*

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その1‐葛飾金町、幸手駅、古河駅、渡良瀬遊水地北エントランス、藤岡駅、佐野厄除け大師、足利駅

公開日: : 最終更新日:2023/04/29 旅話, 旅話 2000年

車旅日記2000年5月3日
2000・5・2 東京葛飾金町 前夜祭
旅に出る前夜。
これほどの胸の高鳴りを覚えたことはかつてない。

さっきまで持っていく音楽を選んでいた。
最初に選んだものから7、8枚が候補から外れ、その中からまた選んで今かけている。

荷物は少ない方がいい。
そう言うヤツがオレの中にいた。
仮に不測の事態が起こったとしたら、集めてきた宝物を失くすことに恐れおののいたヤツさ。

旅に不安は付きもの。
だけどその魅力は測り知れない。
路上に出ることをずっと待ち望んでいたよ。

今回の旅に連れていく意中の女性はいない。
いつもいないけど、心の中にはいたんだ。

それが今回はいない。

漠然と考えていることがある。
その中のどれが一番の議題に上がるのかに興味がある。

果てしない孤独の中で、オレは一体誰に拠り所を求めるのか。
それとも果てしない自由を感じて、ずっと晴れやかでいることになるのか。

どっちでもいい。
と言うより何でもいいんだ。

早く路上に戻りたい。
路上では自信がなくちゃやっていけない。
あの感覚を取り戻したい。

今日の仕事ぶりには満足できないが、結果に対してはOKという断を下した。

旅から戻ったら最低限こうなっていなければならないという目標がある。
それは自信さえ戻れば勝手についてくるものだと思っている。
懸念は不要。

見ていてほしい。
レベルを上げて、オレはここに戻ってくる。

2000・5・3 8:00 東京葛飾金町
イヤなニュースを目にはしたが、その後米国メジャーリーグ・ベースボールの夢に酔った。

目覚めた時は、窓から差し込んでくる光に狂喜した。

昨夜も記したが、不安はある。
雨の心配なんかしていないけど、いつものことでもある。

前回は2年前の夏。
それからずっと東京にいたんだ。

そしてその間にひとりで暮らし始め、今回はひとりの暮らしから旅立つ初めてのケースになる。

でもいつもと変わらない。
ここ以外の場所にいたい。

今日はどこまで行けるだろう。
どういうルートになるのか。

さあ、始まりだ。

10:20 幸手駅 43㎞
未だ東京圏内を走っている。

目の前の線路は浅草から日光へと通じている。
数人の同僚が通勤電車として利用もしている。

それでも東京の匂いはかなり薄れてきた。
やがて一掃されることになるだろう。

気分は何とも言えない。
ここに着くまではレンタカー屋からの事故に関する注意点や、今朝の新聞に載っていた高校生による主婦殺害について考えていた。

悪いニュースに接すると両親のことが心配になる。
そして両親の側にいないことを悔やんだりした。
オレの居ぬ間に、どこかの気ちがいに傷つけられたらと思うと、とてもやりきれない。

危害ということでいえば、オレもこの先どんな悪意を抱いたヤツと遭遇するか知れたものじゃない。
ふと、先日映画館で観た「グリーン・マイル」の主人公の言葉を思い出した。

