*

「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その2(東京-岩倉)-三河高浜、碧南、高浜港、亀崎、半田、知多半田、内海、富貴、河和(名鉄三河線/武豊線/名鉄河和線/名鉄知多新線)

公開日: : 最終更新日:2023/06/20 旅話, 旅話 2015年

鉄旅日記2015年3月7日その2・・・三河高浜駅、碧南駅、高浜港駅、亀崎駅、半田駅、知多半田駅、内海駅、富貴駅、河和駅(名鉄三河線/武豊線/名鉄河和線/名鉄知多新線)
15:10 三河高浜(みかわたかはま)駅(名鉄三河線 愛知県)
豊田市から再び知立に戻り、碧南行きに乗り換える。
刈谷で東海道本線と合流し、さらに南へ下る。

列車に乗ると入口ドア近くに新聞の束が置いてある。
駅に到着する度に売店の店員さんと思われる人々が現れて下ろしていく。
合理的だが牧歌的なシステムだ。
名古屋近郊にまだこんな人間風景が残っているとは驚きだ。
あるいはオレが知らないだけで、東京や大阪でも例えば早朝などに同じような風景が見られるのだろうか。

ここで数分の停車。
駅前には坂道に沿った住宅街が広がっている。
駅はこれまで見てきたとおり名鉄特有の特徴のない造りで、蒲郡線に残っていた開業当時からの物と思われるレトロな造作の駅が懐しい。

古いものが見当たらなくなった風景に感じる違和感が消える頃とは、おそらくその特徴のない構造物群が古く見えるようになる頃なのだろう。

15:37 碧南(へきなん)駅(名鉄三河線 愛知県)
吉良吉田でも触れたが、碧南が終着駅になってから10年になる。
その10年は碧南駅とその周辺が終着駅の風情を身にまとうのに十分な時間であったらしい。

古い駅は旅情たっぷりで、降りだした小雨もこんな場所じゃ粋に感じる。
駅正面に構える旅館割烹大正館がまたいい。
子供の頃にテレビに映っていた風景を見ているようで何だか懐かしい。

碧南は醤油と味醂の街らしい。
待合室の特産品コーナーで白醤油という存在を初めて知った。

大浜通りの酒屋が閉まっていてビールは飲めず、駅横の煙草屋で一服。脇の古いうどん屋は開いている。
近くの下水管がヘタっているのかどことなく便所の臭いを感じるが、昭和の時代はどこでもそんな臭いがしたものだ。

これから高浜へ戻り、徒歩でJR武豊線亀崎駅に移動する。

高浜港(たかはまみなと)駅(名鉄三河線 愛知県)にて

衣浦大橋から見る衣浦湾

16:33 亀崎(かめざき)駅(武豊線 愛知県)
小雨が降っている。
市政が敷かれている高浜の港駅で降りて「鬼の道」をしばし歩く。
高浜は鬼瓦の街だという。

やがて大河のような衣浦湾を渡り半田に上陸。
しばらく歩いて何やら由緒書きが置かれた急な坂道を上ると小学校に出て右折する。
跨線橋らしきものを発見したのちに資生堂の看板、次いで菓子屋が並ぶ様を見てそこが駅前だと確信する。
約1時間でJR武豊線亀崎駅に到着。

古い駅舎があることは知っていた。
でも見えてきたのは駅と見紛う新しい跨線橋で、歴史的建造物はすでに撤去されたかと落胆したが、跨線橋の麓にちんまりと存在していた。

ここでもビールは飲めず煙草のみ。
しかしさすがに中京地帯。
どこへ行っても人の姿は絶えない。

半田(はんだ)駅(武豊線 愛知県)にて

16:54 知多半田(ちたはんだ)駅(名鉄河和線 愛知県)
半田駅からの乗り継ぎ時間にあてていた時間は7分。
半田駅の構造と、半田知多半田駅間が思いの外遠かったことで計画は小さく破綻した。
一本乗り遅れる。

