「車旅日記」1997年梅雨明け【疲れきった若き日々。またしても向かうのは北でございました。】(東京-鳴子温泉)初日-町田、用賀、築地、北松戸、荒川沖駅、美野里パーキング、常陸多賀駅、いわき久ノ浜パーキング
車旅日記1997年7月19日
1997・7・19 19:42 東京町田
さしたる感慨も浮かばない。
それでもオレは北へ行く。
体の疲れは少しとれたような気がする。
梅雨明けした東京を、夜を選んで脱出するのは賢明だろう。
とても涼しい風が吹いている。
21:21 246号国道‐用賀
東京を脱出するには、一度東京に吸収される必要がある。
その最中で、一番の困難を強いられている。
表示では渋谷まで30分。
渋谷には昨夜肌を接した女性が働いている。
悪魔の巣窟のような都会にも安らぎはあった。
ただし、それを得るには決して少なくない額の金が必要だが。
憂歌団が、甲斐バンドが歌う。
「できればおまえといつだって。
一緒に暮らしていたいけど。
すべての男がおまえにゃ親戚みたいなものだから。」
ストーンズは時に調子よく、時にイマイチ。
道路状況もまた同じで、オレの事情もまた変わらない。
22:15 東京築地
銀座で涼しい風が吹いたけど、それも束の間のことで、ねっとりとした暑い夜が訪れている。
道々建設省の一味が作業車を止めて、交通状況に混乱を招こうとしている。
土曜夜の東京。
人の数はそれほどでもないが、日常より怪しげな空気が漂っている。
六本木では人が放つ異臭が鼻を突き、銀座では人通りの絶えた街路で、鏡を前に踊る少年を見かけた。
これから始まる夜に、人それぞれが匂いを発しながら歩いている。
そしてこのオレだ。
普段通い慣れているこの街に人々は関心を示さず、ただ車だけが行き過ぎる。
ここ10日ほど、この街で辛酸を舐めた。
そしてこれから北へ向かう。
オレがそこへ行く事情の中にも、最近のそうした記憶が関係している。
本当にそう思うんだ。
23:14 6号国道‐北松戸
金町に暮らす友のところへは寄らずに県境を越えた。
ブルースボーイがブルースを唸っている。
とてもいい音楽だ。
1997・7・20 0:13 荒川沖駅
東京脱出は比較的穏やかに成功して、少し北の町に到着している。
制服を着た女子高生の姿などがまだ見受けられ、郊外とはいえここもまだ眠っていない。
リュックを背負ってこれから旅立つ男もいる。
ほぼ満月に近かった月はやや霞んできた。
これまでのような気負いはないが、路上に戻った感触だけは蘇っている。
オレにはこういう生活の仕方もあった。
本当に久しぶりの路上だ。
1:00 6号国道‐美野里パーキング
月明りだけじゃ頼りなくて室内灯をつけて書いている。
タフな6号国道にも、オレみたいなヤツをひと時でも救う施設がある。
肩、腰。
体のすべてが疲労を訴えている。
だけどまだここじゃない。
もっと先へいかないとダメだ。
幸い夜が涼しい。
都会とは違う匂いもある。
まさに旅の夜を生きている。
2:03 常陸多賀駅
若者たちがなすこともなく駅周辺をうろついている。
暗いからよくは分からないが、もう右手すぐには太平洋が広がっているはずだ。
とにかく夜が調子いい。
時折あまり覚えていたくない昨日の記憶が脳裏を横切るが、根はそれほど深くない。
問題があるとしたら、この先何を考えていくべきなのかがはっきりしていないことだ。
たんに走ることだけが目的なら、今夜はその絶好の機会。
つまりこの時間にこんな場所に到達している理由は、そんなところにある。
4:00 6号国道‐いわき久ノ浜パーキング
鶏が騒ぎ始め、朝の早い連中が仕事を始め、急ぐ連中がアクセルを全開に踏み始める。
オレの夜はここでおしまい。
都合のいいところに最適のエリアがあってよかった。
シェラフを持ってきてよかった。
こっちの朝は涼しいよ。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2015年夏 4日目(西鉄柳川-広島)その1-西鉄柳川、西鉄久留米、西鉄甘木、甘木、基山、けやき台、原田、桂川(西鉄本線、西鉄甘木線、甘木鉄道、鹿児島本線、筑豊本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】
