*

「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/13 旅話, 旅話 2006年

鉄旅日記2006年11月4日/11月5日・・・尾奈駅、新所原駅、豊橋駅、本長篠駅、鳥居駅、三河槇原駅、中部天竜駅、佐久間駅、大嵐駅、伊那小沢駅、天竜峡駅、松本駅(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)

2006・11・5 東京葛飾金町
清々しい浜名湖畔から明けた旅の2日目。
尾奈駅周辺は蜜柑畑だった。


煙草を吸いながら列車の到着を待っていると、美しい女性が待ち人に加わった。
朝の素晴らしさが増した。
終点の新所原までの3駅間は、その遠州娘と蜜柑畑を眺めながら過ごした。

新所原で東海道本線に乗り換える。

豊橋まで。
あの街とも最早すっかり馴染みになった。
明らかに人生が広がりを見せていることを感じた。

飯田線のホームは端にある。
喫煙所では2人の少女がだらしなく煙草を吸っていた。
会話からは彼女たちが社会人であることが聞きとれた。

飯田線は終点の辰野までの長い距離を、どの線との接続を持たない孤高の線区。

豊川、新城。
都会の風景はなく、徐々に鄙びていく。

野田城、鳥居、長篠城。
鉄橋を渡る際に見えた長篠城址。
写真で見てその姿は知っていた。

設楽原決戦場の表示が出たのは、鳥居より前の聞いたことのない駅を通った時だった。
甲斐、信濃、上州武士で構成された最強の武田軍団が事実上壊滅した歴史的な一帯。
これまでに何度も訪問を夢見ていた場所だった。

できることならご先祖に深い関りを持つ、真田信綱、昌輝兄弟の死地に参りたかった。

本長篠駅は決戦場からは離れていた。
乗っていた列車はそこが終点だった。

歩いたよ。
奥三河の地を。
橋から幽谷を眺め、ただ歩いた。

目標としたのは長篠城駅だったけど、線路は幽谷に姿を消して目標を見失い、たどり着けない。
でも長篠城址の前は通り、鳥居駅の駅名の由来となった鳥居強右衛門の死地に立つ碑には手を合わせることができた。

鳥居駅で待った。
手にしていたカポーティーの「冷血」もその頃が佳境だった。

やがて列車がやってくる。
天竜川と着かず離れず進んでいく車窓を楽しみつつ、本にも目を落とす至福の時。

三河槇原駅ではしばらくの停車。

降りたのは中部天竜駅。
昼食はビールと蕎麦に五平餅。

天竜川に架かる橋をいくつも渡り隣の佐久間駅までを歩く。
そこは浜松市。
政令指定都市になるということがどれほどのものなのかよくは知らないが、1本を逃すと、次の列車が来るまで3時間も待たなきゃいけない都市の片隅で、その事実はただ可笑しかった。

コンビニなどないし、煙草と「冷血」がなきゃ間を持たせることはむずかしかった。
ここまで4時間の長い旅路。
「冷血」は読み進まれ、相変わらず天竜川に沿っている。

大嵐駅での停車では鉄道員と並んで煙草を吸い、

伊那小沢駅で景色を写し、

天竜峡でも少しの停車。
その頃には日も暮れていて、天竜峡駅周辺に好もしい灯がいくつか灯っていた。

飯田、駒ヶ根、伊那市。
かつての旅が蘇る。
あの頃にはたどり着けなかった先から、こうしてオレはやってきた。

やがて辰野。
何もない町だった。

やがて岡谷。
待ち時間はなく、すぐに長野行に乗り換える。

松本駅構内は生まれ変わっていた。
そういえばここ最近、いつ来ても工事中だったことに思い至った。
馴染みの街だが、あれから1年も経っている。

松本の夜明かりは好ましい。
洒落た通りを歩いて公園まで。
どんつきに東横インがある。

そこから20年来の友人が経営している店まではすぐ。
彼と奥さんは暖かくオレを迎え入れ、彼等からはあまり歓迎されていない客からワインを振る舞われたりしながら、しばらくいた。

長い付き合いだが、彼と二人で飲んだことはなかった。
共通の友人でもある男が離婚して、2人の子供は毎年きれいな字で年賀状を送ってくれていた奥さんに委ねて、彼は今パリにいる令嬢を追いかけ、時に別の女性と遊んでいると聞いた。

