「鉄旅日記」2012年春 その1-扇町、浅野、海芝浦、国道、大川、保土ヶ谷、東戸塚、網代、伊豆多賀、宇佐美、熱海(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線) 【青春18きっぷで、鶴見線・伊豆・駿河途中下車旅】
鉄旅日記2012年4月8日その1・・・扇町駅、浅野駅、海芝浦駅、国道駅、大川駅、保土ヶ谷駅、東戸塚駅、網代駅、伊豆多賀駅、宇佐美駅、熱海駅(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線)
2012・4・8 6:16 扇町(おうぎまち)駅(鶴見線 神奈川県)
隣り合わせた中国人男性の体臭に閉口し、身なりのよくない人々が乗り込む明け方の車内。
錆びた工場群からは日曜日の早朝にもかかわらず煙がもくもくと上がる。
終点の扇町から折り返しの乗客はオレひとり。
旅館を兼ねた昭和の食堂が一軒あって、この時間帯から混み合っている。
労働者の居住区。
貧しかった頃の昭和の風景をオレはそこに見ていた。
たぶん、こんなところに来ると人は悲しくなる。
行き着く先が薔薇色じゃないとすれば、じゃあここはどうだい?と例に挙がりそうな一帯だ。
東南アジア系の人々を見かける。
彼らには悪いが、こうして人の気配が希薄な場所で彼らを見かけると、どうしても場末の土地だという判断を下してしまう。

6:35 浅野(あさの)駅(鶴見線/海芝浦支線 神奈川県)
猫と鳩と雀とあとはオレしかいなかったよ。
高い場所でカラスが鳴いている。
駅員の宿泊施設があるであろう立派な駅舎は無人で、見かけるのは労働者。
太陽に焼かれる終着駅へ。
そんな駅にまた到着する。

6:45 海芝浦(うみしばうら)駅(鶴見線海芝浦支線 神奈川県)
運転手が口笛を吹きながら下りてくる。
鶴見を出てから異境をさすらっている。
オレの日常はここにはない。
駅の真下が海だとは知っていた。
海と言っても薄汚い京浜運河だろうぐらいにしか想像していなかったが、鶴見つばさ橋が目の前に見える光景はなかなかどうして侮れない。
東芝社員しか外に出られない特殊な駅で旭に輝く海面に目を細める。



7:10 国道(こくどう)駅(鶴見線 神奈川県)
異境ここに極まれる。
ホームからの階段を下りるとトンネルに出くわす。
お日様とは無縁だ。
この風情はオレが知っている限りじゃ神宮球場と甲子園球場に残っている。
不気味で薄暗い昭和の一角だ。
懐かしい。
国道下という焼鳥屋が看板を出している。
改札を出てすぐのトンネル内だ。
こじんまりとして、高尚な会話など交わされることのない人間空間がそこにはあるのだろう。
あまりの異境度に、このあたりを故郷に持つ友人Aを思い出すのを忘れた。
ここ2年、彼から住所が記されていない年賀状が届いている。
列車が来ると踏切の警笛が鳴る。
ちなみに踏切は存在しない。
ここから再び浅野を通り、大川へ向かう。



7:28 大川(おおかわ)駅(鶴見線大川支線 神奈川県)
雑草の生い茂る鉄路の先の終着駅。
休日にこの駅を発車する列車は3本しかなく、当然のように商店などない。
昔に学校で聞いていたチャイムの音が聞こえてきた。


8:15 保土ヶ谷(ほどがや)駅(横須賀線 神奈川県)
脇の1号国道を何度も車で通ったもんだよ。
当時はこの線路が何線のものかも知らずに横浜へ、ベイブリッヂへと出かけていた。
国道に面した駅だったというのは思い込みに過ぎなかったようで、通り過ぎてきた印象とはかなり違う駅前風景だった。
ここはすでに横浜郊外。
山の手の気配がする駅だった。

8:27 東戸塚(ひがしとつか)駅(横須賀線 神奈川県)
10年以上前に友人二人と駅前のヘルスセンターで遊んだことがある。
それなりに大きな駅だったという印象は持っていた。
当時の記憶が定かじゃないが、あの頃からは変貌を遂げたようだ。
下車時間5分しか割り当てていない中でざっとあたりを見回してみたが件のヘルスセンターなどは見当たらず、何より行き交う人の多さに驚かされた。
居合わせたご婦人からはそのことで嘆息が漏れた。
西武百貨店などは以前からあったのだろうか。

10:23 網代(あじろ)駅(伊東線 静岡県)
大船で東海道本線に乗り換え、熱海で伊東線に乗り換え。
伊豆の海辺。
休日は風が冷たく、干物屋も震えている。
南熱海交番前、海水浴場の喫煙場所にあるベンチに腰掛けて酒と朝飯。
熱燗が欲しかったよ。
今日はこんなだが、あったかい日が続いていたんだろう。
伊豆じゃ桜は終わりかけている。
温泉に浸かるっていう選択肢は今のオレにはまったくなかった。
着いてみて思うもんだ。
ああ、そう言えば温泉町に今いるんだったなと。



