*

「車旅日記」1998年夏 初日(東京-青森フェリー埠頭)-東京町田、加平PA、千代田PA、東海PA、差塩PA、福島松川PA、泉PA、金成PA、北上金ヶ崎PA、岩手山SA、湯瀬PA、津軽SA、青森フェリー埠頭 【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 1998年

車旅日記1998年8月12日

1998・8・12 7:21 東京町田
夏の第1ラウンドのツアーから3週間が経過して、またツアーの季節がやってきた。

甲子園には横浜高校の怪童松坂投手が現れて、季節感としての夏が盛の中、季節としての夏は終わりゆこうとしている。

出発の空は曇り。
予報では東京は雨。
この連休はきっと涼しいのだろう。

旅立ちは朝が相応しい。
朝食を済ませてシャワーを浴びて、まだ家族も揃っている。

今回はちょっと長旅になる。
だからちゃんと挨拶くらいしておきたい。

それじゃまた5日後に、ここで。

9:27 首都高速自動車道-加平PA 52㎞
胸のあたりがもやもやしている。
渋滞のせいだろうか。

そう言えば空気も悪い。
おそらくそうした要素も関係するのだろう。

家を出てしばらくすると、昨日オレに声をかけて帰っていった彼女のことが気になりだして、なぜかとても切なくなった。

紛れもなくオレは彼女に思いを寄せている。
そして東京に未練が生まれて、すぐに思い直す。

オレは彼女にとって何者でもない。
連絡先すら知らない。
彼女に対してどういう行動もとれない。

この夏にも諦めがあった。
そうして男は旅に出る。
車寅次郎がそうだった。

今は一刻も早くこの澱んだ空の下から抜け出したい。
しかし道路状況は芳しくない。

ここにきて温度は上がり、体からは大量の汗が噴き出している。
次々に高速で通り過ぎていく車の振動に気持ちも尖る。

さあ、前途に明かりを見つけよう。
幸いなことに、東京に残っているべきだったという後悔は見当たらない。

自分でも言うのもなんだが、サングラス姿がよく似合っている。

10:48 常磐自動車道-千代田PA 110㎞
関東平野に雨が降りてきた。
渋滞が続いている。

ひとしきり走って、また止まったように進む。
この単調さに眠気が襲ってくる。

オレにはクーラーの冷気は向いていない。
仕事中は冷房の効いた車の中でよく眠っていた。
もちろん運転するのはオレじゃないが。

だから窓を開けて走っている。
そんなオレの走行を雨が邪魔している。

夏休みに、本当の夏を期待してここでひと休みしている人々は、この曇り空の下で何を思っているのだろう。
やはり計画通りに出かけてきたことを喜んでいるのだろうか。

それならそれがいい。
やけくそになって無茶苦茶な運転をされるのは迷惑だ。

家を出て100㎞が過ぎた。

しかし北海道とはつくづく遠いと思う。
まだ調子が上がってこないから尚更そう思う。

旅の始まりはいつも同じようにどこか迷っている。

12:09 常磐自動車道-東海PA 162㎞
雨が上がり虫の声が騒がしくなってきた。

サングラスをかけるとアウトロー気分にぴったりはまる。
ただ、すべての景色がセピア色に見えることが難点として挙げられるけれど。

この先道路状況は好転する。
渋滞にはまるのはしゃくだが、この時期にこの騒ぎに巻き込まれたのが90分で済んだことは幸運と思わなければならない。

音楽は日本のミュージシャンに変えた。
歌いながらいけば気分も晴れる。
そしてだんだん日常が離れていく。

不思議なものだ。
いつも思うが、こうして世俗を離れることは人間として、いや動物としてとても必要なことのように思う。

ただ単純に、「生きる」という行為を想うから。

13:33 磐越自動車道-差塩PA 250㎞
少し横になった。
夏本来の気候じゃないとはいえ、快眠できるほど甘くない。
だけどそれでいいと思う。

ベンチに座ってゆっくり煙草を吸った。
こんな時の煙草はいい。
とても平和な気持ちでいた。

日常のしょうもないことは何も浮かんでこない。
そして不意に4日前に町田の風俗店で肌を合わせた女性のことを想った。

潤いのない日々に生じたあの記憶は、オレにとってどれだけ貴重だったかを同時に考えた。
わずか30分ばかりとはいえ、あの女性には計り知れない好意を持った。

「10$の恋」。
そんな切ない楽曲が浮かぶ。

オレの背には「海へ」と刻まれた記念碑がしゃがむように立っている。

とても平和だ。
自然も美しい。

15:00 東北自動車道-福島松川PA 329㎞
夏の日差しが戻っている。

ギターを積んだライダーは木陰でひと休み。
中年のご夫婦がベンチに座って小豆のアイスキャンディをかじっている。

オレもひとりならひとりらしく、それなりの態度をとれたらいいと思うが、うまい具合に思いつかない。

それぞれの夏。

あのライダーにはどこかの町でステージでも用意されているのだろうか。
そうじゃなく、誰に聞かすわけでもなく、例えば川の畔でつま弾くとでも言うのなら、ついて行ってもいい。

