「鉄旅日記」2006年晩秋 2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線) 【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】
鉄旅日記2006年11月4日/11月5日・・・尾奈駅、新所原駅、豊橋駅、本長篠駅、鳥居駅、三河槇原駅、中部天竜駅、佐久間駅、大嵐駅、伊那小沢駅、天竜峡駅、松本駅(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)
2006・11・5 東京葛飾金町
清々しい浜名湖畔から明けた旅の2日目。
尾奈駅周辺は蜜柑畑だった。



煙草を吸いながら列車の到着を待っていると、美しい女性が待ち人に加わった。
朝の素晴らしさが増した。
終点の新所原までの3駅間は、その遠州娘と蜜柑畑を眺めながら過ごした。
新所原で東海道本線に乗り換える。

豊橋まで。
あの街とも最早すっかり馴染みになった。
明らかに人生が広がりを見せていることを感じた。
飯田線のホームは端にある。
喫煙所では2人の少女がだらしなく煙草を吸っていた。
会話からは彼女たちが社会人であることが聞きとれた。
飯田線は終点の辰野までの長い距離を、どの線との接続を持たない孤高の線区。
豊川、新城。
都会の風景はなく、徐々に鄙びていく。
野田城、鳥居、長篠城。
鉄橋を渡る際に見えた長篠城址。
写真で見てその姿は知っていた。
設楽原決戦場の表示が出たのは、鳥居より前の聞いたことのない駅を通った時だった。
甲斐、信濃、上州武士で構成された最強の武田軍団が事実上壊滅した歴史的な一帯。
これまでに何度も訪問を夢見ていた場所だった。
できることならご先祖に深い関りを持つ、真田信綱、昌輝兄弟の死地に参りたかった。
本長篠駅は決戦場からは離れていた。
乗っていた列車はそこが終点だった。

歩いたよ。
奥三河の地を。
橋から幽谷を眺め、ただ歩いた。

目標としたのは長篠城駅だったけど、線路は幽谷に姿を消して目標を見失い、たどり着けない。
でも長篠城址の前は通り、鳥居駅の駅名の由来となった鳥居強右衛門の死地に立つ碑には手を合わせることができた。

鳥居駅で待った。
手にしていたカポーティーの「冷血」もその頃が佳境だった。


やがて列車がやってくる。
天竜川と着かず離れず進んでいく車窓を楽しみつつ、本にも目を落とす至福の時。
三河槇原駅ではしばらくの停車。


降りたのは中部天竜駅。
昼食はビールと蕎麦に五平餅。

天竜川に架かる橋をいくつも渡り隣の佐久間駅までを歩く。
そこは浜松市。
政令指定都市になるということがどれほどのものなのかよくは知らないが、1本を逃すと、次の列車が来るまで3時間も待たなきゃいけない都市の片隅で、その事実はただ可笑しかった。

コンビニなどないし、煙草と「冷血」がなきゃ間を持たせることはむずかしかった。
ここまで4時間の長い旅路。
「冷血」は読み進まれ、相変わらず天竜川に沿っている。
大嵐駅での停車では鉄道員と並んで煙草を吸い、

