「車旅日記」1998年夏 2日目(木曽-野麦峠-信州新町-志賀高原湯田中)-道の駅日義 木曾駒高原、木曽福島駅、木曽福島タイムリー、開田村、野麦峠扇屋、奈川渡ダム、道の駅信州新町 【伊那、木曽から志賀高原へ。気乗りのしない旅で選んだ行き先は、初夏の信濃路でございました。】
車旅日記1998年7月19日
1998・7・19 6:28 19号国道‐日義 木曽駒高原(道の駅)
オレのような朝を迎える人が結構いることに感心している。
それも中年のご夫婦が主力。
いい傾向だと思う。
車の中で迎える朝が一番自由に近い。
すぐにどこへでも行けるわけだから。
首のどこかが痛いというようなことを除けば最高だ。
お日様にも近いしな。
気分は悪くない。
腹が減った。
朝というのは、本来こうして空腹とともに迎えるものだ。
6:55 木曽福島駅 296㎞
7:00。
駅の利用客はまだ現れない。
駅前の商店も1軒を除いてまだ閉ざされている。
列車がやってくる気配も今のところはない。
ここは山間に位置した小さな町。
昔この一帯で育った木曽義仲という英雄が不意に人界に現れて天下をとった。
そんな男がここから生まれたとはとても信じられない。
当時はまさに何もないところだったのだろう。
今日もまた山間を行く。
野麦峠に惹かれる。
そんな旅。
7:44 19号国道‐木曽福島町タイムリー 300㎞
天気はあまり気にしていなかったけど、今日はどんな具合だろうか。
時折陽射しにあたるとうれしくなる。
太陽はそういう存在。
今回はオレの土地勘がやけに狂う。
どこかで冷静でいられない事情があるのだろう。
日常から引きずってきたヤツだよ。
だけど町中で迷うとそれはそれでなかなか楽しい。
木曽福島は奥が深い。
本来は車を止めて歩くべき町だ。
そうしたい気持ちもあるけど、まだ朝が早い。
8:35 月夜沢林道-開田村 323㎞
友が言うところの地図上に記された「白い道」に入り込んでいる。
少なくともオレの車はこういう道向きじゃないことは確かだ。
少しの不安があるが、それを除けば他のすべてを堪能できる。
たったひとりでこんな山の中に入り込んだことはなかった。
すぐ脇に沢があるが、そこへ下りることを一瞬ためらった。
熊でも出るんじゃないかと思ったんだ。
山の神様に祈りながら、これから野麦峠に出る。
10:09 野麦峠-扇屋 339㎞
「白い道」を抜けると、かつての難所野麦峠に至り、道は開けた。
快晴。
不安にかられながらの「白い道」の走行はとてもタフだったけど、終わってしまえば過ぎ去ったことはどうでもよくなる。
きっと素晴らしい記憶になるんじゃないか。
自信にもなった。
こうして30歳近くなってもまだオレは成長している。
でもあの道はもう2度と行かないよ。
資料館は見学に値するものだった。
最近は豊かになって、貧しい時代のことなど話に上ることもないが、この国で確かに起きていたことだ。
知っておくべきだ。
親のため。
国のため。
今は誰もそんなことを口にしない。
そういう時代だったで済ませておくべきじゃないこともあるだろう。
この街道も昔はひどい道だったのだろう。
「白い道」を走り抜けてみて、当時の女工の苦しみを理解した。
彼女たちは雪の中をこの困難な峠を越えたのだろう。
オレはこの陽気の中を車で越えた。
苦労なんて言葉は、現代を生きるオレたちに口にする資格はないのかもしれない。
現在の野麦峠は涼しげだ。
鳥のさえずりと川のせせらぎと、そして風鈴の音がする。
山に入れば無数に沢が流れている。
それがこの国。
国が考えることはおかしいのじゃないか。
オレもそう思うことがある。
10:51 奈川渡ダム 355㎞
いろんな所からいろんな人間が避暑のために集まっている。
こういう場所でライダーをよく見かけるのはどういう理由からだろう。
模範的なライダーたちだ。
文句を言うつもりはない。
みんな楽しくやってほしい。
13:01 19号国道‐信州新町(道の駅) 436㎞
川沿いの見覚えのあるルートを長野方面に向かっている。
道は順調に流れ、オレが向かう先が夏の行楽地として相応しくない一帯だということが分かる。
松本から上高地に抜ける野麦街道の渋滞はひどかった。
大袈裟でも何でもなく人々が目的地に到着する頃は日が暮れているんじゃないか。
長野県内は多くの観光客を呼んで、おおむね潤っているように見える。
不況だというが、この穏やかな雰囲気にそうした影は見られない。
安心するべきなのか、それとも他の問題に目を向けるべきなのか。