こうして風の中で夏を楽しむのもいい。

蝉と秋の虫が上手なハーモニーを聞かせてくれている。
期間限定でしか聞けない珠玉の演奏だよ。

17:06 東北自動車道-泉PA 427㎞
東北道中間地点の表示を見て、まだまだ先が長いことを知った。
一日で行けるとはいえ、日本は決して狭くない。

渋滞は岩手に入っても発生しているらしい。
さすがにこの時期といえる。

少し疲れていたけど、横になって目を閉じたら楽になった。

青函フェリーの最終が出るまで、あと9時間ばかり。
たどり着く頃にはきっとくたくたになっているだろう。
今日の内にたどり着かなくてもいいじゃないかという内なる意見もある。

体との相談になる。
調子はいいよ。

18:15 東北自動車道-金成PA 493㎞
さすがに疲れたよ。
呆然となった状態で運転もしていた。
オレを追い抜いていく周りばかりが気になった。

これは疲れている証拠だ。
いずれにしろ一日に500㎞も走らなければならない理由などどこにもない。

ケータイは意味不明の信号を発信している。
ここらはきっとツーカーのサービス圏外なのだろう。
暑くて壊れたとも考えがたいし。

さて、これからだ。
5月に通っているとはいえ、この果てしない東北道を走破するのにあとどれくらいの時間と、どれくらいの体力が残っていればいいのかが分からない。

気持ちが乗ればかなりいけるのだろうが。

19:14 東北自動車道-北上金ヶ崎PA 543㎞
ハイウェイでの風を受けての走行が負担になることが分かったよ。
窓を閉めればずいぶん違う。
音楽も耳に心地よくなってきた。

青森までの正確な距離が出た。
計画通りいこう。

ここからがタフだが、実行前はいつでもその気でいる。
そしてそれを正確に実行する意義は大いにある。

ここ4日間はひとりで生きていかなければならない。
問題はその方法だ。

とりあえずハイウェイの走破。
話はそれからだ。

20:50 東北自動車道-岩手山SA 622㎞
かなり調子が上がってきている。

ここがどういう場所なのか暗くてよくは分からないが、ひとつだけはっきりしていることは、ここが今夜の目的地から150㎞ほど離れたところということ。

不安を抱えながらの走行だったけど、もう大丈夫。
路上はオレの生活の場。

一日に800㎞も走るのはこれが最初で最後になるかもしれない。
充実もしている。
でも何かが足りない気がしている。

それが何なのかオレにもよく分からない。

21:40 東北自動車道-湯瀬PA 670㎞
八戸方面に分かれていく分岐点を過ぎて、今夜最後のルートに入った。

あれだけ賑わっていた路上もここまで来ると通る車さえまばらになり、ここに車を止めているのはオレと日通の運転手のみ。
思えば遠くへ来たものだ。

調子が上がっている。
そのことを喜びたい。

どこへでも行ってやるという気力も生まれてきている。
そう、これからだよ。

ここは秋田県らしい。
青森はまだ先。

北へ進路をとって700㎞。
そこが今夜の目的地。

22:30 東北自動車道-津軽SA 732㎞
友の声を聞いた。
さっきは母親の声を聞いた。
また不安がよぎってきた。

でもこれはオレの性分。
ムリはしていない。

大丈夫。
きっと、いい旅になる。

23:52 青森フェリー埠頭 774㎞
深夜にできた車と人の列。
車検証を持って一応は並んだよ。

想定していたフェリーで北海道に渡るのは困難であることを聞いた。
何しろこれほどの列。
事態はオレが考えているほど甘くないようだ。

だけどがっかりはしない。

とりあえず風呂を見つけて汗を流そう。
あとのことはそれからだ。

関連記事

「鉄旅日記」2016年春 初日(東京-水沢)その2-前谷地、柳津、気仙沼、一ノ関、水沢(石巻線/気仙沼線/大船渡線/東北本線) 【東日本大震災被災地へ】

鉄旅日記2016年3月5日その2・・・前谷地駅、柳津駅、気仙沼駅、一ノ関駅、水沢駅(石巻線/気仙沼線

記事を読む

2018年初秋 最終日(桑名-東京)その1-桑名、養老、大垣、揖斐、垂井、美江寺、本巣、樽見(養老鉄道/東海道本線/樽見鉄道) 【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】

