*

「鉄旅日記」2007年新春【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】2日目(高岡-金沢)-高岡駅前、越ノ潟、高岡、氷見、高岡、城端、高岡、金沢(万葉線/氷見線/城端線/北陸本線)

公開日: : 旅話 2007年

鉄旅日記2007年1月7日
2007・1・7 スーパーホテル高岡駅前711号
新年が開けて1週間。
高岡に正月ムードはすでになく、昨夜は雷とともに雨から雪に変わったようだ。

そうだった。
オレは雪景色を見にきたんだ。

北陸の冬には必ずそれがあるから。

19:04 金沢セントラルホテル802号
越ノ潟、高岡、氷見、高岡、城端、高岡、金沢。

大荒れの一日だった。
さすがのオレも寒さにやられて、この時間帯からホテルで酔っている。

金沢についてはまだ何も記せることはない。
ただ、駅前に限った話では大きく変貌していた。

あれは9年前だった。

高岡で味も素っ気もない朝食をとって街に出る。
昨夜の雪が街路を薄く白に染めている。

地下通路を抜けて、万葉線が走る高岡繁華街口へ。
威厳のある駅舎に、そこに連なる錆びた駅前ビル。

万葉線高岡駅前駅の頭上に聳えるホテル。
北陸の雄都としての風格を持つ駅前風景だった。

天がその頃に降らしていたのは霙だった。

万葉線に乗り込むと車掌が天気の話を振ってくる。
同じように寒い東北じゃ人々は無口だが、北陸じゃ人情が違うようだ。
北海道の開拓民は、その多くが北陸人だったと親父から聞いたことがある。

車内は暖かかった。
向かう先は新湊だということを知った。

坂を下って、高岡の街が遠ざかる。
利用者は極端に少ない。

約40分。
終点の越ノ潟で降りたのはオレひとりだった。

そこは閑散とした波止場で、船が待っている。
「乗るか?」と聞かれ、この先には何があるのかと聞くと、「何もない」とはにかむように男は答えた。

乗っていた客はいたのだろうか。
やるせないといった風情で男は船に戻り、やがて出港した。

ほんの少しの後悔があった。
盛大に雹が降ってきたのはその時だった。
ケータイに収まった波止場の風景はそのせいで滲んでいる。

高岡までオレを運び返す2両編成がやってきた。
新型車で素晴らしい乗り心地だった。

途中には見所もある。
義経伝説が残る渡し場では、伏木に渡す船が待っていた。

外は冷たい雨。
そんな天気じゃなかったら飛び乗っていたかもしれない。

この天気のせいで歩き回ることはできない高岡を、路面電車からもう一度見ておきたいという欲求とぶつかって、車内に残ることを選んだ。
その甲斐もあって高岡を知った気にはなれた。

荒天に北陸本線は倒れ、特急列車は止まり、待合所には情報を求める人々がすべてのベンチを埋めている。
我関せず氷見線に乗り込む。

約20分の小旅行。
氷見線は観光線のように、なかなかの賑わいだった。

雨晴海岸では岸壁に沿う。
よく晴れていれば、遠く立山連山がまるで海上に浮かぶように見えるという。

その海岸の名も義経伝説による。
海岸にある大岩の下で雨が上がるのを待った義経一行。

あの英雄の逃避行には多くの苦難があったのだろう。
吉野から北陸に出て奥州平泉まで。
各地に残る伝説を訪ねてみたい気持ちがある。

氷見駅前には何もなかった。

ブリが揚がる港まではそこそこ歩かなければならない。
そうさせなかったのは雨。
旅に天候は関係ないとはいえ、今回は多くの邪魔を受けた。

氷見駅では弁当も売っているし、「駅そば」もある。
廃線が検討されている数多のローカル線があるが、氷見線はそのグループにはいないようで、帰りの高岡行は満席で、終点まで立ちっ放しだった。

高岡駅に戻る。
ここは今日のベースキャンプ。
煙草を吸ったり、駅ビルの2階を覗いたりして時間を潰し、城端線へ。
かつての岐阜駅前ビルや大津駅のように、高岡駅の上層階はほぼ機能を失っていた。

砺波、福光。
知名度を持つ町を過ぎていくが、閑散とした一帯だった。
砺波も福光にも駅に人の姿はなく、約1時間で終点の城端へ。

越中の小京都と謳われる町は遠かった。
駅前には商店も食堂もなく途方に暮れた。

高岡に戻る列車が出るのは1時間後。
決心して歩き出した。

小雪が舞う中、坂を上がっていく。
やがてある地点に出た。
交差点周辺に心許ない商店街があり、名刹に突き当たる。

あたりは寺町で、多くの寺社があり、店がいくつかある。
鰻の看板を掲げている店を覗いたが人の姿はなく、隣のイタリアン・レストランへ。

ビールとパスタ。
2階では地元の婦人連が会合を開いていた。

帰り際にお店の女将さんに、このあたりは高岡より雪が深いのかと聞くと、無口に見えた彼女は滑らかに話し出した。
雪の質が違う。
金沢あたりとも違う。
五箇山は雪深い。

駅に戻り、うっすらと見える五箇山に思いを馳せ、大昔に読んだ新田次郎作の悲恋を思い出していた。

戦国時代に五箇山には鉄砲工場があった。
そこに忍び込んで門外不出の情報を盗みとろうとした甲斐武田家の間者と村の女の話で、秘密を手にした男を女は逃がし、逃げた男が数年を経て五箇山を訪ねると、女は処刑されていたことを知る。

