*

「鉄旅日記」2015年夏 2日目(新南陽-鹿児島中央)その2-直方、新飯塚、彦山、豊前桝田、夜明、御井、川尻、住吉、三角(筑豊本線/後藤寺線/日田彦山線/久大本線/鹿児島本線/三角線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

公開日: : 最終更新日:2025/06/03 旅話, 旅話 2015年

鉄旅日記2015年8月13日その2・・・直方駅、新飯塚駅、彦山駅、豊前桝田駅、夜明駅、御井駅、川尻駅、住吉駅、三角駅(筑豊本線/後藤寺線/日田彦山線/久大本線/鹿児島本線/三角線)

10:25 直方(のおがた)駅(筑豊本線/平成筑豊本線伊田線 福岡県)
この街には明後日戻ってくることになる。
ただ両日とも本来必要な時間はとっていない。

今日は10分のみ。
腹が減っている。
九州駅そば名物「かしわうどん」の美味さはよく知っている。

ゆっくり歩いてみたい街だが、その希望は後年に回され、足はそば屋に向いた。

直方の英雄、元大関魁皇が駅前で巨大な銅像となって、永遠なる地元凱旋を果たしていた。

10:45 新飯塚(しんいいづか)駅(筑豊本線/後藤寺線 福岡県)
この土地から荒くれ男たちが去ってどれくらいの歳月が流れているのか正確には知らない。

こんな曇り空の下じゃ見るものすべてが廃れて見える。
飯塚の繁華街は駅から離れたところにある。
あの街を歩いたのも10年の昔になる。

駅に降りて見渡してみれば高層マンションやビジネスホテルが林立している。
その様は街を思わせるが、商店街が見当たらない。

富士山をふたつくっつけたような山が見える。
あれがかつての炭鉱町の名残りで、僅かに残ったボタ山らしい。

11:48 彦山(ひこさん)駅(日田彦山線 福岡県)
神域英彦山の麓に朱を基調とした神色の駅がある。
駅前には観光駅らしい食堂があるが、今はビール以外は欲しくない。

九州で涼しい夏の日を生きている。
ここから添田に戻るつもりでいたけど、さっき乗ってきた列車がそのまま折り返すとは思っていなかった。
気づくのが遅れて列車は発車してしてしまい、無情の結果にこの先を決めかねている。

後藤寺線には初めて乗った。
飯塚から後藤寺へとひたすら下りていく道中だった。

簡易駅舎ばかりが並ぶ路線で、かつてはターミナル駅だった下鴨生駅には駅舎すらなかった。

12:37 豊前桝田(ぶぜんますだ)駅(日田彦山線 福岡県)
彦山駅で予定が狂い、次の決断までたいして時間は要しなかった。
ぼんやりと次の列車が来るのを待つのなら、ひと駅歩く。
それがオレの旅。

下り坂を利用して鉄道で6分の道程を一目散に歩く。
民家がそのままケーキ屋になった店と名水の水汲み場が目についただけの田舎道だった。

駆け足を交えて37分。
いい加減着いてもいいだろうと思う頃に集落が現れ、盆踊り会場の背後にひっそりとこの駅はあった。

県道に豊前桝田駅へと誘う表示はなく、うっかりすれば見落としてしまう。
白いペンキで達筆に駅名が書かれた木札が、物置のような雨覆いに打ちつけられていた。

13:22 夜明(よあけ)駅(日田彦山線/久大本線 大分県)
その名から鉄道マニアには有名な分岐駅にやってきた。
山間の川辺を見下ろす位置にある。

乗換時間として用意されていたのは4分。
そこにいたという記憶だけを残して久大本線完乗に向けて久留米行に乗り換える。

かつて車寅次郎がこの駅にいた姿を覚えている。
彼はここから同じ稼業の友を見舞いに秋月へと向かい、恋に落ちる。

筑後川との出会いは橋の上で、一番後ろの車両で過ぎ行く景色を眺めているオレには、その姿を見ることはできなかった。

13:59 御井(みい)駅(久大本線 福岡県)
外輪山に囲まれた筑後平野がやけに美しく見えた。
駅舎のない駅で4分の行き違い停車。

ここはすでに久留米圏内で、この1両編成の列車はじきに人で溢れそうだが、1本の線路はここまで蛇行を繰り返しながら草深い地域を走ってきた。

6世紀にこの地で大和朝廷軍と磐井反乱軍との大会戦が行れ、大将軍磐井は斬られたというが、一説には逃れて行方をくらましたという。

磐井の乱は九州を戦場にしたことからローカルな印象を受けたものだが、磐井とは朝鮮半島や中国大陸とも手を結べるほどの巨大勢力であったことを黒岩重吾さんの小説で後に知った。

筑後川を挟んでの攻防だったのだろうか。
古代史にはロマンがある。

16:04 川尻(かわしり)駅(鹿児島本線 熊本県)
日差しが戻るとにわかに気温が上昇し、ここでビールにありつく。
3号国道まで歩けば売っていた。

緑美しい熊本平野。
とても豊かな景色だ。

緑川の川辺は西南戦争当時に薩軍の本営が置かれ、その旧跡が残る町。
南九州ではあの戦争は今も身近な存在であることはかつての旅で知っている。

新幹線開通により沿線風景が変わった川尻には古い駅舎が残っている。

久留米で荒尾行に乗り継ぎ、列車の若干の遅れから荒尾駅で降りることができず、またタオルを失くしてしまったことで少ししょげていたけど、日差しとともに気分は上向いた。
東京に帰ったら少しは忙しくなりそうな電話が得意先からいくつか入っている。

