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「車旅日記」2003年夏【北海道初上陸。2,300㎞を移動した5日間の記録でございます。】初日(函館-上ノ国-札幌)走行距離471㎞ -知内駅、上ノ国もんじゅ、瀬棚町、いわない、小樽駅、札幌東急イン

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2003年

鉄旅日記2003年8月13日
2003・8・13 10:30 知内駅(228号国道-道の駅しりうち)(函館空港より65㎞)
早朝の東京は雨のち曇り。
金町をまだ暗いうちに出たのは初めてのことになる。
常磐線は空いていたが、京浜東北線は上野からは座れず、確か秋葉原あたりで空は明るくなり、雨も止んだ。

まだ6時というのに羽田空港の出発ロビーは混雑している。
気持ちが壊れていく前兆を感じたが、どうにか持ちこたえた。

機内に入り、用意されたスーパーシートにいくと、そこが素晴らしい。
ゆったりとした席で、これまでに座ってきた席とはまるで違う。

さらに窓側でもあり、東京上空の曇り空を抜けると青空の中に入り、真下には遥かな雲海が見渡せる。

アナウンスで十和田湖の姿を確認して、しばらくすると大地の果てが見えた。
これが津軽海峡かと満ち足りた気持ちでいると、また同じような地形が見えてきて訳が分からなくなっていると、函館上空にさしかかったとのアナウンス。
とうとう津軽海峡を越えた。

函館空港は貧相ともいえる造りで若干がっかりした。
北の空の玄関口は新千歳としても、日本有数の港町の空港として期待していた。
地方空港にしてはきれいな山口宇部空港の印象がどうやら強すぎたようだ。

北の大地に上陸してから早くも2時間が経過。
箱館を後にして木古内、そして知内へ。
今夜はこの町でサマー・カーニバルが行われる。

ラジオじゃ、甲子園の秋田×天理のゲームセットの実況。
天理が3×2で勝ち、サイレンが鳴った。

この町は北島三郎さんの出身地ということで、さっきから絶え間なく彼の歌声が流れている。
海からの風は涼しく、窓を閉めることを考えたほどだが、気温は29度。
入道雲を連れた空はよく晴れている。

こんなにも濃厚な潮の香りが漂う国道を走ったことはない。
廃屋をよく見かけるが、函館を出て以来、国道上に人の暮らしは途切れることなく続いていた。

ここは津軽海峡線の停車駅。
工事中ということもあるのだろうが、侘しさを感じさせる駅だ。
駅員の姿はない。
オレの最初の停車地としては相応しい。

箱館を出て海峡へ向かう線路は、この町を出ると海底の下を往く。

12:51 228号国道(追分ソーランライン)‐道の駅上ノ国もんじゅ(函館空港より159㎞)
よく晴れて、涼しい風が通る。
こんなに気持ちのいい夏の日は最近じゃ記憶にない。

横綱千代の富士を生んだ福島町、そして城下町松前。
国道の両側に整然と並ぶ家々。

富山あたりの風景を思い出させる。
道南は本州に近いこともあるのだろう。
北海道にいるという実感は湧かず、懐かしさを感じていた。

松前では、川の途中まで渡された廃線跡の橋を見かけた。
この大地の歴史に登場する一番古い町には広大な海峡だけが広がり、竜飛崎は遠い。

やがて国道からは町が消えて、低い山並が濃い緑をまとい延々と延びる。
左側には果てしなく日本海。
その真ん中を往く車通りの少ない国道は、函館に向かう上空から見下ろした際に見えた川のように、白く蛇行している。

松前を過ぎて、ようやくオレはこの北の大地のスケールの大きさを感じた。
こんなに広々とした海辺の風景は、おそらく本州には見当たらない。

行先を眺めると、半島のように突き出した先端に白く密集した町がある。
あそこが江差線の終点、江差だろう。
地図上に四島と記された島も見えて、振り返ると白く巨大な風力発電塔が7本見える。

15:13 229号国道-瀬棚町パーキング(函館空港より277㎞)
ずっと青かった空はトンネルの手前で雲まで取り払い、まさに真っ青になった。
海は輝き、ビーチハウスのない海岸で、道南人はそれぞれにパラソルやテントを持ち寄り海水浴を楽しんでいる。

