*

「車旅日記」1998年夏【伊那、木曽から志賀高原へ。気乗りのしない旅で選んだ行き先は、初夏の信濃路でございました。】初日(東京-伊那-木曽)-東京町田、相模湖駅、鳥沢駅、道の駅甲斐大和、勝沼、長坂、伊那市駅、道の駅日義 木曽駒高原

公開日: : 最終更新日:2024/04/13 旅話, 旅話 1998年

車旅日記1998年7月18日
1998・7・18 12:48 東京町田
久しぶりに空がよく晴れている。
この空の下を旅立てるとは素晴らしい。

今回ほど旅の趣旨が明確じゃないことも珍しい。
どこへ行くつもりなのか。
今もオレにはよく分からない。

今日に行き着くまでの日常もまたそんな迷走状態だった。

昨日も気の抜けたまま仕事をして、酒を飲んで帰っただけ。
そんな日々が続いていた。

いくつかオレの中の約束事もあったが、そのどれもが果たされていない。

そして見えるもの、考える対象物がすべて悲しげな色をしていた。

徐々にではあるが、堕ちていっているような錯覚も起こった。

遅く目覚めてからかなりの時間が経ったが、まだ後ろ髪を引かれるように狭い部屋を行ったり来たりしている。

出かけるんだろう?
太陽もまた、6時間後には落ちていくから。

15:20 相模湖駅 44㎞
旅の最初はこんなもの。
体調は悪くないが、決してよくもない。

だらだらした日常にも疲労感は残る。
さらに満足感がない分タチが悪い。

そんなものと今闘っている。

川や湖といった水辺に人々が集まっている。
きっと今日から夏が始まったのだろう。

ここに来るまで学生時代によく聞いていたカセットをかけていた。
こんな楽曲を聴きながら、オレは様々なことに思いを馳せていたんだったな。
そんな感傷が生まれた。

稲垣潤一の声は思い出と一緒にある。
これでまた、しばらく聴くことはないだろう。

16:10 鳥沢駅 67㎞
20号国道を行っている。

いい風情だ。
山間では何となく人々が落ち着いて生活しているような印象を受ける。

この駅構内は終日禁煙。
きっとこのあたりの住民が駅をどう扱いたいかという気持ちが現れた結果なのだろう。
いい試みだとは思う。

このまま山間を縫って木曽まで行く。
そうに決めた。
日が暮れるのはどこらあたりだろう。

いくぶん涼しくはなったけど、今日は暑い。
体から噴き出す汗の臭いもまた強烈だ。

ここにきて、ようやく98年の夏が始まった。

17:14 20号国道‐甲斐大和(道の駅) 92㎞
ここに立ち寄ったのは2年前のことになる。

つい最近だと思っていたが、それでも2年の月日が流れている。
それなりに感無量だ。

今オレは今年最初の夏の夕暮れに車を走らせながら沿道を眺め、楽しんでいる。

オレが思うところの正しい高校生を見かけた。
よく鍛えられていそうな少年だった。

甲斐の道は、若者よりもむしろオッチャン、オバチャン、じいちゃん、ばあちゃんがよく似合い、そのとおりの風景が作られている。

オレの記憶の中の夏の風景とも一緒。
小さな頃、田舎で過ごした時の風景だ。
ひどく懐かしく感じて、自然に笑みを浮かべていた。

今回は初めて海を見ない旅になるだろう。
カナカナと鳴くヒグラシの声がとても愛しい。

5月に出した友への手紙に、「もう独りの旅はごめんだ」と書いたけど、今回は少しばかり違った心境でいる。

17:38 20号国道‐勝沼 99㎞
親父への土産の赤ワインを購入するために立ち寄ったら、桃をもらったよ。

だからこうした場所はいい。
勝沼のことは、東京に帰ったらみんなに触れ回るよ。

素晴らしい人情の町だと。

19:14 20号国道‐長坂 148㎞
町が見当たらないから仕方なくコンビニに寄って用を済ませた。

夏の暑さは引いて、このあたりじゃ今夜はそれなりに涼しくなるだろう。
今日もまた日が暮れた。

寝場所として想定しているあたりはかなり寂しいところのようだ。

20:53 伊那市駅 209㎞
近くで花火の音が聞こえる。

川沿いの小さな街にたどり着いている。

ここにきてルートの再考を促されている。

地図上では権兵衛峠を行くのがいいが、そこへ至る表示は見当たらず躊躇する。
一度塩尻に出てから南下する方がよさそうだ。

今家族に電話を入れ、涼しい場所でちゃんと生きていることを伝えた。

少年たちが明るい場所に集まってくる事情は都会も地方も変わらない。

22:45 19号国道‐日義 木曽駒高原(道の駅) 286㎞
ここに落ち着いてから10分ほど経つ。

すでに一杯やりだしている。
つまりここが今日の終着点。

信濃路はよく整備されている。
道も明るい。

東北の山中を走っている時の妙な焦燥感を持たずに済んだことはとてもありがたかった。
バカな走り方をするヤツに出くわさなかったことも幸運だった。
きっと明日も快適な旅になるだろう。

