「鉄旅日記」2005年秋【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。ここから鉄旅が始まったのでございます。】初日(東京-名古屋)-根府川、島田、豊橋、岡崎、名古屋(東海道本線)
鉄旅日記2005年11月5日
2005・11・5 紀州鉄道名古屋栄ホテル908号室
根府川、熱海、沼津、静岡、島田、浜松、豊橋、岡崎そして名古屋。
金町を出てから9時間。
東海道本線各駅停車の旅で、思っていたより中部国際都市は近かった。
根府川で西湘の海を見下ろした。
駅員のいない崖上の駅は関東の駅100選に数えられているという。
寂れた海辺の風景の中にひっそりと存在しているものと思っていたが、駅前を135号国道が走っている。

2012年3月20日撮影
熱海では伊豆行の客に揉まれた。
美味そうな駅弁が売られていた。
もう10年以上前のことになるが、始発電車が動く前の早朝の風景を知っている。
棕櫚が、冬枯れから南の街の風景を守っていた。
今日はあの日とは逆で、改札口から外の景色をチラと見たに過ぎない。
たぶん当時と変わっていない。

2012年3月20日撮影
沼津は大鉄道基地を抱えている。
時代と共に錆びたホームのたたずまいには風情がある。
そのホームで販売されている「駅そば」がことのほか美味くて汁まで飲み干した。
改札を出て街に出れば、都会があることを知っている。
でも改札の中は明治の時代に生まれた歴史が保存されていた。
雨や風、爆撃もあっただろう。
やむを得ぬ事情に晒されたまま我慢強くあの場所で生きてきた古寂な沼津駅には、神社仏閣のような清閑さがあった。
2018年9月15日撮影
吉原、富士で乗り換えホームに目をやり、あのあたりに立ち寄った時代がほんの少しだけ脳裏を掠める。
由比海岸には東名自動車道での記憶がある。
いつも由比PAに立ち寄っては眺めてきた。
そしていつも東海道本線の線路も眺めていた。
その線路に、いついかなる時も未来へと通じる線路に乗って名古屋へと向かっていることに感動していた。
清水から寄り添っては離れていく静岡鉄道には目を奪われた。
静岡はたんに乗り継ぎで降りたに過ぎない。
駅前にツインタワーが聳え立つ風景は都会だったけど、安倍川渡河と共に都会は消えた。
ここまでで4時間。
各駅停車に乗っても静岡なら4時間もあれば着くのだと、心の中で誰かに説明する。
そして新幹線に乗っていたのでは見られない風景を堪能したことに満足していた。
焼津、藤枝にはちょっとした思い出がある。
島田では心地いい風に吹かれた。
馴染みのない地方駅で降りて、適当な居場所が見つからず、すぐにホームに戻ってしまった。
街に下りたら、いつもテレビ塔を探すが、駅からは発見できなかった。
ホームでは美味しいコーヒーを飲んだ。
そして煙草を2本。
東京を離れると、街には普段どんな風が吹いているのかよく分かる。
空は概して広い。
2019年3月23日撮影
大井川を渡ると金谷駅。
段々畑のように茶畑が広がっている。
車窓から眺める掛川は大きな街だった。
掛川城の存在に気づいたのも今回が初めてになる。
磐田にもちょっとした記憶がある。
浜松駅は10年振りだ。
当時想いを寄せていた女性と寄ったものだ。
駅は賑わい、街は大きい。
弁天島駅の広いホームも記憶に残っている。
豊橋では歩いた。
新幹線の車窓から何度も眺めてきた巨大な豊橋駅。
街に出ると路面電車が行き交い、三河の雄都を感じさせる。
豊川まで歩こうと思ったが、とても歩けず、様子のいい商店街を記憶して岐阜行快速列車に乗る。
2018年9月15日撮影
左手に工場群と三河湾が見えてくる。
三河人、尾張人の中に紛れ込んだことをその時に実感する。
岡崎駅は街はずれに位置していたのだろう。
改札を出てもこれといった景色も店もなく、跨線橋で高校生の集団が踊りの練習をしていた。
岡崎中心街に行くには環状鉄道に乗らなきゃならない。
2018年9月15日撮影
名古屋へと近づいていくが、なかなか都会の顔を見せなかった。
やがて夕日が沈んだ。
三河安城、旧友が暮らす刈谷。
車窓から眺める風景に都会の明かりはない。
そして大府に着く。
降りてみようと思っていた駅だが、夕暮れの大府にもオレを誘う明かりは見えない。
やがて金山。
いよいよ都会が始まったかと思う。
巨大な輝きはショッピング・センターただひとつが放つもので、当然のように金山駅周辺で完結していたけど、そこから名古屋の巨大な明かりが見えた。
見上げた名古屋駅は高島屋、JRセントラルタワーズを従え、ひたすらに巨大だった。
駅構内は大雑踏で、当初は閑散としていた地下食品街も時が経つにつれて客足が盛んに聞こえてくる。
2018年9月16日撮影
遠来の客が集う名古屋駅に、京都駅のようなビヤ・レストランはなく、食の街の意地からか、名物料理をしっかりと出す店ばかりが並んでいる。
どこも重い料理を用意している。
不満は持たなかったが、もう少し明るい場所で名古屋を感じたかった。
太閤口の風景は京都駅八条口に似ていた。
繁華街を別の街区にとられた都会の風景。
栄に行かなきゃならない。
案内板に目をやり、この街の大筋を掴んだ。
繁華街は駅周辺にはない。
京都がそうであり、最近じゃ博多、札幌、新潟がそうだった。
桜通を東へ。
国際センター、大手町、そして栄。
