「鉄旅日記」2015年夏 3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その2-隼人、日当山、鶴丸、吉松、真幸、矢岳、大畑、人吉、坂本、玉名、西鉄柳川(肥薩線、鹿児島本線、西鉄本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】
鉄旅日記2015年8月14日その2・・・隼人駅、日当山駅、鶴丸駅、吉松駅、真幸駅、矢岳駅、大畑駅、人吉駅、坂本駅、玉名駅、西鉄柳川駅(肥薩線、鹿児島本線、西鉄本線)
12:00 隼人駅前まんさくラーメン
鹿児島の街は相当に都会だが、鹿児島中央鹿児島間にはトンネルもあり都会の景色じゃなかった。
鹿児島駅の背後に桜島が見えた時は内心狂喜した。
竜ケ水あたりで錦江湾を挟んで正面に見える偉容は類を見ない。
オレは世界一の風景だと思っている。
あるトンネルを抜けるとまるでマジックのように桜島は視界から消え失せた。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
重富姶良帖佐と続く町並はただの住宅街で、残念だが潤いを欠いた風景に見える。
隼人駅は少し錆びていた。
10年振りのまんさくラーメン。
楽しみにしていたんだ。
店はきれいになり、代替わりをしていて、味が変わっていて、量が少なくなっていて、ほんの少し残念に思ったが、妙にあとに残る味だった。
車窓から見る桜島



隼人(はやと)駅(日豊本線/肥薩線 鹿児島県)にて


12:55 日当山(ひなたやま)駅(肥薩線 鹿児島県)
鹿児島神宮の参道にあたる隼人駅前通りを肥薩線に行き当たるまで歩く。
踏切を越えると国道。
どこに行っても西郷どんの名前を見かける。
空港が近く、頻繁というほどではないが、上空を音がよぎる。
日向山商店街を示す表示は日当山温泉を指すらしい。
立ち寄る時間はあったのに足を向けなかったことを悔やんでいる。
日当山は「ホタルの駅」を謳っている。
仙台育英が滝川二高を破り2回戦に進んだというニュースが流れた。

鶴丸(つるまる)駅(吉都線 鹿児島県)にて



鶴丸吉松間(徒歩)




15:01 吉松(よしまつ)駅(肥薩線/吉都線 鹿児島県)
日当山から吉都線へと乗り入れる都城行に乗り、吉松をひとつ過ぎて最初の鶴丸駅で降りる。
民家の庭先のような駅で、外界への低い階段を上がると鶴丸温泉がある。
温泉街があるわけじゃない。
一軒の銭湯があるのみ。
踏切端には菅原神社がある。
忘れ去られたような汚い神社だったけど、祀られているのは貧乏神じゃなくて、あの道真公だ。
お詣りする。
吉松までは川内川に沿って歩く。
20歳前後かと思われる女性が、草叢から電話をしながら不意に立ち現われ、驚く。
2年前の渡河点である橋を渡り、同じく2年前に立ち寄った酒屋でビールを購入して豪華列車に乗り込んでいる。
JR九州、なかなかやる。
ここから人吉まで日本一とも言われる車窓風景が現れるという。
楽しみだ。
15:31 真幸(まさき)駅(肥薩線 宮崎県)
真の幸せか。
幸せなら鐘を叩こう。
オレが得ている幸せはちょっとどころのものじゃないから4度叩く。
ホームには山津波の跡として残る大石も鎮座している。
いつもは人目を気にしながら途中下車しているが、観光列車じゃこうして招待してくれる。
それだけ価値のある無人駅かつ秘境駅探訪ということだ。
スイッチバックが始まった。
かつて薄暗くなった道を人吉まで走った。
加久藤(かくとう)越えと呼ばれるその道沿いにこの真幸駅はある。



