*

「鉄旅日記」2016年春 初日(東京-下北)その1-郡山、安達、苦竹、東仙台、花泉、石越(東北本線、仙石線) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】

公開日: : 最終更新日:2025/05/29 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年3月19日その1・・・郡山駅、安達駅、苦竹駅、東仙台駅、花泉駅、石越駅(東北本線、仙石線)

2016・3・19 9:16 郡山(こおりやま)駅(東北新幹線/東北本線/磐越東線/磐越西線/水郡線 福島県
2週間前とまったく同じ行程を辿って郡山にいる。

福島に向かう乗車率もまた同じで、3連休初日の街にはより多くの人が出ている。

練馬の空はすでに涙を出し尽くし、雨雲を追っかけるように北へ向かい、小山あたりで追いつき追い越し、さらに北へ向かった。

里では桜が開き始めている。

あの丘に駆け上がってその先に広がる景色を見てみたい。
白河あたりではそんな丘を見かけた。

この街に暮らす友人のEさんを訪ねて郡山を行き来していた頃も思ったことがあった。
その先へ、仙台へ、盛岡へ。

そしてそんな人生を今もこうして続けている。

10:03 安達(あだち)駅(東北本線/福島県)
雨雲が北へ向かう鉄路を追いついてきて、駅にしょぼ降る雨。

恙無い旅の始まりだが、4分が二本松を遠くした。
この駅に降りた後、4分後にやってくる上り列車に乗ってひとつ手前の二本松に降りる計画でいた。

二本松駅で降りて城跡を巡るのはこの旅の大いなる目的でもあったが、無闇とも思える大きな駅舎へとこの1月に移行した安達駅の構造に阻まれた。
何を目論んで、何を拠り所にデザインされたのか理解し難い駅舎内は、空きスペースであふれていた。

安達太良山の麓の町だろうが類する表示はなく、駅前には履物屋が一軒営業をしていて、オレに怪訝そうな目を向けている。

絶妙な肩もみの技術を持った当時馴染みの理髪店の奥さんが、あの山で毒煙にまかれて落命されてから20年近くなる。

当時も沈鬱な気分でいたけど、こうして人生が変わってから思い返してみれば、あの時のマスターの計り知れない悲しみがようやく正確に理解できる。


旧安達駅舎

苦竹(にがたけ)駅(仙石線/宮城県)にて

12:49 東仙台(ひがしせんだい)駅(東北本線/宮城県)
仙台駅に着いて仙石線地下ホームへと下りていく際、まるで雷に打たれたように仙台が身近な存在になったことを感じた。
昨日オープンした菓子屋では行列ができていた。

宮城野原に県営球場があるのだろう。
駅に到着すると馴染みのない球団歌が流れている。

2週間前には車内で楽天野球団について熱心に話している高校生たちに感心した。
ただAJが引退したことを知らなかったのは感心できない。

苦竹を降りると45号国道に面して広大な陸上自衛隊仙台駐屯地がある。
かつて日露戦争における遼陽会戦で、師団単位による前代未聞の大夜襲を敢行して勇名を馳せた第二師団本部があった場所だろう。
ここから東仙台駅まで歩く。

仙石線の踏切を過ぎると梅田川に架かる橋を渡る。
やけに川原が荒れていた。
あるいは5年前の震災でこの川をも津波が遡ったのかと思う。

郵便局、つぶれた煙草屋の脇を通り、跨線橋を越えて東仙台へ。

今週末のあたたかさは仙台をも包み、接続時間に追われて走るオレを汗ばませる。

今は塩釜で、この先で線路に立ち入った手合がいるとの理由で緊急停車している。
気は揉むが旅先でのことだ。
オレが解決すべき問題じゃない。

東仙台はすでに街中を外れ、郊外だった。

14:48 花泉(はないずみ)駅(東北本線/岩手県)
人っ子ひとりいない駅前。
音は絶え、町を歩くといくつもの希望が打ち捨てられた光景に遭った。

2週間前、あの商店街へと家路を辿った弓道女子の顔を今もよく覚えている。
彼女はこの先の人生と故郷であるこの町をどう絡ませようとしているだろう。

ホームには手入れの行き届いた松が植えられている。
いくつかの希望は絶えたが、古い宿屋が3軒、町の由緒を体で伝えていた。

そんな町の記憶をビールを飲みながら思い返している。
それにしてもこのあたりの花粉は、やけにオレに刺激を与える。

花泉の町並

15:13 石越(いしこし)駅(東北本線/宮城県)
上り列車で2駅引き返す。

乾いた風が吹いて町は古びている。
映画に出てくるアメリカは、オレにとってこんな場所だ。

寂れていて、角には男たちが集う酒場がある。
ここには随分と古ぼけて渋いのが居座っていたよ。

夜になったら、くたびれた男たちがどこからともなく歩いてやってくる。
物悲しくも人間的な風景だ。

つい先日、得意先との契約が満了したMさんは栗原を故郷に持っている。

かつてここから栗原へと向かう田園列車が走っていた。
専用駅舎は取り払われていたけど、鉄路はまだそっちに向けて敷かれていた。

彼女にはこの駅を利用する機会はあったのだろうか。
そしていま彼女は元気でいるだろうか。

東北本線の小牛田一ノ関間は国境を跨ぐ閑散区間。
その中で比較的大きな町である石越に降りてみたかった。

さっき塩釜でしばしの運転見合わせになった時は、1時間に1本しか列車が走らないこの区間での旅程の変更を強いられる可能性を考えて暗然となった。
ここに降りることは、この旅の大きな目的のひとつだったのだと我ながら悟った。