10:40 伊豆多賀(いずたが)駅(伊東線 静岡県)
ひと駅戻る。
高台の駅からの桜見物とはおつだ。
熱海秋田県人会の集まりが花見の支度をしている。
海辺に向かう急坂を下って上った。
駅前にたった一軒、冷たいものを売る涼しげな店があった。
車中へ。
若い女性グループが華やぎながら先に向かっている。
あの時分は楽しい。
結婚生活などよりよほど楽しいものだろうと当時は思っていたよ。
若くなきゃできないこと。
それをオレはきっちりやってきたんだと思う。
何はともあれ彼女たちにとってこの旅行がステキなものであることを願うよ。

11:08 宇佐美(うさみ)駅(伊東線 静岡県)
伊東方面へふた駅。
135号国道を多くのライダーが爆音を立てて通り過ぎ、遠浅の海岸ではこれまた多くのサーファーが波に挑んでいる。
右手に見えるはサンハトヤ。
あれがなくなっちまったらオレの世代は深い感慨を漏らすだろう。
エロ雑誌の自販機がまだ置かれているような南の町。
あの妖しげな卑猥さは北国にはない。
風が止んで伊豆の気候が現れた。



来宮(きのみや)駅(伊東線 静岡県)にて

11:58 熱海(あたみ)駅(東海道新幹線/東海道本線/伊東線 静岡県)
東海道本線から見える来宮駅で降りて熱海までの徒歩行。
ここはいい街だ。
あたたかくて、いつも華やいでいて。
暮らしてみたいと思うよ。
曲がりくねった坂でふと下に目をやると激流がある。
大間の湯に下りて風情を愛でる。
何度か二人連れでこの街に降りたことがあるけど、もう他の誰かと来ることもないだろう。
ほんの少しだけ、この街の真ん中で何か商売でもできたらいいなと思った。
歩いてきたこともあってビールが美味い。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2016年春 初日(東京-水沢)その2-前谷地、柳津、気仙沼、一ノ関、水沢(石巻線/気仙沼線/大船渡線/東北本線) 【東日本大震災被災地へ】
鉄旅日記2016年3月5日その2・・・前谷地駅、柳津駅、気仙沼駅、一ノ関駅、水沢駅(石巻線/気仙沼線
-
-
「鉄旅日記」2020年卯月 最終日(新津-東京)その3‐小野新町、要田、いわき(磐越東線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】
鉄旅日記2020年4月5日・・・小野新町駅、要田駅、いわき駅(磐越東線) 12:33 小野新町(お
-
-
「鉄旅日記」2018年エイプリルフール その1-金町、上野、鹿沼、日光、東武日光、宇都宮、野崎(常磐線/東北本線/日光線) 【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】
鉄旅日記2018年4月1日・・・金町駅、上野駅、鹿沼駅、日光駅、東武日光駅、宇都宮駅、野崎駅(常磐線
-
-
「鉄旅日記」2015年春 初日その2(東京-宇治)-香里園、寝屋川市、門真市、守口市、淀屋橋、天満橋、中之島、樟葉(京阪本線/京阪中之島線) 【ひらパーGo!Go!チケットで行く、京阪旅】
鉄旅日記2015年3月21日その2・・・香里園駅、寝屋川市駅、門真市駅、守口市駅、淀屋橋駅、天満橋駅
-
-
「車旅日記」1998年夏 2日目(青森-竜飛崎-秋田)-あおもり健康ランド、青森駅、青い海公園、蟹田、高野崎、竜飛崎、十三湖、五所川原駅、深浦、不老不死温泉、能代駅、秋田駅、道の駅西目 【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】
車旅日記1998年8月13日 1998・8・13 7:31 あおもり健康ランド 777㎞ 昨日のこ
-
-
2018年初秋 初日(東京-桑名)その4-新瀬戸、瀬戸市、高蔵寺、新守山、勝川、枇杷島、蟹江、桑名(愛知環状鉄道/中央本線/東海交通事業常北線/東海道本線/関西本線) 【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】
鉄旅日記2018年9月15日・・・新瀬戸駅、瀬戸市駅、高蔵寺駅、新守山駅、勝川駅、枇杷島駅、蟹江駅、
-
-
「鉄旅日記」2019年年始 初日(東京-一ノ関)その1-金町、上野、高崎、六日町、長岡、見附(常磐線/高崎線/上越線/信越本線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】
鉄旅日記2019年1月5日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、六日町駅、長岡駅、見附駅(常磐線/高崎線/上
-
-
「鉄旅日記」2005年秋 最終日(小諸-東京)その1-小諸、軽井沢、横川(しなの鉄道) 【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。】
鉄旅日記2005年11月7日・・・小諸駅、軽井沢駅、横川駅(しなの鉄道) 2005・11・7 東京
-
-
「鉄旅日記」2014年夏 3日目(鳥取-米子)その2-電鉄出雲市、川跡、旧大社駅、出雲大社前、雲州平田、松江しんじ湖温泉、松江、乃木、東松江、玉造温泉、揖屋、荒島、米子(一畑電車北松江線/一畑電車大社線/山陰本線)【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】
鉄旅日記2014年8月15日その2・・・電鉄出雲市駅、川跡駅、旧大社駅、出雲大社前駅、雲州平田駅、松
-
-
「鉄旅日記」2018年如月 初日(東京-直江津)その3-梓橋、姨捨、北長野、三才、直江津(大糸線/篠ノ井線/しなの鉄道/えちごトキめき鉄道)【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】
鉄旅日記2018年2月10日・・・梓橋駅、姨捨駅、北長野駅、三才駅、直江津駅(大糸線/篠ノ井線/しな
