「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その1-津、阿漕、松阪、家城、伊勢奥津(紀勢本線/名松線)
鉄旅日記2018年12月23日・・・津駅、阿漕駅、松阪駅、家城駅、伊勢奥津駅(紀勢本線/名松線)
2018・12・23 6:17 津(つ)駅(紀勢本線/伊勢鉄道/近鉄名古屋本線 三重県)
かつて伊勢うどん屋だった改札横のスペースには吉野家が収まっている。
伊勢うどん独特の濃いつゆで服を汚してしまったことから、よく覚えている。
伊勢うどんが好きな彼女にこの話を聞かせたら、おそらく陽気な文体で失意を伝えてくるだろう。
駅にL字形に隣接する高層ビルの背後。
あるいは繁華街が隠れてはいないかと覗いてみれば、駐車場が見えただけだった。
この街の繁華街はどうやら昨夜歩いたあのあたりだけらしい。
西国の朝の訪れは遅い。
この時間帯、東京じゃ明るくなりだしている空はまだ夜のままだ。
近鉄はホームのコンビニが煌々と光を放ち、早くも特急列車も走り出しているけど、JRはようやく一番列車がやってくる。
6:41 阿漕(あこぎ)駅(紀勢本線 三重県)
津からひと駅。
途中、近鉄の津新町駅を通過する。
駅周辺にはわずかな明かりだけがあった。
阿漕は、悪い言葉として使われる「あこぎ」の語源だという。
阿漕ヶ浦は伊勢神宮に供える魚を獲る漁場として一般的には禁漁区だったのを、「阿漕の平次」なる者が繰り返し密漁に及び捕らわれたことによるとのこと。
「あこぎ」なヤツとの評価は沽券にかかわる。
明るくなりだした空。
このままじゃたぶん今日は曇り。
昨日はあんなにきれいな月夜だったのに。
神島で満月が見られることを願っている。
国道を走る車の音が聞こえてくる。
かつてオレも車を走らせたあの道まで出て、さして感じるものもなく駅へ戻る。
ふと脇を見ると指名手配犯の顔が並んでいる。
彼等には守護存在はいたのだろうか。
スピリチュアルな世界に触れた昨今。
そんなことを考えるようになった。
駅にくれば、子供たちもこんな光景を見ながら大きくなっていく。
わがことながら、表情が曇るのが分かった。
7:24 松阪(まつさか)駅(紀勢本線/名松線/近鉄山田線 三重県)
近鉄の立派な電架設備が見えだすと松阪が近い。
その高架下ぎりぎりをくぐるJR。
私鉄王国の中では肩身が狭い。
3度目の松阪。
この街にも泊まったことがある。
駅前から続くアーケード街の記憶はなかったけど、オレの歴史が見える。
松阪は城下町だった。
本居宣長記念館なるものが城址公園側にある。
松阪牛だけの街じゃない。
前回も弁当屋で触れあったことを思い出した。
人情味のある街だ。
8:21 家城(いえき)駅(名松線 三重県)
簡素な駅が続く名松線。
松坂から名張へと延びるはずの鉄路ゆえ名松線。
しかし計画通りには進まず伊勢奥津で止まったが、廃線の憂き目を見ることなく生き残ってきた。
そこへ最近、台風災害でここ家城から先の運行ができなくなり、廃線の話も持ち上がったとのこと。
ともあれこうして復旧を果たし、まずはひと安心。
早く名松線に乗りにいかなければ。
今回の旅にはそのような思いも含まれている。
野球少年をはじめ高校生たちが降りていく。
この夏、山間の県立高校が甲子園に現れると話題になった白山高校の生徒たち。
凛々しくもあり、子供でもある。
この夏には借りがあるだろう。
また檜舞台で彼等の活躍を見たい。
9:32 伊勢奥津(いせおきつ)駅(名松線 三重県)
かつてこの駅に寄る際に通りすぎた美杉町。
様々なプールが楽しめる施設が賑わっていたことを記憶している。
「ここだここだ」と懐かしく感じたその施設は季節を終えて、向かいにある美杉リゾートもその巨大な姿に黒ずみを浮かべ、朽ちるに委せていた。
それでもこの山間の地域に人々の暮らしが続いていることをいじましく感じ、そんな風景を目にしているオレは、今年あった別れを思っていた。
阿下喜、西藤原、湯の山温泉と車で終着駅をたどったかつての旅。
この駅は4番目の終着駅だった。
雲出川左岸に位置する伊勢本街道奥津宿。
