*

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、鶴見線・伊豆・駿河途中下車旅】その1-扇町、浅野、海芝浦、国道、大川、保土ヶ谷、東戸塚、網代、伊豆多賀、宇佐美、熱海(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線)

公開日: : 最終更新日:2024/06/04 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年4月8日その1・・・扇町駅、浅野駅、海芝浦駅、国道駅、大川駅、保土ヶ谷駅、東戸塚駅、網代駅、伊豆多賀駅、宇佐美駅、熱海駅(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線)

2012・4・8 6:16 扇町(おうぎまち)駅(鶴見線 神奈川県)
隣り合わせた中国人男性の体臭に閉口し、身なりのよくない人々が乗り込む明け方の車内。

錆びた工場群からは日曜日の早朝にもかかわらず煙がもくもくと上がる。

終点の扇町から折り返しの乗客はオレひとり。

旅館を兼ねた昭和の食堂が一軒あって、この時間帯から混み合っている。

労働者の居住区。
貧しかった頃の昭和の風景をオレはそこに見ていた。

たぶん、こんなところに来ると人は悲しくなる。
行き着く先が薔薇色じゃないとすれば、じゃあここはどうだい?と例に挙がりそうな一帯だ。

東南アジア系の人々を見かける。
彼らには悪いが、こうして人の気配が希薄な場所で彼らを見かけると、どうしても場末の土地だという判断を下してしまう。

6:35 浅野(あさの)駅(鶴見線/海芝浦支線 神奈川県)
猫と鳩と雀とあとはオレしかいなかったよ。

高い場所でカラスが鳴いている。

駅員の宿泊施設があるであろう立派な駅舎は無人で、見かけるのは労働者。

太陽に焼かれる終着駅へ。
そんな駅にまた到着する。

6:45 海芝浦(うみしばうら)駅(鶴見線海芝浦支線 神奈川県)
運転手が口笛を吹きながら下りてくる。

鶴見を出てから異境をさすらっている。

オレの日常はここにはない。

駅の真下が海だとは知っていた。

海と言っても薄汚い京浜運河だろうぐらいにしか想像していなかったが、鶴見つばさ橋が目の前に見える光景はなかなかどうして侮れない。

東芝社員しか外に出られない特殊な駅で旭に輝く海面に目を細める。


7:10 国道(こくどう)駅(鶴見線 神奈川県)
異境ここに極まれる。

ホームからの階段を下りるとトンネルに出くわす。
お日様とは無縁だ。

この風情はオレが知っている限りじゃ神宮球場と甲子園球場に残っている。
不気味で薄暗い昭和の一角だ。
懐かしい。

国道下という焼鳥屋が看板を出している。
改札を出てすぐのトンネル内だ。
こじんまりとして、高尚な会話など交わされることのない人間空間がそこにはあるのだろう。

あまりの異境度に、このあたりを故郷に持つ友人Aを思い出すのを忘れた。
ここ2年、彼から住所が記されていない年賀状が届いている。

列車が来ると踏切の警笛が鳴る。
ちなみに踏切は存在しない。

ここから再び浅野を通り、大川へ向かう。


7:28 大川(おおかわ)駅(鶴見線大川支線 神奈川県)
雑草の生い茂る鉄路の先の終着駅。

休日にこの駅を発車する列車は3本しかなく、当然のように商店などない。

昔に学校で聞いていたチャイムの音が聞こえてきた。

8:15 保土ヶ谷(ほどがや)駅(横須賀線 神奈川県)
脇の1号国道を何度も車で通ったもんだよ。

当時はこの線路が何線のものかも知らずに横浜へ、ベイブリッヂへと出かけていた。

国道に面した駅だったというのは思い込みに過ぎなかったようで、通り過ぎてきた印象とはかなり違う駅前風景だった。

ここはすでに横浜郊外。
山の手の気配がする駅だった。

8:27 東戸塚(ひがしとつか)駅(横須賀線 神奈川県)
10年以上前に友人二人と駅前のヘルスセンターで遊んだことがある。

それなりに大きな駅だったという印象は持っていた。
当時の記憶が定かじゃないが、あの頃からは変貌を遂げたようだ。

下車時間5分しか割り当てていない中でざっとあたりを見回してみたが件のヘルスセンターなどは見当たらず、何より行き交う人の多さに驚かされた。
居合わせたご婦人からはそのことで嘆息が漏れた。

