「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】2日目(新南陽-鹿児島中央)その3-宇土、松橋、八代、出水、牛ノ浜、草道、鹿児島中央(鹿児島本線/肥薩おれんじ鉄道)
鉄旅日記2015年8月13日その3
17:40 宇土(うと)駅(鹿児島本線/三角線 熊本県)
キリシタン大名小西行長縁の城下町にはかつて味のある駅があった。
三角からの帰り道に寄って強い印象を抱いて去ったかつて。
やはり新幹線開通によって改装を余儀なくされ現代的な姿へと変貌した姿を、町の人々は歓迎したのだろうか。
町は西日に褪せていた。
18:02 松橋(まつばせ)駅(鹿児島本線 熊本県)
駅舎は改装中。
町角の店舗は空き家だった。
得意先から電話があり、通話しながら辿った駅前通り。
「一力」という旅館の住居部分からは、おそらく娘さんであろう人のピアノ演奏による「時の流れに身をまかせ」の調べが聞こえてくる。
西日に褪せた町にやけに調和していた。
18時の鐘を聞く頃に八代行がやってきた。
座席は塞がっていた。
18:30 八代(やつしろ)駅(鹿児島本線/肥薩線/肥薩おれんじ鉄道 熊本県)
妙見祭のぼんぼりが下がる駅頭。
背後には製紙会社の煙突が聳えていて、本日ももくもくと営業中。
かつて見たまんまの古い駅舎に安心する。
九州新幹線は八代の街中を避けてひとつ先の空地に新駅をこさえて、高速運転を繰り返している。
車窓からの風景
20:11 出水(いずみ)駅(九州新幹線/肥薩おれんじ鉄道 鹿児島県)
上田浦までの線区で果たした東シナ海との再会はとても素敵だった。
穏やかに凪ぐ波の果てに天草諸島が見える。
夕日が島々にかかり、沿線ではある家族がこちらに向けて手を振っている。
理由もなく切なくなったり、人生を愛おしく感じたりする情緒が南国には残っている。
うれしかった。
東京にはもはやそんな場所はない。
あそこに行きさえすれば何度でも立ち上がれる。
そんな場所だ。
ここ出水で立ち往生。
どこにも行けない。
ひとつ手前の米ノ津から出水まで。
あるいはここ出水からひとつ先の西出水まで歩くことも考えていたが、ホテルの他には何もなく、闇に閉ざされた駅前風景に接して、もういいと諦めた。
家で揃えてくれたタオルを紛失してしまったことも未だに引っかかっている。
とつてもなく申し訳ない気持ちでいる。
出水には武家屋敷が残っているとある。
鶴の飛来地としての確たる立場も得ている。
それにしても繁華街はどこにある。
こう暗くては探しにいく気にもならない。
鹿児島まではあと2時間の道中。
愚痴が多くなってきた。
少し疲労を感じている。
21:00 牛ノ浜(うしのはま)駅(肥薩おれんじ鉄道 鹿児島県)
国道に面したホームがあるだけの駅で、貨物列車の通過待ちで5分の停車。
飲食物を置くための木製トレイが各座席に設置された豪華列車の乗客は現在3名。
こんな時間に地の果てに向かう人数としては適当なのかもしれない。
水俣と阿久根の街の灯は暗かったが、降りてみたい駅だった。
そんな駅として今後もオレの中で存在し続けていくことだろう。
21:23 草道(くさみち)駅(肥薩おれんじ鉄道 鹿児島県)
数分の停車。
この駅にも駅舎はない。
鹿児島本線から切除された傷跡がおそらくこんな形で残っているのだろう。
何もないし、何も見えない。
肥薩おれんじ鉄道は鹿児島本線中に存在する閑散区間に生じた経営体だが、出水からこの先の川内はより閑散区間だと言える。
八代から川内とは、思えば遠い。
鹿児島中央(かごしまちゅうおう)駅(九州新幹線/鹿児島本線/日豊本線/指宿枕崎線 鹿児島県)にて
23:37 ビジネスホテルアサヒ502号
薩人の嬌声が聞こえる駅前の一郭に宿をとっている。
駅から1分。
まるで独房みたいな部屋だがそれで構わない。
嬌声の主たちが礼儀正しく挨拶を交わして散ると静寂が訪れた。
随分長いことかかって鹿児島中央駅はようやく完成を見たようだ。
初めて駅前を通ってから今回で4度目になる。
鹿児島の繁華街は奥が深い。
誰もが天文館へと繰り出すわけじゃないようだ。
駅前もなかなかの賑わいを誇っている。
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