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「鉄旅日記」2016年春【下北半島から東日本大震災被災地へ】初日(東京-下北)その1-郡山、安達、苦竹、東仙台、花泉、石越(東北本線、仙石線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/25 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年3月19日その1・・・郡山駅、安達駅、苦竹駅、東仙台駅、花泉駅、石越駅(東北本線、仙石線)

2016・3・19 9:16 郡山(こおりやま)駅(東北新幹線/東北本線/磐越東線/磐越西線/水郡線 福島県
2週間前とまったく同じ行程を辿って郡山にいる。

福島に向かう乗車率もまた同じで、3連休初日の街にはより多くの人が出ている。

練馬の空はすでに涙を出し尽くし、雨雲を追っかけるように北へ向かい、小山あたりで追いつき追い越し、さらに北へ向かった。

里では桜が開き始めている。

あの丘に駆け上がってその先に広がる景色を見てみたい。
白河あたりではそんな丘を見かけた。

この街に暮らす友人のEさんを訪ねて郡山を行き来していた頃も思ったことがあった。
その先へ、仙台へ、盛岡へ。

そしてそんな人生を今もこうして続けている。

10:03 安達(あだち)駅(東北本線/福島県)
雨雲が北へ向かう鉄路を追いついてきて、駅にしょぼ降る雨。

恙無い旅の始まりだが、4分が二本松を遠くした。
この駅に降りた後、4分後にやってくる上り列車に乗ってひとつ手前の二本松に降りる計画でいた。

二本松駅で降りて城跡を巡るのはこの旅の大いなる目的でもあったが、無闇とも思える大きな駅舎へとこの1月に移行した安達駅の構造に阻まれた。
何を目論んで、何を拠り所にデザインされたのか理解し難い駅舎内は、空きスペースであふれていた。

安達太良山の麓の町だろうが類する表示はなく、駅前には履物屋が一軒営業をしていて、オレに怪訝そうな目を向けている。

絶妙な肩もみの技術を持った当時馴染みの理髪店の奥さんが、あの山で毒煙にまかれて落命されてから20年近くなる。

当時も沈鬱な気分でいたけど、こうして人生が変わってから思い返してみれば、あの時のマスターの計り知れない悲しみがようやく正確に理解できる。


旧安達駅舎

苦竹(にがたけ)駅(仙石線/宮城県)にて

12:49 東仙台(ひがしせんだい)駅(東北本線/宮城県)
仙台駅に着いて仙石線地下ホームへと下りていく際、まるで雷に打たれたように仙台が身近な存在になったことを感じた。
昨日オープンした菓子屋では行列ができていた。

宮城野原に県営球場があるのだろう。
駅に到着すると馴染みのない球団歌が流れている。

2週間前には車内で楽天野球団について熱心に話している高校生たちに感心した。
ただAJが引退したことを知らなかったのは感心できない。

苦竹を降りると45号国道に面して広大な陸上自衛隊仙台駐屯地がある。
かつて日露戦争における遼陽会戦で、師団単位による前代未聞の大夜襲を敢行して勇名を馳せた第二師団本部があった場所だろう。
ここから東仙台駅まで歩く。

仙石線の踏切を過ぎると梅田川に架かる橋を渡る。
やけに川原が荒れていた。
あるいは5年前の震災でこの川をも津波が遡ったのかと思う。

郵便局、つぶれた煙草屋の脇を通り、跨線橋を越えて東仙台へ。

今週末のあたたかさは仙台をも包み、接続時間に追われて走るオレを汗ばませる。

今は塩釜で、この先で線路に立ち入った手合がいるとの理由で緊急停車している。
気は揉むが旅先でのことだ。
オレが解決すべき問題じゃない。

東仙台はすでに街中を外れ、郊外だった。

14:48 花泉(はないずみ)駅(東北本線/岩手県)
人っ子ひとりいない駅前。
音は絶え、町を歩くといくつもの希望が打ち捨てられた光景に遭った。

2週間前、あの商店街へと家路を辿った弓道女子の顔を今もよく覚えている。
彼女はこの先の人生と故郷であるこの町をどう絡ませようとしているだろう。

ホームには手入れの行き届いた松が植えられている。
いくつかの希望は絶えたが、古い宿屋が3軒、町の由緒を体で伝えていた。

そんな町の記憶をビールを飲みながら思い返している。
それにしてもこのあたりの花粉は、やけにオレに刺激を与える。

花泉の町並

15:13 石越(いしこし)駅(東北本線/宮城県)
上り列車で2駅引き返す。

乾いた風が吹いて町は古びている。
映画に出てくるアメリカは、オレにとってこんな場所だ。

寂れていて、角には男たちが集う酒場がある。
ここには随分と古ぼけて渋いのが居座っていたよ。

夜になったら、くたびれた男たちがどこからともなく歩いてやってくる。
物悲しくも人間的な風景だ。

つい先日、得意先との契約が満了したMさんは栗原を故郷に持っている。

かつてここから栗原へと向かう田園列車が走っていた。
専用駅舎は取り払われていたけど、鉄路はまだそっちに向けて敷かれていた。

彼女にはこの駅を利用する機会はあったのだろうか。
そしていま彼女は元気でいるだろうか。

東北本線の小牛田一ノ関間は国境を跨ぐ閑散区間。
その中で比較的大きな町である石越に降りてみたかった。

さっき塩釜でしばしの運転見合わせになった時は、1時間に1本しか列車が走らないこの区間での旅程の変更を強いられる可能性を考えて暗然となった。
ここに降りることは、この旅の大きな目的のひとつだったのだと我ながら悟った。

様々想い、ビールを飲んで町を離れる。

再び下り列車へ。
再びの花泉の空に暗雲が広がっている。
このあたりの広い空を一枚写して帰りたいと思っている。

石越駅前風景


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