「鉄旅日記」2022年水無月 最終日(中山平温泉-東京)その1 ‐中山平温泉、鳴子温泉(陸羽東線)/旅館三之丞湯【鳴子温泉郷の湯を求めての旅でございます。】
鉄旅日記2022年6月12日・・・中山平温泉駅、鳴子温泉駅(陸羽東線)/旅館三之丞湯
2022・6・12 5:42 旅館三之丞湯
この旅館は駅からも見える。温泉街と呼ぶには心もとないが、情緒を感じる景色の中を歩き、踏切を越えて、明るいうちに着いている。食事は部屋まで運んでくれる。



昨夜は音楽を聴きながら飲んで、酔って寝たらしい。あまり覚えていない。
湯には3度つかったのだろう。その分の空缶が置いてある。そしてもう一本。
湯上がりの朝酒の味を覚えたのは1月の湯瀬温泉。以来こうしている。よく眠れたのだろう。だいいち普段と布団が違う。
恋人は阿蘇の湯につかり、肌を磨いたらしい。そんなふうに愛を重ねていける人がいてくれて、心からうれしい。これは当たり前のことなどではない。五十路に入ってようやく手にした境遇なのだ。
日常はつぶれそうな会社の再建を背負っている。その背中は狭くて集中できないこともあるが、もう何年も前からオレという存在こそが会社の未来。その自覚はある。そしてこの非常事態を抜けた先の栄光を描いてみる。
今は描けない。想像力のなさを笑ってみる。だけれどひとつだけ言う。いい時代に対しても言えるが、ひどい時代も長くは続かない。このひどい時代もやがて終わる。それくらいの想像力なら持ち合わせもある。
少し熱めの湯。あまり長くはつかれないが、この温泉生活を楽しんでいるよ。
宿の方が言う。ゆっくりしにきたのだから何もしなくていい。その通り。ゆっくりするだけなら葛飾でもできるが、日常もまたそこにあり、心から寛げることなどない。
日常を離れる。その効用にもまた初めて気づいた。
8:11 中山平温泉(なかやまだいらおんせん)駅(陸羽東線 宮城県)
女将から伺った。オレが生まれた頃の話だ。
当時の駅は大きく、官舎もあり、上下の行き違いもできて賑わっていたと。


植物園があり、鳴子生まれの女将さんは子供の頃に鳴子峡を歩いて遠足にきたと懐かしげに話された。
春のダイヤ改正で上下線とも1本ずつ本数を減らされた陸羽東線。新庄から先、日本海へとつながる陸羽西線はトンネル工事のため再来年まで運転を取りやめ、代行バスを運行するとのこと。未来への礎だが、寂しい話ではある。
朝食は宿泊者全員が集まる大広間で。ご飯はおかわりしたよ。毎年訪れる湯治客もいるとのこと。いい湯だったよ。
ざんざん降っていた雨は上がり、昨日立ち寄った酒屋でウイスキーハイボールを購入。小牛田までの車中の楽しみになる。

8:34 鳴子温泉(なるこおんせん)駅(陸羽東線 宮城県)
かつて歩いた鳴子峡に思いを馳せ、トンネルをくぐった。
乗ってきた列車は鳴子温泉行き。陸羽東線の運行上の要であり、上下線ともほぼここで折り返す。
日曜日に学生の姿はなく、湯治客もない。足湯場の湯煙も空しい。


ただ、靄のかかる山並が美しい。何度も泊まった温泉街だが、あの山並こそが懐かしい。


そしてオレと鳴子との縁を想う。

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