*

「鉄旅日記」2007年新春 2日目(高岡-金沢)-高岡駅前、越ノ潟、高岡、氷見、高岡、城端、金沢(万葉線/氷見線/城端線/北陸本線) 【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/21 旅話, 旅話 2007年

鉄旅日記2007年1月7日・・・高岡駅前駅、越ノ潟駅、高岡駅、氷見駅、高岡駅、城端駅、金沢駅(万葉線/氷見線/城端線/北陸本線)

2007・1・7 スーパーホテル高岡駅前711号
新年が開けて1週間。
高岡に正月ムードはすでになく、昨夜は雷とともに雨から雪に変わったようだ。

そうだった。
オレは雪景色を見にきたんだ。

北陸の冬には必ずそれがあるから。

19:04 金沢セントラルホテル802号
越ノ潟、高岡、氷見、高岡、城端、高岡、金沢。

大荒れの一日だった。
さすがのオレも寒さにやられて、この時間帯からホテルで酔っている。

金沢についてはまだ何も記せることはない。
ただ、駅前に限った話では大きく変貌していた。

あれは9年前だった。

高岡で味も素っ気もない朝食をとって街に出る。
昨夜の雪が街路を薄く白に染めている。

地下通路を抜けて、万葉線が走る高岡繁華街口へ。
威厳のある駅舎に、そこに連なる錆びた駅前ビル。

万葉線高岡駅前駅の頭上に聳えるホテル。
北陸の雄都としての風格を持つ駅前風景だった。

天がその頃に降らしていたのは霙だった。

万葉線に乗り込むと車掌が天気の話を振ってくる。
同じように寒い東北じゃ人々は無口だが、北陸じゃ人情が違うようだ。
北海道の開拓民は、その多くが北陸人だったと親父から聞いたことがある。

車内は暖かかった。
向かう先は新湊だということを知った。

坂を下って、高岡の街が遠ざかる。
利用者は極端に少ない。

約40分。
終点の越ノ潟で降りたのはオレひとりだった。

そこは閑散とした波止場で、船が待っている。
「乗るか?」と聞かれ、この先には何があるのかと聞くと、「何もない」とはにかむように男は答えた。

乗っていた客はいたのだろうか。
やるせないといった風情で男は船に戻り、やがて出港した。

ほんの少しの後悔があった。
盛大に雹が降ってきたのはその時だった。
ケータイに収まった波止場の風景はそのせいで滲んでいる。

高岡までオレを運び返す2両編成がやってきた。
新型車で素晴らしい乗り心地だった。

途中には見所もある。
義経伝説が残る渡し場では、伏木に渡す船が待っていた。

外は冷たい雨。
そんな天気じゃなかったら飛び乗っていたかもしれない。

この天気のせいで歩き回ることはできない高岡を、路面電車からもう一度見ておきたいという欲求とぶつかって、車内に残ることを選んだ。
その甲斐もあって高岡を知った気にはなれた。

荒天に北陸本線は倒れ、特急列車は止まり、待合所には情報を求める人々がすべてのベンチを埋めている。
我関せず氷見線に乗り込む。

約20分の小旅行。
氷見線は観光線のように、なかなかの賑わいだった。

雨晴海岸では岸壁に沿う。
よく晴れていれば、遠く立山連山がまるで海上に浮かぶように見えるという。

その海岸の名も義経伝説による。
海岸にある大岩の下で雨が上がるのを待った義経一行。

あの英雄の逃避行には多くの苦難があったのだろう。
吉野から北陸に出て奥州平泉まで。
各地に残る伝説を訪ねてみたい気持ちがある。

氷見駅前には何もなかった。

ブリが揚がる港まではそこそこ歩かなければならない。
そうさせなかったのは雨。
旅に天候は関係ないとはいえ、今回は多くの邪魔を受けた。

氷見駅では弁当も売っているし、「駅そば」もある。
廃線が検討されている数多のローカル線があるが、氷見線はそのグループにはいないようで、帰りの高岡行は満席で、終点まで立ちっ放しだった。

高岡駅に戻る。
ここは今日のベースキャンプ。
煙草を吸ったり、駅ビルの2階を覗いたりして時間を潰し、城端線へ。
かつての岐阜駅前ビルや大津駅のように、高岡駅の上層階はほぼ機能を失っていた。

砺波、福光。
知名度を持つ町を過ぎていくが、閑散とした一帯だった。
砺波も福光にも駅に人の姿はなく、約1時間で終点の城端へ。

越中の小京都と謳われる町は遠かった。
駅前には商店も食堂もなく途方に暮れた。

高岡に戻る列車が出るのは1時間後。
決心して歩き出した。

小雪が舞う中、坂を上がっていく。
やがてある地点に出た。
交差点周辺に心許ない商店街があり、名刹に突き当たる。

あたりは寺町で、多くの寺社があり、店がいくつかある。
鰻の看板を掲げている店を覗いたが人の姿はなく、隣のイタリアン・レストランへ。

ビールとパスタ。
2階では地元の婦人連が会合を開いていた。

帰り際にお店の女将さんに、このあたりは高岡より雪が深いのかと聞くと、無口に見えた彼女は滑らかに話し出した。
雪の質が違う。
金沢あたりとも違う。
五箇山は雪深い。

