*

「鉄旅日記」2007年如月 2日目(天王寺-奈良)その1-南霞町、浜寺駅前、浜寺公園、羽衣、春木、和泉大宮、岸和田、和歌山市、和歌山港、堺(阪堺電気軌道/南海電鉄南海線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/20 旅話, 旅話 2007年

鉄旅日記2007年2月11日・・・南霞町駅、浜寺駅前駅、浜寺公園駅、羽衣駅、春木駅、和泉大宮駅、岸和田駅、和歌山市駅、和歌山港駅、堺駅(阪堺電気軌道/南海電鉄南海線)

2007・2・11 スーパーホテル奈良駅前321号室
朝早い天王寺公園。
起き上がった路上生活者たちが風景を眠たくさせている。

さあ、どこへ行こうか。

新今宮への坂を下りていくと南霞町駅のホームに出る。
堺方面への乗車賃が290円。
安いから乗る。

遠いと思って断念した岸和田、和歌山への道が開けたのもその時だった。

路面電車は堺へ。
その車中、太宰の未完の遺作「グッド・バイ」を読み終えた。
読み継がれたのは「停電の夜に」。

乗客は次々と降りていき、たったひとりとなってたどり着いた終着駅は、街道沿いの浜寺駅前駅。

街道を渡ると浜寺公園。
素敵な公園で、海岸まで通じているものかと地図を見ると、運河で終わっている。
引き返して街道を少し歩くと南海電車の浜寺公園駅に出た。
何事かを思わせる古い駅舎だった。
聞けば、私鉄駅最古の駅舎とのこと。

この公園は夏には賑わうのだろうか。
名所としての扱いをどれほど受けているのか知らないが、鉄道近代史に目を向けるとしたら、いいきっかけにはなる。

羽衣駅が近いので、線路伝いに歩く。
JR支線の終着駅東羽衣駅が突き刺さるように羽衣駅に向いている。

岸和田方面へ。
関東じゃ煙草はダメだが、関西の私鉄駅には喫煙所がある。
これもカルチャー・ショックのひとつ。

羽衣からは高師浜に向かう支線も延びている。
JRがここまで線路を延ばしたこともあり、ここら一帯には何かがあるのだろう。
泉州訛は聞こえてこない。

いよいよ岸和田へ。
運賃は安い。
そして堺から近い。

小説「岸和田少年愚連隊」にしばしば登場する春木駅は急行停車駅だった。
くわえ煙草の男たちが降りていく。

岸和田競輪場がそばにあった。
車で迎えにきた男が鋭い視線を送ってくる。
これから最凶の街。
覚悟を決めて線路伝いに歩いていく。

でもまだ10時過ぎ。
無法者たちは昨夜の疲れからまだ立ち直っていなかったのかもしれない。
ごく普通の人々が歩いている。
あまりにも小説の登場人物が強烈だからか、そんな感慨がわく。

和泉大宮駅に差しかかるあたりで、大声で話しながら自転車で追い抜いていった2人のオッサンは、小説の登場人物であったとしてもおかしくなかった。

途中の民家で「だんじり」を説明する青年と、それを見守る一団に出会い、高層駐車場を備えた青く輝く岸和田駅へ。

作者の中場利一さん言うところの日本一凶悪な街はまだ眠っていた。
「だんじり」が通るため、高いアーケードを持つ商店街に行き着くことなく、街を離れてしまった。
関西空港行に乗ると右手に岸和田城が見えた。

泉佐野で乗り換える。
りんくうタウンに、南海に浮かぶ関空。
泉佐野の駅前風景。

和泉は世界とつながった。
そして彼女からメールが届いた。

駅名に見える樫井に淡輪。
大坂夏の陣の緒戦。
朝鮮半島で素っ裸に褌姿で旗を押し立てて進んだ豪傑塙団右衛門が、北上する紀州浅野勢の機先を制するために向かい壊滅した地を通り、いよいよ和歌山へ。

かつて県境の駅の脇を通り抜けた記憶があり、地図を眺めてそこは孝子駅に違いないと思ったが、着いてみると違う。
そこから歩くつもりでいたが、降りずにやがて紀ノ川を渡り、和歌山市駅へ。

「駅そば」に心を残し外へ。
駅はまるで役所のようだ。
南海の時刻表には和歌山港からフェリーで徳島港に渡る便が載っている。

昼時の駅前通りは閑散としていて、風情にも都会はそこにない。
国会答弁の中で格差が生じているという報告の中にあった和歌山県。
傑物徳川吉宗を出した紀州は、いつからそういう地域になったのか。

