*

「鉄旅日記」2007年新春【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】最終日(金沢-東京)-金沢城址、金沢、倶利伽羅、黒部、直江津、長野、東京(北陸本線/信越本線/長野新幹線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/13 旅話, 旅話 2007年

鉄旅日記2007年1月8日・・・金沢駅、倶利伽羅駅、黒部駅、直江津駅、長野駅、東京駅(北陸本線/信越本線/長野新幹線)
2007・1・8 東京葛飾金町
金沢の繁華街は駅のあたりにあるわけじゃない。
高岡の大将からそう聞いていた。

でも最近は駅のあたりしか流行っていない。
そうも聞いていた。

ホテルを出てしばらく歩くことにした。

駅に背を向けて歩き出す。

やがて武蔵辻。
通りを渡ったところに近江市場がある。
金沢城址はその背後にあったわけだが、そうとは知らずに遠くに見えた巨大なビルを目指した。
その巨大なビルとは北國新聞社で、そのあたりが香林坊であることを知った。

高岡の大将が教えてくれたかつての繁華街。
歴史を持つ街の繁華街の名は、松山の大街道、鹿児島の天文館をはじめ独特なものがある。

北國新聞社の角を城の方へ折れる。
そのことを後で後悔することになる。
辻へは行かなかったから。

すぐに旧堀端に出る。
静かな通りを歩き、門の名は忘れたが城内へ。


広い空を見る。

かつて友人と訪ねた兼六園は通りを挟んだところにある。
なるほど、あの日に金沢駅が見当たらなかったわけだ。
知らず知らずのうちに、遠くまできてしまったようだ。

帰りは近江市場を抜けて、武蔵辻で雨の気配を感じて、駅へと急いだ。

鳥居のような巨大なオブジェをくぐり駅へ。

時刻表を確認して、「駅そば」で朝食。
隣接したパン屋では突っ伏して寝ている若者がいた。
タフな貧乏旅行の途中なのだろうか。

昨日の道を高岡まで。
一昨日の道を富山まで。
居ても立っても居られずに倶利伽羅駅で降りてしまった。

そこが県境。
無人の小さな駅だった。
源平時代の古戦場はここから3㎞ほどの場所だという。

木曽義仲率いる東国軍団はそこで平維盛率いる平家軍を潰走させ、その足で一気に都へ攻め上った。
そんな時代の空気を吸いたかった。

ただし次の富山行が来るまでの時間があり過ぎた。
ホームに人の姿はなく、昨夜の飲み残しの酒を開ける。
そこで考えたことは覚えていないが、印象的な時間だった。

上下線とも何本か特急列車をやり過ごして、富山行がやってきたのは30分後。

高岡の雪は消えていた。
名残りは惜しい。

約2年ぶりの富山。
雪とも雨ともいえないものが降りしきる街を、往く人々の姿は少なくない。
駅も賑わっている。

富山港線がライトレールというものに変わったことは新聞で知っていた。
いくつかが新しくなっていて、路面電車は今日も活発に走り回る。
元気な街だ。

なかなか会えない友に再会した後のような気持で、すでに入線していた泊行に乗った。
東富山、滑川、魚津。
かつて立ち寄った駅を過ぎていく。

黒部で降りた。
昼飯にしようと思ったんだ。

オレが知っている黒部とは、富山地方鉄道の電鉄黒部駅周辺。
JR黒部駅で降りて知った。
街はあっちにあったのだと。

駅前で営業している唯一の蕎麦屋で、ビールと安くて具の少ない鍋焼きうどん。
ご主人は丁寧な物腰の紳士だった。
気紛れな北陸の空がその頃に寄越していたのは冷たい雨だった。

北陸本線の終点、直江津まで。
この荒天で天下の険、親不知を前にした市振の関あたりが高波に洗われており、徐行運転を余儀なくされるとのアナウンスが入った。

入善、泊そして越中宮崎。
栄食堂が見える。

あの場所ではいつも同じことしか思い出さない。
何度目になるのだろう。
あれもずいぶん昔の話になった。

立山の雪は少なかった。
市振駅を襲う高波はたいしたことないように見えたが、雄大なものだとは思った。

寝ている者以外で窓側に座っていた者たちが一斉に海に目を移す。
通路を隔てて隣に座っていた美しい女性がケータイのシャッターを押す。

大きな騒ぎにはならず、親不知。
姫川を渡り、糸魚川。
崖上の駅、地下駅などを経て終点直江津。

北陸本線と信越本線が合流する大鉄道駅の駅舎はかつては素朴なものだったが、歴史を感じさせるホームを除いて、すっかり変わっていた。
周辺の雨景色も影響したのだろうが、寂しい気持ちになる。

でも次に発車する信越本線長野行が、かつての特急あさま号の客車を使用することに気づき喜色が現れる。
横川駅に止まっていたのを見たのが最後だった。
そのまま上野まで走ってほしかったよ。

残していた酒を開ける。
つまみもいいのが残っていた。
幸せな気持ちで、かつての特急列車が各駅列車として、その栄光の姿を進めていくに従った。

いつしか雪景色に変わり、雪見酒となる。
スイッチバックの二本木駅でしばらく停車となり、煙草を吸いに外に出る。

積雪量に目を見張る。
保線係のおじさんに灰皿はないかと尋ねたら、遠慮なく線路に捨てろと言う。
感心できた話じゃないが、彼等に礼を言って美味い煙草を吸った。

妙高高原駅で大勢のスキー客が乗ってきて、車内は一気に埋まった。
あの客車を走らせる理由はこんなところにもあったのだろう。
長野駅に着いたのは直江津を出てから約1時間半後だった。

