「鉄旅日記」2007年新春【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】初日(東京-岐阜-富山-高岡)-東京、岐阜、美濃太田、下呂、高山、角川、猪谷、富山、高岡(東海道新幹線/高山本線/北陸本線)
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旅話 2007年
鉄旅日記2007年1月6日
2007・1・6 22:45 スーパーホテル高岡駅前711号
高岡。
素敵な街に着いたよ。
駅ビル地下の居酒屋で、気のいい大将と意気投合した。
あんな素晴らしい男がいることも、街の実力として挙げられる。
どんどん酒を干していくオレを見て、あん肝と牡蠣を振る舞ってくれて、替わりにオレもビールを振る舞って、店で一番高価だった氷見港で揚がったブリを注文した。
ブリといったら氷見。
これまで知らずに生きてきた。
街を見るのは明日になるが、大将の話じゃイオン・グループが進出してきたせいで、古くからの商店街は瀕死の状態だという。
地方に行けばどこでも聞く話を、路面電車が走る城下町でも耳にすることになった。
高岡では今もプロレス興行が年に一度は行われている。
テレビ中継はなかったが、かつてドリー・ファンク・ジュニア×トミー・リッチという元NWA世界王者同士のドリーム・マッチが組まれた街。
そんなことを記憶しながら生きてきて、そんな街、高岡にも着いた。
金沢行の北陸本線が高岡駅に到着して、ホームに降り立ち、跨線橋を渡って改札口を抜ける手前で、確かにオレは高岡に着いたことを実感した。
その街を今、雪ではなく冷たい雨が濡らしている。
長い一日だった。
金町を4:52に出て東京駅まで。
新幹線の切符売場が開くのは5:30。
のぞみ始発は6:00発。
暖かい缶コーヒーを購入して自由席へ。
乗客は多く、次の新横浜でほぼ満席になった。
明けない朝の東海道の街並を眺めているうちに眠ってしまった。
名古屋に到着したのは確か7:30前後。
東海道本線を乗り継いでいく旅に慣れたオレにしてみれば、まるでジェット機に乗ったような速さだ。
岐阜へ向かう乗り換えもスムースで、尾張一宮駅、木曽川駅に着くと車窓を凝視する。
そこに好きな鉄道風景がある。
岐阜駅前の工事はまだ完了しておらず、オレの目には去年の7月と同じように見える。
完成した姿をこれから先、見る機会は訪れるだろうか。
美濃太田行の高山本線は8:31発。
金町を出てから約3時間半でもう岐阜にいるのか。
新幹線とは偉大なものだ。
岐阜駅を離れ、金華山に目をやり、木曽川を渡ると風景は鄙びる。
かつて立ち寄った鵜沼駅で物思いにふけり、当時はその存在に気づくことのなかった名鉄の大鉄道基地に目を見張った。
やがて木曽川日本ラインの絶景が現れる。
あの国道をかつて走ったことがある。
その時に国道に沿った断崖に敷かれている線路を意識した。
その線路がどの街に通じているのか、当時は知らなかった。
岐阜から約40分で美濃太田へ。
新装されたターミナル駅だった。
小雨の中をアーケード街を歩いて木曽川まで。
雄大な眺めではなかったが、めったに目にすることのない大河。
一応の満足はある。
雨降りの薄暗い朝に街は沈んでいるように見える。
下呂までは約1時間。
有名な温泉街だ。
歩くにはいい。
まずは駅前の瀟洒な飲食店で昼食。
ビールとラーメンの定食を注文したが、店員の愛想は悪いし、ビールはぬるく、焼きおにぎりに至っては冷凍食品ときた。
憮然とした心地で町へ。
冷たい雨で、観光地であるにせよ、そんな日に出歩く者はそうはいない。
心残りはあったが、川向うの小路を歩いてすぐに駅に戻った。
背後の山には雪が見られたけど、下呂は静かに雨に濡れていた。
暖かい待合室でどれくらい待っただろう。
次は高山行。
太宰治の文章にはまだ馴染めずにいた。
高山までは飛騨川沿いを進む。
あれは何年前になるのか。
天気のいい7月に並行する国道を走ったことがある。
その時に見た風景はとても美しく、これまでに走ってきた中で10指に入る素晴らしい道だった。
その道を鉄道で再訪することに意味を感じていた。
今は冬。
あの日とは違うが、新たな気持ちで車窓を飽かずに眺めた。
高山までは約1時間半。
駅は人であふれていた。
たいていは名古屋方面に戻る人々のようだった。
街は薄く雪をかぶっている。
古い街並を川向うまで。
歩いてみて、なるほどと思ったよ。
暖かな灯が灯る風情に、これまでの人生では遠かった高山を想った。
陣屋跡で折り返し、狭い道を選んで駅に戻った。
雨とも雪ともいえないものが上がり、薄日が差す。
天下の高山。
美味そうな弁当が並び、「駅そば」の香りがそそる。
熱燗を購入して体を温める。
約1時間を高山で過ごした。
富山方面に向かう者は少ない。
JRのHPを見て最近知ったことだが、高山本線は2年前の風水害の影響で一部区間が閉鎖され、バスによる代行運転が行われている。
不安だったが、高山駅に代行バスの時刻表が貼られていて安心した。
角川まで。
酒が入ったこともあるが、目を閉じて、次に開くと完全な雪景色になっていた。
日本海へ向かっている実感はそんな時に湧いてくる。
角川駅周辺も高山までの景色とは違う。
こんなことでもなければ降りる機会はなかっただろう。
それを幸運と感じていた。
バスは県境を越えて猪谷まで走る。
約1時間。
日暮れに近く、車内で記憶しているものはない。
猪谷駅に着くと完全な夜になっていて、富山方面に向かう人々が言葉を交わすこともなく、狭い待合室でコの字型になって列車の到着を待っている。
隣に座った男は旅慣れた様子で、ウイスキーの小瓶と乾き物を広げている。
向かいに座った男は苦虫を嚙み潰したような顔に若干の笑みを浮かべ、若い者はその場の雰囲気に馴染めずにただ小さくなっている。
この駅から延びているはずの神岡鉄道の表示を見ないが、、、知らぬ間に廃線になったのか?
構内はターミナル駅の面影を残したまま寂れ、駅前には明かりすらなかった。
これから先何世紀も続いていく中で、こうした町は一体どういう運命を辿っていくのだろう。
山間の駅で哀愁を想う。
富山駅着19:23。
金沢行はすでに入線していて、寒い思いはせずに済んだ。
高岡までは約20分。
その頃には太宰の文体にだいぶ慣れてきていた。
それにしても岐阜から11時間も経っていたのか。
冒頭の店で、オレにしては長くいた。
気持ちのいい人には、気持ちよく応えるのが流儀。
北陸の天気には無頓着でいたが、明日も明後日も荒れるらしい。
それにしても今年は雪が少なく、去年を想えば信じがたいという。
冬の間に虫がつくことを恐れるお百姓は、積雪を願っていると聞いた。
今も雪ではなく雨が高岡を濡らし、空を雷鳴が行き交っている。
高山本線の旅は長かった。
たいていは高山を目指して、高山から濃尾平野へと引き返していく。
だがいつだってその先を往き、県境を越える者もいる。
オレは常にそっち側の人間なのだと空を見て想う。
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