*

「車旅日記」1998年夏【伊那、木曽から志賀高原へ。気乗りのしない旅で選んだ行き先は、初夏の信濃路でございました。】2日目(木曽-野麦峠-信州新町-志賀高原湯田中)-道の駅日義 木曾駒高原、木曽福島駅、木曽福島タイムリー、開田村、野麦峠扇屋、奈川渡ダム、道の駅信州新町

公開日: : 最終更新日:2024/04/13 旅話, 旅話 1998年

車旅日記1998年7月19日
1998・7・19 6:28 19号国道‐日義 木曽駒高原(道の駅)
オレのような朝を迎える人が結構いることに感心している。
それも中年のご夫婦が主力。

いい傾向だと思う。
車の中で迎える朝が一番自由に近い。
すぐにどこへでも行けるわけだから。
首のどこかが痛いというようなことを除けば最高だ。
お日様にも近いしな。

気分は悪くない。
腹が減った。
朝というのは、本来こうして空腹とともに迎えるものだ。

6:55 木曽福島駅 296㎞
7:00。
駅の利用客はまだ現れない。

駅前の商店も1軒を除いてまだ閉ざされている。
列車がやってくる気配も今のところはない。

ここは山間に位置した小さな町。
昔この一帯で育った木曽義仲という英雄が不意に人界に現れて天下をとった。

そんな男がここから生まれたとはとても信じられない。
当時はまさに何もないところだったのだろう。

今日もまた山間を行く。

野麦峠に惹かれる。
そんな旅。

7:44 19号国道‐木曽福島町タイムリー 300㎞
天気はあまり気にしていなかったけど、今日はどんな具合だろうか。

時折陽射しにあたるとうれしくなる。
太陽はそういう存在。

今回はオレの土地勘がやけに狂う。
どこかで冷静でいられない事情があるのだろう。
日常から引きずってきたヤツだよ。

だけど町中で迷うとそれはそれでなかなか楽しい。

木曽福島は奥が深い。
本来は車を止めて歩くべき町だ。
そうしたい気持ちもあるけど、まだ朝が早い。

8:35 月夜沢林道-開田村 323㎞
友が言うところの地図上に記された「白い道」に入り込んでいる。

少なくともオレの車はこういう道向きじゃないことは確かだ。

少しの不安があるが、それを除けば他のすべてを堪能できる。
たったひとりでこんな山の中に入り込んだことはなかった。

すぐ脇に沢があるが、そこへ下りることを一瞬ためらった。
熊でも出るんじゃないかと思ったんだ。

山の神様に祈りながら、これから野麦峠に出る。

10:09 野麦峠-扇屋 339㎞
「白い道」を抜けると、かつての難所野麦峠に至り、道は開けた。

快晴。
不安にかられながらの「白い道」の走行はとてもタフだったけど、終わってしまえば過ぎ去ったことはどうでもよくなる。

きっと素晴らしい記憶になるんじゃないか。
自信にもなった。

こうして30歳近くなってもまだオレは成長している。
でもあの道はもう2度と行かないよ。

資料館は見学に値するものだった。

最近は豊かになって、貧しい時代のことなど話に上ることもないが、この国で確かに起きていたことだ。
知っておくべきだ。

親のため。
国のため。
今は誰もそんなことを口にしない。
そういう時代だったで済ませておくべきじゃないこともあるだろう。

この街道も昔はひどい道だったのだろう。
「白い道」を走り抜けてみて、当時の女工の苦しみを理解した。

彼女たちは雪の中をこの困難な峠を越えたのだろう。
オレはこの陽気の中を車で越えた。
苦労なんて言葉は、現代を生きるオレたちに口にする資格はないのかもしれない。

現在の野麦峠は涼しげだ。

鳥のさえずりと川のせせらぎと、そして風鈴の音がする。
山に入れば無数に沢が流れている。
それがこの国。

国が考えることはおかしいのじゃないか。
オレもそう思うことがある。

10:51 奈川渡ダム 355㎞
いろんな所からいろんな人間が避暑のために集まっている。

こういう場所でライダーをよく見かけるのはどういう理由からだろう。

模範的なライダーたちだ。
文句を言うつもりはない。

みんな楽しくやってほしい。

13:01 19号国道‐信州新町(道の駅) 436㎞
川沿いの見覚えのあるルートを長野方面に向かっている。

道は順調に流れ、オレが向かう先が夏の行楽地として相応しくない一帯だということが分かる。

松本から上高地に抜ける野麦街道の渋滞はひどかった。
大袈裟でも何でもなく人々が目的地に到着する頃は日が暮れているんじゃないか。

長野県内は多くの観光客を呼んで、おおむね潤っているように見える。
不況だというが、この穏やかな雰囲気にそうした影は見られない。

安心するべきなのか、それとも他の問題に目を向けるべきなのか。

このまま宿に向かう。
以前にもそうしたように、ここでビールを飲んで昼寝をしようと思ったけど、この暑さじゃそうもいかない。

このまま流れるにまかせて、早めに宿に落ち着いて汗を流そうと思う。

関連記事

