*

「車旅日記」2004年夏 4日目(鹿児島-田原坂-長崎)走行距離384㎞その2-田原坂古戦場跡、大牟田駅、肥前山口駅、長崎ニューポート 【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/24 旅話, 旅話 2004年

車旅日記2004年8月14日・・・田原坂古戦場跡、大牟田駅、肥前山口駅、長崎ニューポート

2004・8・14 17:05 田原坂古戦場跡(8月11日の佐賀空港より1187㎞)
熊本駅を出て3号国道に戻る。

そこで目にした朝日生命ビル。
確か19年前にも見たはずだ。

熊本城の石垣を横目に見て、古武士のような風貌の上熊本駅前を通り過ぎる。

そして西南戦争の最激戦地、田原坂へ。

17日間続いた戦闘を激しい雨が濡らした。

「雨が降る降る田原坂。今日が人生の田原坂」。
12歳の時に見た大河ドラマ「獅子の時代」でその存在を知った場所。
ここに寄るかどうかは今日を迎えるまで決まっていなかった。

蝉の声に混じり、「ふるさと」の時報が聞こえる。
丘の上から眺めた名のない肥後の風景は、夕暮れ時ということもあり味わい深いものだった。

古戦場は公園になり、巨大な慰霊碑が立っている。
周辺には薩軍、官軍双方の墓地がある。

多くの薩摩人が、親兄弟、従兄弟、叔父甥、友人知己でさえも敵味方に分かれての戦いの最中、昼間の激戦が終わり夕暮れを迎えると、両軍の兵士が塁壁上に現れ、無事を喜び、互いの近況を交換する光景が見られたと、海音寺潮五郎さんの小説「田原坂」には描かれている。

明治10年の17日間に降った雨は霙まじりだったそうだ。

18:15 大牟田駅(8月11日の佐賀空港より1217㎞)
かつて薩軍が官軍に対して壮絶な抜刀突撃をかけた田原坂。

三の坂、二の坂、一の坂と史跡を辿りながら坂を下りていく。
当時とたいして変わっていないと思わせる気配の中で鬱蒼としていた。

208号国道が長崎へと続いている。

テレビ塔が見えて、街への接近を感じ、川を越えると玉名。
夕方の渋滞に少しばかりはまった。

やがて筑後、大牟田へ。
この町を縦貫する道には三池道路の名がついている。

大牟田に炭鉱町の風情はすでになく、煙った空に目を向けても男たちの山は見当たらず、南国の雨が落ちてきた。

駅では多くの人々が雨を降らした空を見上げている。

男っぽい街をイメージしていたけど、駅から見える街の風景はむしろ爽やかだった。
道は広く、大きなテレビ塔が聳え、椰子の緑がまぶしい。

平屋の駅舎にはケンタッキー、ampm、パン屋。
空にはまだ青い部分が残っている。

歴史の雨が今年は大牟田に降り、遠くで雷鳴を聞いた。

2009年9月20日撮影

20:05 肥前山口駅(8月11日の佐賀空港より1268㎞)
土砂降りの雨が筑後を濡らす。
西鉄の鉄橋と煙った川面に浮かぶ小舟が旅情をかきたてる。

雨雲の隙間に夕暮れ空を見て、筑後川を越えると佐賀県。
道は流れない。
九州人の歩みは遅いように感じて、若干苛立つ。
東京人の性か。

肥前山口駅という駅名にたまらない旅情を感じて立ち寄ってみたが、周辺にめぼしい商店はなく、基点駅として多くのホームを持つが、駅舎はあまりにも簡素で味気ない。
まるでローカル私鉄駅に降りた時のような気分だ。

駅に人気はないが、ホームに止まっている列車と駅構内が鉄道基地としての風情をかろうじて伝えてくれる。

駅へ上がる階段で、真っ黒な顔をしたプロレスラーのような壮漢がギターの練習をしていた。
なかなかかわいらしい青年で、目を合わせるとはにかんだような笑顔で挨拶をしてくれた。

秋の虫が鳴いているけど、気温30度の蒸し暑い夜だ。

24:49 長崎ニューポート413号室(8月11日の佐賀空港より1357㎞)
有明国道は闇の中。
九州人は足を速めようとしない。

肥前山口駅の青年と出会ってから、少しでも佐賀県に金を落としたいと思い、途中いい具合にガソリンスタンドを見つけた。

初めての有明海をさざ波に感じて、対岸の筑後の町明かりが見えた。
細々として点々としたものだったけど、オレにはあれでいい。

時折空に光の亀裂が走る。
大牟田で耳にした雷かとも思ったけど、どこかの町で上がった花火だったのかもしれない。
今夜は花火日和らしく、あちこちで様々な小さな花火を目にした。

諫早の町明かりはまぶしかった。
長崎到着は遅くなるけど、夜の街に期待して車を走らせていた。

34号国道は途中で二手に分かれる。
オレが採った道からは島原の明かりが見えた。
そして明日、島原に行くことを決めた。

夜景のきれいな街は坂の街。
急な坂を下っていくとその先に長崎の街。
右に曲がると市電と合流して、長崎駅へとさらに下っていく。

長崎駅は19年前の記憶とはまったく違っていて、新幹線駅のようになっていた。
有明国道ですれ違った新幹線のような列車を見て、てっきり長崎新幹線は開通していたかと思ったけど、どうやら特急列車だったようだ。

