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「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】最終日(長岡-東京)-長岡、東三条、吉田、新潟、新津、会津若松、郡山、磐城石川、磐城塙、玉川村、常陸大宮、金町(信越本線/弥彦線/越後線/磐越西線/水郡線/常磐線)

公開日: : 最終更新日:2020/08/29 旅話 2009年

鉄旅日記2009年7月20日
2009・7・20 6:23 長岡(ながおか)駅(上越新幹線/信越本線/上越線 新潟県)
新幹線ホームが上に乗っかった在来線ホームは暗く、烏とその鳴き声に支配された涼しい朝。
昨日にはなかった湿気を感じる。

昨夜長岡に着いた時にはいくらも乗っていなかった信越本線。
今待っているのは新潟行で、これもおそらく僅かな客を乗せてやってくるだろう。

N1から新天街まで歩く。
街に泊まった野球少年たちが走っている。

街の規模はよく分かった。
商圏は駅から半径1kmほどか。

戊辰戦争における北越戦争で明治新政府軍に砕かれ、米軍による長岡大空襲に焼かれた一帯だ。
厚生会館は更地になっていた。
あそこで踊っていた少女たちは他に適当な場所を見つけることができただろうか。

今年の新潟は一年中「天地人」だな。
「裸の大将」山下清が描いた長岡の大花火大会の開催も近い。

7:10 東三条(ひがしさんじょう)駅(信越本線/弥彦線 新潟県)
涼しい。
長岡の湿気はここにはない。

広大な新潟平野を東に向かった。
低い山並から雲が沸き立つ様はオレには馴染みの風景で、このあたりでは車の中で何度か朝を迎えてきた。

三条は故ジャイアント馬場さんの生まれ故郷で、全日本プロレスはこの街でいくつかタイトル戦を組んできた。
ひとつ手前の三条駅には古ぼけたボーリング場の他に車窓から確認できるものはなく、三条の中心街はこっちらしい。

信越本線と平行する駅前通りが商店街で、駅前ロータリーも含めてこの街の規模にしてはそこそこのものだ。
小綺麗な旅館にカラオケスナック、洒落た居酒屋。
悪くない。
ただ、冷夏を心配したくなる霧雨混じりのこんな朝にはどうしても寂しい気持ちになる。
廃屋を見かけると尚更だ。

吉田方面からやってくる折り返しの弥彦行に乗り替える。
弥彦線は今ではここ東三条が終点だが、かつては少し先まで延びていたらしい。

列車が入線。
二十歳くらいの女性が出発間際まで入念な化粧をして出ていった。

7:59吉田(よしだ)駅(越後線/弥彦線 新潟県) 

高架線から眺める三条の家並は美しく、豊かな風景だった。

燕は三条ほどじゃないにしても乗客が多い。

じきに始まる吉田祭。
2日にわたるその祭は山車巡行で終わるようだ。

古く立派な町並みがあり、かつて賑わったであろう町角に立つビルに由緒を感じる。

懐かしい豆腐の匂いをかいだ。

風鈴の音が鳴り響く駅でこの町に降りた満足感に酔った。

8:18 弥彦(やひこ)駅(弥彦線 新潟県)
駅前の廃墟となった弥彦ホテルの姿が痛々しい。

女性駅長の制度はなくなってしまったのか。
駅舎から歴代駅長の額が消えていた。
とうとうここも無人駅になってしまったのか。

ともあれ、ここに戻ってこれてうれしい。

車でやってきた4年前に、確かこの駅から列車に乗りたいと思った。
他に何を思ったのか覚えていないが、相変わらずひとりで同じことをやっている。

たったひとつだけ違うのは新橋のママを愛していることだけだなと、行きの列車の中でひとり笑った。

8:34 吉田(よしだ)駅(越後線/弥彦線)
慌ただしいが吉田に戻っている。

東三条から吉田に向かう途中に通った燕三条駅に戻る時間があるか検討したんだ。
遠くからあの駅が見えた時はあまりの巨大さに仰天した。
駅前には日本海庄屋くらいしか見当たらなかったけど、その存在感は周囲を圧倒していて、あの駅に降りたいと思った。
でもまた今度だ。

すでに新潟行は走り出している。
高校生が標準語で新潟にハリー・ポッターを見に行くとうれしそうに話している。

オレもあの時分そうだった。
東京の町田に住んでいたオレが向かったのは新宿で、見に行ったのは「ロッキーⅣ」だった。

10:24 新潟(にいがた)駅(上越新幹線/信越本線/越後線/白新線 新潟県)
大穀倉地帯、新潟平野は緑に溢れている。
その緑が尽きるあたり、白山から新潟圏内に入る。

新潟駅に近づけども新たに100万都市としての承認を得た都会の匂いはしない。
でも駅に着いて人波に揉まれ、実感した。

大きな街に着いた。

4年前に歩いた万代橋まで足を伸ばす時間はなく、南口に行ってみる。
チサンホテルの他に目につくものはなく開発途上。
CoCoLoという駅ビルで時間を潰す。

上信越は一昨日からいい加減な天気だが、さっきの雨は上がり、日差しが戻った。

11:30 新津(にいつ)駅(信越本線/羽越本線/磐越西線 新潟県)
長崎屋までアーケード街を歩く。

4年前ここにも寄っている。
あの日も今日と同じように新潟からまっすぐに新津にきたんだった。

こんな商店街があったことは忘れていた。
スナックに風俗店、飲食店も充実している。
若者を見かけなかったが、大人には不満のない街だ。
そこですれ違った美しい女性が同じ車中にいる。

