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「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】最終日(水沢-東京)その2-気仙沼、一ノ関、小牛田、大河原、福島、安積永盛、久喜(大船渡線、東北本線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/25 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年3月6日その2・・・気仙沼駅、一ノ関駅、小牛田駅、大河原駅、福島駅、安積永盛駅、久喜駅(大船渡線、東北本線)

12:09 気仙沼(けせんぬま)駅(大船渡線/気仙沼線 宮城県)
三陸旅を終えて気仙沼に戻ってきた。

駅前の土産物屋で海産物を2品購入。
おかみさんの腰はとても低かった。

震災後にとどまり続けているすべての東北人には申し訳のない言い様になるけれど、旅立ち前に抱えていた不安の根本は、東北旅の最中で、あの最悪を極めた大地震がまた起こるのではないかという嫌な想像だった。

今じゃどこにいても安全とは言いがたい地震国に暮らしているとはいえ、オレにとって大震災の記憶が生々しい土地を巡ることには覚悟が必要だった。
気持ちも弱っていたのだろうし、ただでさえ旅立ち前はナーバスになる。

陸前高田の喪失は想像を絶した。
かつて坂の上から望んだ美しい街は波に破壊され尽くして、生き残ったのは「奇跡の一本松」のみ。

それを目当てに土産物屋ができていだ。
責めるつもりはない。
逞しいと感じる。

背後の黄色い建物と気仙川を挟んで位置する中学校が、当時の被害を伝える役目を負わされ、痛ましい姿を残していた。

5年経った現状から想像すると、復興には相当な時間を要するだろう。
ニュース報道は3月になればあの震災を思い出すが、他の月では目を向けることはない。

でもさ。
オレはこれからずっと覚えているよ。


13:51 一ノ関(いちのせき)駅(東北新幹線/東北本線/大船渡線 岩手県)
昨夜は暗かったから分からなかったけど、壁の色が茶色に塗り替わっていた。
駅にはこういうリニューアルの仕方もある。

ここから小牛田まで県を跨ぐ閑散区間になる。
5年前に初めて通っているけど記憶はない。

大船渡線は、竜が泳ぐように線路が蛇行していることから「ドラゴンレール」との別名を持つが、乗っていたんじゃ実感できない。

それよりも、千厩、摺沢が町としての姿を見せてくれて、土産物屋に人を集め、ボートを浮かべていた猊鼻渓観光の様子を覗けたことがうれしかったよ。
だからまた来るさ。

14:48 小牛田(こごた)駅(東北本線/陸羽東線/陸羽西線 宮城県)
一ノ関小牛田間の風景にたいして興味は持っていなかった。

一ノ関から乗ってきた蕾のような弓道女子が花泉駅で降りて、彼女の背中を目で追ったら味のある商店街が見えた。
2週間後にまた東北を旅するが、花泉で降りる計画が湧いた。

180度に広がる仙北平野を眺めていたら新田駅の手前で伊豆沼、内沼が見えてきた。

その後に止まっていった駅にも耳馴染みはなかったけど、駅前に仙北鉄道駅跡碑などがあって飽きさせない。
東京の郊外の方がよほどタイクツだ。

小牛田駅は駅前も含めてまったく変わっていなかった。
駅前旅館の旭旅館にも錆びは見えない。

3線が交わる大ターミナル駅にして、このささやかな風情と知名度の低さにひたすらに敬意を覚えている。

16:33 大河原(おおがわら)駅(東北本線 宮城県)
仙台駅で白石行きに乗り継ぐ。
次の福島行きをここ大河原で待つことにする。

白石川の一目千本桜の名所地。

花冷えのような寒さに迎えられて降りてみれば、こじんまりとはしているけどスナックビルが建っていて、仙台文化圏からの独立の気概か、春の酔客を見込んでか、夜の顔を持っていた。

仙南地域の顔を自覚しているような駅前風景を好ましく思い、白石川まで往復して駅に戻った。

新たに降りてみた町も再会した町も、東北は優しい。

特に気仙沼での時間を思い出してのことだが、とても満ち足りた気分でいる。

17:23 福島(ふくしま)駅(東北新幹線/東北本線/奥羽本線/福島交通飯坂線 福島県)
福島盆地へと下っていく車窓の見事さを書いたことはあっただろうか。

やがて信夫山、飯坂線のレトロな駅を2つ過ぎれば福島に到着。

東口の駅ビルはたぶん以前からは変わっている筈だ。
オレも長いこと旅をしている。
街の変貌を語れるほどにはなった。

20年前にEさんご夫妻と駅前ホテルに泊まったことがある。
大変な人通りの中を歩いたと思っているのは事実だろうか。
あるいは錯覚だろうか。

オウムの連中がテレビを席巻していた夜のことだった。

福島に着く度にあの日を思い出して、また歩いてみたいと思いながら、今日もまた去る。


18:25 安積永盛(あさかながもり)駅(東北本線/水郡線 福島県)
郡山で10数分の停車。
その間に水郡線が水戸に向かう。

安積永盛は東北本線と水郡線の分岐駅。
水郡線でこの駅に降りると、郡山まで乗っていた東北本線が数分後にやってくる。

かつての黄金週間に車でこの駅に寄ったことがある。
こんなにも何もない駅だったか。

もはや車窓は真っ暗で、車がいなくなれば駅前も真っ暗だ。
線路の反対側には国道が走っていて、ヨークベニマロやローソンの灯が見える。
郡山の町外れだ。

夕暮れを過ぎて、これから帰る町や人を想う。

21:25 久喜(くき)駅(東北本線/東武伊勢崎線 埼玉県)
快速ラビット乗り換えで思いがけず途中下車。
夜の久喜にお目にかかれたわけだ。
大宮寄りの蓮田より明かりは大きかった。

かつてオレは反対側の出口を歩いた。
寂しい郊外の街という印象だけを持って、当時暮らしていた金町のアパートに帰った。
マクドナルドがあるからそっちに行った。
行動の説明はそうなる。

あの時は東武鉄道の改札を使ったけれど、全国を旅するならJRの方が箔がつく。
今日それができて胸のつかえがひとつとれた。

ただの鉄道好きのどうしようもなくくだらない話だ。

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