*

「鉄旅日記」2006年晩秋 2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線) 【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/21 旅話, 旅話 2006年

鉄旅日記2006年11月4日/11月5日・・・尾奈駅、新所原駅、豊橋駅、本長篠駅、鳥居駅、三河槇原駅、中部天竜駅、佐久間駅、大嵐駅、伊那小沢駅、天竜峡駅、松本駅(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)

2006・11・5 東京葛飾金町
清々しい浜名湖畔から明けた旅の2日目。
尾奈駅周辺は蜜柑畑だった。


煙草を吸いながら列車の到着を待っていると、美しい女性が待ち人に加わった。
朝の素晴らしさが増した。
終点の新所原までの3駅間は、その遠州娘と蜜柑畑を眺めながら過ごした。

新所原で東海道本線に乗り換える。

豊橋まで。
あの街とも最早すっかり馴染みになった。
明らかに人生が広がりを見せていることを感じた。

飯田線のホームは端にある。
喫煙所では2人の少女がだらしなく煙草を吸っていた。
会話からは彼女たちが社会人であることが聞きとれた。

飯田線は終点の辰野までの長い距離を、どの線との接続を持たない孤高の線区。

豊川、新城。
都会の風景はなく、徐々に鄙びていく。

野田城、鳥居、長篠城。
鉄橋を渡る際に見えた長篠城址。
写真で見てその姿は知っていた。

設楽原決戦場の表示が出たのは、鳥居より前の聞いたことのない駅を通った時だった。
甲斐、信濃、上州武士で構成された最強の武田軍団が事実上壊滅した歴史的な一帯。
これまでに何度も訪問を夢見ていた場所だった。

できることならご先祖に深い関りを持つ、真田信綱、昌輝兄弟の死地に参りたかった。

本長篠駅は決戦場からは離れていた。
乗っていた列車はそこが終点だった。

歩いたよ。
奥三河の地を。
橋から幽谷を眺め、ただ歩いた。

目標としたのは長篠城駅だったけど、線路は幽谷に姿を消して目標を見失い、たどり着けない。
でも長篠城址の前は通り、鳥居駅の駅名の由来となった鳥居強右衛門の死地に立つ碑には手を合わせることができた。

鳥居駅で待った。
手にしていたカポーティーの「冷血」もその頃が佳境だった。

やがて列車がやってくる。
天竜川と着かず離れず進んでいく車窓を楽しみつつ、本にも目を落とす至福の時。

三河槇原駅ではしばらくの停車。

降りたのは中部天竜駅。
昼食はビールと蕎麦に五平餅。

天竜川に架かる橋をいくつも渡り隣の佐久間駅までを歩く。
そこは浜松市。
政令指定都市になるということがどれほどのものなのかよくは知らないが、1本を逃すと、次の列車が来るまで3時間も待たなきゃいけない都市の片隅で、その事実はただ可笑しかった。

コンビニなどないし、煙草と「冷血」がなきゃ間を持たせることはむずかしかった。
ここまで4時間の長い旅路。
「冷血」は読み進まれ、相変わらず天竜川に沿っている。

大嵐駅での停車では鉄道員と並んで煙草を吸い、

伊那小沢駅で景色を写し、

天竜峡でも少しの停車。
その頃には日も暮れていて、天竜峡駅周辺に好もしい灯がいくつか灯っていた。

飯田、駒ヶ根、伊那市。
かつての旅が蘇る。
あの頃にはたどり着けなかった先から、こうしてオレはやってきた。

やがて辰野。
何もない町だった。

やがて岡谷。
待ち時間はなく、すぐに長野行に乗り換える。

松本駅構内は生まれ変わっていた。
そういえばここ最近、いつ来ても工事中だったことに思い至った。
馴染みの街だが、あれから1年も経っている。

松本の夜明かりは好ましい。
洒落た通りを歩いて公園まで。
どんつきに東横インがある。

そこから20年来の友人が経営している店まではすぐ。
彼と奥さんは暖かくオレを迎え入れ、彼等からはあまり歓迎されていない客からワインを振る舞われたりしながら、しばらくいた。

長い付き合いだが、彼と二人で飲んだことはなかった。
共通の友人でもある男が離婚して、2人の子供は毎年きれいな字で年賀状を送ってくれていた奥さんに委ねて、彼は今パリにいる令嬢を追いかけ、時に別の女性と遊んでいると聞いた。

そんな人生でもオレよりはマシだと思った。
そして名前こそ明かさなかったが、初めて彼女の存在を打ち明けた。

ビールとワイン、それに日本酒。
かなり酔って、ホテルに戻って歯も磨かず、シャワーも浴びずに眠った。

朝はホテルが用意してくれた3種類の握り飯に舌鼓を打ち、本屋と土産物屋を覗き、川端のカフェに落ち着いた。
美しい安曇娘に給仕されて本を開き、彼女にメールを送る。
貴女のためにワインを購入して、ここで友を待っていると伝えた。
返信は席を立つまでの間にあった。