日本三大車窓のひとつ

15:56 矢岳(やたけ)駅(肥薩線 熊本県)
古い駅舎とD51。
このふたつに郷愁を感じるのは万民共通のようで、一際賑わい、人々はスマホなりケータイをかざしている。
コンセルジュ役の女性鉄道員がとても美しい。
D51よりも彼女の写真を撮って帰りたい。
ここは肥薩線最高地点だが民家は点在していて、至ってのどかな風景が覗けた。
日本一の車窓風景は確かに見事だった。
韓国岳、京町温泉、川内川。
九州的な響きを持つ地名を聞いて震えた。


16:20 大畑(おこば)駅(肥薩線 熊本県)
スイッチバックとループ線という鉄道偉観を堪能して白桃シャーベットを購入。
多くの名刺が貼られた駅舎だった。
北海道の北浜駅もそんな駅で、オホーツクの風を全面に浴びて寂びた味を出していたが、壊されたという話を朝日新聞だったかで読んだ。
人吉盆地へと下っている。
こんな列車に乗ってずっと旅ができたら退屈しないで済むだろう。
豪華旅といいJR九州の試みに対する反応は上々だという。



17:21 人吉(ひとよし)駅(肥薩線 熊本県)
別府へと向かう九州横断特急が停車している。
熊本に出て阿蘇を抜けていくのだろう。
魅力的だ。
土産はここ人吉でと決めていた。
駅前の旅館「青柳」。
10年前の2月に泊まった宿は健在で、ラーメンをここで購入。
この街の寺に存在するという幽霊を描いた絵を見たくて球磨川べりまで下りていったが、そこで前進をやめて畔で涼んでいたらまたポツリと。
でも、ほんの一滴だった。
八代までの道中もさっきの豪華列車「いさぶろう・しんぺい号」になった。
これはうれしい。
そして今度は全席フリーだ。
これから球磨川下りの絶景がいくつか目に入るだろう。


球磨川畔にて


18:39 坂本(さかもと)駅(肥薩線 熊本県)
ずっと右手に見えていた球磨川がこっちに寄ってきた。
人吉まで座っていたカウンター席に移って、球磨川下りももう最終章に入る。
数分の停車。
ここにも古い駅舎が残っていて、この景観に珍しげな人々がケータイ、スマホを向けている。
人吉からはずっと球磨川が流れる谷間に線路が敷かれる難所だった。
東京スカイツリーだろうが何だろうが、この沿線の工事とその壮大さには霞む。
便所を探して時間をとってしまい、河原に降りられなかったことを残念に思っている。

20:27 玉名(たまな)駅(鹿児島本線 熊本県)
八代で鹿児島本線に乗り換える。
大釣り鐘が迎えてくれる街の玄関口。
西南戦争では官軍の本営が置かれていたという。
駅前通りを下っていくと飲食店がちらほらと、しかしずっと先まで続いている。
途中で諦めて駅に戻った。
座敷のある大衆酒場が賑わっていて大きな声が外まで漏れていた。
会話は熊本弁だろう。
そんな中に身を置きたいと思う。
駅前通りと平行する208号国道にも明かりは満ちて、焼き鳥、お好み焼き、菓子屋と隙間なく並び、地方都市の国道風景としては賞賛していい。
11年前の同じ夏の旅で、鹿児島から始めた4日目は宮之城、出水、八代、熊本ときて田原坂を通り、ここ玉名で雨降り渋滞にはまり、ついには大牟田で土砂降りになった。
あの日からずっと気になっていた街だった。
今は新幹線が止まる街として九州を目指す者の目に留まるようになっている。


西鉄柳川(にしてつやながわ)駅(西鉄本線 福岡県)にて

22:44 ビジネスホテル柳川211号
大牟田で西鉄本線に乗り換えて、西鉄柳川で降りる。
今夜はこの街に泊まる。
映画「廃市」の舞台でもある柳川の駅は光に溢れ、街も劣らずに光を放ち、水郷にはレトロな灯が灯っている。
蒸し暑い夜だが夕涼みへと誘う風情がある。
本物の水郷風景にお目にかかれずに明日の朝早くここを離れていくが、このホテルを出るとすぐのところに幾重にもボートが繋留された水路がある。
そこを歩くだけでも十分とも言えるだろうと思っている。
コンビニの見当たらない街中だが、コンビニで揃えられる以上の食糧を調達して、備え付けのソファにさっきからふんぞり返っている。
宿賃は高かったが、戦国の快男児立花宗茂が築いた街だ。
敬意と憧憬の想いでこの街を選び、こうしてやってきた。
お陰で西鉄にも乗ることができた。
柳川の夜


