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「車旅日記」2005年初夏【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】最終日(新潟-五泉-弥彦-柏崎-長岡)走行距離246㎞ その1-新津駅、五泉駅、巻駅、弥彦駅、柏崎駅、笠島駅

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2005年

車旅日記2005年7月18日
2005・7・18 時刻の記載なし 新津駅(7月16日の長岡駅より725㎞)
万代橋をもう一度渡った。

新潟市内を流す。
奥行きのある大きな街だ。
港のあるあたりはよく整備されていて、人々を呼ぶ仕掛けは十分。

南へ。
亀田を過ぎると町並は越後国らしくなっていく。

川沿いを走り20㎞。
新津へ。
信越本線、羽越本線、磐越西線が乗り入れる大鉄道基地があった。

遠く秋田を出た羽越本線はここ新津が終着駅となる。
何線も敷かれた構内を跨ぐ橋は果てしなく、駅弁の売り子が改札脇で声を嗄らしている。
ここは鉄道の町で、駅舎が一番新しく、いい顔をしていて、ステンドガラスには機関車が描かれている。

駅前広場は工事中だった。
再訪の折にはどんな顔になっているのだろう。
駅が持つ旅情は豊かだった。

2020年4月5日撮影

9:33 五泉駅(7月16日の長岡駅より735㎞)
灯篭を模した街路灯が並ぶ古いアーケード街の先にテレビ塔。
地平線まで続く電線塔。
新津駅を後にして見た光景だ。

そして緑の原を同じく地平線まで延びる磐越西線の単線のレール。
新津からは10㎞。
濃厚な郷愁の中、越後にいることを意識しながら走った。

阿賀野川近く、五泉の町へ。
7月28日が水中花火大会とある。
五泉の地名の由来となったのであろう泉は、今もあるのだろうか。

町のどんつきにある古い駅。
鉄道が走る町の構造はこれが一番しっくりくる。
アーケード街はまだ起きていない。

携えていた地図に記されている蒲原鉄道はどうやら廃線となったようだ。
タクシーに蒲原の名が残っている。

11:47 巻駅(7月16日の長岡駅より808㎞)
古い地図をアテにしちゃダメなんだな。
描かれていた2つの私鉄、蒲原鉄道、新潟交通はすでになく、散々彷徨ってから新潟市内に戻った。

新潟交通が線路を敷き、その終着駅があった月潟に痕跡はない。
小さな川辺の村だった。

8号国道を北上する。
見覚えがあるのは白根警察。
あれは9年前のことになるのか。
長岡から新潟方面へと向かい、信号で待つオレを、出稼ぎの日々を終えて津軽へと帰郷する男が後ろから追突してきたんだ。
幸いケガはなかったが、後ろが凹んだ車で旅は続けられず、町田へと帰った。

あの頃はツイていなかった。
様々なことが浮かびながら走り、しばらくすると空が広くなる。

180度に広がる越後平野。
昨日は庄内平野で見たけど、あの風景は北海道だけのものじゃない。
東京もビルを取っ払えばあの風景になるのに。
何しろ日本一の関東平野の上にあるのだから。

空の青は鈍いけど、今日も晴れて暑い。
西に向かう。
越後路の歩みは遅いけど、こんなものだろう。

稚内から旭川。
札幌から函館。
広島から京都まで。
一般道だけを使用して、そうした距離を旅の最終日に走ってきたオレには物足りない行程だが、霞む弥彦山を確認して満足する。

巻という駅にいる。
駅員の姿があり、待ち人がいる。
老人は新潟の匂いを残しているが、若者はそうじゃない。

駅前のスナックが入った雑居ビルが、この町の過去から現在を語って聞かせてくれるかのようだ。

2018年3月4日撮影

12:31 弥彦駅(7月16日の長岡駅より823㎞)
弥彦山に向かう道に、巨大な鳥居が立ち塞がるようにして立っている。
神域に入る。

蝉の声が心地いい弥彦駅周辺には、神が寄こした涼風が吹き、タクシー運転手は眠たげにエンジンをふかしている。
駅舎はすでに神社の一部かのような神色をしている。
便所でさえ、立派な瓦屋根が日の光を浴びて輝いている。

