*

「鉄旅日記」2018年弥生 初日(東京-会津若松)その2-土合、越後湯沢、大沢、上越国際スキー場前、越後堀之内、小出(上越線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/13 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年3月3日・・・土合駅、越後湯沢駅、大沢駅、上越国際スキー場前駅、越後堀之内駅、小出駅(上越線)

9:09 土合(どあい)駅(上越線 群馬県)
「日本一のモグラ駅」。

この駅の構造は想像を絶した。
構内の面積では、あらゆる都市駅を凌駕するかもしれない。

462段の階段を2段ずつ上がりながら、ちょろいと思っていたら中腹で腰が重くなり、息は上がり、6分後にくる上り列車でひとつ手前の湯檜曽駅に戻る目論見を放棄した。

階段は左右に広く、脇を滝のように水が流れる。
自然現象だろうが、まるでオブジェだ。

黙々と上がっていく人の群れに、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の話を思い出していた。
想像性が豊かになる空間だった。

青年となった子と父親が旅姿で並んで座っている。
よく似た面立ちをしている。

未来を想う。
離れていても、誇りある父親でいる。

旅館がある。
谷川岳ドライブインがある。
幅広の「ひもかわうどん」と「わさびチーズ」を土産に買う。

有名な秘境駅だが、一生に一度は訪れたい駅の1位らしい。

来てみるといいさ。
きっと期待を裏切らない。

日差しの下の土合駅はとてもあたたかい。

上りホームは地上にある。
そこは一面まっしろ。

国道脇を流れる小川を写した。
そこに下り地下ホームから駅舎へと渡る通路が架かる。

山岳部隊は三々五々に散り、この待合室にはオレともう一人の鉄道オタクのみとなった。
オレのように酒でも飲んでりゃ旅はもっと楽しくなるぜ。
そう言いたいが、発するオーラが会話を拒否している。

いいさ。
オレも進んで話がしたいわけじゃない。

これからあの蜘蛛の糸を下りていく。
その行為がワクワクさせる。
異空間にいるのは、実は楽しいことなのかもしれない。


10:28 越後湯沢(えちごゆざわ)駅(上越新幹線/上越線 新潟県)
上越国際スキー場へと誘うアナウンスが響く構内。

改札を抜けるとそこはまるで市場で、おびただしい人の流れができている。
まさしく有数のリゾート地だ。

長岡に向かう車内もにわかに人で埋まり、映像でしか再現できることのない、人であふれていたかつての鉄道風景を見る思いだ。

このあたりの雪の量は3週間前と変わらない。
ただ今日はとてもあたたかい。

10:45 大沢(おおさわ)駅(上越線 新潟県)
満員列車から開放され冷気にあたる。


吐く息はさすがに白い。
でも日差しに満ちた魚沼一帯はとてもあたたかく、足取りも軽い。

商店などのない生活の道を線路を見失わないように歩いていく。
10分も歩けばスキー場が見えてきた。

かつて雪山のてっぺんから眺めていた景色は麓から眺めても素晴らしい。
思い出すことはこれからの人生でもそうはないだろうが、このあたりでもずいぶんと生を謳歌してきた。
こんな形でひとり訪ねるのがおかしくもある。

でも望んでいた素晴らしい一日だ。

11:21 上越国際スキー場前(じょうえつこくさいすきーじょうまえ)駅(上越線 新潟県)
スキー場に流れているのはビートルズ・メドレー。
平昌のフィギュアでもこれをバックに舞っていたスケーターがいたっけ。

