「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】最終日(呉-東京)-呉、広、竹原、安芸幸崎、松永、東尾道、相生、西相生、比叡山坂本、用宗、富士、沼津(呉線/山陽本線/赤穂線/湖西線/東海道本線)
鉄旅日記2014年8月17日
5:31 呉(くれ)駅(呉線 広島県)
堺川公園の説明によれば九嶺が呉の語源だという。
呉越峠に目をやり本町アーケード通りに出て駅への道を戻る。
途中右手に繁華街の入場門を見る。
ヒグラシの声が風鈴のような音で街を包んでいる。
蒸し暑い。
駅員さんはとてもきれいな女性だった。
呉越峠を見る
5:45 広(ひろ)駅(呉線 広島県)
2分の停車。
呉の街を一望する峠をトンネルで抜け次の駅へ。
振り返ってみて呉の街があの壁のムコウにあることが不思議に思えた。
町へと広がる視界は駅入口からは遮られていた。
列車は走り出す。
仁方を過ぎると安芸灘大橋の絶景が見えてきた。
6:39 竹原(たけはら)駅(呉線 広島県)
数分の停車。
安芸の小京都を謳う街。
小さな歓楽街を抜けて駅から延びるアーケード通りに出る。
一番端までは行き着けない。
停車時間9分の行動範囲は以上。
小雨がぱらついている。
列車は海を離れ、少し風景に飽いた頃、またもや瀬戸内の島々が見えてきた。
7:02 安芸幸崎(あきさいざき)駅(呉線 広島県)
数分の停車。
駅を出て角のお好み焼き屋まで歩く。
その背後には山が迫っている。
暑さを運ぶ西国の蝉の声が耳につく。
しゅわしゅわしゅわと。
忠海を過ぎて瀬戸内の絶景が続き、しまなみ海道が見えた。
安芸娘はとてもかわいらしく、野球少年たちはよく眠る。
7:54 松永(まつなが)駅(山陽本線 広島県)
糸崎で山陽本線に乗り換える。
北口には古いアーケード街が2号国道まで続いている。
白いアーケードだが空きスペースも目立ち、印象をグレーにしている。
南口は新しい。
ビジネスホテルと歓楽街が一緒になった建物や飲食店が占める一画がある。
線路を挟んで新旧を分かった町。
そう、ここは町だった。
降りてみてよかったと思う。
8:03 東尾道(ひがしおのみち)駅(山陰本線 広島県)
ひと駅戻る。
次の上りがくるまで4分しなかい。
駅を写してすぐに駆け上がった。
駅前に何もないことは車窓から分かっていたけれど、本当のところは降りてみないと分からない。
やはり特筆すべきものはない。
4分あればといつも期待するが、4分とは時に長くもあり、時に一切の情を挟む隙を与えない冷たさも持つ。
相生(あいおい)駅(山陽新幹線/山陽本線/赤穂線 兵庫県)にて
10:45 西相生(にしあいおい)駅(赤穂線 兵庫県)
尾道から140分。
途中の岡山で乗り継いだが、よく眠り、かつ風景を堪能した。
たったひとつの心残りは、去年見た天空に架かる橋に気付かなかったこと。
あれは本当に幻だったのかもしれない。
次回に思いを引き継ぎ、旅は続く。
相生はいつも通りすぎてばかりいたが、ようやく降りる時間を持てた。
駅前の様子は知っていて、知っていたまんまの何もないと表現すべき当時と同じ有り様だったが、やっとだ。
売店で汗まみれの話し好きのオッサンにちょっと苛つき、赤穂線でひと駅戻るように西相生へ。
ここにも何もなくて、言ってみれば想像通りだ。
駅前道路を50メートル分だけ往復して駅に戻り、相生で購入しておいたビールとちょっと早い昼メシ。
高架駅のホームから何の変哲もない播州の風景を見ていると雲の割れ目から日差しが漏れ、この旅での夏の様を思い返した。
改札口には風鈴が下がっていた。
再び列車は東を目指し竜野を過ぎて揖保川を渡った。
13:17 比叡山坂本(ひえいざんさかもと)駅(湖西線 滋賀県)
姫路で新快速に乗り継ぎ、京都で湖西線に乗り換える。
琵琶湖と比叡山に挟まれた傾斜地の住宅街。
ふと目を移した先に鳥居が見える。
歓楽街などはないが、京阪坂本駅やその先の比叡山へ上がるケーブル駅あたりには涼しげな構えの茶屋が見られることだろう。
そこまで行きたかったが、時間がなく途中で引き返す。
ここにはガード下のラーメン屋しかない。
明智光秀が天王山の戦場から再起を図るために向かった坂本城址は、駅前の案内にはなかった。
京都で出会ったかつての恋人はこの町の出身と聞いていた。
ここに寄ったのはそんな理由からだ。
山科まで戻り、東海道本線に乗り換える。
18:36 用宗(もちむね)駅(東海道本線 静岡県)
米原、大垣、豊橋、浜松と乗り継ぐ。
駅改良後は特徴のない高架駅になる例が東海道本線はじめ目立っている。
六合、愛野、豊田町、降りたことはないが木曽川。
用宗駅がそうなる前にと、当初予定していた安倍川駅から変更して降りることにした。
駅が改良中であることを4日前のアナウンスで聞いていた。
次の列車がくるまで11分。
駅前にそば屋の灯が見え、さらにその先に上品な灯があった。
提灯だったのかもしれない。
雨がぽつぽつきたと思ったら不意に雨粒が増してきたので駅に駆け戻る。
先に見えた上り坂の果てまで行きたかった。
さっきそこは夕焼けに神々しく照らされていたんだ。
あそこまで行けば駿河湾が望めたかもしれない。
用宗の存在を知ったのは小説「武田勝頼」による。
落日の甲斐武田家の晩年、徳川家康軍に攻められた用宗城が落城する件で登場するが、武田水軍の棟梁格も城に詰めていて奮闘の末に討死。
海将、陸で死す。
鉄道旅を始めてみて用宗の名が駅として存在することを知って以来ずっと気にしながらも後回しにしていた。
ホームのベンチでパンを頬張っている11分の間、新幹線が何度か視界を横切り、ヒグラシが鳴いていた。
19:27 富士(ふじ)駅(東海道本線/身延線 静岡県)
何度も通り過ぎた街。
降りるのは2回目になる。
今回もそうだが、街を歩いたことはない。
明かりは多いが閑散とした街だ。
車両基地は大きく、ターミナル駅でもある富士に着くと、鉄道文化の街に対する敬意が自然に湧いてくる。
19:53 沼津(ぬまづ)駅(東海道本線/御殿場線 静岡県)
この街は知っている。
駅も何度か目にしてきた筈だ。
でもさっきオレが見てきた駅に見覚えはなく、もちろん「男はつらいよ」第7作で車寅次郎が立ち寄った頃のものでもないが、白く美しい駅だった。
なんだか感動したよ。
さあ、もうこれでいい。
家に帰ろう。
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