*

「鉄旅日記」2018年弥生 初日(東京-会津若松)その1-保谷、池袋、赤羽、高崎、井野、水上(西武池袋線/埼京線/高崎線/上越線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/13 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年3月3日・・・保谷駅、池袋駅、赤羽駅、高崎駅、井野駅、水上駅(西武池袋線/埼京線/高崎線/上越線)

2018・3・3 4:28 保谷(ほうや)駅(西武池袋線 東京都)
8年間いた町だ。
愛着はあるよ。

越してきた当初、南口ロータリーはまだ狭く、古い果物屋が意固地に居座っていた。
言ってみれば昔の駅前風景だった。

北口にははなから何もなく、一度は飲みにいった店も今じゃ撤退して、空きスペースはまだ埋まっていない。

3週間後に練馬を離れる。
そこまでの縁しか持てなかったが、物価が安くて静かで住みやすい町だった。

電車を眺めた高架に上がったら、よかった頃が迫ってきた。
町はオレを責めちゃいなかったよ。

ただ、「残念だったよな」と、オレの肩に手を置いてさ。
「あぁそうだな」と応えて、そこで立ち止まることもなく、こうして旅に出ている。

どんなことにもいずれ最後の時がくる。

急に春めいた早朝の町で、BARには二人の女性客の姿があり、始発列車は冬の装いを捨てきれない姿が大半だが、目の前の若い女性だけが春物コートを羽織っている。
時折鼻をかむ耳障りな音が聞こえる。

4:58 池袋(いけぶくろ)駅(山手線/埼京線/湘南新宿ライン/西武池袋線/東武東上線/東京メトロ丸の内線/東京メトロ有楽町線/東京メトロ副都心線 東京都)
通勤で降りる大きなターミナル駅。
それだけの存在として、今月の終わりにはこの駅を使わなくなる。

出会った頃、食事をするのは池袋だった。
思えば二人にとって一番いい時代だった。

時が経てば。
でもあてにしていた時間は、二人を別々の場所に連れていってしまった。

この時間帯の池袋をオレはよく知らない。
そしてオレが知っている池袋は8年前のもの。

東口だけ写していくよ。

旅の途中に降りることも、もうないだろう。

5:23 赤羽(あかばね)駅(東北本線/高崎線/京浜東北線/埼京線 東京都)
千鳥足の男女が歩く街。

朝まで飲んでいた連中にとって、店を出た後にまといつかれる寒気は厳しい。
すれ違った女性は歯を鳴らしていた。

一番街、シルキーロード、OK横丁。
たいていの灯は落ちて、ついさっきまでそこにいた人々も家路をたどる。

これから日が昇るまでのわずかな時間に、ようやく飲み屋街は横になれる。
タフな一角だ。

ひとりになったオレがそんな横丁をぶらつく様を想像したけど、あまり魅力的な行為としては映らなかった。

高崎までしばらく眠る。

7:01 高崎(たかさき)駅(上越新幹線/北陸新幹線/信越本線/高崎線/上越線/両毛線/吾妻線/上信電鉄 群馬県)
埼玉県が大きく感じる区間を眠り通す。
新町を過ぎるまで何も覚えていない。

いつの間にか明るくなっている景色に、予報通りの晴天を喜ぶ。

旅情をかき立てる川を2つ渡り、北藤岡駅近辺で八高線と合流する大好きな鉄道風景。

目の前では小学校低学年くらいの男の子が父親に甘えている。
オレには苦いが、素晴らしい光景だ。

高崎に着くといつも繁華街はどこにあるのかと思う。

東口に初めて出て、駅を写す。

7:13 井野(いの)駅(上越線/両毛線/吾妻線 群馬県)
日本家屋風の渋味のある駅舎が、住宅が連なる何もない駅前に溶け込んでいた。
これが高架駅にでもなれば、一帯には人間的な暖かみが薄れる。