西武百貨店などは以前からあったのだろうか。

10:23 網代(あじろ)駅(伊東線 静岡県)
大船で東海道本線に乗り換え、熱海で伊東線に乗り換え。

伊豆の海辺。

休日は風が冷たく、干物屋も震えている。

南熱海交番前、海水浴場の喫煙場所にあるベンチに腰掛けて酒と朝飯。
熱燗が欲しかったよ。

今日はこんなだが、あったかい日が続いていたんだろう。
伊豆じゃ桜は終わりかけている。

温泉に浸かるっていう選択肢は今のオレにはまったくなかった。
着いてみて思うもんだ。

ああ、そう言えば温泉町に今いるんだったなと。


10:40 伊豆多賀(いずたが)駅(伊東線 静岡県)
ひと駅戻る。

高台の駅からの桜見物とはおつだ。
熱海秋田県人会の集まりが花見の支度をしている。

海辺に向かう急坂を下って上った。
駅前にたった一軒、冷たいものを売る涼しげな店があった。

車中へ。

若い女性グループが華やぎながら先に向かっている。
あの時分は楽しい。
結婚生活などよりよほど楽しいものだろうと当時は思っていたよ。

若くなきゃできないこと。
それをオレはきっちりやってきたんだと思う。

何はともあれ彼女たちにとってこの旅行がステキなものであることを願うよ。

11:08 宇佐美(うさみ)駅(伊東線 静岡県)
伊東方面へふた駅。

135号国道を多くのライダーが爆音を立てて通り過ぎ、遠浅の海岸ではこれまた多くのサーファーが波に挑んでいる。

右手に見えるはサンハトヤ。
あれがなくなっちまったらオレの世代は深い感慨を漏らすだろう。

エロ雑誌の自販機がまだ置かれているような南の町。
あの妖しげな卑猥さは北国にはない。

風が止んで伊豆の気候が現れた。


来宮(きのみや)駅(伊東線 静岡県)にて

11:58 熱海(あたみ)駅(東海道新幹線/東海道本線/伊東線 静岡県)
東海道本線から見える来宮駅で降りて熱海までの徒歩行。

ここはいい街だ。

あたたかくて、いつも華やいでいて。

暮らしてみたいと思うよ。

曲がりくねった坂でふと下に目をやると激流がある。
大間の湯に下りて風情を愛でる。
何度か二人連れでこの街に降りたことがあるけど、もう他の誰かと来ることもないだろう。

ほんの少しだけ、この街の真ん中で何か商売でもできたらいいなと思った。

歩いてきたこともあってビールが美味い。

関連記事

「車旅日記」2000年夏Part.2【友を訪ねて備後福山へ。長門宇部へ。2000㎞に及ぶ長大な旅路でございました。】4日目(宇部-東京町田)佐波川SA、宮島SA、久地PA、帝釈峡PA、美作追分PA、社PA、桂川PA、多賀SA、東郷PA、三方原PA、牧之原SA、駒門PA

車旅日記2000年8月15日~16日・・・佐波川SA、宮島SA、久地PA、帝釈峡PA、美作追分PA、

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】初日(東京-河口湖-新島々-長野-直江津)その1-保谷、代々木、都留市、富士山、河口湖(西武池袋線/山手線/中央本線/富士急行)

鉄旅日記2018年2月10日・・・保谷駅、代々木駅、都留市駅、富士山駅、河口湖駅(西武池袋線/山手線

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】初日(東京-和歌山)その1-米原、弁天町、大正、芦原橋、今宮、杉本町、堺市、東羽衣、鳳(東海道本線、大阪環状線、阪和線、東羽衣支線)

