「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】初日-掛川、尾奈、リステル浜名湖(東海道本線/天竜浜名湖鉄道)
鉄旅日記2006年11月3日・・・掛川駅、尾奈駅(東海道本線/天竜浜名湖鉄道)
2006・11・3 リステル浜名湖239号室
飲みすぎた翌朝。
それが今朝。
シェラフにくるまって眠っていた。
重い朝だったよ。
旅立ちは正午。
冴えなかったことだけは確かだ。
カポーティーの「冷血」になかなか集中できず、車中で眠り、寄りかかってしまった少女に起こされ横浜、やがて大船。
平塚から見える高麗山は見ておこうと体を反らし、大磯あたりから見えた湘南海岸。
小田原で何事かを思い出し、そのまま熱海まで。
小田原熱海間の景観は素晴らしい。
一番前の車両からは遠ざかっていく江の島と海岸線がよく見えた。
「海だ!」と声を上げて喜ぶ少女と母親。
オレは尖ってなんかいなかったよ。
熱海からは立ちっ放しだった。
沼津を過ぎて、田子の浦では防風林の先に広がる景色を思い返していた。
清水では静岡鉄道が接近してくる。
あの電車にはいつか乗ることになるだろう。
静岡で8分停車。
煙草を吸いにいって戻ったら満員。
ちょうど開催されていた大道芸ワールドカップを見てきた人々だろうか。
あまりの人の多さに仰天したよ。
焼津、藤枝で一団が降りる。
大井川を渡り、掛川。
4か月前に降りた街に変化は発見できなかった。
天竜浜名湖鉄道へ。
もう夕暮れ時だったよ。
掛川の夜を美しいと感じた。
無人駅を往く。
天竜二俣の灯は乏しく、そうした夜を迎える町をひたすら過ぎていく。
政令指定都市になる浜松の裏側の風景だった。
暗くても浜名湖は湖面を輝かし、そして町は三ヶ日で終わった。
尾奈駅前は寂しいものだ。
食堂が1軒あったが、店内を覗いて入るのはやめた。
今夜はたいしたものにありつけないだろう。
月のきれいな夜だった。
無人地帯を歩き、光を放つ場所まで15分。
それがここ。
夕食の膳は高価だった。
刺身の造りは想像を超えるほどのものじゃなく、ビールはぬるい。
白飯が一番美味かったよ。
フルーツと呼ばれて出てきたのは丸ごとの蜜柑。
やっぱり高かったな。
あの夕食にいい思いは抱けない。
館内の三ヶ日温泉で老人が嘆く。
「この施設はなっていない」と。
頷いてみせたけど、老人はオレの話を聞こうとしなかった。
今見えている湖は猪鼻湖というらしい。
湖面の灯が消えて闇が深くなった。
魚が飛び跳ねる音も消えた。
彼女にメールを入れたけど、ここにいることは言わなかった。
日米野球を観に行かないかと誘った期間にあたるから。
今日はその第1戦にあたる。
彼女は明日はゴルフで朝が早い。
フロントマンは善良だった。
レストランの女性は美人じゃなかったが、チャーミングだった。
オレにはちょうどいいが、他の宿泊客は寒さを感じているようだ。
今年もそんな季節になって、一年前を思い出している。
名古屋も小諸も寒く、あの夜にたまたま流れていた黒木瞳、大塚寧々主演のドラマを東京に帰っても見続け、去年のオレを締めくくった。
あれから一年。
オレは正解の道を往っているのか?
多分そうだろうけれど。
ビールを飲んで歯を磨いたら、また湯に浸かろう。
窓は開けたままでいいだろう。
そのまま眠ろう。
不夜城を思わせた対岸のホテルの灯も落ちた。
この旅を終えて一息ついたら、きちんと彼女に思いを伝えよう。
11月はオレにとってそういう季節。
2006・11・4 リステル浜名湖239号室
湖畔の朝。
かくも素晴らしい。
早くから湖面を船が行き交い、ぼやぼやしていたら日が昇ってきた。
こうしちゃいられないと湯に浸かりにいった。
露天風呂はほどよく、オレにしては珍しく長く浸かっていた。
朝食は昨夜の夕食より素晴らしかった。
今日もいい天気で、今日もいい日になる。
こんな朝にはそんな確信が生まれる。
彼女はもうコースに出ているだろう。
オレは湖畔を立ち去る。
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