*

「鉄旅日記」2012年春 その1-扇町、浅野、海芝浦、国道、大川、保土ヶ谷、東戸塚、網代、伊豆多賀、宇佐美、熱海(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線) 【青春18きっぷで、鶴見線・伊豆・駿河途中下車旅】

公開日: : 最終更新日:2025/06/17 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年4月8日その1・・・扇町駅、浅野駅、海芝浦駅、国道駅、大川駅、保土ヶ谷駅、東戸塚駅、網代駅、伊豆多賀駅、宇佐美駅、熱海駅(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線)

2012・4・8 6:16 扇町(おうぎまち)駅(鶴見線 神奈川県)
隣り合わせた中国人男性の体臭に閉口し、身なりのよくない人々が乗り込む明け方の車内。

錆びた工場群からは日曜日の早朝にもかかわらず煙がもくもくと上がる。

終点の扇町から折り返しの乗客はオレひとり。

旅館を兼ねた昭和の食堂が一軒あって、この時間帯から混み合っている。

労働者の居住区。
貧しかった頃の昭和の風景をオレはそこに見ていた。

たぶん、こんなところに来ると人は悲しくなる。
行き着く先が薔薇色じゃないとすれば、じゃあここはどうだい?と例に挙がりそうな一帯だ。

東南アジア系の人々を見かける。
彼らには悪いが、こうして人の気配が希薄な場所で彼らを見かけると、どうしても場末の土地だという判断を下してしまう。

6:35 浅野(あさの)駅(鶴見線/海芝浦支線 神奈川県)
猫と鳩と雀とあとはオレしかいなかったよ。

高い場所でカラスが鳴いている。

駅員の宿泊施設があるであろう立派な駅舎は無人で、見かけるのは労働者。

太陽に焼かれる終着駅へ。
そんな駅にまた到着する。

6:45 海芝浦(うみしばうら)駅(鶴見線海芝浦支線 神奈川県)
運転手が口笛を吹きながら下りてくる。

鶴見を出てから異境をさすらっている。

オレの日常はここにはない。

駅の真下が海だとは知っていた。

海と言っても薄汚い京浜運河だろうぐらいにしか想像していなかったが、鶴見つばさ橋が目の前に見える光景はなかなかどうして侮れない。

東芝社員しか外に出られない特殊な駅で旭に輝く海面に目を細める。


7:10 国道(こくどう)駅(鶴見線 神奈川県)
異境ここに極まれる。

ホームからの階段を下りるとトンネルに出くわす。
お日様とは無縁だ。

この風情はオレが知っている限りじゃ神宮球場と甲子園球場に残っている。
不気味で薄暗い昭和の一角だ。
懐かしい。

国道下という焼鳥屋が看板を出している。
改札を出てすぐのトンネル内だ。
こじんまりとして、高尚な会話など交わされることのない人間空間がそこにはあるのだろう。

あまりの異境度に、このあたりを故郷に持つ友人Aを思い出すのを忘れた。
ここ2年、彼から住所が記されていない年賀状が届いている。

列車が来ると踏切の警笛が鳴る。
ちなみに踏切は存在しない。

ここから再び浅野を通り、大川へ向かう。


7:28 大川(おおかわ)駅(鶴見線大川支線 神奈川県)
雑草の生い茂る鉄路の先の終着駅。

休日にこの駅を発車する列車は3本しかなく、当然のように商店などない。

昔に学校で聞いていたチャイムの音が聞こえてきた。

8:15 保土ヶ谷(ほどがや)駅(横須賀線 神奈川県)
脇の1号国道を何度も車で通ったもんだよ。

当時はこの線路が何線のものかも知らずに横浜へ、ベイブリッヂへと出かけていた。

国道に面した駅だったというのは思い込みに過ぎなかったようで、通り過ぎてきた印象とはかなり違う駅前風景だった。

ここはすでに横浜郊外。
山の手の気配がする駅だった。

8:27 東戸塚(ひがしとつか)駅(横須賀線 神奈川県)
10年以上前に友人二人と駅前のヘルスセンターで遊んだことがある。

それなりに大きな駅だったという印象は持っていた。
当時の記憶が定かじゃないが、あの頃からは変貌を遂げたようだ。

下車時間5分しか割り当てていない中でざっとあたりを見回してみたが件のヘルスセンターなどは見当たらず、何より行き交う人の多さに驚かされた。
居合わせたご婦人からはそのことで嘆息が漏れた。

