*

「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)

公開日: : 最終更新日:2023/04/28 旅話, 旅話 2006年

鉄旅日記2006年11月4日/11月5日
2006・11・5 東京葛飾金町
清々しい浜名湖畔から明けた旅の2日目。
尾奈駅周辺は蜜柑畑だった。


煙草を吸いながら列車の到着を待っていると、美しい女性が待ち人に加わった。
朝の素晴らしさが増した。
終点の新所原までの3駅間は、その遠州娘と蜜柑畑を眺めながら過ごした。

新所原で東海道本線に乗り換える。

豊橋まで。
あの街とも最早すっかり馴染みになった。
明らかに人生が広がりを見せていることを感じた。

飯田線のホームは端にある。
喫煙所では2人の少女がだらしなく煙草を吸っていた。
会話からは彼女たちが社会人であることが聞きとれた。

飯田線は終点の辰野までの長い距離を、どの線との接続を持たない孤高の線区。

豊川、新城。
都会の風景はなく、徐々に鄙びていく。

野田城、鳥居、長篠城。
鉄橋を渡る際に見えた長篠城址。
写真で見てその姿は知っていた。

設楽原決戦場の表示が出たのは、鳥居より前の聞いたことのない駅を通った時だった。
甲斐、信濃、上州武士で構成された最強の武田軍団が事実上壊滅した歴史的な一帯。
これまでに何度も訪問を夢見ていた場所だった。

できることならご先祖に深い関りを持つ、真田信綱、昌輝兄弟の死地に参りたかった。

本長篠駅は決戦場からは離れていた。
乗っていた列車はそこが終点だった。

歩いたよ。
奥三河の地を。
橋から幽谷を眺め、ただ歩いた。

目標としたのは長篠城駅だったけど、線路は幽谷に姿を消して目標を見失い、たどり着けない。
でも長篠城址の前は通り、鳥居駅の駅名の由来となった鳥居強右衛門の死地に立つ碑には手を合わせることができた。

鳥居駅で待った。
手にしていたカポーティーの「冷血」もその頃が佳境だった。

やがて列車がやってくる。
天竜川と着かず離れず進んでいく車窓を楽しみつつ、本にも目を落とす至福の時。

三河槇原駅ではしばらくの停車。

降りたのは中部天竜駅。
昼食はビールと蕎麦に五平餅。

天竜川に架かる橋をいくつも渡り隣の佐久間駅までを歩く。
そこは浜松市。
政令指定都市になるということがどれほどのものなのかよくは知らないが、1本を逃すと、次の列車が来るまで3時間も待たなきゃいけない都市の片隅で、その事実はただ可笑しかった。

コンビニなどないし、煙草と「冷血」がなきゃ間を持たせることはむずかしかった。
ここまで4時間の長い旅路。
「冷血」は読み進まれ、相変わらず天竜川に沿っている。

大嵐駅での停車では鉄道員と並んで煙草を吸い、

伊那小沢駅で景色を写し、

天竜峡でも少しの停車。
その頃には日も暮れていて、天竜峡駅周辺に好もしい灯がいくつか灯っていた。

飯田、駒ヶ根、伊那市。
かつての旅が蘇る。
あの頃にはたどり着けなかった先から、こうしてオレはやってきた。

やがて辰野。
何もない町だった。

やがて岡谷。
待ち時間はなく、すぐに長野行に乗り換える。

松本駅構内は生まれ変わっていた。
そういえばここ最近、いつ来ても工事中だったことに思い至った。
馴染みの街だが、あれから1年も経っている。

松本の夜明かりは好ましい。
洒落た通りを歩いて公園まで。
どんつきに東横インがある。

そこから20年来の友人が経営している店まではすぐ。
彼と奥さんは暖かくオレを迎え入れ、彼等からはあまり歓迎されていない客からワインを振る舞われたりしながら、しばらくいた。

長い付き合いだが、彼と二人で飲んだことはなかった。
共通の友人でもある男が離婚して、2人の子供は毎年きれいな字で年賀状を送ってくれていた奥さんに委ねて、彼は今パリにいる令嬢を追いかけ、時に別の女性と遊んでいると聞いた。

そんな人生でもオレよりはマシだと思った。
そして名前こそ明かさなかったが、初めて彼女の存在を打ち明けた。

ビールとワイン、それに日本酒。
かなり酔って、ホテルに戻って歯も磨かず、シャワーも浴びずに眠った。

朝はホテルが用意してくれた3種類の握り飯に舌鼓を打ち、本屋と土産物屋を覗き、川端のカフェに落ち着いた。
美しい安曇娘に給仕されて本を開き、彼女にメールを送る。
貴女のためにワインを購入して、ここで友を待っていると伝えた。
返信は席を立つまでの間にあった。

友と合流したのは昨夜の店。
それから美味い蕎麦を食べに行き、ホテルのロビーでコーヒーを飲み、また店に戻り彼はあらためてコーヒーを淹れてくれた。

「冷血」は終局を迎え、中場利一さんの物騒だが笑えるエッセーを読みながら、特急「あずさ」は東京に向かった。

関連記事

「車旅日記」2004年秋【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】2日目(宇野-下津井-新見-津山-城崎)走行距離377㎞ その2-月田駅、津山駅、智頭駅、餘部駅、鎧駅、レイセニット城崎