様々想い、ビールを飲んで町を離れる。

再び下り列車へ。
再びの花泉の空に暗雲が広がっている。
このあたりの広い空を一枚写して帰りたいと思っている。

石越駅前風景


関連記事

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、関東途中下車旅】その2-結城、下館、川島、岩瀬、笠間、十王、小木津、磯原、湯本、内原、羽鳥、土浦、ひたち野うしく(水戸線、常磐線)

鉄旅日記2013年3月31日その2・・・結城駅、下館駅、川島駅、岩瀬駅、笠間駅、十王駅、小木津駅、磯

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】2日目(三ノ宮-琴電琴平)-三ノ宮、元町、和田岬、兵庫、須磨、西明石、加古川、網干、上郡、和気、高松、志度、琴電屋島、瓦町、一宮、琴平(山陽本線、和田岬支線、瀬戸大橋線、予讃本線、高徳本線、琴平電鉄志度線、琴平電鉄琴平線)

鉄旅日記2009年5月2日・・・三ノ宮駅、元町駅、和田岬駅、兵庫駅、須磨駅、西明石駅、加古川駅、網干

記事を読む

「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】初日(東京-秋田)-保谷、高崎、長岡、新津、新発田、村上、鼠ヶ関、酒田、上浜、秋田(西武池袋線/高崎線/上越線/信越本線/羽越本線)

鉄旅日記2011年8月13日・・・保谷駅、高崎駅、長岡駅、新津駅、新発田駅、村上駅、鼠ヶ関駅、酒田駅

記事を読む

「鉄旅日記」2006年如月 最終日-安房勝山、君津、木更津、上総亀山、蘇我(内房線/久留里線/京葉線) 【鉄道旅に目覚め、1泊2日で房総半島にまいりました。】

鉄旅日記2006年2月5日・・・安房勝山駅、君津駅、木更津駅、上総亀山駅、蘇我駅(内房線/久留里線/

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.2 その1-天王台、植田、泉、いわき、富岡(常磐線) 【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】

鉄旅日記2019年3月10日・・・天王台駅、植田駅、泉駅、いわき駅、富岡駅(常磐線) 2019・3

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、名古屋往復】その1-新宿、塩崎、韮崎、日野春、富士見、青柳、奈良井、木曽福島、須原、中津川(中央本線)

鉄旅日記2012年3月25日その1・・・新宿駅、塩崎駅、韮崎駅、日野春駅、富士見駅、青柳駅、奈良井駅

記事を読む

「鉄旅日記」2017年冬 最終日(喜多方-東京)その3-鬼怒川温泉、東武ワールドスクウェア、上今市、今市、下今市、南栗橋(野岩鉄道/東武鬼怒川線/東武日光線 【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】

鉄旅日記2017年12月3日・・・鬼怒川温泉駅、東武ワールドスクウェア駅、上今市駅、今市駅、下今市駅

記事を読む

「車旅日記」2004年春 4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その2-雄武町日の出岬、マリーンアイランド岡島、千畳岩、神威岬、クッチャロ湖、さるふつ公園、宗谷岬、稚内駅 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】

車旅日記2004年5月4日・・・雄武町日の出岬、マリーンアイランド岡島、千畳岩、神威岬、クッチャロ湖

記事を読む

「車旅日記」2005年春 初日(松本-富山)走行距離317㎞ その1-新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島駅、飯山駅 【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】

車旅日記2005年4月29日・・・新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 4日目(富良野-大館)その2-南千歳、苫小牧、登別、東室蘭、北舟岡、伊達紋別、長万部、森、新函館北斗、大館(千歳線/室蘭本線/函館本線/北海道新幹線/奥羽本線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月13日・・・南千歳駅、苫小牧駅、登別駅、東室蘭駅、北舟岡駅、伊達紋別駅、長万部

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その1 ‐松戸、神立、友部、水戸、いわき(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・松戸駅、神立駅、友部駅、水戸駅、いわ

2021年神無月~2022年如月【SNSへの投稿より】写真をお楽しみいただけますと幸いでございます。ー下高井戸商店街、辻清人先生、紅葉の頃、金町夕景、今年も暮れゆく東京、金町睦月如月、柴又

2021年10月30日 母校を訪ねるのは卒業以来30年振りでご

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その4 ‐立小路、赤倉温泉、村山、さくらんぼ東根(陸羽東線/奥羽本線/山形新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・立小路駅、赤倉温泉駅、村山駅、さく

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その3 ‐瀬見温泉(陸羽東線)/湯前神社/山神社 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月6日・・・瀬見温泉駅(陸羽東線)/湯前神社/

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その2 ‐川渡温泉、鳴子御殿湯、鳴子温泉(陸羽東線)/東鳴子温泉神社 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・川渡温泉駅、鳴子御殿湯駅、鳴子温泉

→もっと見る

    PAGE TOP ↑