高名なテレビ塔がとうとう姿を現し、子供の頃に兄からその存在を聞いて驚いた100メートル道路に立つ。
残るは名古屋城。
朝になればどこにあるのか分かるだろう。
土曜の夜の桜通は疎らで路地に人影が見られない。
栄までその光景が続いた。
角の観覧車だけは乗客を絶やしていなかった。
でもオレは東京都心の土日の風景を知らない。
案外そういうものなのかもしれない。
工事中だったが、テレビ塔の明かりは素晴らしかった。
かつて得意先で世話になり名古屋に嫁がれたMさんはどこで暮らしているのだろう。
名古屋との縁など持たないと思っていたが、こうしてつらつらと思えば、ひとつやふたつあるものだ。
明日離れるまで、時に彼女の面影は浮かぶのかもしれない。
明日、名古屋駅までは今夜のように歩いていく。
久屋大通の角に立てば駅の頭上に聳えるセントラルタワーズの丸い塔が見えるだろう。
東京ナンバー車を運転して尾張に入ると、必ずといっていいほど腹立たしい目に遭ってきて、実はこれまで避けていた街だった。
そんな名古屋との縁を深めていくのは明日を生きるオレ。
少なくとも今日を含めた過去のオレじゃない。
期待しよう。
そのために、こうして名古屋のベッドに座っている。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】最終日その3(岩倉-東京)-津島、須ヶ口、神宮前、豊明、岡崎公園前、中岡崎、東岡崎、国府、豊川稲荷、豊川(名鉄津島線/名鉄本線/名鉄豊川線)
鉄旅日記2015年3月8日その3 13:12 津島(つしま)駅(名鉄尾西線/名鉄津島線 愛知県)
-
-
「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】2日目(黒磯-郡山-いわき-仙台)その1-明治の森黒磯、高久駅、黒田原駅、白河駅、安積永盛駅、三春駅、船引駅、磐城常葉駅、川前駅、小川郷駅、四ツ倉駅
車旅日記2006年5月3日 2006・5・3 4:56 枝室街道‐道の駅明治の森黒磯 清々しい朝
-
-
「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】2日目(倉敷-伯耆大山-鳥取-姫路-和田山)その2-郡家、若桜、郡家、智頭、京口、福崎、寺前、和田山(因美線/智頭急行/播但線)
鉄旅日記2009年11月22日 12:28 郡家(こおげ)駅(因美線/若桜鉄道 鳥取県) ここは
-
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その1-近鉄奈良、新田辺、三山木、JR三山木、狛田、下狛、新祝園、祝園、学園前、学研奈良登美ヶ丘(奈良線/京都線/けいはんな線)
鉄旅日記2017年3月18日 2017・3・19 5:45 近鉄奈良(きんてつなら)駅(近鉄奈良線
-
-
「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】5日目(松浦-伊万里-唐津-若松)その1-松浦、有田、伊万里、唐津、筑前前原、姪浜、天神、西鉄福岡、博多(松浦鉄道/筑肥線/福岡市地下鉄空港線)
鉄旅日記2009年9月22日 2009・9・22 6:44 松浦(まつうら)駅(松浦鉄道 長崎県)
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.2【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】その1-天王台、植田、泉、いわき、富岡(常磐線)
鉄旅日記2019年3月10日 2019・3・10 5:47 天王台(てんのうだい)駅(常磐線 千葉
-
-
「車旅日記」2003年晩秋【紀伊半島に焦がれる日々。南海道を往くのは2度目でございます。】3日目(伊勢志摩-吉野-奈良-京都)走行距離239㎞ -大王崎、御座港、鵜方駅、飯高駅、天誅組終焉之地、吉野駅、吉野神宮駅、吉野口駅、京都ホーユウコンフォルト二条城
車旅日記2003年11月24日 2004・11・24 9:40 大王崎 薄曇り。 小雨が時に混
-
-
「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】4日目(大曲-阿仁合-弘前-三厩-青森)その1-大曲グランドホテル、角館駅、羽後中里駅、阿仁合駅、鷹ノ巣駅、大館駅、碇ヶ関駅、大鰐温泉駅、黒石駅
車旅日記2006年5月5日 2006・5・5 7:00 大曲グランドホテル610号室 山々は見え
-
-
「鉄旅日記」2008年初秋【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】初日(東京-米原-野町-加賀一の宮-羽咋)その2-新西金沢、野町、加賀一の宮、西金沢、羽咋(北陸本線/北陸鉄道石川線/七尾線)
鉄旅日記2008年9月13日 15:19 新西金沢(しんにしかなざわ)駅(北陸鉄道石川線 石川県)
-
-
「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その1‐葛飾金町、幸手駅、古河駅、渡良瀬遊水地北エントランス、藤岡駅、佐野厄除け大師、足利駅
車旅日記2000年5月3日 2000・5・2 東京葛飾金町 前夜祭 旅に出る前夜。 これほどの