「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】初日(東京-三国峠-新潟)-町田、東福生駅、山田うどん、前橋市田口町、月夜野道路情報ターミナル、奥平温泉遊神館、越後湯沢駅、堀之内パーキング、道の駅豊栄
車旅日記1997年8月13日
1997・8・13 10:30 東京町田
出発が遅れている。
急ぐべきだが、ひどく楽観的でいる。
部屋には60年代のザ・ローリング・ストーンズが流れている。
とても陽気な音楽だ。
これからのルートには渋滞をはじめ、様々なものが待っているだろう。
友も待っている。
長い夏の日々がこれから始まる。
13:52 東福生駅 35㎞
東京脱出はスムースにいっている。
今までなら、このあたりじゃ表情に苛立ちを浮かべていたはずだけど、今回にはそれがない。
3曲目が流れた時に忘れ物に気づき、少し気持ちを曇らせたけど、それも解消している。
地図を見たら今夜どこまで行くべきなのかも明確になった。
それは決して無理な要求じゃない。
かなり調子も上がっている。
ここに来るといつも思い出す女性がいる。
彼女が今どこでどうしているのか知らないけど、彼女を想っていた頃はこの先に住んでいた。
毎年暑中見舞いを送ったよ。
去年も確かそうしたはずだ。
今年はどうすべきか迷っている。
オレたちはだいぶ離れてしまった。
元気でいるだろうか。
車を止めるとラジオから高校野球の実況が聞こえてくる。
そう、今は夏。
思い出深い夏を生きている。
14:45 407号国道‐山田うどん 79㎞
どこらあたりだったか覚えていないが、急に涼しくなった。
きっと東京圏の暑さは異常なのだろう。
蝉の声が夏の盛りであることを告げている。
空は時折雷の音を聞かせてくれる。
ここから見える風景に人間は参加していない。
バラック小屋のようなうどん屋にも人の姿はあまり見られなかった。
まだ15:00前だが、ここには黄昏時のような倦怠感が漂っている。
ここに立ち寄るまで、車を走らせているオレが、自分とは違う何か別の生き物のように感じながら、ひどく客観的な気分で永ちゃんを聞いていた。
一体この男はどこへ行くつもりなのかと思いながら。
これで旅は何度目になるのか。
すべて忘れてしまった。
甲子園では熱戦が続いている。
17:08 17号国道‐前橋市田口町 145㎞
確か去年もこのあたりで渋滞に遭った。
雨が夏らしい姿で降りてきている。
一年振りの今井美樹の声はとても澄みきっていて妖精的だ。
ソープランドに車を入れる男。
カーネル人形に水を浴びせる魅力的な少女。
70㎞をぶっ通しで走ってきた。
見事な川の流れを眼下に見る。
18:10 17号国道‐月夜野道路情報ターミナル 175㎞
上州路は前橋を過ぎて旅情を身につけた。
川の流れ。
夕日を背にして立つ男。
雲は男らしい姿の断層を見せながら空に浮かんでいる。
さっき夕暮れの日差しを浴びた時、心の中で歓声を上げた。
来てよかったよ。
甲子園の熱戦は続き、これから三国越えに入る。
記憶では、猿ヶ京の湖城閣はまだオレのようなヤツを受け入れているはずだ。
いつも思うが、旅の喜びはほんの一瞬のうちにやってくる。
残りの時間は、日常とは違う視線でただ車を走らせているに過ぎない。
そしてこうしてまたオレはその一瞬の喜びを求めて旅に出ている。
その喜びをさっき得た。
これからもあるだろう。
人に言って理解を得られるものじゃないようだ。
だからこうしていつもひとり。
この旅の理由を気に入っている。
19:10 奥平温泉遊神館 189㎞
赤焼けの農村を走り、甘い香りのする温泉宿に立ち寄った。
多くの男が裸で集まる浴場というのは平和的でいい。
気に入った集合場所といえる。
温泉以外ではこんなに人の多い場所には行かないよ。
夏の農村はいつでも祭みたいで気分が和む。
お囃子の音も日本の夏らしくていい。
空がようやく暗くなり、これから長い夜が始まる。
赤焼けに照らされた農村風景。
あれからわずかなうちに喜びがひとつ増えたよ。
20:43 越後湯沢駅 241㎞
三国越えは霧のためにかつてない難航を極めた。
さすがに交通の難所。
何が待ち受けているか分かったものじゃない。
ここで家族に電話を入れるのは3度目になる。
いつもこの駅に立ち寄っていて、記憶も層を重ねた。
今回は夕食をここで。
適当に腹も減るから調子もいいのだろう。
ひとつ心配なのは、北国が思った以上に涼しいこと。
でもどうにかなるだろう。
暑苦しいよりはいい。
3人の娘が大きな声で喋りながら町に消えていった。
東京からの避暑客なのかもしれない。
21:58 17号国道‐堀之内パーキング 288㎞
友と連絡がついた。
彼の事情からすると、16日はオレに寝床を用意できないかもしれないけど、それならそれでいい。
友との再会に多くを望む必要はない。
顔を合わせて互いの息災を確認できさえすれば、右と左に別れればいい。
地図を見た。
今夜の目標地点がかなり遠いことを確認した。
ちょうど一年前の夜はこの場所で終わったけど、今日のオレはあの日より明らかにタフだ。
11月のオレよりもタフであることを願っている。
24:20 7号国道‐豊栄(道の駅) 390㎞
ビールを2本飲んだから、今日はここまで。
去年事故に遭った場所の見分けは今夜もついた。
車をぶつけてきた青森のあの善良なおじさんは元気だろうか?
