*

「車旅日記」2003年晩秋【紀伊半島に焦がれる日々。南海道を往くのは2度目でございます。】初日(奈良-高野山-南紀白浜)走行距離204㎞ -橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、龍神、南紀白浜

公開日: : 最終更新日:2024/05/16 旅話, 旅話 2003年

車旅日記2003年11月22日・・・橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、龍神、南紀白浜

2003・11・22 14:07 24号国道橿原市かっぱ寿司(JR奈良駅より17㎞)
うすら寒い京都駅。
そして変わってしまった奈良駅。

この身にまとわりついた怠惰な匂いを意識しながら、頼りなげな24号国道を和歌山方面に走っている。
得意先との席とはいえ、昨夜は飲みすぎた。

大和路には東京で見かける店だけが並び、オレの腹を満たしたのも東京でたまに食べる回る寿司だった。

街道からは古来崇められた山が見える。
その風景の中の一部であると感じること以外に、路上に出てからのオレはまだ浮かない気持ちでいる。

15:37 橋本駅(JR奈良駅より53㎞)
JR和歌山線と南海電車が乗り入れる街。

駅前の風景がなんだか懐かしい。
女の子が二人、交番の前にしゃがみこんで本の見せっこをしている。
この上なく平和な風景に気持ちを和ませる。

どこで間違えたのか分からないが、橿原神宮あたりで県道に入り込み、西日の道を南へ向かった。

天誅組蜂起の町、五条。
彼等はまずそこの代官所を襲った。
小さな歴史の町が続き、どこか雅を感じている。

これから高野山へ。
紀ノ川との再会が間近い。

2013年4月7日撮影

16:04 九度山駅(JR奈良駅より63㎞)
紀ノ川を渡り、南海電車の単線のレールが高野山に向かう。

途中にある鄙びた駅にいる。
かつて真田幸村は、信州上田から流されて14年を過ごしたこの村から、最後の戦いへと大阪に向かい、オレは南紀を目指している。

便所を借り、親切な駅長さんに礼を。
彼は電車が来るたびに駅長室を出て踏切に向かう。

通りかかった川辺では3人の少女が遊ぶ姿が見られた。
いい風情だし、ようやく心が整ってきた。

17:04 高野山大伽藍(JR奈良駅より85㎞)
険しい峠道をバスが走る。
スムースな通行を許さない峠道に気力を使い果たしたくない。

山頂には宗教都市。
紅葉にはまだ早いようだ。

気温は低く、全山に鐘の音が響き、じきに日が暮れる。
厳粛な空気が漂い、歴史的建造物を前にしてはしゃぐ者の姿はない。
だんだん何をしにこの旅を思い立ったのかが分かってきた。

南海電車はこの山のどこまで線路を延ばしたのだろう。
山はじきにライトに照らされる。

かつてここは流刑地でもあった。
織田信長に重臣としての地位を剥ぎとられ、この山に追われた佐久間盛信はその後消息を絶った。
その最期の様子は定かじゃないと聞く。

この山に訪れる寒さをオレも想像できる。

17:24 高野山金剛峰寺前駐車場(JR奈良駅より87㎞)
山上の仏教都市の日が暮れた。
人々は静かに厳粛な夜を迎えようとしている。
清涼な空気。
そして素晴らしい夜がやってくる。

素晴らしい夕焼け空だ。

18:36 480号国道‐道の駅龍神(JR奈良駅より137㎞)
冬が訪れている。
今年初めて感じる冬の寒さ。
手はかじかみ、あたりは闇に閉ざされ、近くで人の声が聞こえる。

星がきれいだ。
そして果てしなく静かだ。
自動販売機の音がはっきりと聞こえてくる。

そう、星がきれいなんだ。

川辺までこの険しい道が続く。
遠い町の清潔な寒さの中でオレは生きている。
悪くはない。

22:32 某リゾートクラブ南紀白浜434号室(JR奈良駅より204㎞)
日本有数のリゾート地、南紀白浜。
その全貌は闇に包まれ、今夜のオレに表現できることは何もない。

紀州人は気がいい。
ここの管理人さんもコンビニの店員も、酒屋の美しい女性も。
誰もがこれまでに聞いてきた関西弁とは一味違う言葉を聞かせてくれた。

この町の中心がどこなのか判別がつかない。
闇が訪れると人通りは絶え、遠くに立派なホテルが見える。
憧れのリゾート地にきたけど、やはり今夜は何も言えない。
それにここにひとりで来ることは考えていなかった。

