「鉄旅日記」2012年晩秋【休日おでかけパスで、相模線途中下車旅】保土ヶ谷、大船、香川、北茅ヶ崎、厚木、社家、相武台下、原当麻、下溝、片倉、八王子、猿橋、西八王子、武蔵小金井、東小金井(横須賀線、東海道本線、相模線、横浜線、中央本線)
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最終更新日:2023/04/25
旅話 2012年
鉄旅日記2012年11月17日
2012・11・17 12:41 保土ヶ谷(ほどがや)駅(横須賀線 神奈川県)
Hさん、いいお顔をされていたな。
生前のお人柄が偲ばれる本当にいいお顔だったよ。
ご親族の涙は胸を熱くさせ、厳粛な儀式に感動すら覚えた。
人の一生とは生きている時間を指すが、本当に死ぬのは故人の記憶を携えた者が死に絶える際だという。
それはとてもステキなことだ。
涙雨に濡れた保土ヶ谷を後にして西に向かっている。
Hさんにとっては、ことによっては迷惑かもしれないが、オレというごく局地において、あと数10年は生を刻んでいくことが約束されている。
13:06 大船(おおふな)駅(東海道本線/横須賀線/根岸線 神奈川県)
大船駅の賑わいはいつ見ても不思議だ。
なぜこれほどの人々が行き交っているのか。
そしてなぜオレはそれを不思議に思うのか。
主にその地域性に対してだが、なかなか認識を改められずにいる。
別に構わないが。
湘南モノレール乗り場が記憶と違っていた。
あれは3年前になるのか。
過去が急速な勢いでたんなる過去でしかなくなってきている。
ほんのちょっと前まですべてが愛おしかったのにな。
茅ヶ崎(ちがさき)駅にて(東海道本線/相模線 神奈川県)
13:47 香川(かがわ)駅(相模線 神奈川県)
激しい雨が降る。
単線の相模線を濡らす。
風は吹き、雨の音が激しくなる。
2、3の商店をもって駅前の商圏が尽き果てた、かつて義人がいたと伝えられる小さな駅に下りた。
13:58 北茅ヶ崎(きたちがさき)駅(相模線 神奈川県)
ひと駅戻り、ホームから見渡せる風景がその町のすべてといった趣の駅に下りる。
雨が濡らしているが、町としての潤いをあまり感じない一帯だ。
風と東邦チタニウムの工場の音とともに雨を眺めてる。
14:31 厚木(あつぎ)駅(相模線 神奈川県)
小田急電鉄の高架下。
ホーム横に車庫があり、ここには何かあると思わせたが、通りに埋め込まれるように駅は存在していた。
「こんな雨の日じゃ、何もしてあげられないよ。」
気弱なおじさんが、そんなふうに囁きかけてきそうな気配のする駅だった。
14:38 社家(しゃけ)駅(相模線 神奈川県)
また一駅戻り、袋小路の小さな駅で下りる。
迎えを待つ少女の目がオレに冷たい。
ケータイに収めるような駅じゃないってことか。
そんなことは決してないのだけれど、ごくささやかな日常だけがある駅だった。
14:58 相武台下(そうぶだいした)駅(相模線 神奈川県)
駅が近づくと人家が離れ風景が鄙びた。
まるで原っぱの中にいるようだ。
駅舎は瓦屋根の古いものだった。
15:09 原当麻(はらたいま)駅(相模線 神奈川県)
長くいられるような駅じゃない。
かつてサッカー場に向かう道で、相模線のガードを潜ると左手に駅があって、それがここ原当麻だと同乗のFさんに教えられてきた。
だが違った。
約20年振りに発覚した不都合な真実だった。
15:18 下溝(しもみぞ)駅(相模線 神奈川県)
ひと駅戻る。
相模川散策路から駅へと渡る地点には信号がない。
そう、角にそば屋があるところだ。
民家に編入されたようなローカル駅だが、この風情は嫌いじゃない。
ただビールも酒も売っていないところは神奈川県とも思えない。
そんなローカル線の旅はここで終わりにする。
15:56 片倉(かたくら)駅(横浜線 東京都)
橋本駅で横浜線に乗り換える。
八王子南郊の寂しい高架駅。
町が続いているが、寒々とした風景にコンビニのおでんの貼り紙が眩しい。
左手のこんもりとしたのが城跡なのだろう。
16:12 八王子(はちおうじ)駅(中央本線/横浜線/八高線 東京都)
人の多さに驚き、北へ伸びる通りの美しさを愛でた。
実は八王子駅に関わるのはこれで2度目で、街を知らない。
そしてあまり知ろうと思っていなかった。
あまりいい印象を持たない数少ない街のひとつだった。
原因は高校時代の同級生にある。
親しい間柄ではなく、ほとんど会話を交わしたこともないが、馬の合わない男だった。
もう30年近く前の話だけど、八王子が不良少年の多い危険な匂いのする街だと、彼から刷り込まれてここまで生きてきた。
この話は、人というのは実に様々な責任を持って生きているということの、ひとつの例として挙げられる。
17:10 猿橋(さるはし)駅(中央本線 山梨県)
今更だが生憎の雨だ。
日本三奇橋猿橋の姿は写真で見たよ。
小さな観光地の好ましげな駅前のたたずまいがあったが、新しい現代的な駅舎に特徴はなく、そして冷たく、駅の由来にそぐわない。
何よりもこの激しい雨と一日の終わりに訪れた闇に、たいていのものは隠されてしまっている。
休日おでかけパスの有効区間は次の大月まで。
帰る。
18:10 西八王子(にしはちおうじ)駅(中央本線 東京都)
踏切トラブルで中央線ダイヤは乱れている。
大垂水峠の手前、西八王子。
関東平野のへりには冬の寒気が張り付き、人々の装いもすっかり冬に変わっている。
いつの間にかだ。
あっという間にだ。
Hさんは62年の人生を長く感じていたのだろうか。
涙雨は激しくなっている。
西八王子の商店街を歩かなかったことを少しだけ後悔している。
18:48 武蔵小金井(むさしこがねい)駅(中央本線 東京都)
涙雨が嵐に変わった。
きれいな街に着いたが、どうやら駅も商業施設も最近新装なったようだ。
東口の西友には歴史が見える。
町田の西友もそうだった。
今もあるのだろうか。
19:01 東小金井(ひがしこがねい)駅(中央本線 東京都)
武蔵野の古い駅。
駅舎は新しいが、町並に過去が見える。
高校時代にこのあたりにきたことがあるが、その頃の駅周辺の姿も見えたよ。
残念だが今日はもう打ち切りだ。
中央線の遅れの原因は諸説あるし、この強風で東海道線も止まった。
そして冬がやってきた。
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