*

「鉄旅日記」2005年初冬 その2-外川、犬吠、本銚子、観音、仲ノ町、銚子、千葉(銚子電鉄/総武本線) 【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/24 旅話, 旅話 2005年

鉄旅日記2005年12月10日・・・外川駅、犬吠駅、本銚子駅、観音駅、仲ノ町駅、銚子駅、千葉駅(銚子電鉄/総武本線)

終点の外川は、小さな港を持つ村だった。
振り返ると数多の風雪に晒され続けてきた木造の駅舎がぽつんと立っていた。

2018年9月22日撮影

腹を空かしたオレを招く店はなく、前方の坂に目をやると青く輝く海。
犬吠埼まで歩くと決めていた。

旅路は約2.5㎞。
車も滅多に通らない寂れた海辺の道。
日差しと海上の照り返しが眩しく、目を細めながら歩く。

いくつか坂を上がると灯台が見えて、海辺の遊歩道に出る。
廃墟を見る。
ホテルに旅館。
そして銚子という街を想う。

うまくいっているホテルの前で大勢の人々をやり過ごし、灯台前の食堂へ。
ビールは美味かったし、ねぎとろ丼には驚いた。
普段オレは東京でそれなりの金を払って同じ名のついた食事を注文するが、あれはほぼまがい物だということを知った。

おしんこに海藻入りの味噌汁。
心地いい疲れが体内を駆け回る。

決して多くはないが、灯台に上がる人の姿に絶え間はない。

2018年9月22日撮影

振り返るとさっき歩いてきたあたりの岬の家並へと波が押し寄せている。

2018年9月22日撮影

黒潮を一塊になって受け止めている村。
水平線は犬吠埼では丸くは見えず、今年最後に眺めるであろう海を飽きずに眺めた。

犬吠駅へ。
廃車を改造した店があり、一番搾りの幟が立っている。

駅には待ち人が結構いて、名物の煎餅を齧る姿もある。
季節がよかったら、列車を待ちながらあの広場でビールを飲むのもいいだろう。

博物館のような駅舎は関東の駅100選に数えられている。
素敵な駅だった。

2018年9月22日撮影

やってきた列車に乗って4、5駅。
無人の本銚子駅で降りる。
切符を持ったまま出ようとしたオレを車掌が猛然と追いかけてきた。
悪いことをした。

本銚子という駅名から、あるいは銚子の中心街なのかとも思ったが、鄙びた駅で、とてもそこに街があるとは思えない。
昔ながらの懐かしい駄菓子屋に子供たちが群がっている。
そんな懐かしい風景をいくつか見かけた。

国道を歩くより線路伝いにいこうと決めて、適当に広い通りを左折すると線路に出て、角に観音駅があった。
3人の女性が駅舎内で鯛焼きや煎餅を焼いている。
暖かな灯に誘われて中に入り、適当なことを切符売りの女性に尋ねた。

場末の線路道をしばらく往くと仲ノ町駅。
古ぼけた木造の小さな駅舎。
台風がやってくると銚子は関東で一番強烈な風雨に見舞われる。
そうした空の勢力と対峙してきた歴戦の古強者が、近づいてくる街に埋もれるように立っていた。

そして再びの銚子駅。
千葉行が発車するまで40分ほどある。
港へと下りる。

駅前通りを直進すると利根川に突き当たる。
広大な大河が黒潮と交わる手前。
左手には銚子大橋が架かっている。

2012年3月3日撮影

橋のある風景にも名所が多い。
ここもそうした名所に数えられていい。

かつてあの橋を渡ったことがある。
茨城と千葉を分ける明確な境が橋上にあったと記憶している。
橋自体、県境で色を変えていたと記憶していたが誤りだった。
橋は鮮やかな赤。

人気はなく、右手には風力発電塔が1塔。
穏やかで雄大な海辺のたたずまいだった。

2012年3月3日撮影

駅へ戻る。
中央広場に色とりどりの電球が灯っている。
銚子に宿泊する機会が持てるならあそこに行くだろうと思う店に目をやり、巨大な日本家屋風の銚子駅を仰ぐ。

赤い三角屋根の下の青い庇。
構内には軽喫茶食堂があり、何も置かれていないだだっ広いスペースがある。
何かのイベントで使用されることがあるのだろう。
壁には大漁旗や銚子音頭の歌詞が掛かっている。

かつての9月の記憶も蘇って、しばらくたたずんだ。
これで銚子とはお別れ。
去りがたい。

昭和40年代にはストロング小林×バロン・フォン・ラシクのIWA世界戦が行われた街。
甲子園では銚子商業が全国制覇を果たしている。
漁獲量が減ったという話は聞かないが、かつての炭鉱町のように、それまでにあった繁栄を失った街。
そんな勝手な感想は実態から外れているのかもしれないが、銚子が放つ哀愁に魅かれている。

銚子電鉄に乗った先に、あるいはオレの知らない繁栄や大漁獲基地があるのかもしれないと思ったけど、どうやらない。
銚子駅に自動改札は導入されていない。
懐かしい終着駅だった。
千葉行の列車がホームを離れるまで、どうしたらいいか分からないほどに去りがたかったよ。