鉄旅日記2015年8月15日その1・・・西鉄柳川駅、西鉄久留米駅、西鉄甘木駅、甘木駅、基山駅、けやき
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 2日目(高山-速星)その5‐府中鵜坂、西富山、速星(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月21日・・・府中鵜坂駅、西富山駅、速星駅(高山本線) 17:53 婦中鵜坂(
-
-
「車旅日記」2000年夏Part.1 3日目(能登島-氷見-小千谷)能登島、道の駅いおり、氷見港、道の駅ウェーブパークなめりかわ、朝日町栄食堂、親不知ピア・パーク、道の駅能生、長岡市宮本、道の駅おぢや 【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】
車旅日記2000年7月22日 2000・7・22 9:00 能登島某リゾートクラブ 昨夜は風の音を
-
-
「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、みちのくひとり旅】最終日(羽後本荘-東京)-羽後本荘、古口、袖崎、天童、漆山、かみのやま温泉、山形、左沢、寒河江、長町、太子堂、南仙台、名取、館腰、船岡(羽越本線、陸羽西線、奥羽本線、左沢線、東北本線)
鉄旅日記2012年8月15日・・・羽後本荘駅、古口駅、袖崎駅、天童駅、漆山駅、かみのやま温泉駅、山形
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 最終日(三次-東京)その4‐二条、大宮、四条大宮、北野白梅町、帷子ノ辻(山陰本線/京福電鉄嵐山本線/京福電鉄北野線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月26日・・・二条駅、大宮駅、四条大宮駅、北野白梅町駅、帷子ノ辻駅(山陰本線/
-
-
「鉄旅日記」2017年春 最終日(JR難波-東京)その2-大曽根、勝川、春日井、中津川、上松、原野、広丘、みどり湖、相模湖、豊田(中央本線/篠ノ井線)【近鉄に乗る日々】
鉄旅日記2017年3月20日・・・大曽根駅、勝川駅、春日井駅、中津川駅、上松駅、原野駅、広丘駅、みど
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.2 その2-湯本、内郷、水戸、偕楽園、下菅谷、中菅谷(常磐線/水郡線) 【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】
鉄旅日記2019年3月10日・・・湯本駅、内郷駅、水戸駅、偕楽園駅、下菅谷駅、中菅谷駅(常磐線/水郡
-
-
2018年初秋 初日(東京-桑名)その3-駅前、赤岩口、井原、運動公園前、駅前大通、豊橋、岡崎、三河豊田、尾張瀬戸(豊橋鉄道市内線/東海道本線/愛知環状鉄道/名鉄瀬戸線)【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】
鉄旅日記2018年9月15日・・・駅前停留所、赤岩口停留所、井原停留所、運動公園前停留所、駅前大通停
-
-
「鉄旅日記」2016年夏 2日目(弘前-小樽)その1-弘前、蟹田、津軽二股、奥津軽いまべつ、木古内、札苅、桔梗、新函館北斗、大中山(奥羽本線/津軽線/北海道新幹線/道南いさりび鉄道/函館本線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月11日・・・弘前駅、蟹田駅、津軽二股駅、奥津軽いまべつ駅、木古内駅、札苅駅、桔
-
-
「空旅日記」1997年弥生【若き日に高知に出張に行った記録が残っておりました。】-羽田空港内カフェテリア、市電グランド通り駅前オリエントホテル
空旅日記1997年3月11日 1997・3・11 羽田空港内カフェテリア 17:00を待っている。