「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】初日(東京-小出-会津若松)その1-保谷、池袋、赤羽、高崎、井野、水上(西武池袋線/埼京線/高崎線/上越線)
鉄旅日記2018年3月3日
2018・3・3 4:28 保谷(ほうや)駅(西武池袋線 東京都)
8年間いた町だ。
愛着はあるよ。
越してきた当初、南口ロータリーはまだ狭く、古い果物屋が意固地に居座っていた。
言ってみれば昔の駅前風景だった。
北口にははなから何もなく、一度は飲みにいった店も今じゃ撤退して、空きスペースはまだ埋まっていない。
3週間後に練馬を離れる。
そこまでの縁しか持てなかったが、物価が安くて静かで住みやすい町だった。
電車を眺めた高架に上がったら、よかった頃が迫ってきた。
町はオレを責めちゃいなかったよ。
ただ、「残念だったよな」と、オレの肩に手を置いてさ。
「あぁそうだな」と応えて、そこで立ち止まることもなく、こうして旅に出ている。
どんなことにもいずれ最後の時がくる。
急に春めいた早朝の町で、BARには二人の女性客の姿があり、始発列車は冬の装いを捨てきれない姿が大半だが、目の前の若い女性だけが春物コートを羽織っている。
時折鼻をかむ耳障りな音が聞こえる。
4:58 池袋(いけぶくろ)駅(山手線/埼京線/湘南新宿ライン/西武池袋線/東武東上線/東京メトロ丸の内線/東京メトロ有楽町線/東京メトロ副都心線 東京都)
通勤で降りる大きなターミナル駅。
それだけの存在として、今月の終わりにはこの駅を使わなくなる。
出会った頃、食事をするのは池袋だった。
思えば二人にとって一番いい時代だった。
時が経てば。
でもあてにしていた時間は、二人を別々の場所に連れていってしまった。
この時間帯の池袋をオレはよく知らない。
そしてオレが知っている池袋は8年前のもの。
東口だけ写していくよ。
旅の途中に降りることも、もうないだろう。
5:23 赤羽(あかばね)駅(東北本線/高崎線/京浜東北線/埼京線 東京都)
千鳥足の男女が歩く街。
朝まで飲んでいた連中にとって、店を出た後にまといつかれる寒気は厳しい。
すれ違った女性は歯を鳴らしていた。
一番街、シルキーロード、OK横丁。
たいていの灯は落ちて、ついさっきまでそこにいた人々も家路をたどる。
これから日が昇るまでのわずかな時間に、ようやく飲み屋街は横になれる。
タフな一角だ。
ひとりになったオレがそんな横丁をぶらつく様を想像したけど、あまり魅力的な行為としては映らなかった。
高崎までしばらく眠る。
7:01 高崎(たかさき)駅(上越新幹線/北陸新幹線/信越本線/高崎線/上越線/両毛線/吾妻線/上信電鉄 群馬県)
埼玉県が大きく感じる区間を眠り通す。
新町を過ぎるまで何も覚えていない。
いつの間にか明るくなっている景色に、予報通りの晴天を喜ぶ。
旅情をかき立てる川を2つ渡り、北藤岡駅近辺で八高線と合流する大好きな鉄道風景。
目の前では小学校低学年くらいの男の子が父親に甘えている。
オレには苦いが、素晴らしい光景だ。
高崎に着くといつも繁華街はどこにあるのかと思う。
東口に初めて出て、駅を写す。
7:13 井野(いの)駅(上越線/両毛線/吾妻線 群馬県)
日本家屋風の渋味のある駅舎が、住宅が連なる何もない駅前に溶け込んでいた。
これが高架駅にでもなれば、一帯には人間的な暖かみが薄れる。
否応なくそんな姿にさせられた駅をいくつも見てきた身に、この駅はとても好ましい。
青春18きっぷを使うオレの入退場を、駅長さんは気に止めることはなかった。
次にやってきた水上行に乗り込んでいる。
席は埋まり、一人残らずと言っていいほど山の装いをしている。
ある種の異空間に紛れ込んでいる。
8:22 水上(みなかみ)駅(上越線 群馬県)
赤城山から雪が消えていた。
裾を引いた男の面相を眺めていると、国定忠治を想う。
一時は司法権も及ばないような一種の独立王国を築いた大親分は、やがて刑場で果てる。
その紳士的な最期の様を海音寺潮五郎さんの著書で知った。
渋川から目を閉じていて、鉄橋を渡る音で外を眺めると利根川だった。
ここでも旅情を感じた過去があった。
しばらく赤城山が見えていた車窓地点に目を戻すと、もうその姿はなかった。
利根商高の元気な運動少年たちが駅に着くたびに乗り込んでくる。
彼らは後閑駅で降りた。
水上に吹く風は冷たい。
3週前の強風を思い出す。
このあたりじゃ雪はまだ深く、山岳部隊の大半はそのまま長岡行に移動している。
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