*

「鉄旅日記」2019年長月 初日(東京-盛岡)その1-金町、水戸、上菅谷、常陸大子(常磐線/水郡線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/08 旅話, 旅話 2019年

鉄旅日記2019年9月21日・・・金町駅、水戸駅、上菅谷駅、常陸大子駅(常磐線/水郡線)

2019・9・21 5:24 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都)
東へ向かう列車がやってくるのは秋を迎えた5時過ぎ。

朝は開けて、空は曇り。
空気には若干の湿り気がある。

家の近くで大声を上げていた若者たちの姿はすでになかった。

金町から江戸川を越えてひと駅。
松戸で5:30発勝田行快速列車に乗り換える。

車内は外気のように湿り、蒸し暑さを感じる。
景色は徐々に鄙びていき、2週間前の台風被害から未だに立ち直れていない千葉という土地を想う。
久留里線はあの日から止まったまま、まだ運転を再開していない。

列車は柏に停車してさらに乗客を増やしている。
天王台を過ぎれば県を跨ぐ。

3連休初日、人々はどこへ向かうのか。
オレの興味はいつもそこをめぐる。

じきに利根川を越える。
オレはこのまま水戸まで。

買い置きのウイスキーハイボールを空けた。
自然に眠りに落ちるまで、この愛すべき空間で愛すべき時を生きる。

恋人にメールを送る内に列車は利根川を渡り、左側に腰かける目に筑波山が映る。
常磐線からあの山が見えるのか。
確かにたいした距離じゃない。
でも新鮮な感動を覚えた。

