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「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】2日目(十日町-長岡)-十日町、戸狩野沢温泉、長野、松本、信濃大町、南小谷、直江津、柿崎、長岡(飯山線/篠ノ井線/大糸線/北陸本線/信越本線)

公開日: : 最終更新日:2020/08/29 旅話 2009年

鉄旅日記2009年7月19日
2009・7・19 十日町(とおかまち)駅(飯山線/北越急行 新潟県)
歩けば蒸し暑いが、清々しい朝だ。

駅前通りと平行するアーケード街を歩く前に少し道を入ってみた。
懐かしい田舎の道があって、そんな場所にスナックがいくつか存在していた。
酒処新潟県は奥が深い。

ほくほく線の開通が十日町の繁栄に手を貸したであろうことを願う。
そのホームは飯山線とは異なり高架になっている。

やがて北陸新幹線が開通した時に、ほくほく線は無事だろうか。

8:20 戸狩野沢温泉(とがりのざわおんせん)駅(飯山線 長野県)
十日町を出て、澄みきった青空を見た。
あれは2時間前だけど随分前のことのような気がする。

長野県に入った。
古風な鉄橋の下には信濃川の濁流。

心が動いた。
それから信濃川とは寄り添いながらここまできた。

高床式の古い農家、鮮やかな水田の緑、名もなき滝、JR最高積雪地点。

18年前にこの駅にきたと思っていたけど勘違いだった。
オレが肺を病んだ野沢温泉スキー場はここから随分遠くにあった。
駅があったような気がしたけど、記憶違いだったか。

あの日、朝起きたら自然気胸にかかっていて、痛む中を彼女を横に乗せて飯山の日赤病院まで車を走らせた。
当時は自分を襲った不運を呪うばかりで、そんなこと考えなかったが、あの時は大勢の人々に迷惑をかけた。

駅前は閑散としているが、宿や食べ物屋、カラオケ店もある。
大きなお寺の角を過ぎると、あとは野になる。

千曲川を見に行った帰りに遠雷の音を聞いた。
ホームの上屋に吊るされたいくつもの風鈴が涼しげな音を聞かせてくれる。
これから夏がくる。

2匹の猫が駅舎から離れることなくじゃれあっている。
次々と車が到着して、長野行の待ち人が増えた。

朝食は長野で。
まだしばらくかかる。

9:58 長野(ながの)駅(長野新幹線/信越本線/飯山線/篠ノ井線/しなの鉄道 長野県)
鉄路が千曲川と寄りそうことをやめると駅は地域性を失い、無機的な姿になる。

飯山を過ぎたあたりから徐々に乗客は増え、長野に着く頃には座席に空きはなかった。

名古屋行の特急が、あるかなしかの乗客を連れて去り、その後に入線した列車に乗り込んだ。
この列車はここ長野から長駆甲府へと向かう。

どこの国から来たのか知らないが、東南アジア人の会話がやけに耳に障る。

昨日の新聞予報は外れ、信州の日差しもなかなか強い。

姨捨(おばすて)駅(篠ノ井線 長野県)にて

12:00 松本(まつもと)駅(篠ノ井線/大糸線/松本電鉄上高地線 長野県)
姨捨駅からの絶景が見たかった。
善光寺平を見下ろす伝説の地は記憶よりも高所にあり、列車はスイッチバックで上がっていく。
オレと同じ目的でホームに立つ者が散見された。

聖高原から松本圏内に入り、座席はほぼ塞がった。

松本着。
3年振りになる。
工事中だった駅は無事に完成をみている。

街に下りる。
大切な友人が奥さんと二人で洒落た飲み屋をやっているんだ。

こんな時間に行っても再会は望めないが、店の前まで行ってみる。
店の前はきれいに掃除されていて、何だか安心して振り返りつつ駅への道を戻る。

彼から聞いたが、松本の酒場の収容可能人数は市内の成人人口を上回るという。

大糸線に乗り込んでいる。
予想外に席は塞がっている。

13:50 信濃大町(しなのおおまち)駅(大糸線 長野県)
松本からここまでの風景に大きな変化は見られない。
北アルプスが視界を塞いでいる。
見飽きることがない。