鉄旅日記2013年4月7日その1・・・米原駅、弁天町駅、大正駅、芦原橋駅、今宮駅、杉本町駅、堺市駅、

記事を読む

「車旅日記」1996年夏【再び北を目指した夏。不慮の事故に遭い、打ち切らざるを得なくなったのでございます。】初日 (東京‐三国峠‐新潟)- 成瀬センター前、東福生駅、籠原駅、北橘村、渋川、ドライブイン利根川、猿ヶ京湖城閣、越後湯沢駅、道の駅ゆのたに、堀之内パーキング

車旅日記1996年8月13日 1996・8・13 10:45 東京 ルートは決まった。 今まで

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】初日(東京-弘前)-福島、仙台、北山形、新庄、秋田、井川さくら、大館、弘前(東北本線/仙山線/奥羽本線)

鉄旅日記2016年8月10日・・・福島駅、仙台駅、北山形駅、新庄駅、秋田駅、井川さくら駅、大館駅、弘

記事を読む

「鉄旅日記」2006年如月【房総半島から1週間。常磐線に乗って、下っていったのでございます。】その2-勿来、いわき(常磐線)

鉄旅日記2006年2月11日・・・勿来駅、いわき駅(常磐線) 2006・2・11 いわき東急イン61

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、新潟・みちのくひとり旅】初日(東京-横手)-郡山、津川、亀田、さつき野、水原、坂町、村上、あつみ温泉、鶴岡、余目、刈和野(東北本線、磐越西線、信越本線、羽越本線、陸羽西線、奥羽本線)

鉄旅日記2012年8月11日・・・郡山駅、津川駅、亀田駅、さつき野駅、水原駅、坂町駅、村上駅、あつみ

記事を読む

「車旅日記」1996年夏【再び北を目指した夏。不慮の事故に遭い、打ち切らざるを得なくなったのでございます。】最終日 事故から帰京を振り返って。

車旅日記1996年8月15日 1996・8・15 東京 望郷の思いとは別に昨日家に帰り着いた。

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.2【友を訪ねて備後福山へ。長門宇部へ。2000㎞に及ぶ長大な旅路でございました。】最終日(東京町田-東京葛飾)

車旅日記2000年8月16日 2000・8・16 23:09 東京葛飾金町 旅が終わってほっとし

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】最終日(三次-東京)その3‐清音、倉敷、岡山、熊山、姫路(伯備線/山陽本線)

鉄旅日記2020年7月26日・・・清音駅、倉敷駅、岡山駅、熊山駅、姫路駅(伯備線/山陽本線)

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】初日(東京-砺波)その1 ‐金町、東京、黒部宇奈月温泉、新黒部(常磐線/北陸新幹線/富山地方鉄道本線)

鉄旅日記2020年11月21日・・・金町駅、東京駅、黒部宇奈月温泉駅

「鉄旅日記」2020年神無月【ツレと筑波山を訪ねたのでございます。関東に暮らす身にとりまして、高所に上がりますと平野の果てに浮かぶ筑波山はいつか登るべき山でございました。】-北千住駅、つつじヶ丘駅、女体山、男体山、筑波山頂駅、宮脇駅、筑波山神社、沼田バス停、つくば駅(つくばエクスプレス/筑波山シャトル/筑波山ロープウェイ/筑波山ケーブルカー)

鉄旅日記2020年10月4日・・・北千住駅、つつじヶ丘駅、女体山、男

「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】最終日(高松-東京)その2 ‐茶屋町、岡山、倉敷、倉敷市、水島、常盤、栄、三菱自工前(宇野線/伯備線/水島臨海鉄道)/倉敷センター街、阿智神社、倉敷美観地区

鉄旅日記2020年9月22日・・・茶屋町駅、岡山駅、倉敷駅、倉敷市駅

「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】最終日(高松-東京)その1 ‐高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フェリー/直島宮浦→宇野フェリー)

鉄旅日記2020年9月22日・・・高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇

「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】3日目(高松)その2 ‐金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、八十場駅、白峰宮、天皇寺、磯禅師墓

車旅日記2020年9月21日・・・金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、

→もっと見る

    PAGE TOP ↑