車旅日記2004年11月21日 2004・11・21 15:05 月田駅(11月20日の京都駅より

記事を読む

「車旅日記」1998年春【下北半島を目指した春。男の旅は北を目指すものと思っていた20代後半。高倉健さんの影響でございましょうか。】2日目(岩手山SA-大間崎-青森駅)-岩手山SA、折爪PA、三沢市ドライブイン三陸、東通村レストラン潮騒、田名部駅、大間崎公営パーキング、大湊駅、陸奥横浜駅、青森駅

車旅日記1998年5月2日 1998・5・2 7:43 東北自動車道-岩手山SA 昨夜の強風が続

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.2【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】その3-常陸太田、東海、大甕、南中郷、石岡(水郡線常陸太田支線/常磐線)

鉄旅日記2019年3月10日 16:05 常陸太田(ひたちおおた)駅(水郡線常陸太田支線 茨城県)

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【浜名湖周辺で遊ぶ一日】その1-掛川、掛川市役所前、西掛川、天竜二俣、西気賀、寸座、浜名湖佐久米、三ケ日、新所原(天竜浜名湖鉄道)

鉄旅日記2015年3月28日その1 掛川(かけがわ)駅(東海道新幹線/東海道本線/天竜浜名湖鉄道 

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】3日目(大分-熊本-佐賀)その1-大分、中判田、豊後竹田、宮地、肥後大津、水前寺、辛島町、熊電上熊本、上熊本(豊肥本線/熊本市電)

鉄旅日記2009年9月20日 2009・9・20 7:48 大分(おおいた)駅(日豊本線/久大本線

記事を読む

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その1‐葛飾金町、幸手駅、古河駅、渡良瀬遊水地北エントランス、藤岡駅、佐野厄除け大師、足利駅

車旅日記2000年5月3日 2000・5・2 東京葛飾金町 前夜祭 旅に出る前夜。 これほどの

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】初日(東京-長岡-坂町-米沢-福島-一ノ関)その1-金町、上野、高崎、六日町、長岡、見附(常磐線/高崎線/上越線/信越本線)

鉄旅日記2019年1月5日 2019・1・5 4:27 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都) 星

記事を読む

「鉄旅日記」2017年冬【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】初日(東京-下今市-会津高原尾瀬口-会津若松)その1-大泉学園、北千住、東武動物公園、上三依塩原温泉口、中三依温泉、会津高原尾瀬口、七ヶ岳登山口、会津山村道場(西武池袋線/東武伊勢崎線/東武鬼怒川線/野岩鉄道/会津鉄道)

鉄旅日記2017年12月2日 2017・12・2 5:05 大泉学園(おおいずみがくえん)駅(西武

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】最終日(和田山-福知山-大阪-近江塩津-東京)その1-和田山、福知山、丹波竹田、石生、篠山口、三田、神鉄三田、宝塚、阪急宝塚、川西池田、川西能勢口、伊丹、阪急伊丹(山陰本線/福知山線)

鉄旅日記2009年11月23日 2009・11・23 6:09 和田山(わだやま)駅(山陰本線/播

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】初日(東京-名古屋-多気-紀伊田辺)その3-周参見、椿、白浜、紀伊田辺(紀勢本線)

鉄旅日記2019年3月2日 19:12 周参見(すさみ)駅(紀勢本線 和歌山県) 16分の停車。

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、青春18きっぷで東海道を下っていったのでございます。】初日その2-西小坂井、三河三谷、愛知御津、三河安城、共和(東海道本線)

鉄旅日記2019年3月23日 13:07 西小坂井(にしこざかい)駅

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、青春18きっぷで東海道を下っていったのでございます。】初日その1-金町、三島、修善寺、蒲原、島田(常磐線/東海道本線/伊豆箱根鉄道駿豆線)

鉄旅日記2019年3月23日 2019・3・23 4:29 金町(か

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】最終日(小千谷-桐生-下妻-東京)道の駅おぢや、塩沢らーめんショップ、月夜野情報サービスセンター、旅の駅桐生、道の駅しもつま、柏市あけぼの2丁目、葛飾金町

車旅日記2000年7月23日 2000・7・23 2:09 17号国

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】3日目(能登島-氷見-小千谷)能登島、道の駅いおり、氷見港、道の駅ウェーブパークなめりかわ、朝日町栄食堂、親不知ピア・パーク、道の駅能生、長岡市宮本、道の駅おぢや

車旅日記2000年7月22日 2000・7・22 9:00 能登島某

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】2日目(諏訪-飯田-飛騨古川-能登島)上諏訪、辰野駅、駒ヶ根駅、飯田駅、道の駅賤母、ドライブイン飛騨花工場、道の駅飛騨古川、能登島

車旅日記2000年7月21日 2000・7・21 7:55 上諏訪某

→もっと見る

    PAGE TOP ↑