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「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、相模・駿河・甲斐途中下車旅】その1-新子安、石川町、山手、磯子、根岸、大磯、二宮、鴨宮、早川、根府川、伊東、熱海、函南、東田子の浦(京浜東北線、根岸線、東海道本線、伊東線)

公開日: : 最終更新日:2020/08/29 旅話 * 結婚後2012年

鉄旅日記2012年3月20日その1
2012・3・20 5:57 新子安(しんこやす)駅(京浜東北線 神奈川県)
西に向かうことを決めたのはいつだったか。

昨日の天気予報を見た時だっただろうか。

今朝の星空を見た時だったかもしれない。

あるいは池袋ですんなりと山手線に乗れたからだろうか。

どうでもいいな。
つまり今日のオレは富士山を見に行く。

京急線がすぐ脇を走る踏切と廃れた横丁の町、新子安。
高いところからは墓地が見える。
清掃車と工事関係者が朝の町に融合し、京急駅員は大きな欠伸をしていた。

京急新子安(けいきゅうしんこやす)駅(京浜急行線 神奈川県)にて

6:20 石川町(いしかわちょう)駅(根岸線 神奈川県)
元町中華街の外れ。

場末の雰囲気漂う駅前に中華街を示す門が立つ。
うら寂しい。
繁華街は近くない。

ちょっと前に来たよな。
そして美味い中華料理をたらふく食べたんだ。

今までのオレの人生にそんな機会はなく、今そんなふうに変わってきている。
とても幸せなことだ。

6:28 山手(やまて)駅(根岸線 神奈川県)
坂の多い町だ。

本牧を示す表示を見てオレがかつて感じていた横浜が蘇る。

駅を下りると商店街が一直線にたいした賑わいもなく続き、品のよくない男たちが駅への道を辿ってくる。

繁華街はすでに過ぎ去りホームには春の冷たい風が吹いている。
ケータイを持つ手が冷たい。

6:45 根岸(ねぎし)駅(根岸線 神奈川県)
高速の高架と石油タンクを積んだ貨物列車が目に飛び込んでくる。

沿岸工場の煙突から煙が上がり、場末の港に下りていく人の数は多かった。

6:56 磯子(いそご)駅(根岸線 神奈川県)
磯は工業海に変貌し、駅前にはそんな歴史を睥睨するかのような高層団地が建ち並んでいる。

あの風景になってからしばらく経っているようだ。

かつて車で遊んでいた頃の横浜を通ってきた。

今のオレが描く横浜とは違う。
そのズレに戸惑いを覚えていたが、ようやく磯子まで来て納得した。

80年代後半を生きていたオレが、探せばそのあたりにいそうだ。
そんなヤツのことはずっと忘れていたよ。

7:50 大磯(おおいそ)駅(東海道本線 神奈川県)
日本初の海水浴場が開かれた湘南リゾートの空は青く、吹く風は冷たい。

ロングビーチまでは遠く、1号国道から懐かしの湘南国道の方向を見るにとどめ駅へ戻る。

白亜の建物があたりを優しく見せる。

丘から見える海にはいつも心ときめく。

8:09 二宮(にのみや)駅(東海道本線 神奈川県)
栄通りという線路沿いの古い商店街と曽我兄弟の墓がある吾妻山公園、そして二宮海岸。

1号国道は大磯から線路に接近し、海への距離が近くなる。

日常を忘れかけてるところへ得意先からの電話。
旗日8:18。
とても不粋だ。

8:32 鴨宮(かものみや)駅(東海道本線 神奈川県)
車窓から、白くなってもう長いことになる富士山の頂上付近がくっきりと見えだし、駅の高架橋からの眺めもまたいい。

味わいのある北口商店街を歩き、海辺で商ってきた人々を思い、房総とはまた違うなと感慨に耽り、海へと続く南口へ。

だだっ広いロータリーを取り巻くものは僅かで、水場で猫が鳴いていた。

8:52 早川(はやかわ)駅(東海道本線 神奈川県)
雀荘が入っている駅前ビルは廃墟になってどれくらい経つのか。

ここを通る度にあの建物と西湘バイパスの高架をずっと目にしてきた。

あの下は太平洋だったよ。

海沿い国道を上下する車の流れは絶えず、そして今日は完全な晴天だ。

早川で下りられてよかったよ。

9:35 根府川(ねぶかわ)駅(東海道本線 神奈川県)
6分の停車。

この駅に再び下り立つことができてうれしい。

いつでも春を思わせるような駅で、人々の声もどこか華やいでいる。
愛すべき相模路に戻ってきた。

ついでに言うが、東海道各駅停車の旅は熱海までつながった。
つまり東京から熱海まで、すべての駅に降りてきたことになる。

10:10 伊東(いとう)駅(伊東線/伊豆急下田線 静岡県)
仲間と何度も走った道。
ハトヤは今も健在だろうか。

あのあたりのビーチにはオレンジビーチという名称がついている。

湯の花通りにキネマ通り。

大きな鞄を持った旅行者が多く行き交う街並みは文字通り春で、こんな町にきたかったのだと、下りてみてよく分かった。

南風の心地いい春の宵に桜花が舞い、妖しげな灯に揺れる街角。
そんな場所にいたことなどないが、どこかの街でそんな宵を迎えたいと、生きてきた。

伊東にはそんなどこかレトロな街角がありそうだ。

伊東にオレの記録が残されていないことが不思議だ。
伊東線の駅はどれも素敵だった。
次の計画を立てよう。

10:52 熱海(あたみ)駅(東海道新幹線/東海道本線/伊東線 静岡県)
思い出の街は春の日差しにあふれている。

朝青龍最後の場所をあの寿司屋で眺め、これから始まる暮らしに思いを馳せた。

熱海はいつも人であふれている。

あったかいという感覚を久し振りに思い出したけど、ビールはまだ喉に冷たかったよ。

この街で撮った写真がケータイの待ち受け画面になっている。
しばらく替えるつもりはない。

11:18 函南(かんなみ)駅(東海道本線 静岡県)
熱海を出てトンネルをいくつも潜ると雲雀さえずるせせらぎの国。

駅前には一軒の商店もない。
車窓から見て知ってはいた。

でも他じゃたいして味わうことのできない濃厚な春がここにある。

12:01 東田子の浦(ひがしたごのうら)駅(東海道本線 静岡県)
広大な富士の裾野が見える東海の名勝。
ここにはいくつも思い出がある。

ここに連れだしてあの海を眺め、振り返って富士を仰いだ。
大切な約束を交わしたこともある。

ここにくる機会はもうないと思っていたけど、これがオレと田子の浦の縁。

初めて来た時には他に何人もいたけど、連中はたいして覚えちゃいないだろう。

あの雄大な太平洋。
多くの海岸線に出てみたが、ここが一番。
本当にそう思うよ。

そしてまたオレはここにひとりでやってきた。
寂しい言葉など必要のない境遇を得て、ひとりで会いにやってきたよ。

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