「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】5日目(青森-八戸-気仙沼-女川-安達)その2-宮古駅、吉里吉里駅、盛駅、大船渡駅、気仙沼駅、女川駅、石巻駅、利府駅、道の駅あだち
車旅日記2006年5月6日・・・宮古駅、吉里吉里駅、盛駅、大船渡駅、気仙沼駅、女川駅、石巻駅、利府駅、道の駅あだち
17:46 宮古駅(1,547㎞)
山田線と閉伊川に沿うように106号国道を宮古へ。
久慈から延びた三陸鉄道は、ここで北線の役目を終える。
切符売場では、昔のようにオバチャンが切符をもいでいる。
青い壁に青い屋根。
海をイメージしているのだろうか。
思ったとおり「駅そば」があり、それが夕食。
ビールは今夜眠る街までの辛抱。
どこらあたりまで行けるだろう。
あとは風呂の心配だけすればいい。
駅には以前の浄土ヶ浜の写真が飾られている。
そんな景勝地に、義経北行伝説を持つ宮古。
宮古湾は、幕末に土方歳三率いる一隊が海上奇襲をかけた古戦場でもある。
駅前も百貨店も賑わい、寿司屋に心惹かれる。
この街に宿泊すれば、あの暖簾をくぐるだろう。
子供たちは岩手健児らしい装いで元気いっぱい。
都会じゃそんな感想は出てこないだろう。
ここからひたすら南下に入る。
2019年9月22日撮影
19:28 吉里吉里駅(1,592㎞)
宮古ですべてが済んだ。
いい湯だった。
テレビ塔を正面に見て右折すると宮古湾が広がり、その先に湯があった。
南部美人とはなかなか聞かないが、美しい女性が受付に立っていた。
ガソリンスタンドのオッサンに釜石までは1時間と聞いた。
でもそれ以上かかってしまった。
山田バイパスから見えた山田の夜景に心騒ぎ、この駅へと誘う表示を目に留めて、ここにやってきた。
吉里吉里国とは、こんなところにあったのか。
角の家の門灯にその国名が記されていた。
井上ひさしさんが描いた「吉里吉里人」。
ある日、忽然と東北の一地方に独立国が建ち現われるという荒唐無稽な話だ。
吉里吉里商店街のぼんぼりが桜を照らしている。
いい風情だ。
駅に人の姿はなく、木札に凝った字体で書かれた吉里吉里駅。
駅舎からホームへは30段近くの階段を上がる。
階段の手前はちょっとした広場になっていて、噴水が置かれていた跡がある。
階段の両脇にも桜が咲き、その夜桜に照らされながら、何度も階段を駆け上がり、駆け下った。
オレには、これが「天国の階段」だった。
2019年9月23日撮影
20:43 盛駅(1,647㎞)
釜石を抜けて、さらに45号国道。
かつて立ち寄った釜石大観音はライトアップされて、暗闇に浮かぶその姿をはっきりと目にすることができた。
最接近した時に見えたのは後ろ姿だった。
大船渡に入る。
釜石から南線として運行する三陸鉄道はここが終点となる。
若い女性が2人、三鉄の改札を入っていった。
そして警笛が鳴り、彼女たちを目的の地に運ぶ車両が入ってきた。
跨線橋から鉄道基地が見渡せて、たった今JR駅の電気が消された。
駅前には居酒屋チェーンの店が1軒きり。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2017/12/c1bd77fb5fbf7d8232a4a5db51c25721-300x169.jpg)
2016年3月6日撮影
21:04 大船渡駅(1,651㎞)
三陸の中心都市、大船渡。
すっかり夜が降りて静まっているけど、感じのよさそうな店が連なる。
青く点滅するスナックの灯が艶めかしい。
駅前で待つタクシーの数はそれなりのものだが、タクシー会社の白髪のオッサンは退屈に耐えている。
駅舎は古く、濃厚に昭和が香る。
大船渡タクシーの社屋もまた長い時代を生きてきたようだ。
今日の走行距離は400㎞を超えたが、三陸はまだまだ続く。
21:54 気仙沼駅(1,685㎞)
陸前高田を過ぎ、気仙沼。
街から街へ。
これがオレのやりたかったこと。
昼間の気仙沼なら知っている。
港では美味いものを食べた。
鉄道の運行はすでに終わり。
駅前には灯台のオブジェが立ち、その先にはホテルパールシティが駅を見据えている。
その駅は洋館風の立派な造り。
ここは食の街。
飲み屋がまだ数軒開いている。
ここから石巻までは街らしい街はない。
次に目指す女川も闇の中だろう。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2017/12/6209a7ae66d7d2b85f5ac607f87c2dbd-300x169.jpg)
2016年3月5日撮影
23:45 女川駅(1,783㎞)
闇の中。
散々な思いをしながら、港に美しい灯が連なる町に着いた。
途中の山中では、正体は判然としないが3匹の動物と接触しそうになった。
目を合わせ、互いに譲り合った。
本当だよ。
ここが終着駅。
「よくきたな」。
そんな言葉が聞こえそうな、歴史と優しさに満ちた駅舎だ。
開業は昭和14年。
洋館造りに瓦屋根が乗っている。
改札を入ると階段を上がる。
その先に行き止まった線路とホームがある。
吉里吉里駅でのように、そして子供のように、ここでも「天国の階段」を何度も行き来する。
かつて英国東洋艦隊が停泊して、天然の良港として女川は世界に知られたという。
亘理でも触れた前九年の役では、ここも戦場になり、賊軍となった安倍貞任が婦女子を川の方に逃がしたことが町名の由来とのこと。
牡鹿半島の入口、女川の装いは観光地。
素敵な町だ。
そんな町だが、南米チリで起きた大地震によって発生した大津波が三陸沿岸を襲った際、人的被害は皆無だったが、町は壊滅的な打撃を受けたという。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2020/08/2ddee51c8bdafea5e702c9a37009ccfc-169x300.jpg)
