「鉄旅日記」2005年初冬【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】その1-松戸、我孫子、成田、銚子(常磐線/成田線/銚子電鉄)
鉄旅日記2005年12月10日・・・松戸駅、我孫子駅、成田駅、銚子駅(常磐線/成田線/銚子電鉄)
小さな旅に出た。
旅心はすぐにやってきた。
初めて気づいた。
江戸川を越えさえすればよかったのだと。
松戸で常磐線快速電車に乗り換える。
かつても降りたことはある。
天へと延びる昭徳大学の棟は記憶になかった。
次の停車駅は柏。
読み物は松本清張の短編集「張込」。
最初の事件は我孫子に着いても解決しなかった。
成田線とのターミナル駅、我孫子。
繁華街を持たない街。
きれいな茶色の現代的な駅舎で、手賀沼観光の拠点にあたる。
歴史のある駅で、駅前ロータリーにはSLを描いた記念碑が立っている。
あるいは古いものかと思ったが、確か平成15年の作だった。
広場にはクリスマスの飾りができている。
2018年9月22日撮影
成田線は単線で、車窓風景の主役は家並か冬枯れた田野。
風景の端に青い広がりがある。
おそらく手賀沼だったのだろう。
鄙びた駅をいくつか過ぎていく。
難しい読み方の駅がある。
木下で「きおろし」。
下総松崎で「しもうさまんざき」。
同僚のA君は成田の2つ手前の安食駅から日暮里の職場まで通っている。
ご多聞に漏れず鄙びた駅だった。
駅が近づくと、まず駐輪場が現れる。
そんな沿線風景だった。
下総松崎あたりで見えた水辺らしきものは印旛沼だろう。
成田まで約40分。
次に来る列車は鹿島神宮行で約10分後に到着する。
銚子に行く列車は1時間近く待つことになる。
街に出る。
商店街の表示に従い歩くと京成成田駅。
JR駅に比べると格調は劣るが、成田山の提灯が下がる様は、当たり前だがどこの街にもないものだ。
人の流れはJRを上回るかもしれない。
ホテル、旅館の類も京成駅のあたりに集中している。
きれいな地下道を抜けると新しい街があった。
成田にはあまりいい印象を持っていなかった。
両親と、そして高校の卒業遠足でも来ている。
子供だったオレには成田山新勝寺は面白くもおかしくもなく、石段を上がるのがつらかったという朧げな記憶がある。
その評価は不当なものだった。
大人になったオレに、成田は大人の顔を見せてくれた。
JR駅に戻るべく歩道橋を渡り、うらぶれた繁華街を歩くと表参道に出る。
目を見張ったよ。
さすがに大本山を擁する参道で、まるで果てが見えない。
洒落た飲食店に佃煮屋、鰻屋。
上品な女将が店先に出て上品な客引きをしている。
引き返す機会を持てずに歩いていくと、やがて坂を下り、参道は歴史を纏う。
あの風景をとても気に入っている。
五重塔が見えて、工事中の山門が現れる。
若い女性が一礼して上がっていく。
成田は空港の街じゃない。
ましてや闘争の街でもない。
大寺院を擁する格式高い街だった。
表参道を引き返す。
どうにもオレはうらぶれた路地を歩くのが好きで、そんな一角を探し歩きながら駅に戻った。
JR成田駅も素晴らしい。
成田山の提灯はもちろんのこと、駅舎も仏閣を思わせる。
駅もすでに仏域だったようだ。
待ち人のいないホームで銚子行を待つ。
缶コーヒーを購入して煙草をくわえて、ふと空を見上げる。
成田はこの国最大の国際空港を抱えている。
10分の間に数えた飛行機は2機だけだった。
仄かな風に冷たさはなく、暖かな日差しが降り注ぐ12月の一日。
銚子までは約80分。
長い車中だった。
止まっていく駅は鄙びていて、唯一佐原では心が躍った。
武家屋敷のような門構えの「駅そば」があった。
一月前に両毛で眺めた広大な関東平野はこんなところまで続いている。
オレは無知を恥じた。
北海道でしか見られないと思っていた180度に広がる無限を思わせる空が続いていた。
その規模はあるいは北海道を上回るかもしれない。
嘆息の思いで、その風景を見続けた。
やがて水郷。
利根川の姿が散見されるようになる。
そして、かつて友人が結婚式を挙げた鹿島セントラルホテルと、臨界の工場群が空に向けて突出した光景が利根川の対岸に現れる。
オレの歴史の中ではあのあたりも立派に居場所を保っている。
銚子は終着駅としてやはり相応しい。
駅前に出た。
記憶通りでもあったし、違ってもいた。
南洋の木々が強烈に印象に残っていたが、目立たない。
あれは9月。
肌寒い日だったけど、街には熱気があった。
その記憶が椰子の木々を実際よりも多く数えさせたのだろう。
銚子電鉄の切符を購入して、先ほど降り立ったホームへ。
奥まったところに、銚子電鉄の各駅舎を特徴づけていた教会のような境界線をくぐると、鉄道ファン垂涎のワンマンカーが止まっている。
2018年9月22日撮影
終点の外川まで約6㎞の電車道。
犬吠の手前でアナウンスが流れ、目を向けると白い灯台が見えた。
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