京都の彼女のことを考えている。
明後日会いにいくかどうかを考えている。
東京では計画に入れていたが、今日のオレは怯んでいる。

どんな顔で会いにいくか。
そう思うと、彼女と出会ってから3年の月日を生きたオレが、当時なりたかった男になっていないことに気づかされる。

この歳月は何だったのか。
もう少しマシでいるはずだったが、何も変わっていない。

こんな音もしない広い部屋に案内されると身につまされる。
過去のオレが、次のオレに渡すべきバトンを用意していなかったことを。

もうたくさんだ。
そんなふうに思っている。
この南紀白浜で。

関連記事

「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】最終日(直江津-六日町-大前-東京)その2-八色、浦佐、五日町、水上、後閑、上牧、八木原(上越線)

鉄旅日記2018年2月11日・・・八色駅、浦佐駅、五日町駅、水上駅、後閑駅、上牧駅、八木原駅(上越線

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】初日(東京‐諏訪)葛飾金町、調布駅、高尾駅、桂川ドライブイン、甲府芸術の森公園、道の駅信州蔦木宿、上諏訪

車旅日記2000年7月20日 2000・7・20 8:10 東京葛飾金町 天気は良好。 やけに

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】最終日(水沢-東京)その2-気仙沼、一ノ関、小牛田、大河原、福島、安積永盛、久喜(大船渡線、東北本線)

鉄旅日記2016年3月6日その2・・・気仙沼駅、一ノ関駅、小牛田駅、大河原駅、福島駅、安積永盛駅、久

記事を読む

「鉄旅日記」2005年初冬【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】その2-外川、犬吠、本銚子、観音、仲ノ町、銚子、千葉(銚子電鉄/総武本線)

鉄旅日記2005年12月10日・・・外川駅、犬吠駅、本銚子駅、観音駅、仲ノ町駅、銚子駅、千葉駅(銚子

記事を読む

2018年秋【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】最終日(松戸-五井-大原-安房鴨川-松戸)その3-安房鴨川、江見、君津、千葉、西船橋(内房線/総武本線)

鉄旅日記2018年9月23日・・・安房鴨川駅、江見駅、君津駅、千葉駅、西船橋駅(外房線/内房線/総武

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】3日目 いよいよ金沢へ‐その2(R8→北陸道)敦賀、尼御前SA、金沢駅

車旅日記1996年5月5日 18:11 8号国道‐敦賀 琵琶湖ともお別れ。 8号国道を飛ばした

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】初日(東京-香住)その5‐並河、園部、胡麻、下山、福知山(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月23日・・・並河駅、園部駅、胡麻駅、下山駅、福知山駅(山陰本線) 16

記事を読む

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】3日目(福山-岡山)-福山、三原、呉、広島、三次、備後落合、東城、岡山(山陽本線/呉線/芸備線/伯備線)

鉄旅日記2007年5月5日・・・福山駅、三原駅、呉駅、広島駅、三次駅、備後落合駅、東城駅、岡山駅(山

記事を読む

「車旅日記」1998年春【下北半島を目指した春。男の旅は北を目指すものと思っていた20代後半。高倉健さんの影響でございましょうか。】3日目(津軽SA-十和田湖-酒田駅-鳴子温泉)-津軽SA、温川、十和田湖休屋、長木渓谷、道の駅鷹巣、道の駅琴丘、道の駅西目、象潟駅、酒田駅、道の駅戸沢、鳴子サンハイツ

車旅日記1998年5月3日 1998・5・3 5:45 東北自動車道-津軽SA 1087km 聞

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】最終日(釜石-東京)その1‐釜石、遠野、宮守(釜石線)

鉄旅日記2020年2月24日・・・釜石駅、遠野駅、宮守駅(釜石線) 2020・2・24 5:39

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】最終日(三次-東京)その1‐三次、上下、府中(福塩線)

鉄旅日記2020年7月26日・・・三次駅、上下駅、府中駅(福塩線)

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その5‐備後落合、備後庄原、三次(芸備線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・備後落合駅、備後庄原駅、三次駅(芸

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その4‐宍道、加茂中、出雲横田、出雲坂根(木次線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・宍道駅、加茂中駅、出雲横田駅、出雲

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その3‐黒松、仁万、出雲市、荘原(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・黒松駅、仁万駅、出雲市駅、荘原駅(

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