この駅で熊本始発の三角線の到着を待っている。

16:25 住吉(すみよし)駅(三角線 熊本県)
三角線に入ると島原雲仙の峰が見え隠れする。
絶景ポイントは訪れる。
きっと訪れる。
そう思いケータイを構えていたら、やってきた。
これも目的のひとつだった。

駅舎のない駅に停車を続けていく三角線。
ここで数分の停車。

この景色を前にして寝てしまうのは惜しい。
もっとも混んでいてずっと立っている。

天草観光の客はそれなりに多いようだ。

車窓からの風景


16:58 三角(みすみ)駅(三角線 熊本県)
天草観光に繰り出す人々の多さに驚嘆している。
一緒に乗り合わせたあの女性たちはどこへ向かうのか。

先だって決まった世界遺産登録の対象には三角西港も含まれている。

港にある渦巻きのようなオブジェは健在だった。
とても印象的な構造物で、かつて訪れた際の記憶として最も残っていたものだった。

駅前では天草四郎を模したゆるキャラが本渡への上陸を勧めている。
彼は歴史的にはどういう位置づけでいるのだろう。
反逆人か殉教者か、はたまた悲劇的生涯を送った美少年か。

三角駅を訪れたのが何年前のことなのか思い出そうとすることを脳が拒否している。
若干の疲労を伴う作業であることは確かだ。

駅はあの当時から新しくなっているような気がするが、この判断が正確かどうか自信はない。
待合室は気品に満ちている。


関連記事

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その5‐肥前山口、久保田、西唐津、博多、門司港(佐世保線/唐津線/筑肥線/福岡市地下鉄空港線/鹿児島本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前山口駅、久保田駅、西唐津駅、博多駅、門司港駅(佐世保線/唐津

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 2日目(大船渡-釜石)その1‐大船渡、盛、綾里、唐丹(大船渡線/三陸鉄道リアス線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月23日・・・大船渡駅、盛駅、綾里駅、唐丹駅(大船渡線/三陸鉄道リアス線) 2

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋-越生、坂戸、小川町、寄居、羽生、久喜、新越谷、南越谷(東武越生線/東武東上線/秩父鉄道/東武伊勢崎線/武蔵野線)【関東ぶらぶら旅その3-武蔵国で遊ぶ日。7つの交差点へ。】

鉄旅日記2009年11月3日・・・越生駅、坂戸駅、小川町駅、寄居駅、羽生駅、久喜駅、新越谷駅、南越谷

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 初日(東京-五所川原)その1‐金町、北千住、上野、宇都宮、黒磯、新白河(常磐線/東北本線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月2日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、宇都宮駅、黒磯駅、新白河駅(常磐線/東北

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、みちのくひとり旅】最終日(羽後本荘-東京)-羽後本荘、古口、袖崎、天童、漆山、かみのやま温泉、山形、左沢、寒河江、長町、太子堂、南仙台、名取、館腰、船岡(羽越本線、陸羽西線、奥羽本線、左沢線、東北本線)

鉄旅日記2012年8月15日・・・羽後本荘駅、古口駅、袖崎駅、天童駅、漆山駅、かみのやま温泉駅、山形

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その3(R20)諏訪湖、韮崎、道の駅甲斐大和

車旅日記1996年5月6日 16:28 諏訪湖 松本市内を通過して塩尻峠を下りていく。 塩尻峠は

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、甲斐駿河途中下車旅】その1-新宿、初狩、笹子、酒折、善光寺、甲斐岩間、波高島、内船、芝川、西富士宮(中央本線、身延線)

鉄旅日記2013年3月3日その1・・・新宿駅、初狩駅、笹子駅、酒折駅、善光寺駅、甲斐岩間駅、波高島駅

記事を読む

「鉄旅日記」2021年皐月 初日-浜金谷駅、金谷港、勝浦駅(内房線/外房線)/遠見岬神社/旅館松の家 【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】

鉄旅日記2021年5月22日・・・浜金谷駅、金谷港、勝浦駅(内房線/外房線)/遠見岬神社/旅館松の

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】3日目 いよいよ金沢へ‐その2(R8→北陸道)敦賀、尼御前SA、金沢駅

車旅日記1996年5月5日 18:11 8号国道‐敦賀 琵琶湖ともお別れ。 8号国道を飛ばした。

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 初日その1(東京-宇治)-東福寺、祇園四条、伏見稲荷、稲荷、男山山上、八幡市、枚方市、私市、河内森、河内磐船、交野市(京阪本線/男山ケーブル/京阪交野線) 【ひらパーGo!Go!チケットで行く、京阪旅】

鉄旅日記2015年3月21日その1・・・東福寺駅、祇園四条駅、伏見稲荷駅、稲荷駅、男山山上駅、八幡市

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その2 ‐十島、鰍沢口、甲斐住吉、国母、常永(身延線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・十島駅、鰍沢口駅、甲斐住吉駅、国母

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その1 ‐新静岡、静岡、由比、富士、芝川(東海道本線/身延線)/駿府城址 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・新静岡駅、静岡駅、由比駅、富士駅、

→もっと見る

    PAGE TOP ↑