*

「車旅日記」1996年秋 初日 (東京‐新潟) 橋本、拝島、東松山、籠原駅、高崎、月夜野情報サービスセンター、猿ヶ京湖城閣、越後湯沢駅、堀之内パーキング、道の駅豊栄 【夏をあきらめきれず、秋。再び夏のルートへと向かったのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/13 旅話, 旅話 1996年

車旅日記1996年11月1日

1996・11・1 12:13 東京町田
昨夜の決意は固かったけど、雨が邪魔をした。
それに少しばかり時間が遅すぎた。

夜の爆走を断念して休息にあてた。
そしてずいぶんと眠ってしまった。
夏の出発より、もう遅れをとっている。

これから夏のルートをいく。
いずれにしろ雨の中の出発だ。

若干の気後れが起き抜けの行動をひどく緩慢にしている。
だけど昨夜、「オレは旅に出る」と言った。

寿司屋に集まっていた連中が温かく送り出してくれた。
餞別をくれた人もいる。
送り出してくれた人々の中には彼女の顔もあった。

だから出発だ。
晴れの日も雨の日もある。
天気に気持ちを奪われていては、この先何事も立ちいかなくなる。

だから出発だ。
荷物をまとめよう。

14:08 16号国道‐橋本
東京脱出は今回も難航を極めている。
だけど雨が上がり始めたようだ。

13:00頃から始まった東京脱出。

日は短い。
でもオレにはどうでもいい。
始まりは雨空だったから。

そして最初にこのルートをとったことも別に後悔はしていない。
こんな旅は、何でもありだよ。

それにしても、あっちでもこっちでも土木行政が幅を利かしている。

15:10 16号国道‐拝島
東京脱出。
まだ手間取っている。

さっき雑踏に埋め込まれるように駅があった。
そしてそんな雑踏に紛れ込んでいる。

いつの間にかルートは16号国道を外れている。

昨夜彼女に言ったとおりだ。
明るいうちに東京を抜けようなどと思わない方がいい。

その計画は必ず破綻する。

東京とは、つまりそういう街。

16:38 407号国道‐東松山
ペース配分がつかめない。

あれは夏の日だった。
群馬のどこらあたりかは忘れたが、美味いつけ麺を食わせてくれる店があった。

そこの主人と温かく触れ合った時はまだ微かに明るかった。
でも今はこの時点ですでに暗い。

ここらは人家もまばらで、炭を焼く家が一軒見える。
旅の空の下にある町。

しかし、本当に暗くなった。
同時にこれから長い夜が始まっていく。

17:27 籠原駅
家を出てコンビニで口をきいて以来、人とは無縁でいた。

そして駅の人波に同化した。
みんなそれぞれの目的を持ってここにやってくる。

そこに紛れ込んだオレにも目的はある。
取りあえずは走ることだ。
ルートもつかめている。

あの夏の日からすでに2時間遅れをとっている。
急ぐ必要はないけれど、急ぎたい思いだ。

今は一刻も早く知らない土地へ踏み出したい。

18:38 17号国道‐高崎
洋服の青山。
次にアルペン。
明かりが照らしてくる。

いくぶん雲が切れてきたような気がする。

今ひとつ気乗りしないままここまできたけど、さっき窓を全開にして風を作った時、旅の途中であることを実感した。

20:12 17号国道‐月夜野情報サービスセンター
どの季節であろうが、ここまでくれば完璧な夜だ。
ここで朝を迎えようとする人々もちらほら見える。

オレはここを知っていた。
ここまでのレースだと思って走ってきた。

外に出た。
外気はまだそれほど冷たくない。

背筋を伸ばした。
思ったより疲れていない。

猿ヶ京までは16㎞と出ている。
そこへ行けば風呂がある。

あの夏、そこの女将が優しく接してくれたことを覚えている。
うまくすれば、そこで数時間ぶりに人と口をきくことができる。

20:40 猿ヶ京-湖城閣
風呂の夢は潰え、これから三国越え。
少し悲しい気持ちになった。

あの夏の女将は今夜は姿を見せなった。

21:47 越後湯沢駅
馴染みのスキー場を通り、三国越えを果たし、またここにたどり着いた。
やっぱりここで家族に電話を入れた。

今この町は閑散としている。
夏は避暑地としての役割を果たし、これから迎える冬では本格的なリゾート地としての役割を務める。

町は冬を迎える前の雰囲気に包まれてひっそりとしている。

それでいい。
ありのままの姿に接したかった。

また雨が落ちてきた。
国境を越えると人の気性も気象条件も変わる。
それもありのまま。

これからあの夏の夜を越える。
どこまで行くのかオレにもよく分からない。

ただ今夜の車にはシェラフとビールが積んである。
つまり、いつどこでくたびれ果てても準備は万全ということだ。

23:00 17号国道‐堀之内パーキング
あの夜に追いついたよ。
夏の日はここで終わり、翌日に遭難した。

よく覚えているけれど、決してイヤな記憶じゃないことは確かだ。

今夜はこれより先へ行く。
少し疲れたけど、まだいけるよ。

このルートを走る連中は紳士的なのが多い。
オレの横に大型トラックを止めている男は弁当を食っている。

彼は一体どこからきたのか。
国に残してきた大切な人はいるのだろうか。
彼には好感を持っている。

ところでオレはどうなのだろう。
とにかくこの先気分よくいきたい。

この夜はまだ終わらない。

25:07 7号国道‐豊栄(道の駅)
悪夢の場所を過ぎて、ルートの名はいつの間にか8から7になっている。

ここは素晴らしいエリアだ。
オレのように半端なヤツでも安心していられる場所だ。
つまりここが今夜の寝場所になるわけだ。

そして「月」の伝説は今夜で終わった。

新潟エリアはどこへ行っても雨。
おまけにさらに降りがひどくなってきた。

まあいいさ。
初日の役割としてはこんなところでいい。
距離もかなり稼げた。

明日になればもう少しマトモなことを考えられるようになるだろう。
そんな気がするよ。

今日に関しては心の底から楽しめたという感覚はないけど、今夜のオレにビールを用意していたのは賢明だった。
これでこの夜も締まった。

今夜はシェラフもある。
きっと寒い思いはせずに済むだろう。
さらにこんな状況でも彼女の夢を見ることを可能にしてくれるかもしれない。

この雨は明日には止むのか?
いずれにしろ今夜はこれでおしまい。
食料も尽きた。