半田は以前武豊線完乗の行き帰りに通ったが、大型ショッピングングモールがあった高架駅だと思い込んでいた。
あの駅はどこだったのだろう。

実際の半田駅前はグレーに廃れていた。
だけど計画通りに名鉄への乗り換えが叶わないことが分かっていたら、オレはあのJR半田駅の近くで待ちたかった。

半田はミツカンと蔵の街らしい。
衣浦湾へと注ぐ半田運河で待てたらよかった。
そこは映画の撮影でも使用された黒板囲いの蔵が並ぶ美しい一帯だという。
火灯し頃だ。
きっとレトロな灯が点るだろう。

仮に旅の果てに辿り着いた場所が半田であったとしても、オレなら満足できただろう。
なんだか懐かしい一帯だった。

衣浦湾はかつて中京地帯の開運の要で、武豊線の開業は東海道本線全通よりも早かったというが、今はその地位を名古屋港に譲り、活躍の場は過去の歴史の中に移してしまった。
知多半田駅前には名鉄インが構え、明るく新しい印象を受ける。

17:34 内海(うつみ)駅(名鉄知多新線 愛知県)
リゾートマンションが見える。
あそこが海。
その海まで民家がびっしりと軒を連ねている。

ビーチロードの酒屋は閉まり、駅の喫茶店も閉まっている。
南洋椰子は雨に濡れ、冬の雨にはそぐわない。
出迎えの人々が改札前に群れを作り、旅館の女将がオレを客と勘違いして視線を送ってきた。
こんな季節に誰がどんな用があって知多半島の果てまでやってきたのだろうか。

野間~内海間には住宅も見えず密林の中を往くようで秘境を思わせた。
内海から二つ目の知多奥田には日本福祉大学と付属高校があり、上り列車には多くの学生が乗り込んできた。

平治の乱で平清盛に敗れた源義朝は逃亡の果てに裏切りに遭い、織田信孝は豊臣秀吉、織田信雄との権謀術数に破れて幽閉の果てに、それぞれ内海を最期の地としている。

17:55 富貴(ふき)駅(名鉄河和線/名鉄知多新線 愛知県)
内海からターミナル駅の富貴へ戻る。

最果てのターミナル駅に街灯が点った。
雨降りの狭い駅前通りを車が行き交う。
大衆食堂とお洒落なカフェ&キッチン「ジジ」にも灯が点った駅前。
決して少なくない本数を運行する名鉄駅に人々が集まり、雨降りの中をどこかへと向かっていく。
多くはひとりだ。
オレもひとりで、そんな人々の営みを何だかいじらしく思う。

弥生尾張の雨は冷たくない。

18:17 河和(こうわ)駅(名鉄河和駅 愛知県)
知多半島のもうひとつの終着駅に近づくにつれて飲み屋の灯がちらほらと見えてきた。
改札口の先に寿司売場が見える。
「おっ」と思い、さらに外へと向かう脇にはスーパーと思しき入口がある。
オレの頭の中は一気にビールで埋まり、鶏の唐揚げと合わせて218円。
安い。
今は至福の時を過ごしている。

以上の買い物をする前に外に出る。
オレにとっちゃ傘が必要な降りではないが、それでもさっきより激しく降っている。
駅前はバス乗り場で人通りも多く、バスが消えていった先、駅舎に隠された先にも明かりが見えた。

そこは港だった。

ここは半島の先端ではなく、まだこの先に南知多町がある。
さらに先の三河湾に目を移せば佐久島、日間賀島、篠島の愛知三島と呼ばれる離島が浮かび、それぞれ100から1,000人規模の住民を抱えている。
薄々感づいていたが愛知県とは思いの外田舎だ。

