るという方向でほぼ固まった。
親父と何度も通った道だ。
ここに来るまで、両親の故郷や彼女のご両親がつい最近移り住んだ佐久を通過してきた。
佐久に至った時、もしかしたら彼女が遊びに来ていないかとあたりに注意を払ったが、オレが選んだルートはかなり道外れだっただったようだ。
すでに心は東京に向かっている。
そして日のあるうちに帰り着いて、車を洗おうと思っている。
12:43 竜王駅 659㎞
さらにルート変更。
20号国道に戻ると冷気は消え失せ、空は雲を流しながらもよく晴れて、太陽はオレの右腕を焼くことを再開した。
このまま2日前の道を帰ろうと思う。
中央道じゃ笹子トンネルで15㎞の渋滞が発生しているようだ。
下界に下りてくるとやはり日常が頭を占める。
オレはまだ旅の中にいたいんだ。
だから20号国道を行く。
13:41 20号国道‐甲斐大和(道の駅) 688㎞
家まで100㎞を切っている。
行きに通った道を帰るのは初めてのことだけど、気にしていない。
数あるルートの中でこの道を一番気に入っているということ。
きっと日のあるうちに帰ることもできるだろう。
15:15 藤野駅 731㎞
旅の最後に、この涼しげな駅に寄ることができてよかった。
おそらくあと2時間ほどで家には着くだろう。
最後の空が曇っていることだけが残念だ。
明日は予報通り雨かな。
東京町田
小さな旅に出て、こうして無事に帰っている。
宿の支配人みたいな男を除けば、接した人々は誰もがいい人ばかりだった。
ワインを買った店のベンチに座っていたじいさんも、とても優しい顔をしていた。
出発したのは2日前だけど、なんだかもっと前のことのように感じられる。
昨日など、あんなに簡単に眠ってしまったのに、それでもこの旅が長かったと感じられている。
それはきっといいことなのだろう。
でも今回は、この旅が今後のオレにどんな影響を及ぼすのかという話には興味が向かない。
言ってみればいつもそうだけど、暇だから行ったんだよ。
だからというわけじゃないが、親父に贈ったワインを除けば、誰への土産もない。
思いつきもしなかった。
いつまでこんな旅を続けるのかと聞かれれば、オレにも分からないさ。
ひとつだけ言えるのは、ひとりで出かけるのは誰か惚れた女性と結婚するまでのことだ。
もしくはそんな話になって、その女性に休日の自由を束縛されるまでだ。
今のオレにとっちゃ、夢みたいな話よ。
人に言わせれば、「そんな大袈裟な話かよ」ってところかもしれないけど、惚れた女性とくっつくのは大変なことだよ。
相変わらず気乗りのしない明日が待っている。
一昨日の晩は違ったんだ。
全然違ったんだよ。
だからまたどこか知らないところを見つけて出かけるだろう。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2015年夏 4日目(西鉄柳川-広島)その1-西鉄柳川、西鉄久留米、西鉄甘木、甘木、基山、けやき台、原田、桂川(西鉄本線、西鉄甘木線、甘木鉄道、鹿児島本線、筑豊本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】
鉄旅日記2015年8月15日その1・・・西鉄柳川駅、西鉄久留米駅、西鉄甘木駅、甘木駅、基山駅、けやき
-
-
「車旅日記」2006年皐月 最終日(安達-東京葛飾)-あだち、二本松駅、磐城石川駅、はなわ、常陸太田駅、大洗駅、潮来駅、十二橋駅、佐原駅、東京葛飾【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】
車旅日記2006年5月7日・・・道の駅あだち、二本松駅、磐城石川駅、道の駅はなわ、常陸太田駅、大洗駅
-
-
「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その1-津、阿漕、松阪、家城、伊勢奥津(紀勢本線/名松線) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】
鉄旅日記2018年12月23日・・・津駅、阿漕駅、松阪駅、家城駅、伊勢奥津駅(紀勢本線/名松線)
-
-
「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-松本)その4 ‐妙高高原、黒姫、篠ノ井、姨捨(しなの鉄道北しなの線/篠ノ井線) 【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】
鉄旅日記2021年4月24日・・・妙高高原駅、黒姫駅、篠ノ井駅、姨捨駅(しなの鉄道北しなの線/篠ノ
-
-
「車旅日記」2004年春 2日目(紋別-釧路)走行距離367㎞その2-止別駅、緑駅、裏摩周、摩周駅、塘路駅、釧路湿原駅、細岡駅、釧路パシフィックホテル 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】
車旅日記2004年5月2日・・・止別駅、緑駅、裏摩周、摩周駅、塘路駅、釧路湿原駅、細岡駅、釧路パシフ
-
-
「鉄旅日記」2020年晩秋 初日(東京-砺波)その2 ‐電鉄魚津、西魚津、新魚津、魚津、高岡(富山地方鉄道本線/あいの風とやま鉄道)/魚津城跡 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】
鉄旅日記2020年11月21日・・・電鉄魚津駅、西魚津駅、新魚津駅、魚津駅、高岡駅(富山地方鉄道本
-
-
「車旅日記」1998年春 2日目(岩手山SA-大間崎-青森駅)-岩手山SA、折爪PA、三沢市ドライブイン三陸、東通村レストラン潮騒、田名部駅、大間崎公営パーキング、大湊駅、陸奥横浜駅、青森駅 【下北半島を目指した春。男の旅は北を目指すものと思っていた20代後半。高倉健さんの影響でございましょうか。】
車旅日記1998年5月2日 1998・5・2 7:43 東北自動車道-岩手山SA 昨夜の強風が続い
-
-
「鉄旅日記」2009年秋 5日目(松浦-若松)その2-宇美、西戸崎、香椎、福間、赤間、折尾、若松(鹿児島本線/香椎線/筑豊本線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】
鉄旅日記2009年9月22日・・・宇美駅、西戸崎駅、香椎駅、福間駅、赤間駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本
-
-
「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その4-陸奥湊、白銀、鮫、久慈、宮古(八戸線/三陸鉄道リアス線) /蛇の目寿司【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】
鉄旅日記2019年9月22日・・・陸奥湊駅、白銀駅、鮫駅、久慈駅、宮古駅(八戸線/三陸鉄道リアス線)
-
-
「鉄旅日記」2018年神無月 最終日(松本-辰野-天竜峡-岡谷-東京)その1-松本、辰野、北殿、伊那市、伊那福岡、伊那本郷、上片桐、飯田、天竜峡(篠ノ井線/中央本線辰野支線/飯田線) 【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】
鉄旅日記2018年10月8日・・・松本駅、辰野駅、北殿駅、伊那市駅、伊那福岡駅、伊那本郷駅、上片桐駅