今年も同じようなシチュエーションで故郷へ帰るのだろうか。
彼のためにも願うよ。
早く日本海に沿ってハイウェイが開通しないものかと。
明日の再会場所はここからも果てしなく遠い。
どれくらい走ればいいのかよく分かっていない。
少なくとも5:00には出発しないと危険だろう。
数メートル離れたネイバーズは簡易テーブルを組み立てて一杯やりだしている。
彼らの今日もオレと同じようにここで終わり。
もう日付が変わっている。
今年のオレにはストーンズが味方についた。
彼らの音楽がオレにとって果てしない意味を持ち、こんなにもリラックスさせる。
明日も楽しみだ。
おやすみ。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】最終日その3(岩倉-東京)-津島、須ヶ口、神宮前、豊明、岡崎公園前、中岡崎、東岡崎、国府、豊川稲荷、豊川(名鉄津島線/名鉄本線/名鉄豊川線)
鉄旅日記2015年3月8日その3・・・津島駅、須ヶ口駅、神宮前駅、豊明駅、岡崎公園前駅、中岡崎駅、東
-
-
「鉄旅日記」2007年如月【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】2日目(天王寺-奈良)その1-南霞町、浜寺駅前、浜寺公園、羽衣、春木、和泉大宮、岸和田、和歌山市、和歌山港、堺(阪堺電気軌道/南海電鉄南海線)
鉄旅日記2007年2月11日・・・南霞町駅、浜寺駅前駅、浜寺公園駅、羽衣駅、春木駅、和泉大宮駅、岸和
-
-
「車旅日記」2004年秋【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】2日目(宇野-下津井-新見-津山-城崎)走行距離377㎞ その1-宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅
車旅日記2004年11月21日 2004・11・21 8:57 宇野駅 海峡の町に清々しい朝が訪
-
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その1-近鉄富田、富田、近鉄四日市、湯の山温泉、伊勢若松、平田町、鈴鹿市、鳥羽、賢島(名古屋線/湯の山線/鈴鹿線/山田線/鳥羽線/志摩線)
鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄富田駅、富田駅、近鉄四日市駅、湯の山温泉駅、伊勢若松駅、平田町
-
-
「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、関東途中下車旅】その2-結城、下館、川島、岩瀬、笠間、十王、小木津、磯原、湯本、内原、羽鳥、土浦、ひたち野うしく(水戸線、常磐線)
鉄旅日記2013年3月31日その2・・・結城駅、下館駅、川島駅、岩瀬駅、笠間駅、十王駅、小木津駅、磯
-
-
「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】初日(東京-新山口)その1-金町、北千住、東京、岡山、笠岡、尾道、糸崎、入野(常磐線/山手線/東海道山陽新幹線/山陽本線)
鉄旅日記2009年9月18日・・・金町駅、北千住駅、東京駅、岡山駅、笠岡駅、尾道駅、糸崎駅、入野駅(
-
-
「車旅日記」2005年冬【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】2日目(都城-鹿児島-川内-人吉)走行距離284㎞ その1-都城駅、西都城駅、財部駅、霧島神宮駅、国分駅、錦江駅、鹿児島駅
車旅日記2005年2月12日 2005・2・12 8:30 都城駅(2月11日の熊本空港より271
-
-
「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】初日(東京-紀伊勝浦)その1-熱田、尾頭橋、八田、四日市、亀山、一身田、津、高茶屋、松阪(東海道本線、関西本線、紀勢本線)
鉄旅日記2014年3月8日その1・・・熱田駅、尾頭橋駅、八田駅、四日市駅、亀山駅、一身田駅、津駅、高
-
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その4-柏原、道明寺、河内長野、古市、畝傍御陵前、田原本、西田原本、新王寺、近鉄王寺(道明寺線/長野線/南大阪線/橿原線/田原本線/生駒線)
鉄旅日記2017年3月18日・・・柏原駅、道明寺駅、河内長野駅、古市駅、畝傍御陵前駅、田原本駅、西田
-
-
「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】最終日(稚内-旭川空港)走行距離353㎞その1-稚内サンホテル、稚内公園、ノシャップ岬、サロベツ原生花園、サロベツ河畔、パンケ沼、下沼駅、幌延駅、雄信内駅
車旅日記2004年5月5日 2004・5・5 8:03 稚内サンホテル325号室 とうとう4日目