町田では今回のツアーに特に理由は見当たらないと書いた。
でもこうしていると理由などどうでもよくなる。

こうしているのが好きなんだよ。
過剰な付加価値など必要ない。

だから今回は考えたことを記すのではなく、単に思ったことを記していこうと思う。

考えなければ、彼女のことも仕事も浮かんでこない。

うまく表現できないけど、空を見て、通り過ぎる町並を眺め、特にストーンズをかけて走る時に、オレは一番自由を感じる。
そんな時は日常を忘れる。

本当は旅先で日常を客観的に眺めてみたいと思っていたけど、自由を感じると、そんなことはどうでもよくなる。
特に問題も見当たらない。

だからこうしてできるだけ自由でいたいと思う。

明日はこのあたりで遊ぶつもりでいる。
夜だからあたりのことはよく分からないが、何となくここを気に入ったよ。

関連記事

「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】2日目(大垣-姫路)その1-大垣、能登川、栗東、草津、石部、三雲、甲南、油日、甲賀、柘植(東海道本線/草津線)

鉄旅日記2017年8月12日・・・大垣駅、能登川駅、栗東駅、草津駅、石部駅、三雲駅、甲南駅、油日駅、

記事を読む

「車旅日記」1996年1月【旅を友として生きていくことにした27歳。年頭の誓いでございます。】-町田、伊勢原駅、山北駅、沼津駅、富士駅、道の駅富士川、吉原駅、田子の浦

車旅日記1996年1月1日 1996・1・1 20:43 東京町田 始動だ。 久し振りに動かし

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【浜名湖周辺で遊ぶ一日】その2-鷲津、新居町、浜松、新浜松、第一通り、西鹿島、遠州森、円田、遠江一宮、原谷、掛川、安倍川(東海道本線/遠州鉄道/天竜浜名湖鉄道)

鉄旅日記2015年3月28日その2・・・鷲津駅、新居町駅、浜松駅、新浜松駅、第一通り駅、西鹿島駅、遠

記事を読む

「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】4日目(鹿角花輪-花巻)-鹿角花輪、荒屋新町、盛岡、北上、和賀仙人、横手、大曲、角館、田沢湖、雫石、小岩井、花巻空港、新花巻、花巻(花輪線/東北本線/北上線/田沢湖線/釜石線)

鉄旅日記2011年8月16日・・・鹿角花輪駅、荒屋新町駅、盛岡駅、北上駅、和賀仙人駅、横手駅、大曲駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】初日(東京-新山口)その2-廿日市、広電廿日市、宮島口、広電宮島口、大竹、岩国、徳山、新山口(山陽本線/岩徳線)

鉄旅日記2009年9月18日・・・廿日市駅、広電廿日市駅、宮島口駅、広電宮島口駅、大竹駅、岩国駅、徳

記事を読む

「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】初日-掛川、尾奈、リステル浜名湖(東海道本線/天竜浜名湖鉄道)

鉄旅日記2006年11月3日・・・掛川駅、尾奈駅(東海道本線/天竜浜名湖鉄道) 2006・11・3

記事を読む

「車旅日記」1998年夏【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】4日目(遠野-釜石-気仙沼-鳴子温泉)-遠野徳田屋旅館、遠野駅、釜石駅、釜石大観音、道の駅高田松原、気仙沼港、南気仙沼駅、小梨駅、一ノ関駅、鳴子サンハイツ

車旅日記1998年8月15日 1998・8・15 8:00 遠野 徳田屋旅館 4日目。 宿で知

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】初日(東京-小出-会津若松)その1-保谷、池袋、赤羽、高崎、井野、水上(西武池袋線/埼京線/高崎線/上越線)

鉄旅日記2018年3月3日・・・保谷駅、池袋駅、赤羽駅、高崎駅、井野駅、水上駅(西武池袋線/埼京線/

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】最終日(北上-東京)その2‐新庄、鳴子温泉、小牛田(陸羽東線)

鉄旅日記2019年11月4日・・・新庄駅、鳴子温泉駅、小牛田駅(陸羽東線) 11:19 新庄(しんじ

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】2日目(香住-東萩)その1‐香住、柴山、餘部(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月24日・・・香住駅、柴山駅、餘部駅(山陰本線)/余部鉄橋 2020・7

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その3 ‐しんざ、十日町、越後鹿渡、津南、戸狩野沢温泉(北越急行ほくほく線/飯山線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・しんざ駅、十日町駅、越後鹿渡駅、津

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル

鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】初日-浜金谷駅、金谷港、勝浦駅、遠見岬神社、旅館松の家(内房線/外房線)

鉄旅日記2021年5月22日・・・浜金谷駅、金谷港、勝浦駅、遠見岬神

→もっと見る

    PAGE TOP ↑