これが旅だ。

7:13 水戸(みと)駅(常磐線/水郡線/水戸線/鹿島臨海鉄道 茨城県)
肌寒さを感じた水戸の朝。
東京よりも季節は進んでいる。

これからみちのくへ向かう荷物には長袖は含まれていない。
たいした不安じゃないが、東から西へと駅を行き来する脳裏をよぎる。

水戸駅にはこれまでに何度も降りているが、助さん格さんを従えた黄門様の銅像があることに初めて気づいた。

この先も馴染みの街で様々な気づきを得るだろう。
とても楽しみだ。

水戸までの車中、計画していた眠りは訪れず、むしろその自然を楽しみつつ鱗雲が浮かぶ青空を眺めていた。

車寅次郎は晩年を幼稚園の用務員として過ごし、園児たちに慕われ、ある晴れた過ごしやすい日にかくれんぼをする。

子供たちの可愛らしい声が聞こえる中、見つからないようにこっそりと隠れて同じように空を見る。

恋をした女性や柴又の情景も浮かぶだろう。
うっすらと笑みを浮かべながらやがて目を閉じる。

それから先、その目が開くことはなかった。

山田洋次監督が構想した偉大なる自由人の往生の様は、そういうものであったらしい。

なぜかそんなことが頭に浮かび、いつの間にか少し目を閉じていた。
そしてオレもそんな最期であればいいと思っていた。

車中から眺める偕楽園も素晴らしく、夏の栗林公園を思い出していた。

7:28に水戸を出た水郡線郡山行は中菅谷に到着している。

雨の予感のなかった常陸の路だが、ところどころで濡れた町を目にしている。

7:51 上菅谷(かみすがや)駅(水郡線/常陸太田支線 茨城県)
常陸太田線との分岐駅で行き違い5分の停車。

水戸から乗っていた日経新聞に目を通す女性や、目付きの鋭い水商売風の女性も降りる町。

彼女たちの後ろ姿を追いながら改札を抜けて駅を写す。

この駅でそうするのも5度にはなるだろう。
これも縁というのだろう。

恋人から返信が届いた。
目にしたなら、しばらく眠ってもいい。

9:04 常陸大子(ひたちだいご)駅(水郡線 茨城県)
行き違いと列車切り離しで14分停車。

この駅は暮れかけの景色しか知らなかったことに今気づいた。
広場に置かれたD51に気づいたのも今日が最初になる。

D51はオレにとって過去の記憶を呼び起こすようなものではないが、目にすれば常に何事かを感じる偉大なる構造物だ。

駅正面に駅そばがあり、出汁の香りが漂っている。
心引かれるが、時間はない。

ヤマザキの店に酒はなく、駅前の酒屋へ。

「山ですか?」と聞かれる。
「郡山へいきます」。

会話は途切れる。
でもこれもまた縁。

常陸大子に降りる度に真っ先にあの酒屋を目指すだろう。
いつまでも続いていることを願う。

列車は福島県に入っている。

久慈川ラインを謳う水郡線の最大の見どころは常陸大子から2駅先の矢祭山。
いつか降りると誓う。

関連記事

「鉄旅日記」2009年秋-東金、大網、大原、上総中野、上総牛久、五井(東金線/外房線/いすみ鐡道/小湊鉄道/内房線) 【関東ぶらぶら旅その1-房総鄙の里へ】

鉄旅日記2009年10月22日・・・東金駅、大網駅、大原駅、上総中野駅、上総牛久駅、五井駅(東金線/

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月 初日(東京-出雲)-静岡、豊橋、京都、亀岡、福知山、上夜久野、豊岡、浜坂、鳥取、青谷、倉吉、米子、出雲市(東海道本線/山陰本線) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】

鉄旅日記2008年5月2日・・・静岡駅、豊橋駅、京都駅、亀岡駅、福知山駅、上夜久野駅、豊岡駅、浜坂駅

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その3-関駅、その後

車旅日記1996年5月3日 16:36 関駅 あれから2時間経ってようやくここに戻ってきた。

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 4日目(佐賀-松浦)その1-佐賀、肥前竜王、里信号場、喜々津、浦上、浦上駅前、長崎駅前、長崎、長与、諫早(長崎本線/長崎電気軌道/長崎本線長与支線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】

鉄旅日記2009年9月21日・・・佐賀駅、肥前竜王駅、里信号場、喜々津駅、浦上駅、浦上駅前駅、長崎駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 最終日(新津-東京)その3‐小野新町、要田、いわき(磐越東線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月5日・・・小野新町駅、要田駅、いわき駅(磐越東線) 12:33 小野新町(お

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋 2日目(砺波-武生)その6‐三国港、田原町、福井駅(えちぜん鉄道三国芦原線/福井鉄道) 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】

鉄旅日記2020年11月22日・・・三国港駅、田原町駅、福井駅電停(えちぜん鉄道三国芦原線/福井鉄

記事を読む

「車旅日記」1997年夏 2日目(新潟-象潟-田沢湖付近)-道の駅豊栄、道の駅加治川、道の駅朝日、道の駅鳥海、蚶満寺、道の駅西目、八津駅【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】

車旅日記1997年8月14日 1997・8・14 4:35 7号国道‐豊栄(道の駅) 出発。 友と

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 初日その2(東京-宇治)-香里園、寝屋川市、門真市、守口市、淀屋橋、天満橋、中之島、樟葉(京阪本線/京阪中之島線) 【ひらパーGo!Go!チケットで行く、京阪旅】

鉄旅日記2015年3月21日その2・・・香里園駅、寝屋川市駅、門真市駅、守口市駅、淀屋橋駅、天満橋駅

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月 最終日(奈良-東京)-奈良、亀山、桑名、弥冨、富士、沼津(関西本線/東海道本線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

鉄旅日記2007年2月12日・・・奈良駅、亀山駅、桑名駅、弥冨駅、富士駅、沼津駅(関西本線/東海道本

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋-川口、浦和、深谷、倉賀野、寄居、東飯能、飯能、寒川、茅ヶ崎、辻堂、新橋(京浜東北線/高崎線/八高線/相模線/東海道本線)【関東ぶらぶら旅その2-武蔵から相模へ】

鉄旅日記2009年10月27日・・・川口駅、浦和駅、深谷駅、倉賀野駅、寄居駅、東飯能駅、飯能駅、寒川

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その3 ‐川部、五所川原、木造(五能線)/神武食堂 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・川部駅、五所川原駅、木造駅(五能線)

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

→もっと見る

    PAGE TOP ↑