「もう、たくさんだ」。
「悲しいことを見るのも聞くのも、もうたくさんなんだ」。

そんな心配をするために車を借りて、わざわざこんなところまでやってきたわけじゃないのに。

両親にはどこかで電話を入れてみようと思っている。

空は晴れている。
今日は初夏の陽気。
入道雲も浮かぶ。

旅に幸あれ。

11:32 古河駅 61㎞
この街に着いて日差しが戻り、また不安定な空模様になった。

オレの気分もまた不安定で、心ないタクシー・ドライバーのクラクションに気持ちを尖らせもした。

でも車を降りるとなぜか落ち着いた。
心配なのはロータリーに放置してきた車のことだけだった。

この駅には活気がある。
駅ビルには最新設備が施され、若者も集いやすいとてもきれいな場所だった。
1階の様子は原宿あたりの建物の内装と何ら変わりはない。

タクシーの往来も激しい。
それだけ人を集める街なのだろう。

したがって今オレがこうしているこの場所は、とても落ち着かない。

12:02 9号群馬県道-渡良瀬川遊水地北エントランス 69㎞
ようやく旅心が戻った。

目の前に広がる湿原。
遠くに見える遊水地。

多くの車が競ってここにやってくる。
そしてオレもまた。

見渡した風景はこれまでに見たこともないようなものだった。
鮮やかな緑の湿原。
このルートを選んだオレの直感を賛美したい。

そして古河から選んだ矢沢永吉がよかった。
矢沢、偉大な男だ。
今回に限って言えば、ストーンズにもできない作用をもたらしてくれた。

気分は乗った。
旅はこれから。

12:16 藤岡駅 71㎞
便所に寄ろうと思って立ち寄った。

こんな駅こそが求めていたものだった。

でも便所の使用はできなかった。
どこらあたりまで行けば便所は外につくようになるのだろう。

だいぶ寂れてきた。
心なしかこの駅に止まった浅草行の列車も寂れて見える。
おかしなものだ。

さて次の便所の候補地を探さないといけない。

最初の目的地が近づいている。

12:59 佐野厄除け大師 84㎞
ここに寄ることで、思いがけなくかつて犯した罪について考えた。

オレにも人には話したくない過去がある。

彼女を抱き寄せた時の悲しい気持ちは今も忘れていない。

供養の結果、オレがどうなるかなんてどうでもいい。

今のオレにできることだけはしなきゃいけなかった。

1000円で頼んだ蠟燭は明かりを灯す。

十分に頭を下げたかどうかは覚えていないが、しっかりと祈りはした。

ここに行き着いたことを幸運に思う。

14:15 足利駅 105㎞
ここに向かう50号国道で、とても美しい白い鳥が目の前を横切り、これから向かう街の方へと飛んでいった。

ある女性を思い出しながらこの街に着いた。
その女性が鳥に姿を変えて会いにきてくれたのかと思ったよ。

大きな期待を抱いて、この街にやってきた。

足利は歴史上の英雄を生み、かつてオレが想いを寄せた女性を生んだ。

色が白くて、脚線美を持つ上品な女性だった。

横浜から彼女を送る車の中。
六本木ジェイトリップバーで踊る彼女。
あれは聖夜でのことだった。

そして、オレは初めて「メリー・クリスマス」と口にして、彼女を含めて居合わせた人々とグラスを合わせた。

電話の前でその時が来るのをひたすら待っていたこと。
様々を思い出す。
その時とは、勇気を出して彼女に電話をかけることさ。

最後に会ったのは新宿センタービル53階のストーン・ヘンジ。
もう10年も前の話だ。

彼女がこの街の出身であることを知っているのは、もしかしたらオレだけかもしれない。
とても言いづらそうにしていたのを覚えている。

なぜ彼女はあの時そんな態度をとったのか。

街は祭の最中で、車を降りた時は興奮したが、路上で車座になって座っている品のない連中を見て興ざめした。
特攻服に身を包んだ暴走族。

そうした手合いが何組も集まって勢力を競っていた。
それも大通りの真ん中で。

なぜ街は真昼間にも関わらず彼等の思うがままにさせているのか。

その中でちょっとオレとぶつかって、後ろから田舎訛の品のない言葉をかけてきた少年がいたけど、無視して通り過ぎた。

案の定、追ってはこない。
粋がってはいても、たいていはその程度だということは経験上知っている。
どうでもいいことだ。

駅舎は歴史を持ちそうな建造物だった。

駅だけは是非見ておきたかった。
かつて制服に身を包んだ可愛らしい彼女が毎日のように通ったであろう駅を。

ホームには時代を超えた列車が止まり、とても素晴らしい雰囲気を持ち合わせていたけど、さっきの若者たちの姿から考えて、足利は発展から取り残されたのではないかという印象が拭えない。
彼等があの姿で東京に足を踏み入れたら、おそらくすぐに帰りたくなるだろう。
それもどうでもいい。

駅周辺には大人が入れる静かな喫茶店もない。

オレは確信した。
彼女はもうこの街には戻ってこないだろう。

そして彼女の面影を探すのはやめにした。

関連記事

「鉄旅日記」2005年秋【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。ここから鉄旅が始まったのでございます。】最終日(小諸-軽井沢-高崎-水戸-東京)その1-小諸、軽井沢、横川(しなの鉄道)