このまま宿に向かう。
以前にもそうしたように、ここでビールを飲んで昼寝をしようと思ったけど、この暑さじゃそうもいかない。
このまま流れるにまかせて、早めに宿に落ち着いて汗を流そうと思う。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2019年如月 初日(東京-安中)その1-金町、熱海、城ヶ崎海岸、伊豆熱川、伊豆稲取、今井浜海岸、河津(常磐線/東海道本線/伊東線/伊豆急行線) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】
鉄旅日記2019年2月9日・・・金町駅、熱海駅、城ヶ崎海岸駅、伊豆熱川駅、伊豆稲取駅、今井浜海岸駅、
-
-
「鉄旅日記」2022年新春 最終日(三沢-東京)その3 ‐鹿島、原ノ町、いわき、常陸多賀、勝田(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】
鉄旅日記2022年1月10日・・・鹿島駅、原ノ町駅、いわき駅、常陸多賀駅、勝田駅(常磐線)
-
-
「鉄旅日記」2009年秋 4日目(佐賀-松浦)その2-大村、竹松、早岐、佐世保、佐世保中央、中佐世保、左石、佐々、たびら平戸口、松浦(大村線/佐世保線/松浦鉄道) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】
鉄旅日記2009年9月21日・・・大村駅、竹松駅、早岐駅、佐世保駅、佐世保中央駅、中佐世保駅、左石駅
-
-
「車旅日記」2006年初夏 最終日(近江八幡-長浜-揖斐-岐阜)-ホテルはちまん、近江八幡駅、安土駅、彦根駅、長浜駅、垂井駅、美濃赤坂駅、揖斐駅、木知原駅 【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】
車旅日記2006年7月17日・・・ホテルはちまん、近江八幡駅、安土駅、彦根駅、長浜駅、垂井駅、美濃赤
-
-
「鉄旅日記」2014年冬 最終日(鬼怒川温泉-東京)-小佐越、大桑、大谷向、下今市、西新井、大師前(東武鬼怒川線/東武大師線) 【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】
鉄旅日記2014年12月7日・・・小佐越駅、大桑駅、大谷向駅、下今市駅、西新井駅、大師前駅(東武鬼怒
-
-
「鉄旅日記」2021年夏 最終日(上田-東京)その2 ‐北飯山、飯山、蓮、森宮野原(飯山線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】
鉄旅日記2021年7月11日・・・北飯山駅、飯山駅、蓮駅、森宮野原駅(飯山線) 9:16
-
-
2018年初秋 初日(東京-桑名)その4-新瀬戸、瀬戸市、高蔵寺、新守山、勝川、枇杷島、蟹江、桑名(愛知環状鉄道/中央本線/東海交通事業常北線/東海道本線/関西本線) 【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】
鉄旅日記2018年9月15日・・・新瀬戸駅、瀬戸市駅、高蔵寺駅、新守山駅、勝川駅、枇杷島駅、蟹江駅、
-
-
「鉄旅日記」2018年如月 初日(東京-直江津)その1-保谷、代々木、都留市、富士山、河口湖(西武池袋線/山手線/中央本線/富士急行) 【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】
鉄旅日記2018年2月10日・・・保谷駅、代々木駅、都留市駅、富士山駅、河口湖駅(西武池袋線/山手線
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その5 ‐逗子、北鎌倉、平塚、国府津(横須賀線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月5日・・・逗子駅、北鎌倉駅、平塚駅、国府津駅(横須賀線/東海道本線)
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 2日目(高山-速星)その4‐富山大学前、丸ノ内、南富山駅前、南富山、電鉄富山駅前、富山(富山地方鉄道市内線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月21日・・・富山大学前電停、丸ノ内電停、南富山駅前電停、南富山駅、電鉄富山駅前