大半が穂高で降りた。
登山客に二人連れの若い女性の姿もある。

かつて社員旅行で大町に降りた際の印象は「何もない」だったが、あらためて降りてみて、あまりの賑やかさに仰天した。
記憶とのズレがこうまで激しい例は他にない。
ともあれ賑やかな方がいい。

少し町を歩く。
飲食店やスナックなどの充実を見せる魅力的な小路を通って駅に戻り、さっきからホームのベンチに座っている。

松本で買った駅弁「ぶり寿司」にビール。
最高の食事だ。

白馬行のあずさ号が入線する際に大音量で狩人が歌う「あずさ2号」が流れた。

あらためて聴くと、「ど演歌」だな。
それにしても何事かと思ったよ。

15:29 南小谷(みなみおたり)駅(大糸線 長野県)
仁科3湖を眺め、白馬駅ではかつての記憶を辿り、白馬大池手前から忽然と現れた姫川の豪流を懐かしみ、橋を渡る度に席の移動を繰り返した。

JRの東西分岐駅でしばし足止め。
糸魚川あたりに大雨が降り、オレを乗せて行く予定の折り返し列車が遅れている。

こういうこともあるだろう。

ここでの雨は激しくないが、どこにも行けず、近くを流れる姫川の濁流を見ること以外にやることはない。
そして日本書紀にも翡翠の産地として登場し、つい最近読んだ松本清張の短編小説の舞台になったこの地を偲ぶ。

時折雲が晴れると抜けるような青空が顔を出す。
雨は降ったり止んだりだ。

この季節に旅に出て、その夏最初の蝉の声を聞く。
ふいに降りが激しくなり、山から聞こえてくる蜩の声が大きくなってきた。
あとは酒を飲むくらいしか思いつかなくて、ちょうどよく駅前に酒屋もあってそうしてるけど、この待ち時間はオレには天運だ。

姫川は暴れ狂いながら続々と日本海を目指している。

18:09 直江津(なおえつ)駅(信越本線/北陸本線 新潟県)
姫川の激流は乗客の度肝を抜き、オレはその先の日本海に目を向ける。

糸魚川から北陸本線で直江津へ。

列車の遅れは解消し、直江津には定刻に着いた。
ひどいと聞いていた雨は上がり、町を冷たい風が吹き抜けていく。

夕暮れの空の色も悪くない。

町に踏み出すと古い家並みに明かりが灯り、神社の入口脇にスナックが固まっている。

特急あさま号の終点はここだった。

初めて車でこの町を通った時は早朝で人気はなく、日本海に面した寒村のような印象を持ったが、再評価できてうれしい。

このまま旅を続けていくのなら、いつか直江津に鞄を置く日がくるだろう。

19:10 柿崎(かきざき)駅(信越本線 新潟県)
蜩が鳴いた。

柿崎に着く頃に日没が重なった。

その時刻に海を感じる場所にいたくて何もないこの駅に降りた。

駅前旅館と洒落た飲み屋が一軒。
海からの強い風と激しい波の音が轟いている。

大荒れの日本海上空に重たい雲が層をなし微動だにしない。
僅かな隙間に夕焼けが覗く。

駅員の姿はなく、ここにいるのはただオレのみ。

次の長岡行が到着するまで風に当たろう。

夏を生きるあらゆる種族の声を聞いている。
この時間をいとおしく思う。



23:00 長岡アルファワン201号
4年前ほど居心地はよくなかったけど、よく笑う長岡人の声を聞きながらオレにしては多目につまみを注文した。

イカは前回も食べた。
美味くて安くて腹に堪える。
涼しいから酒は控え目だ。

この街に着いて書くことが見当たらない。
繁華街の場所が分かったけど、今日は小雨が舞う肌寒い日曜日。

全国的にも有名なこの街も今夜は閑散としていた。

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