青とベージュの古い客車を連ねた総武本線は千葉ヘ向けて粛々と進む。
旭、八日市場といった駅での記憶はなく、成東の手前で目覚めた。

沿線に暗闇を覆すような光は見えてこない。
八街、佐倉。
まだ見えない。

100万都市の千葉が勢力圏として組み込めたのは、3駅手前の四街道からだった。
四街道から銚子まで、下総の駅は都会化の波に対して頑強に抵抗してきたわけだ。

そして都賀、東千葉。
銚子からのんびりと進んできた総武本線はようやく千葉駅に到着する。

2009年10月20日撮影

大都会といっていいだろう。
京成電車が乗り入れる高架下に繁華街が延びて、中央を通りが貫いている。
房総方面の高架下は賑わい、下総方面の高架下は場末の色街。

中央通り沿いにやたらに横長の雑居ビル、三越。
その先にクリスマスの光が現れ、世界最高所を走るという懸垂式の千葉モノレールの駅がある。
様々な高架に囲まれた千葉駅周辺の空は狭かった。

駅構内になかなか素敵なビヤ・レストランがある。
久しく口にしていない黒ビールもメニューにはある。
1時間ばかりいただろうか。
松本清張の短編集に描かれた事件は、5つ目の「鬼畜」に差しかかっていた。

クリスマス・ソングが流れていて、駅の外の騒ぎに興味を持たない大人たちがやってくる。
千葉駅は房総本面に向かう特急の進路から外され、特急列車は銚子東京間、銚子新宿間を走る「しおさい」だけが止まる。
彼等はどこへ。
オレはそもそもどこへ向かう客なのだろう。

新宿へと向かう総武線で西船橋まで。
武蔵野線で新松戸まで。
常磐線で金町へ。

約12時間の旅だった。
それから随分久し振りに銭湯に浸かりにいった。

関連記事

「鉄旅日記」2019年年始 最終日(一ノ関-東京)その3-名取、岩沼、福島、郡山、新白河、上野(東北本線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月6日・・・名取駅、岩沼駅、福島駅、郡山駅、新白河駅、上野駅(東北本線) 15

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その4 ‐鎌倉、久里浜、京急久里浜、衣笠、東逗子(横須賀線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・鎌倉駅、久里浜駅、京急久里浜駅、衣笠駅、東逗子駅(横須賀線)

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋 最終日(和田山-東京)その2-大阪、桜島、西九条、阪神西九条、久宝寺、放出、京橋、京阪京橋、近江舞子、近江今津、近江塩津(大阪環状線/桜島線/関西本線/おおさか東線/学研都市線/湖西線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

鉄旅日記2009年11月23日・・・大阪駅、桜島駅、西九条駅、阪神西九条駅、久宝寺駅、放出駅、京橋駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その4‐南風崎、ハウステンボス、早岐(大村線)/小佐々弾正・甚五郎塚 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・南風崎駅、ハウステンボス駅、早岐駅(大村線)/小佐々弾正・甚五郎

記事を読む

「鉄旅日記」2022年盛夏 2日目(伊那市-高松)その1 ‐伊那市、辰野、岡谷、塩尻(飯田線/中央本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月12日・・・伊那市駅、辰野駅、岡谷駅、塩尻駅(飯田線/中央本線) 20

記事を読む

「車旅日記」2006年皐月 2日目(黒磯-仙台)その1-道の駅明治の森黒磯、高久駅、黒田原駅、白河駅、安積永盛駅、三春駅、船引駅、磐城常葉駅、川前駅、小川郷駅、四ツ倉駅 【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】

車旅日記2006年5月3日・・・道の駅明治の森黒磯、高久駅、黒田原駅、白河駅、安積永盛駅、三春駅、船

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その1 ‐熱海、五百羅漢、大雄山、緑町、小田原(東海道本線/大雄山線)/北条氏政・氏照の墓 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、御殿場線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・熱海駅、五百羅漢駅、大雄山駅、緑町駅、小田原駅(東海道本線/大雄山

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初秋 初日(東京-羽咋)その2-新西金沢、野町、加賀一の宮、西金沢、羽咋(北陸本線/北陸鉄道石川線/七尾線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】

鉄旅日記2008年9月13日・・・新西金沢駅、野町駅、加賀一の宮駅、西金沢駅、羽咋駅(北陸本線/北陸

記事を読む

「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、甲信越途中下車旅】最終日(長野-東京)その1-長野、信州中野、湯田中、安茂里、戸倉、上田、別所温泉、西上田、田中(長野電鉄、信越本線、しなの鉄道、上田交通)

鉄旅日記2012年12月9日その1・・・長野駅、信州中野駅、湯田中駅、安茂里駅、戸倉駅、上田駅、別所

記事を読む

「車旅日記」2004年春 最終日(稚内-旭川空港)走行距離353㎞その2-天塩中川駅、音威子府駅、美深駅、名寄駅、風連駅、和寒駅、比布駅、神居古潭、旭川空港 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】

車旅日記2004年5月5日・・・天塩中川駅、音威子府駅、美深駅、名寄駅、風連駅、和寒駅、比布駅、神居

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その5 ‐立木、船岡、園部、京都、大津(山陰本線/東海道本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月14日・・・立木駅、船岡駅、園部駅、京都駅、大

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その4 ‐新井、和田山、下夜久野、上川口、石原(播但線/山陰本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2025年8月14日・・・新井駅、和田山駅、下夜久野駅、上川

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その3 ‐野里、香呂、仁豊野、溝口、鶴居、寺前(播但線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月14日・・・野里駅、香呂駅、仁豊野駅、溝口駅、

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その2 ‐法界院、野々口、津山、佐用、播磨新宮、姫路(津山線/姫新線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

2022年8月14日・・・法界院駅、野々口駅、津山線、佐用駅、播磨新

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その1 ‐高松、鬼無、坂出、岡山(予讃本線/本四備讃線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月14日・・・高松駅、鬼無駅、坂出駅、岡山駅(予

→もっと見る

    PAGE TOP ↑