ビールと夕食はベイサイドの「長崎ぶらぶら館」で。

1階は外国人客が多く、下手くそなバンドが演奏をやめない。

オレがいたのは2階。
ロッド・スチュアートのバラードを流していて、山手の夜景が見える場所で、ビールが進んだ。

思えばいろいろな場所にひとりでいた。
いつも満足していた。
でも今夜ほど満ち足りた気持ちでいることは過去に例を見ない。
友にメールを送り、飽かずに夜景を眺めていた。

寂しいと感じることのない夏の旅だった。
今も寂しさなどはなく、ただ夏の日々は短いと感じている。
明日帰京するという事実はオレの中で現実味を失ったままだ。

長崎を歩けば古い景色もある。
市電通りは19年前とおそらく変わっていないだろう。
好ましいことだけど、オレは新しい長崎に魅かれた。

またひとつ、大好きな街ができた。

関連記事

「車旅日記」1997年夏 初日(東京-三国峠-新潟)-町田、東福生駅、山田うどん、前橋市田口町、月夜野道路情報ターミナル、奥平温泉遊神館、越後湯沢駅、堀之内パーキング、道の駅豊栄 【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】

車旅日記1997年8月13日 1997・8・13 10:30 東京町田 出発が遅れている。 急ぐべ

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏 2日目(和歌山-松阪)その2-串本、新宮、尾鷲、紀伊長島、三瀬谷、多気、松阪(紀勢本線)【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】

鉄旅日記2008年7月20日・・・串本駅、新宮駅、尾鷲駅、紀伊長島駅、三瀬谷駅、多気駅、松阪駅(紀勢

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その4-柏原、道明寺、河内長野、古市、畝傍御陵前、田原本、西田原本、新王寺、近鉄王寺(道明寺線/長野線/南大阪線/橿原線/田原本線/生駒線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・柏原駅、道明寺駅、河内長野駅、古市駅、畝傍御陵前駅、田原本駅、西田

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 初日(東京-大船渡)その4‐前谷地、志津川、南気仙沼、気仙沼(気仙沼線)/南三陸さんさん商店街 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月22日・・・前谷地駅、志津川駅、南気仙沼駅、気仙沼駅(気仙沼線)/南三陸さんさ

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初秋 初日(東京-羽咋)その1-東京、大垣、米原、長浜、敦賀、鯖江、西鯖江、大聖寺、加賀温泉(東海道本線/北陸本線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】

鉄旅日記2008年9月13日・・・東京駅、大垣駅、米原駅、長浜駅、敦賀駅、鯖江駅、西鯖江駅、大聖寺駅

記事を読む

「車旅日記」2006年皐月 2日目(黒磯-仙台)その1-道の駅明治の森黒磯、高久駅、黒田原駅、白河駅、安積永盛駅、三春駅、船引駅、磐城常葉駅、川前駅、小川郷駅、四ツ倉駅 【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】

車旅日記2006年5月3日・・・道の駅明治の森黒磯、高久駅、黒田原駅、白河駅、安積永盛駅、三春駅、船

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 2日目(高松)その1 ‐瀬戸大橋遠景、丸亀城、少林寺、津嶋神社参道、津島ノ宮駅、詫間海軍航空隊跡、箱浦(浦嶋伝説の地)、父母ヶ浜 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

車旅日記2020年9月20日・・・瀬戸大橋遠景、丸亀城、少林寺、津嶋神社参道、津島ノ宮駅、詫間海軍

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏 (姫路-十三)その1-山陽姫路、山陽網干、飾磨、大塩、高砂、山陽垂水、垂水、滝の茶屋、山陽塩屋、塩屋、山陽須磨(山陽電車本線/山陽電車網干線) 【私鉄王国で過ごす夏】

鉄旅日記2017年8月13日・・・山陽姫路駅、山陽網干駅、飾磨駅、大塩駅、高砂駅、山陽垂水駅、垂水駅

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、新潟・みちのくひとり旅】初日(東京-横手)-郡山、津川、亀田、さつき野、水原、坂町、村上、あつみ温泉、鶴岡、余目、刈和野(東北本線、磐越西線、信越本線、羽越本線、陸羽西線、奥羽本線)

鉄旅日記2012年8月11日・・・郡山駅、津川駅、亀田駅、さつき野駅、水原駅、坂町駅、村上駅、あつみ

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 初日(東京-盛岡)その3-盛岡、上米内、区界(東北本線/山田線)/大正館 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月21日・・・盛岡駅、上米内駅、区界駅(東北本線/山田線)/大正館 17:39

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その1 ‐磐梯熱海、新白河、小山(磐越西線/東北本線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・磐梯熱海駅、新白河駅、小山駅(磐越西

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

→もっと見る

    PAGE TOP ↑