「車旅日記」2003年夏【北海道初上陸。2,300㎞を移動した5日間の記録でございます。】2日目(札幌-旭川-網走-北見)走行距離431㎞ -岩見沢駅、砂川駅、旭川駅、白滝PA、遠軽駅、サロマ湖、網走刑務所、網走駅、北見東急イン
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旅話 2003年
鉄旅日記2003年8月14日
2003・8・14 10:23 岩見沢駅(8月13日の函館空港より520㎞)
晴度3~4割の札幌を後にする。
札幌は朝の風景も大きい。
時計台を過ぎて、新札幌を抜け、12号国道を北へ。
昨日とは違って街が続いている。
江別の酪農大の広大な敷地に感嘆し、石狩川の出現に喜び、一望の空知平野を見渡し岩見沢へ。
地方都市らしい、背伸びをしていない街。
かつてこの街からやってきて甲子園を沸かせた駒大岩見沢を熱心に応援した。
エースの大西投手。
彼はどうしているだろう。
50㎞離れているけれど、ここはまだ札幌の延長のように感じる。
北の大地にも街は続く。
昼食は旭川で。
11:33 砂川駅(8月13日の函館空港より558㎞)
線路伝いに北へ向かう。
美唄という美しい地名の街を過ぎ、道央の小さな街へ。
かつてこの街で、王者ジャンボ鶴田に喧嘩番長ディック・スレーターが挑戦するUN戦が行われている。
そんな王座戦が組まれたことが信じがたい。
ちょっと見渡したところで一番立派な建物はパチンコ屋。
気温は上がり、おそらく30度はあるだろう。
湿気がなく過ごしやすい。
得意先から連絡があった。
東京は雨で気温25度。
ひどい湿気の中で、東京にい続ける人々は今年の夏はもう終わったと思っている。
でもオレは北の大地でも晴男。
これから旭川を目指す。
美唄あたりでは国道上の風景にしばらく変化はなく、右手に函館本線の線路、左手には遠く山裾まで広がる平野。
途方もない気分でいた。
おそらくシベリア鉄道の車窓風景とはこんな感じだろう。
とにかく視界が広く、空が大きい。
街はどこも碁盤の目のように区画されている。
どこも歴史の新しい街だが、なぜかどこも懐かしい。
かつてはお洒落に見えた土産物屋が年を重ねたような姿。
そんな印象を与えた砂川駅。
この街が辿ってきた歴史を知りたいと思う。
13:54 旭川駅(8月13日の函館空港より618㎞)
滝川、深川。
前方および視界の左側に180度に広がる空を見る。
これが北の大地。
目ぼしい建物や山並が尽きると、そんな風景に出会う。
通りの建物はどれもペンキが剥がれグレー。
ある意味で味わいたかった物悲しい気分にもなり、広大な平野の一点として存在していることに満足していた。
やがて峠道。
石狩川との再会はまたしても一瞬のうちに過ぎて、坂の上から見えた街が、ここ旭川。
駅ビルの真横にHBC北海道放送の塔が屹立している。
札幌や青森でも見かけた北の街の象徴的な風景。
旭川は空港も持つ道央の中心都市。
駅から北に約1㎞ほど繁華街が延びて、駅前には西武百貨店もある。
昼食は旭川ラーメン。
1時間じゃ短い街で、この街の子供たちの努力は舞台を甲子園へ移している。
勝ち残っているのだろうか。
15:38 旭川紋別自動車道 白滝PA(8月13日の函館空港より695㎞)
39号国道を上川町まで。
北上川と石北本線に挟まれた道には広い空はなく、見覚えのある風景を原野化したような道を往く。
道産子はよく飛ばす。
初老の女性にまで追い立てられた。
上川町から273号国道へ。
そこもまるでハイウェイだった。
線路はいつの間にか密林に姿を消して、網走へと方向を定めたオレの前にフリーウェイが現れた。
どこまで続いているのか知らないが、ルート変更の意思を尊重してくれそうな北の大地のもてなしだった。
峠に差しかかるここ白滝に、雲は低く垂れこめ、そして細い雨が落ちてきた。
16:41 遠軽駅(8月13日の函館空港より746㎞)
白滝、丸瀬布、瀬戸瀬。
小さな町が続き、242号国道へ。
遠軽という町に着く。
遠くから瞰望岩が見える。
あんな巨大な岩の上に展望台を作り上げた人間というものへの敬意が沸く。
そして、まるで温泉旅館のような駅へと誘われる。
函館からの道中で今が一番幸福感に包まれているのかもしれない。
