「鉄旅日記」2017年冬【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】初日(東京-下今市-会津高原尾瀬口-会津若松)その1-大泉学園、北千住、東武動物公園、上三依塩原温泉口、中三依温泉、会津高原尾瀬口、七ヶ岳登山口、会津山村道場(西武池袋線/東武伊勢崎線/東武鬼怒川線/野岩鉄道/会津鉄道)
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旅話 2017年
鉄旅日記2017年12月2日
2017・12・2 5:05 大泉学園(おおいずみがくえん)駅(西武池袋線 東京都)
衆議院総選挙での自民党圧勝、福岡ソフトバンク×横浜DeNAの日本シリーズにおける激闘、大相撲九州場所初日以後の醜聞、横綱日馬富士引退。
暦は師走になり、ひとつの友人グループとは忘年会で一年を労い、初秋からほぼ週休一日で忙しく働いてきた仕事は、困ったことに落ち着きを見せ始め、SNSで得た友人たちとは当日の健闘を誓い合う。
そのSNSでは、ひとりの女性と毎日のように互いの無事と幸福を祈り合う大切な関係も築けた。
もちろん会ったことはない。
これからクリスマス、年の瀬、正月とくるが、どんな心地で過ごすのか。
決まって正月前に「とらや」を出ていった車寅次郎の哀愁に満ちた後ろ姿が浮かぶ。
冬の国へ。
会津に向かうべく始発から数本後の列車に乗っている。
こうしてる間にもう池袋。
始発列車は朝を待ちきれない人々でたいてい埋まっているが、この便は、この時間じゃこんなもんだろうと合点するだけの人々を乗せて、粛々と終点に向かっている。
6:00 北千住(きたせんじゅ)駅(常磐線/東武伊勢崎線/東京メトロ千代田線/東京メトロ日比谷線/つくばエキスプレス 東京都)
池袋駅山手線外回りのホームへの階段を上がると、丁度乗る列車が到着したところで、驚くべき人々の波に階段の途中で呑まれた。
忘年会シーズンが本格的に始まったようだ。
車内も通常の通勤時間帯の混雑と変わらない。
これが東京という街だ。
西日暮里で地下鉄千代田線に乗り換える。
列車の到着を待つスーツ姿の若い男がホームに胡座をかいている。
その姿は男らしくはあるが、ズボンが汚れることに抵抗を持たないことは理解できない。
昔は相当に泥酔した者以外にそんな姿は見かけなかった。
久しぶりに降りた北千住は懐かしく感じた。
金町にいた頃は毎日通り、かつて心を寄せていた女性は今もこの街に暮らしているのだろう。
新橋で小さなスナックのママをしている彼女。
会いに行けないことはないが、会わせる顔はまだできていない。
でも得意先に行く時にはいつも店の前を通る。
ルミネを従えた北千住駅。
スマホを横にして写真を撮ったら、てっぺんが収まらなかった。
6:46 東武動物公園(とうぶどうぶつこうえん)駅(東武伊勢崎線/東武日光線 埼玉県)
日光線への乗り換え列車を待っている。
ここで夜明け。
大きな太陽が北千住方面から上がり、どことなく侘しいターミナル駅が輝きに満ちた。
20年以上前にこの町の動物園に行ったことを思い出している。
小さな動物を肩に乗せてはしゃいでいた恋人の姿。
他はすべて忘れていた。
駅に寄ったのはその際か。
あるいは仕事で和戸に納品に行った際かもしれない。
車窓から冬枯れの景色を見ていた。
この景色は普段暮らしているあたりにはなく、旅に出ている実感を強くする。
日の出の写真をmessengerで送る。
こうして毎朝交誼を深めている。
9:20 上三依塩原温泉口(かみみよりしおばらおんせんぐち)駅(野岩鉄道 栃木県)
南栗橋、下今市で乗り継ぐ。
小雪が舞っている。
日差しも覗く。
冬枯れたアスファルトを男鹿川まで歩く。
会津西街道は山間に差しかかり、次の町は遠く、歩いてはいけない。
かつて闇の中に浮かんで見えた駅に女性駅員はいるが、当時の印象に違わず、あたりに集落はなく、高所にあるこのホームからはわずかな家屋しか認められない。
風は冷たいが、まるで希望のようにたまに降り注ぐ日差しはあたたかい。
ホームに立つ身はひとり。
たまらなく愛しい時を生きている。
9:52 中三依温泉(なかみよりおんせん)駅(野岩鉄道 栃木県)
駅前にある三依霊山宝蔵院の由緒書きによると、三依地区は会津藩領で、戊辰戦争では一村を除いて焼かれたとある。
ここから会津若松は遠い。
戦争とはそういうものか。
東京より冬の訪れが早い村で暫し。
風は冷たく、柿は収穫を得ずに腐り、ガソリンスタンドは撤退し、会津西街道を往く車もなく、駅裏のそば打ち道場には人の姿がある。
駅前に組まれた櫓にはクリスマスイルミネーションの仕掛けがついている。
どの村にもささやかであれクリスマスはくる。
しかしこの風の冷たさを、おそらく東京ではこの冬経験しない。
さっき挨拶を交わした掃除夫のおじさんも上り列車の運転手に寒いとこぼす。
10:24 会津高原尾瀬口(あいづこうげんおぜぐち)駅(会津鉄道/野岩鉄道 福島県)
かつての会津線の終着駅でストーブにあたる。
いくつかの土産物屋を除きあたりにめぼしいものは見られず、この駅に止まる列車は、田島までの各駅の存在をしばらく無視する。
オレはそういう存在に用があってこうして乗り継いできた。
NHK大河ドラマで描かれた「八重さん」の故郷をこれから歩く。
11:21 七ヶ岳登山口(ななつがたけとざんぐち)駅(会津鉄道 福島県)
変哲のない会津西街道を歩いていく。
七ヶ岳への登山は現在禁じられ、街道にこの駅へと誘う表示はない。
通る車は疎らで風は穏やかで音もなく、車を操る者の他に見かける人はない。
11:58 会津山村道場(あいづさんそんどうじょう)駅(会津鉄道 福島県)
会津西街道を阿賀川に沿って歩いていく。
荒海宿の木札が温泉地を示し、やはりここにも駅を示す表示は見られない。
12時の時報は「恋は水色」。
不意に不自然な音が聞こえ、冷たい風にも慣れて外に出るとコンセントを発見して拝借。スマホを充電。
これで焦燥も消える。
真っ青な空の下、冬枯れと表現したかった道中は春のような日差しを浴びて、とても豊かな風情をまとい、囲む山々に白いものは見られない。
途中、ここが義経逃避行路であるとの新しい石碑が立っていた。
諸説あるだろう。
義経一行は日本海側をたどり、やがて平泉へと東北を横断する。
白河の関は過ぎた。
この道を行ったのかもしれない。
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