関連記事

「鉄旅日記」2018年神無月 最終日(松本-辰野-天竜峡-岡谷-東京)その2-伊那大島、駒ヶ根、伊那北、岡谷、下諏訪、茅野、山梨市(飯田線/中央本線) 【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】

鉄旅日記2018年10月8日・・・伊那大島駅、駒ヶ根駅、伊那北駅、岡谷駅、下諏訪駅、茅野駅、山梨市駅

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月 最終日(直江津-東京)その1-直江津、土底浜、犀潟、虫川大杉、六日町、塩沢(信越本線/北越急行ほくほく線/上越線) 【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】

鉄旅日記2018年2月11日・・・直江津駅、土底浜駅、犀潟駅、虫川大杉駅、六日町駅、塩沢駅(信越本線

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その4-柏原、道明寺、河内長野、古市、畝傍御陵前、田原本、西田原本、新王寺、近鉄王寺(道明寺線/長野線/南大阪線/橿原線/田原本線/生駒線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・柏原駅、道明寺駅、河内長野駅、古市駅、畝傍御陵前駅、田原本駅、西田

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その4 ‐鎌倉、久里浜、京急久里浜、衣笠、東逗子(横須賀線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・鎌倉駅、久里浜駅、京急久里浜駅、衣笠駅、東逗子駅(横須賀線)

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 初日その3(東京-岩倉)-太田川、常滑、中部国際空港、上小田井、西春、岩倉(名鉄常滑線/名鉄空港線/名鉄犬山線) 【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】

鉄旅日記2015年3月7日その3・・・太田川駅、常滑駅、中部国際空港駅、上小田井駅、西春駅、岩倉駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走 初日(東京-酒田)その3‐新潟、村上、羽後本荘(信越本線/白新線/羽越本線) 【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】

鉄旅日記2019年12月7日・・・新潟駅、村上駅、羽後本荘駅(信越本線/白新線/羽越本線) 11:

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春 その2-猿田、旭、八日市場、八街、成東、本納、茂原、千倉、佐貫町、姉ヶ崎、市川(総武本線、東金線、内房線、外房線) 【青春18きっぷで、銚子へ、房総へ。】

鉄旅日記2012年3月12日その2・・・猿田駅、旭駅、八日市場駅、八街駅、成東駅、本納駅、茂原駅、千

記事を読む

「鉄旅日記」2018年春 最終日(飯田-東京)その3-日出塩、贄川、村井、上諏訪、日野春、西国分寺、新松戸(中央本線/武蔵野線) 【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】

鉄旅日記2018年4月8日・・・日出塩駅、贄川駅、村井駅、上諏訪駅、日野春駅、西国分寺駅、新松戸駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 最終日(宮古-東京)その3‐白石、郡山、黒磯、宇都宮(東北本線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月23日・・・白石駅、郡山駅、黒磯駅、宇都宮駅(東北本線) 15:49 白石(

記事を読む

「車旅日記」2004年春 最終日(稚内-旭川空港)走行距離353㎞その2-天塩中川駅、音威子府駅、美深駅、名寄駅、風連駅、和寒駅、比布駅、神居古潭、旭川空港 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】

車旅日記2004年5月5日・・・天塩中川駅、音威子府駅、美深駅、名寄駅、風連駅、和寒駅、比布駅、神居

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年水無月 最終日(中山平温泉-東京)その1 ‐中山平温泉、鳴子温泉(陸羽東線)/旅館三之丞湯【鳴子温泉郷の湯を求めての旅でございます。】

鉄旅日記2022年6月12日・・・中山平温泉駅、鳴子温泉駅(陸羽東線

「鉄旅日記」2022年水無月 初日(東京-中山平温泉)その3 ‐小牛田、古川、上野目、池月、鳴子温泉、中山平温泉(陸羽東線)【鳴子温泉郷の湯を求めての旅でございます。】

2022年6月11日・・・小牛田駅、古川駅、上野目駅、池月駅、鳴子温

「鉄旅日記」2022年水無月 初日(東京-中山平温泉)その2 ‐いわき、竜田、原ノ町、鹿島、新地、仙台(常磐線)【鳴子温泉郷の湯を求めての旅でございます。】

鉄旅日記2022年6月11日・・・いわき駅、竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅

「鉄旅日記」2022年水無月 初日(東京-中山平温泉)その1 ‐金町、石岡、友部、水戸(常磐線)【鳴子温泉郷の湯を求めての旅でございます。】

鉄旅日記2022年6月11日・・・金町駅、石岡駅、友部駅、水戸駅(常

「鉄旅日記」2022年皐月 ツレと訪ねた下部温泉~富士宮~田子の浦旅でございます。最終日(下部温泉-東京) ‐下部温泉、波高島、身延、甲斐大島、内船、西富士宮、富士宮、東田子の浦(身延線/東海道本線)/富士浅間神社【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年5月29日・・・下部温泉駅、波高島駅、身延駅、甲斐

→もっと見る

    PAGE TOP ↑