オレが知る長野駅は五輪前。
だから駅前広場から通りから、すべてが記憶にあるものじゃなかった。

長野に降っていたのは雪。
駅ビル内に気の利いた店はなく、仕方なしにラーメン屋に入ってビールと餃子に炒め物。

新幹線改札口は賑わい、発車が近い指定席は売り切れ。
立つことを覚悟したが、そこは始発駅。
自由席で席を得てやれやれと思ったが、すぐに満席になり立ち客も現れる。

息苦しい中を上野をやり過ごし、東京駅まで。
この旅は東京駅で終わらせるべきだった。

大荒れの北信越一帯から約1時間半。
ある種の無情を感じる。
この3連休、関東は穏やかな晴天続きだったらしい。

今日彼女がスペインから戻る。
歌い手も曲名も知らないが、この旅ではどこの街でも、この冬のこんな流行歌が流れていた。

「この手を離したら、もう会えないよ。」

関連記事

「車旅日記」2000年春 4日目(鳴子温泉‐米沢‐猪苗代‐郡山)鳴子サンハイツ、道の駅むらやま、金渓ワイン、日布峠、こたかもりドライブイン、郡山スターホテル 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月6日 2000・5・6 7:19 鳴子サンハイツ 1011㎞ 低調な朝だ。

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 最終日(鷹ノ巣-東京)その4‐中条、新発田、新津、長岡(羽越本線/信越本線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】

鉄旅日記2020年1月13日・・・中条駅、新発田駅、新津駅、長岡駅(羽越本線/信越本線) 17:3

記事を読む

「鉄旅日記」2018年春 初日(東京-飯田)その1-国立、高尾、宮田、伊那八幡、三河東郷、新城、三河一宮(中央本線/飯田線)【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】

鉄旅日記2018年4月7日・・・国立駅、高尾駅、宮田駅、伊那八幡駅、三河東郷駅、新城駅、三河一宮駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】4日目(隼人-岩国)その2-熊本、久留米、鳥栖、吉塚、長者原、古賀、東郷、赤間、幡生(鹿児島本線、山陽本線)

鉄旅日記2013年8月13日その2・・・熊本駅、久留米駅、鳥栖駅、吉塚駅、長者原駅、古賀駅、東郷駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その4-柏原、道明寺、河内長野、古市、畝傍御陵前、田原本、西田原本、新王寺、近鉄王寺(道明寺線/長野線/南大阪線/橿原線/田原本線/生駒線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・柏原駅、道明寺駅、河内長野駅、古市駅、畝傍御陵前駅、田原本駅、西田

記事を読む

「車旅日記」2004年夏【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】3日目(宮崎-志布志-枕崎-鹿児島)走行距離382㎞その2-隼人駅、枕崎駅、開聞駅、指宿、鹿児島東急イン

車旅日記2004年8月13日・・・隼人駅、枕崎駅、開聞駅、指宿、鹿児島東急イン 2004・8・13

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋 最終日(和田山-東京)その2-大阪、桜島、西九条、阪神西九条、久宝寺、放出、京橋、京阪京橋、近江舞子、近江今津、近江塩津(大阪環状線/桜島線/関西本線/おおさか東線/学研都市線/湖西線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

鉄旅日記2009年11月23日・・・大阪駅、桜島駅、西九条駅、阪神西九条駅、久宝寺駅、放出駅、京橋駅

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、富山・岐阜途中下車旅】最終日(富山-東京)その2-美濃太田、可児、姫、下切、南木曽、田立、勝沼ぶどう郷(太多線、中央本線)

鉄旅日記2012年8月26日その2・・・美濃太田駅、可児駅、姫駅、下切駅、南木曽駅、田立駅、勝沼ぶど

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】3日目(姫路-十三)その2-新開地、湊川、鈴蘭台、三木上の丸、三木城址、三木、粟生、神鉄三田、ウッディタウン中央、横山、有馬口、有馬温泉、鵯越(神戸電鉄有馬線/粟生線/三田線/公園都市線)

鉄旅日記2017年8月13日・・・新開地駅、湊川駅、鈴蘭台駅、三木上の丸駅、三木駅、粟生駅、神鉄三田

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋 初日(東京-砺波)その4 ‐越ノ潟、末広町、高岡、城端(万葉線/城端線)/高岡大仏 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】

鉄旅日記2020年11月21日・・・越ノ潟駅、末広町電停、高岡駅、城端駅(万葉線/城端線)/高岡大

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その1 ‐金町、東京、くりこま高原(常磐線/東北新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・金町駅、東京駅、くりこま高原駅(常

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その5 ‐仙台、鹿島、原ノ町、浪江、常陸多賀(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・仙台駅、鹿島駅、原ノ町駅、浪江駅

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その4 ‐山寺(仙山線)/立石寺山門売店/高砂屋本舗 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・山寺駅(仙山線)/立石寺山門売店

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その3 ‐米沢、赤湯、中川、山形、北山形(奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・米沢駅、赤湯駅、中川駅、山形駅、

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その2 ‐峠(奥羽本線)/力餅商店/峠の力餅売り/峠駅今昔物語 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・峠駅(奥羽本線)/力餅商店/峠の

→もっと見る

    PAGE TOP ↑