2009年10月11日撮影
24:25 石巻駅(1,799㎞)
宮城県第二の都市、石巻。
この時間帯でも街は賑やかで、石畳の界隈を通り、繁華街へ。
ここには大鉄道駅がある。
洋館風の駅舎は2つの建物が合わさったような姿で、窓にはステンドグラスがはめ込まれている。
女子が友達に痴話話を着かせ、路上生活者が徘徊し、酔客が騒いでいる。
通りを彷徨う姿もチラホラあり、タクシーは身構えている。
大きな街だ。
そして東京はまだ遠い。
「みちのく」の果てしなさを想う。
開いている店はまだまだあって、アーケード街もまた「みちのく」のように果てしない。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2018/01/f2fe0fe8c5a35caf80f79ed4a1a00440-300x169.jpg)
2016年3月20日撮影
25:18 利府駅(1,836㎞)
明治27年開業の由緒ある終着駅に寄った。
新興の町かと思っていたが、とんでもない。
あたりには目立った建物はなく、空地が散見される中に現代的な駅舎が建っている。
仙台のベッドタウンなのだろうか。
静まりかえった駅からは虫の声がこだまする。
タクシーも最早家路について、間もなく仙台。
帰ってきたな。
今朝青森を出てから600㎞も走ってきたのか。
雨の音が聞こえる。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2018/01/ecc5cd63cd73f0ec518f7fb816dacb68-300x169.jpg)
2016年3月21日撮影
27:03 4号国道‐道の駅あだち(1,940㎞)
着いた。
もうここでいいだろう。
もうビールを飲んでもいい。
関連記事
-
-
「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】2日目(紋別-釧路)走行距離367㎞その1-紋別港、サロマ湖三里浜オートキャンプ場、芭露駅跡、サロマ湖ワッカ原生花園、網走市鉄道記念館、網走監獄、網走駅、北浜駅、浜小清水駅
車旅日記2004年5月2日・・・紋別港、サロマ湖三里浜オートキャンプ場、芭露駅跡、サロマ湖ワッカ原生
-
-
「車旅日記」2004年秋【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】2日目(宇野-下津井-新見-津山-城崎)走行距離377㎞ その1-宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅
車旅日記2004年11月21日・・・宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その1‐金町、東京、高尾、藤野(常磐線/中央本線)
鉄旅日記2020年3月20日・・・金町駅、東京駅、高尾駅、藤野駅(常磐線/中央本線) 2020・3・
-
-
「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、相模・駿河・甲斐途中下車旅】その1-新子安、石川町、山手、磯子、根岸、大磯、二宮、鴨宮、早川、根府川、伊東、熱海、函南、東田子の浦(京浜東北線、根岸線、東海道本線、伊東線)
鉄旅日記2012年3月20日その1・・・新子安駅、石川町駅、山手駅、磯子駅、根岸駅、大磯駅、二宮駅、
-
-
「鉄旅日記」2003年冬【ご縁と別れがあり、34歳の誕生日を北九州で迎えた日の記憶でございます。】初日(宇部-飯塚-博多)その1-山口宇部空港、宇部新川、宇部、下関、小倉、折尾、飯塚、博多(宇部線/山陽本線/鹿児島本線/筑豊本線/篠栗線)
鉄旅日記2003年2月15日・・・山口宇部空港、宇部新川駅、宇部駅、下関駅、小倉駅、折尾駅、飯塚駅、
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.1【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】初日(東京-紀伊田辺)その3-周参見、椿、白浜、紀伊田辺(紀勢本線)
鉄旅日記2019年3月2日・・・周参見駅、椿駅、白浜駅、紀伊田辺駅(紀勢本線) 19:12 周参見(
-
-
「車旅日記」2005年冬【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】初日(熊本空港-高森-湯前-都城)走行距離270㎞-羽田空港、熊本空港、立野駅、高森駅、湯前駅、小林駅、都城グリーンホテル
車旅日記2005年2月11日・・・羽田空港、熊本空港、立野駅、高森駅、湯前駅、小林駅、都城グリーンホ
-
-
「鉄旅日記」2013年春【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】最終日(和歌山-東京)その1-打田、妙寺、高野口、橋本、五条、吉野口、法隆寺、平城山、木津、京田辺、四條畷、住道(和歌山線、関西本線、学研都市線)
鉄旅日記2013年4月7日その1・・・打田駅、妙寺駅、高野口駅、橋本駅、五条駅、吉野口駅、法隆寺駅、
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)
鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太多線/中央本線/東海道本線)
-
-
「鉄旅日記」2000年晩秋【京都の女性に恋をしていた頃がございました。その京都時代のはじまりでございます。】-京都タワーホテル
鉄旅日記2000年11月23日~24日 2000・11・23 0:03 京都タワーホテル924号室