否応なくそんな姿にさせられた駅をいくつも見てきた身に、この駅はとても好ましい。
青春18きっぷを使うオレの入退場を、駅長さんは気に止めることはなかった。

次にやってきた水上行に乗り込んでいる。
席は埋まり、一人残らずと言っていいほど山の装いをしている。

ある種の異空間に紛れ込んでいる。

8:22 水上(みなかみ)駅(上越線 群馬県)
赤城山から雪が消えていた。

裾を引いた男の面相を眺めていると、国定忠治を想う。
一時は司法権も及ばないような一種の独立王国を築いた大親分は、やがて刑場で果てる。
その紳士的な最期の様を海音寺潮五郎さんの著書で知った。

渋川から目を閉じていて、鉄橋を渡る音で外を眺めると利根川だった。
ここでも旅情を感じた過去があった。

しばらく赤城山が見えていた車窓地点に目を戻すと、もうその姿はなかった。

利根商高の元気な運動少年たちが駅に着くたびに乗り込んでくる。
彼らは後閑駅で降りた。

水上に吹く風は冷たい。
3週前の強風を思い出す。

このあたりじゃ雪はまだ深く、山岳部隊の大半はそのまま長岡行に移動している。

関連記事

「鉄旅日記」2005年秋 最終日(小諸-東京)その1-小諸、軽井沢、横川(しなの鉄道) 【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。】

鉄旅日記2005年11月7日・・・小諸駅、軽井沢駅、横川駅(しなの鉄道) 2005・11・7 東京

記事を読む

「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】4日目(鹿角花輪-花巻)-鹿角花輪、荒屋新町、盛岡、北上、和賀仙人、横手、大曲、角館、田沢湖、雫石、小岩井、花巻空港、新花巻、花巻(花輪線/東北本線/北上線/田沢湖線/釜石線)

鉄旅日記2011年8月16日・・・鹿角花輪駅、荒屋新町駅、盛岡駅、北上駅、和賀仙人駅、横手駅、大曲駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その6‐上川口、養父、豊岡、香住(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月23日・・・上川口駅、養父駅、豊岡駅、香住駅(山陰本線) 18:35&

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その1‐肥前鹿島、肥前大浦、長里、湯江(長崎本線)/鹿島城跡 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前鹿島駅、肥前大浦駅、長里駅、湯江駅(長崎本線)/鹿島城跡

記事を読む

「鉄旅日記」2003年冬 最終日(博多-宇部)その1-博多そして小倉 【ご縁と別れがあり、34歳の誕生日を北九州で迎えた日の記憶でございます。】

鉄旅日記2003年2月16日 2003・2・16日の記憶 日曜日の朝だった。 34歳の誕生日に目覚

記事を読む

「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】初日(東京-秋田)-保谷、高崎、長岡、新津、新発田、村上、鼠ヶ関、酒田、上浜、秋田(西武池袋線/高崎線/上越線/信越本線/羽越本線)

鉄旅日記2011年8月13日・・・保谷駅、高崎駅、長岡駅、新津駅、新発田駅、村上駅、鼠ヶ関駅、酒田駅

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 3日目(小樽-富良野)その2-深川、増毛、留萌、北一已、深川、旭川、美瑛、千代ヶ丘、富良野(留萌本線/函館本線/富良野線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月12日・・・深川駅、増毛駅、留萌駅、北一已駅、深川駅、旭川駅、美瑛駅、千代ヶ丘

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月14日その1・・・指宿駅、枕崎駅、入野駅、開聞駅、山川駅、喜入駅、瀬々串駅、慈

記事を読む

2018年初秋 初日(東京-桑名)その3-駅前、赤岩口、井原、運動公園前、駅前大通、豊橋、岡崎、三河豊田、尾張瀬戸(豊橋鉄道市内線/東海道本線/愛知環状鉄道/名鉄瀬戸線)【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】

鉄旅日記2018年9月15日・・・駅前停留所、赤岩口停留所、井原停留所、運動公園前停留所、駅前大通停

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その4‐置賜、高畠、米沢(奥羽本線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月4日・・・置賜駅、高畠駅、米沢駅(奥羽本線) 15:32 置賜(

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その1 ‐松戸、神立、友部、水戸、いわき(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・松戸駅、神立駅、友部駅、水戸駅、いわ

→もっと見る

    PAGE TOP ↑