五箇山の手前には白川郷もある。

三度、高岡へ。
特急列車を止めた荒天は在来線をも狂わせている。
迷ったが、土産を購入することにした。
彼女へ黒部峡谷ビールを。

いよいよ金沢へ。

石動、倶利伽羅、津幡。
未練はあった。
津幡では七尾へ向かう列車が待っていたのに。

金沢に到着したのは16:00頃。
9年前に思いを寄せていた女性と待ち合わせた改札前広場は、変わったとも変わっていないとも言えなかった。

駅前は北も南も変貌していた。
あの頃は田舎駅の風情が残っていたが、今はもうない。

オレの歴史も塗り替えられる。
彼女にはもう何年も会っていない。
この先も会うことはないだろう。

風が強くて帽子を飛ばされた。

北陸鉄道は地下から出る。
それに乗るつもりでいたが、寒さに随分やられて、もう違う場所に行く気力はなく、駅の食品街を物色して、流行っているおでん屋に入って酒を飲んだ。

今夜、金沢を表現することは残念ながらできない。

関連記事

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】3日目(福山-呉-広島-備後落合-岡山)-福山、三原、呉、広島、三次、備後落合、東城、岡山(山陽本線/呉線/芸備線/伯備線)

鉄旅日記2007年5月5日 2007・5・5 8:01 福山駅(山陽新幹線/山陽本線/福塩

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】2日目(天王寺-和歌山港-難波-新今宮-奈良)その2-なんば、上本町、鶴橋、桃谷、寺田町、天王寺、恵美須町、新今宮、奈良(南海電鉄南海線/関西本線)

鉄旅日記2007年2月11日 堺から難波はとても近かった。 南海なんば駅は、高島屋が

記事を読む

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】最終日(岡山-長船-明石-東京)-岡山、長船、明石、米原、大垣、沼津、平塚、北千住、東京葛飾(山陽本線/赤穂線/東海道本線)

鉄旅日記2007年5月6日 2007・5・6 8:51 岡山駅(山陽新幹線/山陽本線/伯備

記事を読む

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】初日(東京-姫路-津山-鳥取-米子)-静岡、豊橋、本竜野、播磨新宮、佐用、東津山、米子(東海道本線/姫新線/因美線/山陰本線)

鉄旅日記2007年5月3日 2007・5・3 1:54 静岡駅(東海道新幹線/東海道本線 

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】初日(東京-草津-柘植-木津-天王寺)-東京、名古屋、大垣、米原、草津、柘植、草津、京都、木津、京橋、天王寺(東海道新幹線/東海道本線/草津線/奈良線/学研都市線/大阪環状線)

鉄旅日記2007年2月10日 2007・2・10 23:54 スーパーホテル天王寺303号

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】2日目(天王寺-和歌山港-難波-新今宮-奈良)その1-南霞町、浜寺駅前、浜寺公園、羽衣、春木、和泉大宮、岸和田、和歌山市、和歌山港、堺(阪堺電気軌道/南海電鉄南海線)

鉄旅日記2007年2月11日 2007・2・11 スーパーホテル奈良駅前321号室 朝早

記事を読む

「鉄旅日記」2007年新春【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】初日(東京-岐阜-富山-高岡)-東京、岐阜、美濃太田、下呂、高山、角川、猪谷、富山、高岡(東海道新幹線/高山本線/北陸本線)

鉄旅日記2007年1月6日 2007・1・6 22:45 スーパーホテル高岡駅前711号

記事を読む

「鉄旅日記」2007年新春【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】最終日(金沢-直江津-長野-東京)-金沢城址、金沢、倶利伽羅、黒部、直江津、長野、東京(北陸本線/信越本線/長野新幹線)

鉄旅日記2007年1月8日 2007・1・8 東京葛飾金町 金沢の繁華街は駅のあたりにあ

記事を読む

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】2日目(米子-宍道-備後落合-塩町-福山)-松江、宍道、出雲横田、出雲坂根、備後落合、塩町、府中、福山城、福山(山陰本線/木次線/芸備線/福塩線)

鉄旅日記2007年5月4日 2007・5・4 10:21 松江駅(山陰本線 島根県) 大

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】最終日(奈良-木津-名古屋-東京)-奈良、亀山、桑名、弥冨、富士、沼津(関西本線/東海道本線)

鉄旅日記2007年2月12日 2007・2・12 東京葛飾金町 素っ裸で目覚めた朝。

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】2日目(新潟豊栄‐象潟)道の駅豊栄、道の駅神林、瀬波温泉龍泉、道の駅温海、立岩海底温泉、酒田南郊、象潟駅、象潟松籟館

車旅日記2000年5月4日 2000・5・4 8:09 7号

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その1‐葛飾金町、幸手駅、古河駅、渡良瀬遊水地北エントランス、藤岡駅、佐野厄除け大師、足利駅

車旅日記2000年5月3日 2000・5・2 東京葛飾金町 

2019年如月【SNSへの投稿より】ごく個人的な内容で恐縮でございます。。

【2019・2・3 Facebookへの投稿より】 出会いか

「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】最終日(安中-小諸-小淵沢-東京)その3-海尻城址、海尻、八千穂、信濃川上、佐久海ノ口、甲斐小泉、小淵沢(小海線)

鉄旅日記2019年2月10日 14:08 海尻(うみじり)駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