満員で走り出した磐越西線。
五泉で大半が降りた。

14:50 会津若松(あいづわかまつ)駅(磐越西線/只見線/会津鉄道 福島県)
五泉を過ぎると閑散区間。
阿賀野川と寄り添いながら人気のない地帯を往く。

ロングシートの車内でオレが座る側に阿賀野川を寄ってこず、仕方なく対面する場所に座る素敵な女性を眺める。
喜多方に着くとたくさん乗ってきた。

会津若松は終着駅のように行き止まり式の構造になっている。
しかし磐越西線は郡山までつながっている。

街に降りる。
そこに繁華街はなく、ごくローカルな祭をやっていて、そこを往復して待望のビール。
こんないい加減な空の下じゃたいして美味くもない。

鶴ヶ城は只見線で2駅先の西若松が最寄り駅になる。

SLが黒煙を上げ人々の注目を集めている。

あれが磐梯山か。
ヤバい、眠い。

16:40 郡山(こおりやま)駅(東北新幹線/東北本線/磐越東線/磐越西線/水郡線 福島県)
ホームの駅そばで喜多方ラーメンを食べる。
かなり美味い。
びっくりするほど美味かった。

駅前に出てみる。

何度も降りてきた駅だが、記憶が薄れている。
開成山あたりまで歩けば甦るものもあるだろうが、この街に暮らす大切な友人Eさんを思い出していた。

これから辿る道筋にまつわる記憶の中には彼以外に登場人物は現れない。

17:37 磐城石川(いわきいしかわ)駅(水郡線 福島県)
数分の停車。
Eさん、奥さんとの思い出深き駅。

みんな若かった。
だから離れていても会えたんだ。
若いっていうのはそういうことなんだな。
いつまでも若いつもりでいたけど、そんなわけはないんだよ。

母畑・石川温泉郷の看板が架かっているが、そこに客はいるのだろうか。
周辺の緑はみずみずしく、雨上がりの下、学生たちの声が行き交う。

友人Eさんの母校学法石川の生徒を見る。
以前はよく甲子園で見かけたが、しばらく見ていない。

運転再開。
気紛れな空は時に輝きを放ち、水田に日差しを送り、美しい光景を現出させる。

そんな風景の中に畦道を見つけて行方を追った。
あぁ、オレはこんな風景を求めて列車に乗ってるんだ今更ながら気づき、飽かずに外を眺めている。

18:21 磐城塙(いわきはなわ)駅(水郡線 福島県)
行き違いで数分の停車。

埴輪を模したような現代的な駅舎は図書館、喫茶店を併せ、じきにビヤガーデンも開くらしい。

幼児に列車を見せる父親の姿がある。
未来永劫受け継がれていくであろう牧歌的かつ愛すべき光景にしみじみとした気持ちになる。

40歳のオレにあんな未来はあるだろうか。

19:00 常陸大子(ひたちだいご)駅(水郡線 茨城県)
10分近くの停車。

清流久慈川、矢祭山、次の袋田も含めた一大観光地で奥久慈大子温泉郷という素敵な名称を持つ一帯。
久慈川に架かる橋まで歩き、駅に戻る。

かつてEさんと分かれて東京への帰り道に寄ったことがある。
あの夜、駅の灯は眩しく、改札口には人の流れがあった。

今日訪れたのは夕暮れ時。
乗降客の姿はなく、運転手はしばしの休息。
駅員は退屈そうにホームをただただ眺めている。

種族を特定できないが、鋭くシュンっと鳴き終える蝉の声を聞いた。

関東の空はいい色を見せている。
夏がくる。

玉川村(たまがわむら)駅(水郡線 茨城県)にて

常陸大宮(ひたちおおみや)駅(水郡線 茨城県)にて

2009・7・21 0:00 東京葛飾金町
古代遺跡が発掘された玉川村、テレビ塔を見た常陸大宮で数分停車。

やがて見えてきた水戸の夜景はささやかとも言えるが、美しかった。

水戸方面から帰るという道筋をとったことにどうでもいい喜びを感じている。

オレの家は常磐線沿線にある。
江戸川を渡れば東京葛飾金町。

西からさんざん東京を横断して東の涯に位置する家に帰ることにいい加減うんざりしていたんだ。

水戸からはグリーン車に乗って、売り子さんにほだされて余計にビールを一本とつまみを買った。

快速は金町には止まらないから松戸で乗り換えなきゃならないが、あとひと駅。
快適な旅の終わりだった。

帰り着いた今、たいして話したいことがあるわけじゃない。
強いて挙げれば彼女のことになる。
この旅でよく口ずさむ歌があった。

クレイジーケンバンドの「メリメリ」というソウルナンバー。
オレと結婚してくれっていう歌なんだ。

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