駅に戻り、うっすらと見える五箇山に思いを馳せ、大昔に読んだ新田次郎作の悲恋を思い出していた。

戦国時代に五箇山には鉄砲工場があった。
そこに忍び込んで門外不出の情報を盗みとろうとした甲斐武田家の間者と村の女の話で、秘密を手にした男を女は逃がし、逃げた男が数年を経て五箇山を訪ねると、女は処刑されていたことを知る。

五箇山の手前には白川郷もある。

三度、高岡へ。
特急列車を止めた荒天は在来線をも狂わせている。
迷ったが、土産を購入することにした。
彼女へ黒部峡谷ビールを。

いよいよ金沢へ。

石動、倶利伽羅、津幡。
未練はあった。
津幡では七尾へ向かう列車が待っていたのに。

金沢に到着したのは16:00頃。
9年前に思いを寄せていた女性と待ち合わせた改札前広場は、変わったとも変わっていないとも言えなかった。

駅前は北も南も変貌していた。
あの頃は田舎駅の風情が残っていたが、今はもうない。

オレの歴史も塗り替えられる。
彼女にはもう何年も会っていない。
この先も会うことはないだろう。

風が強くて帽子を飛ばされた。

北陸鉄道は地下から出る。
それに乗るつもりでいたが、寒さに随分やられて、もう違う場所に行く気力はなく、駅の食品街を物色して、流行っているおでん屋に入って酒を飲んだ。

今夜、金沢を表現することは残念ながらできない。

関連記事

「鉄旅日記」2018年師走 最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その2-中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢湾フェリー) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月24日・・・中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢

記事を読む

「車旅日記」2005年春 最終日(富山-松本)走行距離218㎞ その2-泊駅、越中宮崎駅、市振駅、糸魚川駅、頸城大野駅、小滝駅、平岩駅、白馬大池駅、安曇追分駅 【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】

車旅日記2005年4月30日・・・泊駅、越中宮崎駅、市振駅、糸魚川駅、頸城大野駅、小滝駅、平岩駅、白

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】2日目(三ノ宮-琴電琴平)-三ノ宮、元町、和田岬、兵庫、須磨、西明石、加古川、網干、上郡、和気、高松、志度、琴電屋島、瓦町、一宮、琴平(山陽本線、和田岬支線、瀬戸大橋線、予讃本線、高徳本線、琴平電鉄志度線、琴平電鉄琴平線)

鉄旅日記2009年5月2日・・・三ノ宮駅、元町駅、和田岬駅、兵庫駅、須磨駅、西明石駅、加古川駅、網干

記事を読む

「車旅日記」2000年春 初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その1‐葛飾金町、幸手駅、古河駅、渡良瀬遊水地北エントランス、藤岡駅、佐野厄除け大師、足利駅 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月3日 2000・5・2 東京葛飾金町 前夜祭 旅に出る前夜。 これほどの胸の

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 最終日(高松-東京)その1 ‐高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フェリー/直島宮浦→宇野フェリー) 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月22日・・・高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フ

記事を読む

「車旅日記」2000年春 初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞ 繁華街を抜ける

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月 最終日(安中-東京)その1-安中、松井田、西松井田、横川、軽井沢、大屋(信越本線/しなの鉄道) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】

鉄旅日記2019年2月10日・・・安中駅、松井田駅、西松井田駅、横川駅、軽井沢駅、大屋駅(信越本線/

記事を読む

「鉄旅日記」2018年初秋 初日(東京-桑名)その1-金町、新宿、新松田、松田、沼津(常磐線/山手線/小田急小田原線/御殿場線/東海道本線)【「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】

鉄旅日記2018年9月15日・・・金町駅、新宿駅、新松田駅、松田駅、沼津駅(常磐線/山手線/小田急小

記事を読む

「車旅日記」1996年夏【再び北を目指した夏。不慮の事故に遭い、打ち切らざるを得なくなったのでございます。】初日 (東京‐三国峠‐新潟)- 成瀬センター前、東福生駅、籠原駅、北橘村、渋川、ドライブイン利根川、猿ヶ京湖城閣、越後湯沢駅、道の駅ゆのたに、堀之内パーキング

車旅日記1996年8月13日 1996・8・13 10:45 東京 ルートは決まった。 今までの旅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 2日目(五所川原-北上)その3‐黒石、弘前、津軽新城、青森(弘南鉄道弘南線/奥羽本線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月3日・・・黒石駅、弘前駅、津軽新城駅、青森駅(弘南鉄道弘南線/奥羽本線)

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その2 ‐茅ヶ崎、南橋本、上溝、橋本(相模線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・茅ヶ崎駅、南橋本駅、上溝駅、橋本駅(

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その1 ‐熱海、五百羅漢、大雄山、緑町、小田原(東海道本線/大雄山線)/北条氏政・氏照の墓 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、御殿場線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・熱海駅、五百羅漢駅、大雄山駅、緑町駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その6 ‐谷峨、山北、足柄、沼津、熱海(御殿場線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・谷峨駅、山北駅、足柄駅、山北駅、熱海

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その5 ‐逗子、北鎌倉、平塚、国府津(横須賀線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・逗子駅、北鎌倉駅、平塚駅、国府津駅(

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その4 ‐鎌倉、久里浜、京急久里浜、衣笠、東逗子(横須賀線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・鎌倉駅、久里浜駅、京急久里浜駅、衣笠

→もっと見る

    PAGE TOP ↑