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「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/05 旅話, 旅話 2020年

鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅(山陰本線)

10:03  益田(ますだ)駅(山陰本線/山口線 島根県)
日本海に沿って列車は進んでいる。

昨夜は真っ暗だったし、どこを走っているのかも分からない。ただ単に目的地に到達することだけを山陰本線には求めていた。

あれは旅じゃない。さらなる修行が必要だ。

山陰本線に限らず、この国では多くの列車が草萌える狭隘な地に敷かれた鉄路を往く。自然災害があれば、何が起きてもおかしくない道を往く。

今、益田に向かう山陰本線は、そんな道を往っている。荒天の予報もある今日に、東萩を出た時点では異変はないという。

益田に着くまで、車窓から日本海が望める素敵な区間だった。かえすがえすも昨夜が忌まわしい。

9:54益田着。
駅前風景は見覚えのあるものだったが、12年前の昼に寄った回転寿司屋は別の店に変わっていた。

車寅次郎を気取って大きなアタッシュケースを提げて益田を歩いた在りし日。オレの他に客はなく、コンベア機を回さないことを詫びた善人のご主人を思い出す。

10:31  三保三隅(みほみすみ)駅(山陰本線 島根県)
益田発は10:03。

なぜだか柳ジョージの切ないバラード「コイン ランドリィ ブルース」が頭を離れない。そしてムッシュかまやつの「どうにかなるさ」。曇天の下に置かれた日本海の町並にそぐわしい。

益田を過ぎても車窓には日本海があり、石州瓦の家並が続いている。

下り特急通過待ち3分の停車。

列車は海辺から離れ、駅員のいる駅でしばし動きを休めた。

11:15  浜田(はまだ)駅(山陰本線 島根県)

三保三隅を出ると、すぐに日本海に寄る。

折居海岸には駅があり、街道には場末のドライブインが散見される。

オレもたいした暮らしはしていないが、日本海の町並にかぶせる哀愁は、おそらく道理に合うのだろう。

萩には憧れを持った。暮らしてみたいとも思ったよ。

10:54浜田着。

港、島に渡る巨大大橋、整った町並。かつて寄った城跡はトンネルの上にあったのだろう。

石見人は我慢強いとの司馬遼太郎の言が刻まれた石碑が立つ浜田城址。第二次長州征伐の際に浜田藩兵によって火がかけられた。

石州の英雄をすぐに思いつけないが、兵団は強かったに違いない。

三保三隅から浜田にかけて防衛線を敷いて長州軍を待ち構えた幕末の浜田藩兵。友軍として福山藩兵。そして幕府軍目付。

後に武士の鑑と称賛された浜田藩士の岸静江国治は扇原関門にひとり立ちはだかり、撃たれる。長州人もその勇敢さを称えたと伝わる。

そんな風土の中を往く。

11:31  波子(はし)駅(山陰本線 島根県)
この列車に乗った若い娘たちはどこへ行くのか。かつて山口宇部で知り合った女性がTDLのコアなファンだったことを思い出す。

気づけばもう昼前。そして気づけばもう帰り道をたどっている。

恋人と過ごす楽園もまた束の間で、時間になれば無常を感じながら二人は駅への道を往く。

行き違い3分の停車。高台から岸辺に打ち寄せる波を見る。

5年前にも降りた駅。あれからいろいろあって、目指す地域も偏りはしたが、5年もあればオレは戻ってくる。

それが実証された。

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