鉄旅日記2005年11月7日 2005・11・7 東京葛飾金町 昨夜の雨は上がり、霧に煙った小諸

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】最終日(和歌山-東京)その1-打田、妙寺、高野口、橋本、五条、吉野口、法隆寺、平城山、木津、京田辺、四條畷、住道(和歌山線、関西本線、学研都市線)

鉄旅日記2013年4月7日その1・・・打田駅、妙寺駅、高野口駅、橋本駅、五条駅、吉野口駅、法隆寺駅、

記事を読む

「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】3日目(田沢湖近辺-男鹿半島-鳴子)-和田駅、入道崎、八望台、男鹿駅、道川駅、矢島駅、鳴子サンハイツ

車旅日記1997年8月15日 1997・8・15 9:04 和田駅 855㎞ 友と19時間をとも

記事を読む

「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】初日(東京-旭川-紋別)走行距離339㎞-深川駅、留萌駅、おひら鰊番屋、士別駅、にしおこっぺ花夢、紋別セントラルホテル

車旅日記2004年5月1日 2004・5・1 14:10 深川駅(旭川空港より48km) 広大な

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】初日(東京-安中)その2-伊豆急下田、伊豆高原、橋本、八王子、東福生、福生、拝島(伊豆急行線/横浜線/八高線/青梅線)

鉄旅日記2019年2月9日・・・伊豆急下田駅、伊豆高原駅、橋本駅、八王子駅、東福生駅、福生駅、拝島駅

記事を読む

「鉄旅日記」2018年卯月【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】その2-阿字ヶ浦、那珂湊、勝田、大津港、日立、常陸多賀(ひたちなか海浜鉄道湊線/常磐線)

鉄旅日記2018年4月25日・・・阿字ヶ浦駅、那珂湊駅、勝田駅、大津港駅、日立駅、常陸多賀駅(ひたち

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】最終日(酒田-東京)その3‐押切、帯織、長岡(信越本線)

鉄旅日記2019年12月8日・・・押切駅、帯織駅、長岡駅(信越本線) 15:35 押切(おしきり)

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】初日(東京-一ノ関)その2-新津、新発田、坂町、小国、今泉、西米沢~上杉家御廟~上杉神社~南米沢(信越本線/羽越本線/米坂線)

鉄旅日記2019年1月5日・・・新津駅、新発田駅、坂町駅、小国駅、今泉駅、西米沢駅、南米沢駅(信越本

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】3日目(柳井-徳島)-柳井、大畠、西条、岡山、高松、高松築港、オレンジタウン、引田、池谷、鳴門、徳島(山陽本線/瀬戸大橋線/高徳本線/鳴門線)

鉄旅日記2008年5月4日・・・柳井駅、大畠駅、西条駅、岡山駅、高松駅、高松築港駅、オレンジタウン駅

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【ときわ路パスで、常陸ローカル旅】その1-水海道、三妻、下妻、大田郷、下館、久下田、茂木、真岡、大和、新治、水戸(関東鉄道常総線/真岡鐵道/水戸線)

鉄旅日記2014年4月27日その1・・・水海道駅、三妻駅、下妻駅、大田郷駅、下館駅、久下田駅、茂木駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】最終日(釜石-東京)その4‐安積永盛、鏡石、須賀川、新白河、黒磯、宇都宮(東北本線)

鉄旅日記2020年2月24日・・・安積永盛駅、鏡石駅、須賀川駅、新白河

「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】最終日(釜石-東京)その3‐一ノ関、小牛田、仙台、福島、郡山(東北本線)

鉄旅日記2020年2月24日・・・一ノ関駅、小牛田駅、仙台駅、福島駅、

「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】最終日(釜石-東京)その2‐小山田、土沢、花巻、石鳥谷(釜石線/東北本線)

鉄旅日記2020年2月24日・・・小山田駅、土沢駅、花巻駅、石鳥谷駅(

「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】最終日(釜石-東京)その1‐釜石、遠野、宮守(釜石線)

鉄旅日記2020年2月24日・・・釜石駅、遠野駅、宮守駅(釜石線)

「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】2日目(大船渡-釜石)その4‐宮古、陸中山田、釜石(三陸鉄道リアス線)

鉄旅日記2020年2月23日・・・宮古駅、陸中山田駅、釜石駅(三陸鉄道

→もっと見る

    PAGE TOP ↑