伊那小沢駅で景色を写し、

天竜峡でも少しの停車。
その頃には日も暮れていて、天竜峡駅周辺に好もしい灯がいくつか灯っていた。

飯田、駒ヶ根、伊那市。
かつての旅が蘇る。
あの頃にはたどり着けなかった先から、こうしてオレはやってきた。
やがて辰野。
何もない町だった。
やがて岡谷。
待ち時間はなく、すぐに長野行に乗り換える。
松本駅構内は生まれ変わっていた。
そういえばここ最近、いつ来ても工事中だったことに思い至った。
馴染みの街だが、あれから1年も経っている。
松本の夜明かりは好ましい。
洒落た通りを歩いて公園まで。
どんつきに東横インがある。
そこから20年来の友人が経営している店まではすぐ。
彼と奥さんは暖かくオレを迎え入れ、彼等からはあまり歓迎されていない客からワインを振る舞われたりしながら、しばらくいた。
長い付き合いだが、彼と二人で飲んだことはなかった。
共通の友人でもある男が離婚して、2人の子供は毎年きれいな字で年賀状を送ってくれていた奥さんに委ねて、彼は今パリにいる令嬢を追いかけ、時に別の女性と遊んでいると聞いた。
そんな人生でもオレよりはマシだと思った。
そして名前こそ明かさなかったが、初めて彼女の存在を打ち明けた。
ビールとワイン、それに日本酒。
かなり酔って、ホテルに戻って歯も磨かず、シャワーも浴びずに眠った。
朝はホテルが用意してくれた3種類の握り飯に舌鼓を打ち、本屋と土産物屋を覗き、川端のカフェに落ち着いた。
美しい安曇娘に給仕されて本を開き、彼女にメールを送る。
貴女のためにワインを購入して、ここで友を待っていると伝えた。
返信は席を立つまでの間にあった。
友と合流したのは昨夜の店。
それから美味い蕎麦を食べに行き、ホテルのロビーでコーヒーを飲み、また店に戻り彼はあらためてコーヒーを淹れてくれた。
「冷血」は終局を迎え、中場利一さんの物騒だが笑えるエッセーを読みながら、特急「あずさ」は東京に向かった。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2011年秋【再びみちのくひとり旅】初日(東京-長井)-保谷、宮内、柏崎、小島谷、内野、関屋、早通、豊栄、佐々木、坂町、小国、羽前小松、今泉、長井(西武池袋線/上越線/信越本線/越後線/白新線/米坂線/山形鉄道)
鉄旅日記2011年11月5日・・・保谷駅、宮内駅、柏崎駅、小島谷駅、内野駅、関屋駅、早通駅、豊栄駅、
-
-
「鉄旅日記」2009年秋-川口、浦和、深谷、倉賀野、寄居、東飯能、飯能、寒川、茅ヶ崎、辻堂、新橋(京浜東北線/高崎線/八高線/相模線/東海道本線)【関東ぶらぶら旅その2-武蔵から相模へ】
鉄旅日記2009年10月27日・・・川口駅、浦和駅、深谷駅、倉賀野駅、寄居駅、東飯能駅、飯能駅、寒川
-
-
「鉄旅日記」2014年春 その1-水海道、三妻、下妻、大田郷、下館、久下田、茂木、真岡、大和、新治、水戸(関東鉄道常総線/真岡鐵道/水戸線) 【ときわ路パスで、常陸ローカル旅】
鉄旅日記2014年4月27日その1・・・水海道駅、三妻駅、下妻駅、大田郷駅、下館駅、久下田駅、茂木駅
-
-
「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その1 ‐古川、岩出山、有備館(陸羽東線)/岩出山城址(城山公園) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】
鉄旅日記2021年12月5日・・・古川駅、岩出山駅、有備館駅(陸羽東線)/セレクトイン古川/岩出山
-
-
2018年初秋 初日(東京-桑名)その4-新瀬戸、瀬戸市、高蔵寺、新守山、勝川、枇杷島、蟹江、桑名(愛知環状鉄道/中央本線/東海交通事業常北線/東海道本線/関西本線) 【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】
鉄旅日記2018年9月15日・・・新瀬戸駅、瀬戸市駅、高蔵寺駅、新守山駅、勝川駅、枇杷島駅、蟹江駅、
-
-
「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】最終日(観音寺-東京)-観音寺、宇多津、岡山、瀬戸、高槻、山崎、名古屋、豊橋、掛川、熱海、金町(予讃本線/瀬戸大橋線/山陽本線/東海道本線)
鉄旅日記2009年5月6日・・・観音寺駅、宇多津駅、岡山駅、瀬戸駅、高槻駅、山崎駅、名古屋駅、豊橋駅
-
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】最終日(JR難波-東京)その1-JR難波、八尾、奈良、笠置、伊賀上野、上野市、伊賀神戸、伊勢中川、近鉄長島、長島(関西本線/伊賀鉄道/近鉄大阪線/近鉄名古屋線)
鉄旅日記2017年3月20日・・・JR難波駅、八尾駅、奈良駅、笠置駅、伊賀上野駅、上野市駅、伊賀神戸
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅(山陰本線) 10:03
-
-
「鉄旅日記」2022年如月 最終日(常陸大子-東京)その3 ‐土浦、荒川沖、藤代、柏(常磐線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】
鉄旅日記2022年2月6日・・・土浦駅、荒川沖駅、藤代駅、柏駅(常磐線) 15:49 土浦
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 最終日(多治見-東京)その2-中津川、坂下、落合川、南木曽、十二兼、洗馬、塩尻(中央本線) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月24日・・・中津川駅、坂下駅、落合川駅、南木曽駅、十二兼駅、洗馬駅、塩尻駅(中