悪くないが、オレはストーンズが聴きたいよ。
心から。
そういう気分だし、彼等の楽曲はオレの中でそういう存在だ。

様々なスキー場に下りたが、ここには縁を持たなかった。
麓のリフト乗場が見える位置に駅のホームがある。

ベンチはなく、30分前から買い置きの酒を立ち飲みしている。
とてもあたたかい。

音楽がカントリー・ロードに変わっている。
ジョン・デンバーに思い入れはないが、結構じんとくる。

いろいろあったな。
これからもあるだろう。

それでいいさ。
それが人生ってもんだ。

悲しい事態から多少なりともオレを救ったのは、誰に教わったわけでもないそんな人生観だった。

12:11 越後堀之内(えちごほりのうち)駅(上越線 新潟県)
魚沼の町に列車が着く。

目覚めたら小出を過ぎていた。
いつしかスキー客の姿は消えて、車内は地元色が豊かになっている。

連れだった小学生の少女たちのきゃっきゃとした声が、幸せの場所を教えてくれるようで、時に切ない。

降りた駅に駅長さんの姿はあったけど、なぜか改札口に一瞥もくれず直立不動の姿を往来に晒していた。

12:53 小出(こいで)駅(上越線/只見線 新潟県)
あれから20分も歩けば魚沼のターミナル駅に着く。

道中特に目を引くものはなく、雪景色の中を黙々と歩く。

長渕剛さんの「夢破れて」、ストーンズの悲しい曲、ブルース・スプリングスティーンのロマンティックな曲。

カップ酒2本分の酔いに任せて、そんな楽曲を口ずさみながら白い山々を目指して歩いた。

小出駅前はこじんまりとしていた。
かつての記憶とは違った。

おそらく記憶の方に誤りがあるだろう。
旅館とビジネスホテル、日本酒を扱う店が2軒。

只見線のホームは改札口からは見えず、雪の壁のムコウにあった。

ここではビールが飲めると思っていたけど叶わず、3本目のワンカップ。

日差しとはこんなにもあたたかいのか。

関連記事

「鉄旅日記」2014年春 2日目(西舞鶴-魚津)その1-西舞鶴、東舞鶴、若狭高浜、小浜、上中、十村、木ノ本、余呉、高月、永原、敦賀(舞鶴線/小浜線/北陸本線/湖西線) 【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】

鉄旅日記2014年3月22日その1・・・西舞鶴駅、東舞鶴駅、若狭高浜駅、小浜駅、上中駅、十村駅、木ノ

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 3日目(高松)その2 ‐金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、八十場駅、白峰宮、天皇寺、磯禅師墓 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

車旅日記2020年9月21日・・・金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、八十場駅、白峰宮、天皇寺、磯禅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 初日(東京-大船渡)その1‐金町、北千住、上野、宇都宮、黒磯(常磐線/東北本線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月22日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、宇都宮駅、黒磯駅(常磐線/東北本線)

記事を読む

2020年如月【水上温泉につかりにいったある週末の記憶をSNSへの投稿より振り返ります。】-土合、水上、後閑、沼田(上越線)

鉄旅日記2020年2月8日~9日・・・土合駅、水上駅、後閑駅、沼田駅(上越線) 水上に投宿する前に

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 初日(東京-大船渡)その2‐新白河、郡山、福島、仙台(東北本線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月22日・・・新白河駅、郡山駅、福島駅、仙台駅(東北本線) 8:20 新白河(

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その1 ‐焼津、金谷、千頭、井川(東海道本線/大井川鐡道本線/大井川鐡道井川線)/焼津温泉やいづマリンパレス 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月20日・・・焼津駅、金谷駅、千頭駅、井川駅(東海道本線/大井川鐡道本線/大井

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春 最終日(水沢-東京)その2-気仙沼、一ノ関、小牛田、大河原、福島、安積永盛、久喜(大船渡線、東北本線) 【東日本大震災被災地へ】

鉄旅日記2016年3月6日その2・・・気仙沼駅、一ノ関駅、小牛田駅、大河原駅、福島駅、安積永盛駅、久

記事を読む

「鉄旅日記」2013年如月【休日おでかけパスで、上総下総途中下車旅&習志野シンフォニックブラス(NSB)演奏会】その1-我孫子、東我孫子、新木、湖北、布佐、小林、木下、安食、下総松崎、成田空港、酒々井、物井、東千葉、本千葉、西千葉、新検見川、幕張、東船橋、津田沼(成田線、総武本線)

鉄旅日記2013年2月17日その1・・・我孫子駅、東我孫子駅、新木駅、湖北駅、布佐駅、小林駅、木下駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 初日(東京-大船渡)その3‐多賀城、高城町、石巻、鹿又(仙石線/石巻線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月22日・・・多賀城駅、高城町駅、石巻駅、鹿又駅(仙石線/石巻線) 12:44

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅、京王八王子駅(身延線/中央本

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

→もっと見る

    PAGE TOP ↑