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「車旅日記」2003年晩秋 初日(奈良-高野山-南紀白浜)走行距離204㎞ -橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、龍神、南紀白浜 【紀伊半島に焦がれる日々。南海道を往くのは2度目でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/22 旅話, 旅話 2003年

車旅日記2003年11月22日・・・橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、龍神、南紀白浜

2003・11・22 14:07 24号国道橿原市かっぱ寿司(JR奈良駅より17㎞)
うすら寒い京都駅。
そして変わってしまった奈良駅。

この身にまとわりついた怠惰な匂いを意識しながら、頼りなげな24号国道を和歌山方面に走っている。
得意先との席とはいえ、昨夜は飲みすぎた。

大和路には東京で見かける店だけが並び、オレの腹を満たしたのも東京でたまに食べる回る寿司だった。

街道からは古来崇められた山が見える。
その風景の中の一部であると感じること以外に、路上に出てからのオレはまだ浮かない気持ちでいる。

15:37 橋本駅(JR奈良駅より53㎞)
JR和歌山線と南海電車が乗り入れる街。

駅前の風景がなんだか懐かしい。
女の子が二人、交番の前にしゃがみこんで本の見せっこをしている。
この上なく平和な風景に気持ちを和ませる。

どこで間違えたのか分からないが、橿原神宮あたりで県道に入り込み、西日の道を南へ向かった。

天誅組蜂起の町、五条。
彼等はまずそこの代官所を襲った。
小さな歴史の町が続き、どこか雅を感じている。

これから高野山へ。
紀ノ川との再会が間近い。

2013年4月7日撮影

16:04 九度山駅(JR奈良駅より63㎞)
紀ノ川を渡り、南海電車の単線のレールが高野山に向かう。

途中にある鄙びた駅にいる。
かつて真田幸村は、信州上田から流されて14年を過ごしたこの村から、最後の戦いへと大阪に向かい、オレは南紀を目指している。

便所を借り、親切な駅長さんに礼を。
彼は電車が来るたびに駅長室を出て踏切に向かう。

通りかかった川辺では3人の少女が遊ぶ姿が見られた。
いい風情だし、ようやく心が整ってきた。

17:04 高野山大伽藍(JR奈良駅より85㎞)
険しい峠道をバスが走る。
スムースな通行を許さない峠道に気力を使い果たしたくない。

山頂には宗教都市。
紅葉にはまだ早いようだ。

気温は低く、全山に鐘の音が響き、じきに日が暮れる。
厳粛な空気が漂い、歴史的建造物を前にしてはしゃぐ者の姿はない。
だんだん何をしにこの旅を思い立ったのかが分かってきた。

南海電車はこの山のどこまで線路を延ばしたのだろう。
山はじきにライトに照らされる。

かつてここは流刑地でもあった。
織田信長に重臣としての地位を剥ぎとられ、この山に追われた佐久間盛信はその後消息を絶った。
その最期の様子は定かじゃないと聞く。

この山に訪れる寒さをオレも想像できる。

17:24 高野山金剛峰寺前駐車場(JR奈良駅より87㎞)
山上の仏教都市の日が暮れた。
人々は静かに厳粛な夜を迎えようとしている。
清涼な空気。
そして素晴らしい夜がやってくる。

素晴らしい夕焼け空だ。

18:36 480号国道‐道の駅龍神(JR奈良駅より137㎞)
冬が訪れている。
今年初めて感じる冬の寒さ。
手はかじかみ、あたりは闇に閉ざされ、近くで人の声が聞こえる。

星がきれいだ。
そして果てしなく静かだ。
自動販売機の音がはっきりと聞こえてくる。

そう、星がきれいなんだ。

川辺までこの険しい道が続く。
遠い町の清潔な寒さの中でオレは生きている。
悪くはない。

22:32 某リゾートクラブ南紀白浜434号室(JR奈良駅より204㎞)
日本有数のリゾート地、南紀白浜。
その全貌は闇に包まれ、今夜のオレに表現できることは何もない。

紀州人は気がいい。
ここの管理人さんもコンビニの店員も、酒屋の美しい女性も。
誰もがこれまでに聞いてきた関西弁とは一味違う言葉を聞かせてくれた。

この町の中心がどこなのか判別がつかない。
闇が訪れると人通りは絶え、遠くに立派なホテルが見える。
憧れのリゾート地にきたけど、やはり今夜は何も言えない。
それにここにひとりで来ることは考えていなかった。

京都の彼女のことを考えている。
明後日会いにいくかどうかを考えている。
東京では計画に入れていたが、今日のオレは怯んでいる。

どんな顔で会いにいくか。
そう思うと、彼女と出会ってから3年の月日を生きたオレが、当時なりたかった男になっていないことに気づかされる。

この歳月は何だったのか。
もう少しマシでいるはずだったが、何も変わっていない。

こんな音もしない広い部屋に案内されると身につまされる。
過去のオレが、次のオレに渡すべきバトンを用意していなかったことを。

もうたくさんだ。
そんなふうに思っている。
この南紀白浜で。

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