西武百貨店などは以前からあったのだろうか。

10:23 網代(あじろ)駅(伊東線 静岡県)
大船で東海道本線に乗り換え、熱海で伊東線に乗り換え。

伊豆の海辺。

休日は風が冷たく、干物屋も震えている。

南熱海交番前、海水浴場の喫煙場所にあるベンチに腰掛けて酒と朝飯。
熱燗が欲しかったよ。

今日はこんなだが、あったかい日が続いていたんだろう。
伊豆じゃ桜は終わりかけている。

温泉に浸かるっていう選択肢は今のオレにはまったくなかった。
着いてみて思うもんだ。

ああ、そう言えば温泉町に今いるんだったなと。


10:40 伊豆多賀(いずたが)駅(伊東線 静岡県)
ひと駅戻る。

高台の駅からの桜見物とはおつだ。
熱海秋田県人会の集まりが花見の支度をしている。

海辺に向かう急坂を下って上った。
駅前にたった一軒、冷たいものを売る涼しげな店があった。

車中へ。

若い女性グループが華やぎながら先に向かっている。
あの時分は楽しい。
結婚生活などよりよほど楽しいものだろうと当時は思っていたよ。

若くなきゃできないこと。
それをオレはきっちりやってきたんだと思う。

何はともあれ彼女たちにとってこの旅行がステキなものであることを願うよ。

11:08 宇佐美(うさみ)駅(伊東線 静岡県)
伊東方面へふた駅。

135号国道を多くのライダーが爆音を立てて通り過ぎ、遠浅の海岸ではこれまた多くのサーファーが波に挑んでいる。

右手に見えるはサンハトヤ。
あれがなくなっちまったらオレの世代は深い感慨を漏らすだろう。

エロ雑誌の自販機がまだ置かれているような南の町。
あの妖しげな卑猥さは北国にはない。

風が止んで伊豆の気候が現れた。


来宮(きのみや)駅(伊東線 静岡県)にて

11:58 熱海(あたみ)駅(東海道新幹線/東海道本線/伊東線 静岡県)
東海道本線から見える来宮駅で降りて熱海までの徒歩行。

ここはいい街だ。

あたたかくて、いつも華やいでいて。

暮らしてみたいと思うよ。

曲がりくねった坂でふと下に目をやると激流がある。
大間の湯に下りて風情を愛でる。
何度か二人連れでこの街に降りたことがあるけど、もう他の誰かと来ることもないだろう。

ほんの少しだけ、この街の真ん中で何か商売でもできたらいいなと思った。

歩いてきたこともあってビールが美味い。

関連記事

「鉄旅日記」2018年エイプリルフール その2-猪苗代、磐梯町、安子ヶ島、磐梯熱海、郡山(磐越西線) 【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】

鉄旅日記2018年4月1日・・・猪苗代駅、磐梯町駅、安子ヶ島駅、磐梯熱海駅、郡山駅(磐越西線) 1

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 最終日(鷹ノ巣-東京)その2‐角館、大曲、峰吉川、新庄(田沢湖線/奥羽本線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】

鉄旅日記2023年1月13日・・・角館駅、大曲駅、峰吉川駅、新庄駅(田沢湖線/奥羽本線) 10:0

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 最終日(門司港-東京)その1‐門司港、小森江、折尾、若松(鹿児島本線/筑豊本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月16日・・・門司港駅、小森江駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本線/筑豊本線)

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-米内沢)その1‐金町、上野、古川、陸前谷地(常磐線/東北新幹線/陸羽東線) 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】

鉄旅日記2021年4月17日・・・金町駅、上野駅、古川駅、陸前谷地駅(常磐線/東北新幹線/陸羽東線

記事を読む

「車旅日記」2003年夏 3日目(北見-帯広)走行距離682㎞ -北見東急イン、美幌駅、摩周湖、知床斜里駅、羅臼、根室駅、納沙布岬、釧路駅 【北海道初上陸。2,300㎞を移動した5日間の記録でございます。】

車旅日記2003年8月15日・・・北見東急イン、美幌駅、摩周湖、知床斜里駅、羅臼、根室駅、納沙布岬、

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生 初日(東京-会津若松)その2-土合、越後湯沢、大沢、上越国際スキー場前、越後堀之内、小出(上越線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

鉄旅日記2018年3月3日・・・土合駅、越後湯沢駅、大沢駅、上越国際スキー場前駅、越後堀之内駅、小出

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 最終日(門司港-東京)その3‐宇部、富海、福川、戸田(山陽本線)/富海海岸 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月16日・・・宇部駅、富海駅、福川駅、戸田駅(山陽本線)/富海海岸 8:

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 2日目(高松)その1 ‐瀬戸大橋遠景、丸亀城、少林寺、津嶋神社参道、津島ノ宮駅、詫間海軍航空隊跡、箱浦(浦嶋伝説の地)、父母ヶ浜 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

車旅日記2020年9月20日・・・瀬戸大橋遠景、丸亀城、少林寺、津嶋神社参道、津島ノ宮駅、詫間海軍

記事を読む

「車旅日記」1997年夏 3日目(田沢湖近辺-男鹿半島-鳴子)-和田駅、入道崎、八望台、男鹿駅、道川駅、矢島駅、鳴子サンハイツ【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】

車旅日記1997年8月15日 1997・8・15 9:04 和田駅 855㎞ 友と19時間をともに

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 最終日(高松-東京)その2 ‐茶屋町、岡山、倉敷、倉敷市、水島、常盤、栄、三菱自工前(宇野線/伯備線/水島臨海鉄道)/倉敷センター街、阿智神社、倉敷美観地区 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月22日・・・茶屋町駅、岡山駅、倉敷駅、倉敷市駅、水島駅、常盤駅、栄駅、三菱自

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 ツレと訪ねた下部温泉~富士宮~田子の浦旅でございます。初日(東京-下部温泉) ‐市川大門、下部温泉(身延線)【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年5月28日・・・市川大門駅、下部温泉駅(身延線)

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その3 ‐駒形、前橋大橋、高崎、本庄(両毛線/高崎線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・駒形駅、前橋大島駅、高崎駅、本庄駅(

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その2 ‐国定(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・国定駅(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その1 ‐磐梯熱海、新白河、小山(磐越西線/東北本線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・磐梯熱海駅、新白河駅、小山駅(磐越西

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

→もっと見る

    PAGE TOP ↑