これといって特色が見当たるわけではないが、肌寒く薄暗くなりかけた夏の日に辿り着いて、何やら旅の達成感のようなものを味合わせてくれた町だった。
雑貨屋さんの優しいおかみさんも忘れがたい。
これから湧別へ。
いよいよオホーツク海と出会う。
まだ見ぬ素敵な女性に会いにいくようなものだ。
気分は最高潮。
17:35 238号国道‐道の駅サロマ湖(8月13日の函館空港より789㎞)
東の果てはまだ。
オホーツク国道に入ってから見えたよ。
地の果てを。
地平線を。
あの頃はちょうど西の空から茜色が降りてきていた。
左は果てしない緑の牧場。
素敵な場所がこの国にはまだまだある。
残念だが、この場所からは国内で3番目の大きさを誇るサロマ湖は見えない。
でも坂の上からは見えた遥かなる湖。
いい眺めだった。
湖の果てに見えたのがオホーツク海とを隔てる砂州。
それはまるで岸壁が延びているように見えた。
18:35 網走刑務所(8月13日の函館空港より843㎞)
能取湖、網走湖と水辺の風景が続き、小さな明かりを灯したような川辺の穏やかな街に着いた。
ここは網走。
赤い橋が架かり、そこを渡ると赤い塀が連なる。
かつての網走監獄。
何だろう、あの臭いは。
汗を焼いたような臭いが漂っていた。
正門の木扉に触れながら、なぜ男は北の番外地に惹かれるのか考えた。
想像以上に厳しい寒さと環境。
様々なものに思いを馳せて最果ての街まで辿り着く。
刑務所を囲む森の上に広がる空が茜に染まっている。
18:48 網走駅(8月13日の函館空港より845㎞)
網走で、空は青いままに暮れていく。
すてきな情感だ。
東の果ての街に訪れる夏の夕暮れは寒く、監獄博物館が賑わっているというニュースが駅で流れていた。
明治23年。
近代日本の新しくて苦い歴史の街だ。
仄かな明かりを灯したような川辺の街。
それがオレにとっての網走。
もう行くよ。
オホーツク海とは明日正式に握手する。
今日は店じまいした「駅そば」が侘しい。
遠軽でもそうだった。
夏の駅に暖房が焚かれていた。
22:17 北見東急イン1122号室(8月13日の函館空港より902㎞)
網走川に通じる運河に沿った39号国道を西へ。
闇に包まれようとしている網走湖に出る。
湖畔では数えきれないほどのテントが設置され、そこが最果てのアウトドアのメッカであることを知る。
次の街まで。
暗かったけど、周囲にはオレが見たいと思っていた北の風景が散らばっていることが分かった。
女満別、美幌。
旭川を過ぎるとにわかに地名にアイヌ色が濃くなる。
暗闇に浮かぶ女満別駅は、まるでケーキの国の建物のように彩り豊かだった。
網走から約50㎞、約1時間。
道東の中心都市、北見。
随分と遠くから駅前の東急インホテルの赤い看板が見えた。
今夜は祭。
北へ延びる繁華街に出店が並んでいる。
気分にあった店を探す気力はその時のオレにはなく、食事はホテルで。
なすこともなくビール3杯につまみを2品。
それから街に出た。
祭の後の繁華街にはまだ人が残り、外人が二人しゃがみこんでビールを飲み、オレが着ていたストーンズのTシャツに対して何かを言いたげだった。
先へ進むとグラマーな道産子娘が立っている。
駅に戻るように並行する別の道を。
その通りには人の姿はなく、駅近くで交差する一際明るいアーケード街にも人影はない。
なるほど。
こういう街か。
駅の待合室には、この街の者ではないのが4、5人。
ひとりは横になって眠っている。
地下通路を通り、駅の反対側に出ると、そこに店はなく駐車場が広がり、広場では若者たちがスケボーを楽しんでいる。
通ってきた地下通路は避けて、明るい跨線橋を通って元いた場所に戻る。
駅では仲の良さそうな若い女性がリラックスしながら話し込み、自力で漕ぎついた自転車部隊がたむろしていた。
おそらく寝場所を定めたのだろう。
明日は最大の走行距離を記録することになるだろう。
この大地の果てしなさを想い、シベリア鉄道を夢見る。
久し振りに北に向かう旅は、オレの人生のある一瞬だけを照らすだけでは済まさないだろう。
甲子園は雨か。
今日の大会は中止になったとのこと。
「熱闘甲子園」を楽しみにしていたのに。
北見の夜景は、北の街の夜景に相応しい。
これくらいがいい。
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