「鉄旅日記」2014年夏 3日目(鳥取-米子)その1-鳥取、由良、下市、御来屋、名和、伯耆大山、東山公園、博労町、境港、木次、亀嵩、宍道(山陰本線/境線/木次線) 【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】
鉄旅日記2014年8月15日その1・・・鳥取駅、由良駅、下市駅、御来屋駅、名和駅、伯耆大山駅、東山公園駅、博労町駅、境港駅、木次駅、亀嵩駅、宍道駅(山陰本線/境線/木次線)
鳥取(とっとり)駅(山陰本線/因美線 鳥取県)にて


2014・8・15 6:32 由良(ゆら)駅(山陰本線 鳥取県)
数分の停車。
熱帯の朝を迎えた鳥取。
自動改札化はまだこの地域には至らず、かつてホームで食べた「砂丘そば」は駅ビルの1階に移り、規模を広げていた。
名残惜しく街を出る。
時に入江が見え、あとは特に何もなかったな。
由良は町だが駅前に商店などは見られず、ため息をつくように列車に戻ったら、美しい因州娘が二人オレの横に座った。

7:03 下市(しもいち)駅(山陰本線 鳥取県)
数分の停車。
鳥取市内の熱はここにはなく、駅前から見える日本海からの爽やかな風を浴びた。
気持ちいいとはこういうことを指す。
風力発電機が回る姿が見られ、煙草屋はまだ看板を下ろしていない。
このあたりは温泉地が続いていて、下市では中山温泉まで2kmと謳っている。

7:13 御来屋(みくりや)駅(山陰本線 鳥取県)
数分の停車。
ここでも駅前から日本海が見える。
清々しい。
定休日を除き「市」が立つ御来屋は山陰最古の駅舎を有し、ポストを従え古武士然としている。

7:33 名和(なわ)駅(山陰本線 鳥取県)
ぼんやりと海上に見えていたのが隠岐の島か。
忠臣名和一族への礼のため大正天皇は名和神社へ行幸したという。
名和長年は陽気な男だったらしい。
後醍醐天皇からの要請を迷惑に思いながらも、隠岐の島を脱走してきた彼をこの地に上陸させて船上山に御座所を置き、やがて南朝軍として京都での市街戦で死ぬまでの期間は3年あまり。
その後、一族の名は歴史から消えた。
駅から後醍醐天皇上陸地まではふらふら歩いたんじゃ行き着けない。
「安兵衛」という軽食屋が入居した名和駅は、名和神社へと上がる坂の途中にあり、ホームからは日本海が見渡せる。


8:02 伯耆大山(ほうきだいせん)駅(山陰本線/伯備線 鳥取県)
数分の停車。
駅前は住宅地で空き地が目立つ。
5年前に一度降りたが、何も変わっていない。
こんな空の下じゃ気持ちが重くなりそうな未完成の風景だ。
空は今厚い雲に覆われていて、大山のあるべき場所はもやっていて、その姿は見えない。

東山公園(ひがしやまこうえん)駅(山陰本線/伯備線 鳥取県)にて

8:31 博労町(ばくろうまち)駅(境線 鳥取県)
厚い雲だ。
南の風が街にたまり湿気もまたひどい。
東山公園駅で降りて、確かプロ野球も開催されたことがある米子市民球場を左に見て、米子東高校の前を横切り博労町駅まで徒歩約10分。
米子から一駅の距離という駅も周辺の町も想像からは大きく外れていなかった。
米子の繁華街に近い駅前通りには商店や読売支局が並び、人気のない朝を迎えることは稀で、おそらく今後も状況に変化はないだろう。
狭い待合室では黒人紳士がどっかりと腰を落ち着けて、オレと同じ境港行を待っている。
目が合うとなかなかチャーミングな笑みを見せてくれた。

9:29 境港(さかいみなと)駅(境線 鳥取県)
東京から大分まで一般国道だけを使って旅をした際、夕暮れ時に着いた町。
あの時は人気などなかったが、あれから妖怪列車と化した境線の人気は高いらしい。
各駅に愛称として妖怪の名がついている。
ぎゅうぎゅう詰めの車内だったが、終点までとても楽しむことができた。
米子空港まで一直線に延びる線路の先には富士のような美しい山が見えていた。
美保湾と中海をつなぐ境水道のさらに先だと思うが、何という山だろう。
終着駅に着いて、妖怪と新鮮な魚介類を求めて、人々が小雨の中を歩き出す。

11:58 木次(きすき)駅(木次線 島根県)
境線で米子に戻り、山陰本線下り列車に乗り換えて宍道へ。
宍道で木次線に乗り換える。
ここで数分の停車。
ヤマタノオロチほか大蛇、神にまつわる伝説が多く残る神話の地。
宍道からここまでは無人の森を這い進んでいくような区間で、たまに現れる集落はどこも心許なく見えた。
昔から人煙まれな土地なのだろう。
ただし出雲が近いこともあり、神々の言い伝えが残っている。
木次駅前は斐伊川の川辺に建った大型スーパーが景観を塞ぎ、広いロータリーには数台のタクシーがいるのみで、行き交う車の姿は見られなかった。

