「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その1‐萩、玉江、東萩(山陰本線)/萩散策 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月25日・・・萩駅、玉江駅、東萩駅(山陰本線)/萩散策
2020・7・25 7:04 萩(はぎ)駅(山陰本線 山口県)
夜半に道を濡らした雨は今朝も風に乗ってやってきた。この雨雲の動きは気になるが、遥かなる萩で気にすべきことではない。
かつて恋した女性に連れられて訪ねた駅から今日を始める。
参勤交代路として拓かれた萩~防府市三田尻を結ぶ萩往還の大木戸近くに駅はある。

治安維持のため、日没と共に城下への出入りを差し止める番所が置かれた大木戸には金谷天満宮があり、古から庇護を受けてきたという。




昨夜遅くに萩に着いて暗い中を歩いてきて、町のどこにいるのかよくはつかめていなかったけど、オレは萩のど真ん中で眠ったのだろう。
明倫館を横目にアーケード街を抜けて、萩焼きの看板が目につく雅な萩往還を歩き、やがて橋本川を渡る。






朝の祈りはそこで行われた。濁流の中をつがいの鴨が浮かび、白鷺が飛び立った。
格調高い駅舎が保たれている萩駅。あの時のあの女性の口からも長州人の誇りが伝わった。



そうだった。友に導かれて、かつてオレはわざわざ山口まで恋をしにいったんだ。
あの女性も結婚したと、確か聞いた。
そいつはよかった。そう答えたはずだ。

萩を出る列車がやってくる方を眺めていた。
7:17 玉江(たまえ)駅(山陰本線 山口県)にて


8:29 東萩(ひがしはぎ)駅(山陰本線 山口県)
玉江駅が萩の入口かと思いきや、町外れのいくぶん寂しい一帯に立地していた。
細かい雨が斜めに体を打つ。
萩城址は町のシンボル。すぐに見えたよ。そして虹を見た。

やはりオレの人生は報われる。疑っていたわけじゃないが、虹は確信を与えてくれる。



常盤橋を渡る。
戦国の頃の長州兵団に際立つ強さは感じられないが、幕末維新ではその遺伝子が群がり出た。
そんなことを思うでもなく雅な川を渡る。
橋本川は萩の外堀だったのだろう。川の内側に町は収まっている。




川ムコウには峰が連なる。山陰本線は橋本川に沿うように町の外側を走る。
菊ヶ浜で日本海を愛でる。



浜に連なるように旅館が並んでいる。きっとあの内のどこかに修学旅行で泊まったのだろう。
その夜にNWA世界王者リック・フレアー×AWA世界王者リック・マーテルの世界統一戦をテレビで見たことだけを覚えている。35年前のことだ。
恋人に萩城址を背景にした自撮り写真を送る。彼女とはその35年前を共有できる。


もっとも男女別学で、男子は長崎~天草~阿蘇~萩~津和野とたどったのに対して、女子は津和野から逆のコースをいったため、男女が同じ場所で交わることはなかった。
歴史好きなオレからすれば、長州の象徴でもある萩という土地柄を意識しそうなものだが、そんなものが浮かび上がることはなく、萩という美しい町をただただ愛でながら東萩までの約1時間の道を歩いた。


会津もそうだが、武士の時代が終わるまで、本物の武士がいた町には品がある。
萩橋を渡ってしまえば、もうあの美しい町には戻れない。


トンボが群れ飛び、蝉の声に優しく包まれた雅な町にはもう戻れないのだと、とてつもなく大きな未練を捨てる。
やがて昨夜降りた東萩駅に到着。城下町に似つかわしい立派な駅舎に見惚れる。


萩橋で未練は捨てている。さっさと改札を済ませてビールを開けた。
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