この駅には観光駅長という存在があるらしく、歴代の駅長の写真が掲げられている。
すべて女性だったような気がする。
今年で開業88周年という。
いつか列車に乗って再訪したい駅だ。

参道は閑散としていて、駅に一番近い角にある宿屋は廃墟になって久しそうだ。
ラムネを売る店でもあれば雰囲気も出るが、賑わう季節を外れているのだろう。

冬は厚い雲に閉ざされる日本海側の町にとって、夏は日が差す貴重な季節。
みんな海に向かったのだろう。
それに今日は暑い。
でも今日はここが一番涼しそうだ。

何度眺めてみても立派な駅舎だ。
今回の旅で一番去りがたい場所にいる。

2009年7月20日撮影

14:21 柏崎駅(7月16日の長岡駅より878㎞)
神域を離れ、弥彦山の中腹を巡り、海岸線へ。
弥彦駅の涼やかさは去り、暑さがぶり返す。

寺泊は大変な賑わいだった。
刺身を食わせる民家風のレストラン。
新信濃川の流れ込み。
20年代前半にはよく来たものだ。

懐かしかったけど、胸に迫るほどの郷愁が訪れることはなかった。
もう、誰もいない。
あの頃の恋人も仲間も、もう誰もそばにいない。

ここ柏崎まで海水浴で賑わう海岸線をぼんやり眺めながら走ってきた。
あれはかけていたサングラスのせいじゃない。
オレが見ていたのは、やけにセピア色をした景色だった。

柏崎は8号国道上が一番柏崎らしい。
日本海がきれいに見える場所があり、お洒落な店が連なる区間がある。
仲間と初めて訪ねた時は、リゾートの香りをまとった街なのかと思ったものだ。

実際の柏崎の中心街は別な場所にある。
さっき挙げた場所からはたいして離れていない。

柏崎駅は黒っぽく、信越本線と越後線が交わるターミナル駅としての威厳を持つ。
周辺にはオレが勝手に描いていたリゾートの香りはなく、駅前の雑居ビルのペンキは剥がれている。
その下で大勢の人々がバスを待っている。

視線の先には、柏崎駅の屋上に立つ「清酒越の誉」の看板。
そして駅を出た二人の少女が楽しそうに通りを歩いていく。

2011年11月5日撮影

14:58 笠島駅(7月16日の長岡駅より889㎞)
自然と決まるものだ。
引き返す地点の話をしている。
錯綜しながらここまできたけど、ここでいい。
ここがいい。

駅に下る途中の駐車場に車を止めている。
駅までは歩いていく。

民家の脇を通り抜けていくと洒落た小さな駅があった。
目の前には日本海。
海水浴場だ。
ここもよく賑わっている。

海辺の民は普段の暮らしを続け、界隈を人々が行き交う。
昔からこのままなのだろう。
古い木造平屋のお宅の部屋にブランコが置かれている。
物質的には豊かな生活に見えないが、人の暮らしの崇高さを見る思いだ。

苦しみがあり、幸せがあり、また苦しみがある。
「そういうものだろ?」。
そんな民の声が聞こえた気がしたよ。

この場所から国道が通る外界に出るのは大変なんだ。
険しく蛇行した道を上らなければならない。
大雨が降れば孤立するだろう。

でもこの村には信越本線の駅があり、線路を敷くためにシャベルを担いで険しい海岸線に向かった人々の歴史がある。

駅を出ると上下ともすぐにトンネルをくぐる。
坂の多い土地だ。
風は涼しいけど、じっとりとした蒸し暑さに汗が引かない。

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