13:02 亀嵩(かめだけ)駅(木次線 島根県)
故松本清張さん原作の映画「砂の器」の舞台。
駅にこれだけの人がいるのは、手打ち蕎麦屋と小説の効力だ。
有名な蕎麦屋か喫茶店があることは知っていた。
ただしその蕎麦屋が駅にあるだけで、他に行くべき場所は見当たらない。
見当たらないというより存在しない。
駅を出て一目瞭然だった。
森に降る雨に閉じ込められ、ひとつ手前の出雲三成にはコンビニがあったことを恨めしく思う。
腹が減っている。
このまま備後落合に出て芸備線に乗り換えて備中神代、根雨を経て米子に戻るという計画を変更してここに降りることにしたのは、やはり「砂の器」と昼メシの問題と、この雨だ。
芸備線の備後落合東城間が未乗車区間だったことから生まれた計画だが、そこがどんな土地かはタクシーの車窓から眺めて知っている。
深い山の中だ。
そこで後悔するよりも出雲に行こうと決めた。
こんな雨の日に出雲、松江にいたいと思った。
今回で2度目の木次線は秘境路線と言ってよく、見応えがあった。
前回はぎゅうぎゅう詰めでろくに外も見れなかったんだ。
これから宍道に戻る。
乗り込んだのはオレただひとりで、乗り込んでみてもオレただひとりだった。

14:41 宍道(しんじ)駅(山陰本線/木次線 島根県)
出雲三成を過ぎて眼下に広がった棚田が美しかった。
風にさんざめく稲穂を愛でたのは昨日。
でもどこでのことだったかはもう忘れてしまった。
宍道に着くと激しい雨。
煙草で空腹を紛らす。
待ち時間は10分強。
宍道湖畔まで歩くだけの余裕はなく、この雨の中を歩く気にもならない。
これから出雲に行く。
下り列車は少しずつ遅れているようだ。

関連記事
-
-
「鉄旅日記」2014年春 最終日(紀伊勝浦-東京)その1-紀伊勝浦、太地、湯川、那智、三輪崎、新宮、鵜殿(紀勢本線)/丹鶴城公園 【青春18きっぷで、紀伊半島へ】
鉄旅日記2014年3月9日その1・・・紀伊勝浦駅、太地駅、湯川駅、那智駅、三輪崎駅、新宮駅、鵜殿駅(
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その1‐肥前鹿島、肥前大浦、長里、湯江(長崎本線)/鹿島城跡 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前鹿島駅、肥前大浦駅、長里駅、湯江駅(長崎本線)/鹿島城跡
-
-
「鉄旅日記」2014年夏 最終日(呉-東京)-呉、広、竹原、安芸幸崎、松永、東尾道、相生、西相生、比叡山坂本、用宗、富士、沼津(呉線/山陽本線/赤穂線/湖西線/東海道本線) 【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】
鉄旅日記2014年8月17日・・・呉駅、広駅、竹原駅、安芸幸崎駅、松永駅、東尾道駅、相生駅、西相生駅
-
-
「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その2(R8→R18→R19)直江津駅、新井、豊野町、長野駅、道の駅信州新町、道の駅大岡村
車旅日記1996年5月6日 6:58 直江津駅 恋する女よ、いつの間にか日本海とさよならしていたよ
-
-
「鉄旅日記」2021年秋 初日(東京-飯坂温泉)その3 ‐槻木、角田、あぶくま、丸森、梁川(阿武隈急行)「鉄旅日記」2021年秋 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】
鉄旅日記2021年10月9日・・・槻木駅、角田駅、あぶくま駅、丸森駅、梁川駅(阿武隈急行)
-
-
「鉄旅日記」2017年夏 (姫路-十三)その1-山陽姫路、山陽網干、飾磨、大塩、高砂、山陽垂水、垂水、滝の茶屋、山陽塩屋、塩屋、山陽須磨(山陽電車本線/山陽電車網干線) 【私鉄王国で過ごす夏】
鉄旅日記2017年8月13日・・・山陽姫路駅、山陽網干駅、飾磨駅、大塩駅、高砂駅、山陽垂水駅、垂水駅
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その3‐末恒、浦安、米子、揖屋(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月24日・・・末恒駅、浦安駅、米子駅、揖屋駅(山陰本線) 10:39&n
-
-
「鉄旅日記」2007年新春 初日(東京-高岡)-東京、岐阜、美濃太田、下呂、高山、角川、猪谷、富山、高岡(東海道新幹線/高山本線/北陸本線) 【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】
鉄旅日記2007年1月6日・・・東京駅、岐阜駅、美濃太田駅、下呂駅、高山駅、角川駅、猪谷駅、富山駅、
-
-
「鉄旅日記」2019年如月 最終日(安中-東京)その2-屋代、坂城、小諸、三岡、中込、羽黒下、松原湖(しなの鉄道/小海線) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】
車旅日記2019年2月10日・・・屋代駅、坂城駅、小諸駅、三岡駅、中込駅、羽黒下駅、松原湖駅(しなの
-
-
「鉄旅日記」2003年冬 初日(宇部-博多)その2-博多の夜 【ご縁と別れがあり、34歳の誕生日を北九州で迎えた日の記憶でございます。】
鉄旅日記2003年2月15日 2003・2・15 サンシティ博多フレックス21 507号 とうとう