「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】最終日(鳴子-米沢-東京)-鳴子サンハイツ、瀬見駅、羽前中山駅、萬世大路記念碑公園、栗子トンネル、松川駅、里白石駅、常陸大子駅、我孫子、東京町田

車旅日記1997年8月16日 1997・8・16 8:18 鳴子サンハイツ 拝啓 残暑お見舞い

記事を読む

「鉄旅日記」2006年初夏【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】初日-平塚、国府津、沼津、掛川、三河大塚、尾張一宮、岐阜(東海道本線/御殿場線)

鉄旅日記2006年7月15日・・・平塚駅、国府津駅、沼津駅、掛川駅、三河大塚駅、尾張一宮駅、岐阜駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2018年神無月【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】最終日(松本-辰野-天竜峡-岡谷-東京)その3-勝沼ぶどう郷、大月(中央本線)

鉄旅日記2018年10月8日・・・勝沼ぶどう郷駅、大月駅(中央本線) 17:25 勝沼ぶどう郷(か

記事を読む

「車旅日記」2005年冬【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】最終日(人吉-天草-熊本空港)走行距離240㎞ その2-上天草、三角駅、肥後長浜駅、宇土駅、上熊本駅、肥後大津駅、熊本空港駅、東京葛飾金町

車旅日記2005年2月13日・・・上天草、三角駅、肥後長浜駅、宇土駅、上熊本駅、肥後大津駅、熊本空港

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】最終日(水沢-東京)その1-水沢、花巻、遠野、陸中大橋、小佐野、釜石、恋し浜、盛(東北本線、釜石線、三陸鉄道南リアス線)

鉄旅日記2016年3月6日その1・・・水沢駅、花巻駅、遠野駅、陸中大橋駅、小佐野駅、釜石駅、恋し浜駅

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】初日(東京-河口湖-新島々-長野-直江津)その2-三つ峠、塩山、酒折、塩尻、新島々、西松本、松本(富士急行/中央本線/アルピコ交通上高地線)

鉄旅日記2018年2月10日・・・三つ峠駅、塩山駅、酒折駅、塩尻駅、新島々駅、西松本駅、松本駅(富士

記事を読む

「鉄旅日記」2014年冬【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】初日(東京-鬼怒川温泉)-下今市、新藤原、川治湯元、川治温泉、湯西川温泉、龍王峡、鬼怒川公園、新高徳、鬼怒川温泉(東武鬼怒川線/野岩鉄道)

鉄旅日記2014年12月6日・・・下今市駅、新藤原駅、川治湯元駅、川治温泉駅、湯西川温泉駅、龍王峡駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】初日(東京-防府)その2‐新白鳥、古市橋、梅林、可部、あき亀山(可部線)

鉄旅日記2020年8月13日・・・新白島駅、古市橋駅、梅林駅、可部駅、あき亀山駅(可部線)

記事を読む

「車旅日記」2005年初夏【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】初日(長岡-会津-福島-山形)走行距離388㎞ その2-福島駅、峠駅、今泉駅、荒砥駅、アパホテル山形駅前大通

車旅日記2005年7月16日・・・福島駅、峠駅、今泉駅、荒砥駅、アパホテル山形駅前大通 17:00

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】最終日(新津-東京)その1‐新津、馬下、津川、喜多方(磐越西線)

鉄旅日記2020年4月5日・・・新津駅、馬下駅、津川駅、喜多方駅(磐越西線) 2020・4・5 5:

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その3 ‐しんざ、十日町、越後鹿渡、津南、戸狩野沢温泉(北越急行ほくほく線/飯山線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・しんざ駅、十日町駅、越後鹿渡駅、津

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル

鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】初日-浜金谷駅、金谷港、勝浦駅、遠見岬神社、旅館松の家(内房線/外房線)

鉄旅日記2021年5月22日・・・浜金谷駅、金谷港、勝浦駅、遠見岬神

→もっと見る

    PAGE TOP ↑