北畠氏が築いたのであろう城跡もあり、名松線開業後は若宮八幡宮への参拝客で賑わったそうだ。
今じゃ参道の両脇を廃屋が固める一帯となったが、神気を感じ、かつての宿場の屋号をつけた旧家が並ぶ古街道を下っていった。
関連記事
-
「鉄旅日記」2018年秋【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】初日(松戸-流山-潮来-銚子-東金-松戸)その2-湖北、下総松崎、成田、香取、延方、北浦、佐原、大戸(我孫子支線/成田線/鹿島線)
鉄旅日記2018年9月22日・・・湖北駅、下総松崎駅、成田駅、香取駅、延方駅、佐原駅、大戸駅(我孫子
-
「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、銚子へ、房総へ。】その1-保谷、稲毛、都賀、四街道、久住、下総神崎、松岸、銚子(総武本線、成田線)
鉄旅日記2012年3月12日その1・・・保谷駅、稲毛駅、都賀駅、四街道駅、久住駅、下総神崎駅、松岸駅
-
「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】最終日(紀伊勝浦-東京)その2-神志山、賀田、九鬼、相賀、紀伊長島、多気、名古屋、豊田町、六合、由比(紀勢本線/東海道本線)
鉄旅日記2014年3月9日その2・・・神志山駅、賀田駅、九鬼駅、相賀駅、紀伊長島駅、多気駅、名古屋駅
-
「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】初日(東京-和歌山)その1-浜松、豊橋、大垣、京都、六地蔵、城陽、京終、帯解、天理、桜井(東海道本線/奈良線/桜井線)
鉄旅日記2008年7月19日・・・浜松駅、豊橋駅、大垣駅、京都駅、六地蔵駅、城陽駅、京終駅、帯解駅、
-
2018年秋【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】最終日(松戸-五井-大原-安房鴨川-松戸)その3-安房鴨川、江見、君津、千葉、西船橋(内房線/総武本線)
鉄旅日記2018年9月23日・・・安房鴨川駅、江見駅、君津駅、千葉駅、西船橋駅(外房線/内房線/総武
-
「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】初日(東京-水沢)その2-前谷地、柳津、気仙沼、一ノ関、水沢(石巻線/気仙沼線/大船渡線/東北本線)
鉄旅日記2016年3月5日その2・・・前谷地駅、柳津駅、気仙沼駅、一ノ関駅、水沢駅(石巻線/気仙沼線
-
「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】2日目(倉敷-和田山)その2-郡家、若桜、智頭、京口、福崎、寺前、和田山(因美線/智頭急行/播但線)
鉄旅日記2009年11月22日・・・郡家駅、若桜駅、智頭駅、京口駅、福崎駅、寺前駅(因美線/智頭急行
-
「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】初日(東京-河口湖-新島々-長野-直江津)その3-梓橋、姨捨、北長野、三才、直江津(大糸線/篠ノ井線/しなの鉄道/えちごトキめき鉄道)
鉄旅日記2018年2月10日・・・梓橋駅、姨捨駅、北長野駅、三才駅、直江津駅(大糸線/篠ノ井線/しな
-
「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】2日目(西舞鶴-魚津)その2-南条、今庄、北鯖江、鯖江、大土呂、福井、春江、丸岡、芦原温泉、動橋、石動、小杉、越中大門、魚津(北陸本線)
鉄旅日記2014年3月22日その2・・・南条駅、今庄駅、北鯖江駅、鯖江駅、大土呂駅、福井駅、春江駅、
-
「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)
鉄旅日記2006年11月4日/11月5日 2006・11・5 東京葛飾金町 清々しい浜名湖畔から