そんな人生でもオレよりはマシだと思った。
そして名前こそ明かさなかったが、初めて彼女の存在を打ち明けた。

ビールとワイン、それに日本酒。
かなり酔って、ホテルに戻って歯も磨かず、シャワーも浴びずに眠った。

朝はホテルが用意してくれた3種類の握り飯に舌鼓を打ち、本屋と土産物屋を覗き、川端のカフェに落ち着いた。
美しい安曇娘に給仕されて本を開き、彼女にメールを送る。
貴女のためにワインを購入して、ここで友を待っていると伝えた。
返信は席を立つまでの間にあった。

友と合流したのは昨夜の店。
それから美味い蕎麦を食べに行き、ホテルのロビーでコーヒーを飲み、また店に戻り彼はあらためてコーヒーを淹れてくれた。

「冷血」は終局を迎え、中場利一さんの物騒だが笑えるエッセーを読みながら、特急「あずさ」は東京に向かった。

関連記事

「鉄旅日記」2019年長月 最終日(宮古-東京)その2‐陸前赤崎、大船渡、気仙沼、一ノ関(三陸鉄道リアス線/大船渡線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月23日・・・陸前赤崎駅、大船渡駅、気仙沼駅、一ノ関駅(三陸鉄道リアス線/大船渡

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 最終日(紀伊田辺-東京)その1-紀伊田辺、箕島、和歌山、伊太祈曽、貴志(紀勢本線/和歌山電鐵貴志川線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月3日・・・紀伊田辺駅、箕島駅、和歌山駅、伊太祈曽駅、貴志駅(紀勢本線/和歌山電

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 2020・4・4 5:29 松戸

記事を読む

「車旅日記」2005年初夏【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】初日(長岡-会津-福島-山形)走行距離388㎞ その1-長岡駅、小出駅、田子倉駅、只見駅、会津水沼駅、会津坂下駅、猪苗代駅

車旅日記2005年7月16日・・・長岡駅、小出駅、田子倉駅、只見駅、会津水沼駅、会津坂下駅、猪苗代駅

記事を読む

「車旅日記」2003年晩秋【紀伊半島に焦がれる日々。南海道を往くのは2度目でございます。】初日(奈良-高野山-南紀白浜)走行距離204㎞ -橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、龍神、南紀白浜

車旅日記2003年11月22日・・・橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】3日目(柳井-徳島)-柳井、大畠、西条、岡山、高松、高松築港、オレンジタウン、引田、池谷、鳴門、徳島(山陽本線/本四備讃線/高徳本線/鳴門線)

鉄旅日記2008年5月4日・・・柳井駅、大畠駅、西条駅、岡山駅、高松駅、高松築港駅、オレンジタウン駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その4‐南風崎、ハウステンボス、早岐(大村線)/小佐々弾正・甚五郎塚 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・南風崎駅、ハウステンボス駅、早岐駅(大村線)/小佐々弾正・甚五郎

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】4日目(隼人-岩国)その2-熊本、久留米、鳥栖、吉塚、長者原、古賀、東郷、赤間、幡生(鹿児島本線、山陽本線)

鉄旅日記2013年8月13日その2・・・熊本駅、久留米駅、鳥栖駅、吉塚駅、長者原駅、古賀駅、東郷駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その1-近鉄富田、富田、近鉄四日市、湯の山温泉、伊勢若松、平田町、鈴鹿市、鳥羽、賢島(名古屋線/湯の山線/鈴鹿線/山田線/鳥羽線/志摩線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄富田駅、富田駅、近鉄四日市駅、湯の山温泉駅、伊勢若松駅、平田町

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 最終日(釜石-東京)その1‐釜石、遠野、宮守(釜石線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月24日・・・釜石駅、遠野駅、宮守駅(釜石線) 2020・2・24 5:39

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その5 ‐仙台、鹿島、原ノ町、浪江、常陸多賀(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・仙台駅、鹿島駅、原ノ町駅、浪江駅

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その4 ‐山寺(仙山線)/立石寺山門売店/高砂屋本舗 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・山寺駅(仙山線)/立石寺山門売店

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その3 ‐米沢、赤湯、中川、山形、北山形(奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・米沢駅、赤湯駅、中川駅、山形駅、

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その2 ‐峠(奥羽本線)/力餅商店/峠の力餅売り/峠駅今昔物語 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・峠駅(奥羽本線)/力餅商店/峠の

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その1 ‐飯坂温泉駅、福島駅(福島交通飯坂線/奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・飯坂温泉駅、福島駅(福島交通飯坂

→もっと見る

    PAGE TOP ↑