関連記事
-
-
「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】5日目(宇和島-観音寺)-宇和島、卯之町、八幡浜、千丈、伊予大洲、伊予市、松山、伊予北条、今治、伊予小松、伊予西条、新居浜、関川、伊予土居、箕浦、観音寺(予讃本線)
鉄旅日記2009年5月5日・・・宇和島駅、卯之町駅、八幡浜駅、千丈駅、伊予大洲駅、伊予市駅、松山駅、
-
-
「鉄旅日記」2018年秋 初日(松戸-流山-潮来-銚子-東金-松戸)その2-湖北、下総松崎、成田、香取、延方、北浦、佐原、大戸(我孫子支線/成田線/鹿島線) 【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】
鉄旅日記2018年9月22日・・・湖北駅、下総松崎駅、成田駅、香取駅、延方駅、佐原駅、大戸駅(我孫子
-
-
「鉄旅日記」2020年晩秋 初日(東京-砺波)その1 ‐金町、東京、黒部宇奈月温泉、新黒部(常磐線/北陸新幹線/富山地方鉄道本線) 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】
鉄旅日記2020年11月21日・・・金町駅、東京駅、黒部宇奈月温泉駅、新黒部駅(常磐線/北陸新幹線
-
-
「車旅日記」1996年夏【再び北を目指した夏。不慮の事故に遭い、打ち切らざるを得なくなったのでございます。】最終日 事故から帰京を振り返って。
車旅日記1996年8月15日 1996・8・15 東京 望郷の思いとは別に昨日家に帰り着いた。 後
-
-
「鉄旅日記」2008年初夏 最終日(松阪-東京)-松阪、鳥羽、伊勢市、宇治山田、亀山、名古屋、豊橋、浜松、熱海(近鉄山田線/参宮線/紀勢本線/関西本線/東海道本線) 【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】
鉄旅日記2008年7月21日・・・松阪駅、鳥羽駅、伊勢市駅、宇治山田駅、亀山駅、名古屋駅、豊橋駅、浜
-
-
「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-松本)その1 ‐金町、神田、吉祥寺、国立(常磐線/中央本線) 【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】
鉄旅日記2021年4月24日・・・金町駅、神田駅、吉祥寺駅、国立駅(常磐線/中央本線) 20
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その6 ‐谷峨、山北、足柄、沼津、熱海(御殿場線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月5日・・・谷峨駅、山北駅、足柄駅、山北駅、熱海駅(御殿場線/東海道本線)
-
-
「鉄旅日記」2006年如月 その2-勿来、いわき(常磐線) 【房総半島から1週間。常磐線に乗って、下っていったのでございます。】
鉄旅日記2006年2月11日・・・勿来駅、いわき駅(常磐線) 2006・2・11 いわき東急イン6
-
-
「鉄旅日記」2009年秋-東金、大網、大原、上総中野、上総牛久、五井(東金線/外房線/いすみ鐡道/小湊鉄道/内房線) 【関東ぶらぶら旅その1-房総鄙の里へ】
鉄旅日記2009年10月22日・・・東金駅、大網駅、大原駅、上総中野駅、上総牛久駅、五井駅(東金線/
-
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その1-近鉄富田、富田、近鉄四日市、湯の山温泉、伊勢若松、平田町、鈴鹿市、鳥羽、賢島(名古屋線/湯の山線/鈴鹿線/山田線/鳥羽線/志摩線)
鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄富田駅、富田駅、近鉄四日市駅、湯の山温泉駅、伊勢若松駅、平田町