友と合流したのは昨夜の店。
それから美味い蕎麦を食べに行き、ホテルのロビーでコーヒーを飲み、また店に戻り彼はあらためてコーヒーを淹れてくれた。

「冷血」は終局を迎え、中場利一さんの物騒だが笑えるエッセーを読みながら、特急「あずさ」は東京に向かった。

関連記事

「鉄旅日記」2015年夏 4日目(西鉄柳川-広島)その2-田川後藤寺、糸田、糒、金田、門司港、厚狭、湯ノ峠、四郎ヶ原、南大嶺、美祢(平成筑豊鉄道糸田線、平成筑豊鉄道伊田線、鹿児島本線、美祢線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月15日その2・・・田川後藤寺駅、糸田駅、糒駅、金田駅、門司港駅、厚狭駅、湯ノ峠

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その4‐南風崎、ハウステンボス、早岐(大村線)/小佐々弾正・甚五郎塚 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・南風崎駅、ハウステンボス駅、早岐駅(大村線)/小佐々弾正・甚五郎

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、甲斐駿河途中下車旅】その1-新宿、初狩、笹子、酒折、善光寺、甲斐岩間、波高島、内船、芝川、西富士宮(中央本線、身延線)

鉄旅日記2013年3月3日その1・・・新宿駅、初狩駅、笹子駅、酒折駅、善光寺駅、甲斐岩間駅、波高島駅

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常磐線/高崎線/上越線)

記事を読む

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その4 ‐立小路、赤倉温泉、村山、さくらんぼ東根(陸羽東線/奥羽本線/山形新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・立小路駅、赤倉温泉駅、村山駅、さくらんぼ東根駅(陸羽東線/奥羽本

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春-館林、佐野、葛生、西小泉、赤城、太田、伊勢崎、新伊勢崎、足利、足利市(東武佐野線/東武小泉線/東武桐生線/東武伊勢崎線)【ふらっと両毛 東武フリーパスで、両毛ローカル旅】

鉄旅日記2014年4月6日・・・館林駅、佐野駅、葛生駅、西小泉駅、赤城駅、太田駅、伊勢崎駅、新伊勢崎

記事を読む

「車旅日記」2004年夏 最終日(長崎-福岡空港)走行距離291㎞その1-長崎ニューポート、島原駅、沖田畷古戦場(龍造寺隆信戦死の地)、大村駅、千綿駅、高橋駅 【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

車旅日記2004年8月15日・・・長崎ニューポート、島原駅、沖田畷古戦場(龍造寺隆信戦死の地)、大村

記事を読む

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その1 ‐飯坂温泉駅、福島駅(福島交通飯坂線/奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・飯坂温泉駅、福島駅(福島交通飯坂線/奥羽本線) 2021

記事を読む

「車旅日記」2006年皐月 2日目(黒磯-仙台)その2-末続駅、双葉駅、原ノ町駅、相馬駅、亘理駅、岩沼駅、名取駅、ホテルイーストワン仙台 【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】

車旅日記2006年5月3日・・・末続駅、双葉駅、原ノ町駅、相馬駅、亘理駅、岩沼駅、名取駅、ホテルイー

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その4-柏原、道明寺、河内長野、古市、畝傍御陵前、田原本、西田原本、新王寺、近鉄王寺(道明寺線/長野線/南大阪線/橿原線/田原本線/生駒線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・柏原駅、道明寺駅、河内長野駅、古市駅、畝傍御陵前駅、田原本駅、西田

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その2 ‐奥大井湖上、接岨峡温泉(大井川鐡道井川線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

2022年3月20日・・・奥大井湖上駅、接岨峡温泉駅(大井川鐡道井川

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その1 ‐焼津、金谷、千頭、井川(東海道本線/大井川鐡道本線/大井川鐡道井川線)/焼津温泉やいづマリンパレス 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月20日・・・焼津駅、金谷駅、千頭駅、井川駅(東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その4 ‐アプトいちしろ、川根小山、千頭、金谷、焼津(大井川鐡道井川線/大井川鐡道本線/東海道本線)/焼津温泉やいづマリンパレス 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・アプトいちしろ駅、川根小山駅、千頭

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その3 ‐新金谷、千頭、アプトいちしろ、長島ダム(大井川鐡道本線/大井川鐡道井川線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・新金谷駅、千頭駅、アプトいちしろ駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その2 ‐静岡、金谷、新金谷、代官町、日切、合格、門出(東海道本線/大井川鐡道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・静岡駅、金谷駅、新金谷駅、代官町駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