「鉄旅日記」2018年如月 初日(東京-直江津)その1-保谷、代々木、都留市、富士山、河口湖(西武池袋線/山手線/中央本線/富士急行) 【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】
鉄旅日記2018年2月10日・・・保谷駅、代々木駅、都留市駅、富士山駅、河口湖駅(西武池袋線/山手線/中央本線/富士急行)
2018・2・10 4:28 保谷(ほうや)駅(西武池袋線 東京都)
今朝起きたら、起き上がったいつもの寝床に違和感を持った。
こんなものなのだろうか?
思い入れやら何やら、こんなにもあっさりと諦めがつくものなのだろうか?
思いは4月からの葛飾での暮らしに半分ほど向かい、寂しさを感じた時、今いる場所が苦味を教える。
じきに離れていく町、保谷。
駅前通りはやはりもう少し広げるべきだ。
狭いよ。
子どもたちが心配なんだ。
5:09 代々木(よよぎ)駅(中央本線/山手線/都営地下鉄大江戸線 東京都)
池袋で山手線に乗り換え。
行楽シーズンでもなく、最大級の寒波に見舞われている列島を渡り歩く者の姿はわずかで、酔客の姿もまれで、たいていがすっきりとした表情を浮かべている。
皆こんな朝早くからどこへ行くのか。
人の多い街にはそれだけの謎がある。
代々木駅はもっと駅らしい構えをしていたと思うが、こんなビルだったか。
大江戸線開通を期に建て変わったのだろうか。

新宿をひとつ通り越して、ここで中央線に乗り換える。
7:25 都留市(つるし)駅(富士急行 山梨県)
24時間眠らないと思っていた東京。
でも新宿から続く夜明け前の街並は眠っていた。
夜の街も営業を済ませば明かりを落とす。
大都会は早朝に眠る。
30年前にはオレもそんなメチャクチャな日を年に数回送っていた。
そんなことをしていればいつか疲れる。
それはきっと街にも当てはまる。
高尾で乗り継ぎ、大月で富士急に乗り換え。
中央道に渋滞表示が出ている。
峠越えにかかる139号国道が富士へと伸びる途中、谷間の町に降りた。

冷気は東京の比ではなく、今日一本目のビールを飲んだ体が震えている。
駅舎はハワイのドライブインで見たような独特な形状をしている。
日本の文化には見られない。

あるいは富士急の文化なのだろうか。
この先にはどんな駅があるのだろう。
この町で降りてこの駅を見るにつけ、オレが見たいと思っているものは確実に無限だと思う。
それにしてもこの体の震えをどうにかしてくれないか。
この待合室は寒すぎる。
日に当たりにいこう。

8:23 富士山(ふじさん)駅(富士急行 山梨県)
気づけば、路傍に積もった雪が深くなっている。
保谷でも消えていない先々週の雪。
夜には雨の予報が出ている甲州も、今は晴れて、列車に降り注ぐ日はあたたかく、希望に満ちた若者たちを明るく照らしていた。

車中、これほどまでにと思うほど接近した天下の名山は、その名を冠したこの駅では近いには近いが、車窓からの眺めよりは遠くに見える。

かつて憂鬱な気持ちでバスに揺られ向かった剣道の合宿の際に、当時は富士吉田駅だった駅前を通った記憶がある。

あれから40年。
当時を思い起こすことで語れるようなものは何もないが、そんな少年時代を送れたことはきっと財産なのだろう。
オレには懺悔すべき存在がいる。
列車はここで一旦行き止まりになり、方向を変えて河口湖に向かう。

現代的な駅舎はとてもきれいで、カフェのような待合室はあたたかく、売店でウイスキーハイボールと「たい焼き」を買ってきて楽しむ。


「おかずたい焼き」なるものがメニューにあって正体を尋ねると、ウインナーとオムレツが入っているという。
迷ったがスタンダードなあんこにした。
パリッとした衣の食感はよかったが、オレは縁日で売ってるようなベチャっとしたやつが好きだ。
たんに馴染みの問題で、味には何の問題もなく、美味い。
9:35 河口湖(かわぐちこ)駅(富士急行 山梨県)
船津浜に下りて、結氷した河口湖を眺める。



夏の姿しか知らないオレにとって、その姿は新鮮かつ神聖だった。
最後に河口湖を見てから30年の歳月が流れている。
たいしてありがたくもない記憶で、大切にしていたわけでもないが、この地に下りてみたら、そんな記憶でもないよりはマシだと思った。
人生は縁を求める。
4月から別の人生が待つオレもまた、そうしていく。
あらためて言うまでもないが、人生はそうしてシンクロしていく。
そこに深い洞察めいた言葉はいらない。
人生とはそういうものなのだろう。
その存在を知らずにいたロープウェイ乗場を眺めながら、そんなことを思う。
湖へと下りていく凍てついた道。
冬の湖畔。
これまでに、そんな場所にいたことはなかった。



富士山に傘雲がかかっていた。
天候はおそらく予報通りだろう。


ビールを買って待合室でくつろいでいたら、中国人の家族に囲まれた。
世界中であまりよくは言われることのない民族だが、声が大きくて感情表現が日本人より大袈裟なだけだ。
善良な隣人と笑顔を交わし、万国共通の愛らしい赤ん坊を愛した。
その先では小学生くらいの少年が父親に甘えている。
とても微笑ましく、身の不徳に涙ぐみそうになる。
ここじゃオレは旅人。
誇らしくもあり、悲しくもある。
この悲しみは、酒も少しは影響しているのかもしれない。
楽しい気持ちにもさせるが、感傷的にさせる役目も多くの場合負う。
富士山はまだ陰りを見せず、降り注ぐ日は真綿のようにあたたかい。
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