河和と内海まで伸びていった名鉄線路は本当は半島の先端まで行ってそんな地域との一体化を図る目論見じゃなかったのか。
そんな想像が頭をもたげる。

知多半島の住民は名古屋との距離を近く感じているだろうか。
それとも遠く感じているだろうか。
そんなことが気になっている。

関連記事

「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】4日目(隼人-岩国)その1-隼人、鹿児島、鹿児島中央、上伊集院、薩摩松元、川内、出水、新水俣、新八代(日豊本線、鹿児島本線、肥薩おれんじ鉄道)

鉄旅日記2013年8月13日その1・・・隼人駅、鹿児島駅、鹿児島中央駅、上伊集院駅、薩摩松元駅、川内

記事を読む

2018年秋【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】最終日(松戸-五井-大原-安房鴨川-松戸)その2-養老渓谷、上総中野、大多喜、国吉、大原(小湊鉄道/いすみ鉄道)

鉄旅日記2018年9月23日・・・養老渓谷駅、上総中野駅、大多喜駅、国吉駅、大原駅(小湊鉄道/いすみ

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】2日目(五所川原-北上)その1‐五所川原、津軽五所川原、津軽中里、鯵ヶ沢、東能代(津軽鉄道/五能線)

鉄旅日記2019年11月3日・・・五所川原駅、津軽五所川原駅、津軽中里駅、鯵ヶ沢駅、東能代駅(津軽鉄

記事を読む

2020年如月【水上温泉につかりにいったある週末の記憶をSNSへの投稿より振り返ります。】-土合、水上、後閑、沼田(上越線)

鉄旅日記2020年2月8日~9日・・・土合駅、水上駅、後閑駅、沼田駅(上越線) 水上に投宿する前に土

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】最終日(鷹ノ巣-東京)その1‐鷹ノ巣、二ツ井、鷹巣、阿仁合(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道)

鉄旅日記2023年1月13日・・・鷹ノ巣駅、二ツ井駅、鷹巣駅、阿仁合駅(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道)

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】初日(東京-河口湖-新島々-長野-直江津)その3-梓橋、姨捨、北長野、三才、直江津(大糸線/篠ノ井線/しなの鉄道/えちごトキめき鉄道)

鉄旅日記2018年2月10日・・・梓橋駅、姨捨駅、北長野駅、三才駅、直江津駅(大糸線/篠ノ井線/しな

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その2-隼人、日当山、鶴丸、吉松、真幸、矢岳、大畑、人吉、坂本、玉名、西鉄柳川(肥薩線、鹿児島本線、西鉄本線)

鉄旅日記2015年8月14日その2・・・隼人駅、日当山駅、鶴丸駅、吉松駅、真幸駅、矢岳駅、大畑駅、人

記事を読む

「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】初日(東京葛飾-黒磯)-天王台駅、水海道駅、下妻駅、真岡駅、益子駅、烏山駅、黒磯駅、明治の森黒磯

車旅日記2006年5月2日 2006・5・2 18:59 東京葛飾金町 雨の出発も過去にはあった

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、甲斐駿河途中下車旅】その2-源道寺、入山瀬、下部温泉、塩之沢、甲斐常葉、市川大門、甲府、新府、穴山、東山梨、東所沢(身延線、中央本線、武蔵野線))

鉄旅日記2013年3月3日その2・・・源道寺駅、入山瀬駅、下部温泉駅、塩之沢駅、甲斐常葉駅、市川大門

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】2日目(徳山-南宮崎)その1-徳山、長府、西小倉、城野、行橋、新田原、中津、中山香、高城、佐志生、熊崎、上臼杵、臼杵(山陽本線、日豊本線)

鉄旅日記2013年8月11日その1・・・徳山駅、長府駅、西小倉駅、城野駅、行橋駅、新田原駅、中津駅、

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 20

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その2‐猪谷、高山、久々野、古井、美濃川合(高山本線/太多線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・猪谷駅、高山駅、久々野駅、古井駅、美

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その1‐速星、越中八尾、楡原(高山本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・速星駅、越中八尾駅、楡原駅(高山本線

→もっと見る

    PAGE TOP ↑