鉄旅日記2018年9月16日・・・桑名駅、養老駅、大垣駅、揖斐駅、垂井駅、美江寺駅、本巣駅、樽見駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その2 ‐国定(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・国定駅(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺) 14:06 

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初秋 初日(東京-羽咋)その1-東京、大垣、米原、長浜、敦賀、鯖江、西鯖江、大聖寺、加賀温泉(東海道本線/北陸本線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】

鉄旅日記2008年9月13日・・・東京駅、大垣駅、米原駅、長浜駅、敦賀駅、鯖江駅、西鯖江駅、大聖寺駅

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-米内沢)その4‐雫石、田沢湖、神代、角館(田沢湖線) 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】

鉄旅日記2021年4月17日・・・雫石駅、田沢湖駅、神代駅、角館駅(田沢湖線) 14:50

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春-館林、佐野、葛生、西小泉、赤城、太田、伊勢崎、新伊勢崎、足利、足利市(東武佐野線/東武小泉線/東武桐生線/東武伊勢崎線)【ふらっと両毛 東武フリーパスで、両毛ローカル旅】

鉄旅日記2014年4月6日・・・館林駅、佐野駅、葛生駅、西小泉駅、赤城駅、太田駅、伊勢崎駅、新伊勢崎

記事を読む

「鉄旅日記」2022年師走 初日(東京-会津宮下)その3 ‐会津水沼、会津宮下(只見線)/宮下温泉ふるさと荘【11年ぶりに全線運転再開を果たした只見線に乗りにいきました。】

鉄旅日記2022年12月10日・・・会津水沼駅、会津宮下駅(只見線)/宮下温泉ふるさと荘 1

記事を読む

「車旅日記」1998年夏 2日目(青森-竜飛崎-秋田)-あおもり健康ランド、青森駅、青い海公園、蟹田、高野崎、竜飛崎、十三湖、五所川原駅、深浦、不老不死温泉、能代駅、秋田駅、道の駅西目 【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】

車旅日記1998年8月13日 1998・8・13 7:31 あおもり健康ランド 777㎞ 昨日のこ

記事を読む

「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、甲信越途中下車旅】最終日(長野-東京)その1-長野、信州中野、湯田中、安茂里、戸倉、上田、別所温泉、西上田、田中(長野電鉄、信越本線、しなの鉄道、上田交通)

鉄旅日記2012年12月9日その1・・・長野駅、信州中野駅、湯田中駅、安茂里駅、戸倉駅、上田駅、別所

記事を読む

「鉄旅日記」2018年神無月 初日(東京-米原-福井-越前大野)その2-越前花堂、花堂、越前大野(越美北線)/越前大野城【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】

鉄旅日記2018年10月6日・・・越前花堂駅、花堂駅、越前大野駅(越美北線)/越前大野城 16:3

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2001年祇園会【京都の女性に恋をしていた頃がございました。そんなある宵宵々山の記憶でございます。】

鉄旅日記2001年7月15日 2001・7・15の記憶(京都編

「車旅日記」2001年黄金週間 最終日その2(京都-東京)-朝日村栄荘、道の駅親不知ピアパーク、道の駅能生、小千谷駅、月夜野情報サービスセンター、道の駅おかべ、葛飾金町【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

車旅日記2001年5月5日・・・朝日村栄荘、道の駅親不知ピアパーク、

「車旅日記」2001年黄金週間 最終日その1(京都-東京)-八坂神社石段下、志賀、道の駅河野、福岡の湯、道の駅ウェーブパークなめりかわ【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

車旅日記2001年5月5日・・・八坂神社石段下、志賀、道の駅河野、福

「車旅日記」2001年黄金週間 2日目その2(京都-志賀-京都)-祇園まで彼女をさらいに行ったのでございますが・・・【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

車旅日記2001年5月4日 大津方面に向かう161号国道は渋滞

「車旅日記」2001年黄金週間 2日目その1(京都-志賀-京都)-祇園まで彼女をさらいに行ったのでございますが・・・【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

車旅日記2001年5月4日 彼女は右手を投げ出してオレの体に置

→もっと見る

    PAGE TOP ↑