小樽まで299㎞という表示に仰天してペースを上げ、多少冷静さを失ってしまったが、素晴らしい場所を走っているという感覚はきちんと残っている。

久し振りに少し大きな町を過ぎた。
北桧山町。

小樽まで、こうして市制の敷かれていない町をいくつも過ぎていく。

17:17 229号国道-道の駅いわない(函館空港より371㎞)
ここでひと眠り。
今朝は早かったから。
我ながらムリもないと思う。

それにしても今日の走行距離はこんなはずじゃなかった。
あらためて北の大地の大きさに驚き、さっきまではその巨大さに恨みに近い感情まで沸き起こったが、海辺の道は素晴らしかった。

箱館からずっとその素晴らしさと付き合ってきたんだ。
飽きるほどに海を眺め、やがてその風景がオレの左側に展開され続けること自体が自然と思えるほどに付き合いは深まった。
道も広くていい。

トンネルが多いけど、そのトンネルを抜けるとまた海岸線に出る。
地形上の都合だろうが、道内のドライバーの気持ちを和ませる配慮かとも思えてくる。

ここはなかなかきれいな町だ。
空は今も青く澄んでいる。

19:15 小樽駅(函館空港より431㎞)
今日の目的地、北の文化都市にやってきた。
昭和9年の建造物という駅舎はランプの灯に彩られ、旅行者を暖かく迎え、あるいは見送る。

街には威厳を誇る建物がいくつも残り、運河へ向かう道を廃線跡がレトロな遮断機とともに横切り、運河周辺の旧倉庫は外観を残したまま食堂や土産物屋として再生して、駅と同じように橙色の灯を一帯に灯している。

観光地らしく、なかなかの賑わいだ。
運河を渡す橋や、運河に沿った小道では誰もが約束の時間を待っている。
騒々しさはなく、街は清潔感に包まれている。

門司港が懐かしい。
去年の今日。
朝を迎えた下関で海峡のムコウの街を見て、1年後にまた来ると誓った。

そしてその1年が経過して、その間にオレは門司港にも現れ、こうして似たような北の街にやってきた。
その1年の間には、あの夏の日には考えられもしなかったことがいくつか起こった。

運河のあたりを除けば街を歩く人の数は多いとは言えないが、これくらいがちょうどいい。
とても静かで、北の男たちの口は一様に固そうだ。

小樽は街全体がまるでランプのようだ。

2016年8月11日撮影

22:27 札幌東急イン737号室(函館空港より471㎞)
北の都がこんなにも巨大な街だとは想像できなかった。
駅、テレビ塔、ススキノの繁華街、呼び込みの数。
どれもが想像を絶していた。
大袈裟ではなく、まさに度肝を抜かれた。

新ラーメン横丁に行って、このホテルに宿泊したからといって札幌を分かったような顔はできない。
ほとんど動かずにこの部屋に落ち着いている現状を反省するが、このホテルには3日後にも宿泊する。
すべてが巨大な大地だ。
この街で十分な時間をとれるように、帯広からのルートを再検討しておく必要がある。

小樽駅を出ると運河まで戻り、東へ続く街並を眺めた。
奥行きのある街で、角にある印象的な塔がライトアップされていた。

小樽を離れる際には天狗山の頂に光る「天」の文字が見送ってくれた。
「天」に見えたが、あるいはやはり「大」だったのだろうか。

やがて小樽築港という新しい街に出る。
そこには巨大な観覧車やアミューズメント・エリアが並んでいる。
小樽にも新たな開発地区が付与され、観光客はこれからもっと増えていくだろう。

さすがは5号国道。
札幌までの道は2車線で車通りも多い。
渋滞の発生が見られなかったのは今日だけの現象だろうか。

札幌に近づくにつれて大きな街が前方に構えている空気は伝わってきたが、札幌はいきなりその巨大な姿を現した。
街への入り方はいくつかあるが、あの驚愕は忘れがたい。

こうして始まった旅。
想像以上の距離を走ることになることは今日を生きてよく分かった。
函館の記憶は最終日に作る。

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