ビールと昼食をセット売りしていた居酒屋で昼食をと思いはしたが、取りあえず歩き始める。
目指すは和歌山港駅。

ずいぶん遠くて。。
表示では途中の3駅分が塗りつぶされていた。
つまりその3駅は廃駅になったわけだ。

2000年の時刻表では、まだ3駅は生きている。
ついでに言えば、その時刻表では和歌山港駅の先にも1駅延びていたが、今じゃない。

ようやく着いた和歌山港駅は暗く、徳島からやってくる人々の到着を待っていた。

そこから引き返す。
脇では紀ノ川が海に到達していて、港には物を売る店もなく閑散としていた。
いかついオッサンが乗り込んできて歌を口ずさむ。
どこで降りるかと思っていたら岸和田で降りていった。
やはりあの街には小説「岸和田少年愚連隊」を生む土壌がある。

堺へ。
政令指定都市になった堺駅前に見るべきものはなかった。
本当に何もなく、駅舎と棟続きの商業施設で事を済ますしかない。

昼食は焼きそば。
ただ、本屋では探していたカポーティーの本を2冊見つけた。
こういうことがある。
「吉里吉里人」も東京では見つからず、手に入れたのは尾張一宮だった。

南北朝時代、南朝軍のプリンス北畠顕家卿はこの地で討たれたと、歩いている中に見つけた。
かつての世界的商都堺は、大坂夏の陣の終局に大坂方の大野道犬に焼かれ、堺の繁栄は大阪や神戸へと移った。
そのあたりのことを城山三郎さんが小説「黄金の日々」に書き、NHKの大河ドラマになった。

100万都市となった現在も、かつての繁栄は窺い知れない。
政令指定市民は地元を離れて、阿倍野、心斎橋へと向かう。

関連記事

「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その4‐太秦、撮影所前、帷子ノ辻、保津峡、千代川(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月23日・・・太秦駅、撮影所前駅、帷子ノ辻駅、保津峡駅、千代川駅(山陰本線)

記事を読む

「鉄旅日記」2018年神無月 最終日(松本-辰野-天竜峡-岡谷-東京)その2-伊那大島、駒ヶ根、伊那北、岡谷、下諏訪、茅野、山梨市(飯田線/中央本線) 【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】

鉄旅日記2018年10月8日・・・伊那大島駅、駒ヶ根駅、伊那北駅、岡谷駅、下諏訪駅、茅野駅、山梨市駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 最終日(一ノ関-東京)その2-本吉、柳津、前谷地、石巻、宮城野原、仙台空港(気仙沼線/石巻線/仙石線/仙台空港鉄道仙台空港線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月6日・・・本吉駅、柳津駅、前谷地駅、石巻駅、宮城野原駅、仙台空港駅(気仙沼線/

記事を読む

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その1 ‐古川、岩出山、有備館(陸羽東線)/岩出山城址(城山公園) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・古川駅、岩出山駅、有備館駅(陸羽東線)/セレクトイン古川/岩出山

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.1 初日(東京‐諏訪)葛飾金町、調布駅、高尾駅、桂川ドライブイン、甲府芸術の森公園、道の駅信州蔦木宿、上諏訪 【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】

車旅日記2000年7月20日 2000・7・20 8:10 東京葛飾金町 天気は良好。 やけに雲が

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月 最終日(善通寺-東京)-善通寺、多度津、丸亀、坂出、岡山、京都、野洲、東京葛飾(土讃本線/予讃本線/本四備讃線/山陽本線/東海道本線) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】

鉄旅日記2008年5月6日・・・善通寺駅、多度津駅、丸亀駅、坂出駅、岡山駅、京都駅、野洲駅(土讃本線

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月14日その1・・・指宿駅、枕崎駅、入野駅、開聞駅、山川駅、喜入駅、瀬々串駅、慈

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 初日(東京-紀伊田辺)その3-周参見、椿、白浜、紀伊田辺(紀勢本線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月2日・・・周参見駅、椿駅、白浜駅、紀伊田辺駅(紀勢本線) 19:12 周参見

記事を読む

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日光線) 7:32&nbs

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 初日(東京-一ノ関)その1-金町、上野、高崎、六日町、長岡、見附(常磐線/高崎線/上越線/信越本線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月5日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、六日町駅、長岡駅、見附駅(常磐線/高崎線/上

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 ツレと訪ねた下部温泉~富士宮~田子の浦旅でございます。初日(東京-下部温泉) ‐市川大門、下部温泉(身延線)【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年5月28日・・・市川大門駅、下部温泉駅(身延線)

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その3 ‐駒形、前橋大橋、高崎、本庄(両毛線/高崎線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・駒形駅、前橋大島駅、高崎駅、本庄駅(

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その2 ‐国定(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・国定駅(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その1 ‐磐梯熱海、新白河、小山(磐越西線/東北本線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・磐梯熱海駅、新白河駅、小山駅(磐越西

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

→もっと見る

    PAGE TOP ↑