「鉄旅日記」2006年晩夏【ふと誘われるように、上州へ向かう列車に乗ったのでございます。】-伊勢崎、桐生、西桐生、下仁田、上州富岡、高崎(高崎線/両毛線/上信電鉄)
鉄旅日記2006年9月2日・・・伊勢崎駅、桐生駅、西桐生駅、下仁田駅、上州富岡駅、高崎駅(高崎線/両毛線/上信電鉄)
空の色はよかったよ。
煙草を3本吸い終えると出かけた。
桐生、下仁田、富岡。
昨夜店を出たオレへ、笑顔で駈けてきた彼女。
オレの苦労もここまでか。
そんな予感を持って迎えた朝だったけど、少し飲みすぎていた。
富岡でも酔った。
読みかけの松本清張は置いておいて、その町に着くまで彼女と、京都の元恋人にメールを送った。
過去と現在が混在した時間に、間違いなく至福を感じていた。
わざわざ途中下車した街は、想像通りの文化都市で、東京からはとても遠い町だった。
もう20年も前に出会った旧友とも言える女性が、毎年この町から丁寧な年賀状を寄越してくれている。
「富岡製糸場を世界遺産へ」をスローガンにしている。
製糸場は、上信電鉄の上州富岡駅から徒歩約10分のところにある。
あたりには繁華街が形成されていて、人通りは多くはないが、味のある町並だった。
コロッケ屋では部活を終えた2人の少年が自転車を止めてぱくついている。
懐かしい風景だった。
駅前食堂でビールに冷やっこ、そしてハムエッグライス。
亭主は教育テレビをつけて宇宙の話に夢中だった。
歴史的ともいえる駅舎内では4名の高校生が時間をつぶしている。
改札の時間がやってきて切符を渡し、小高いホームへ。
映画に登場することはなかったが、おそらくこの町の祭に車寅次郎の姿があったこともあるだろう。
今日の旅は夏の旅と記録するけど、日の入りの時間はすでに夏のそれではなく、吹く風ももはや秋のものだった。
商店街では何やら懐かしい匂いが香った。
高崎に着くまでに正面にいた2人の愛らしい少女。
彼女たちは同じ格好で身を乗り出して、額面に貼られたポスターに記された問題に熱心に取り組んでいた。
伊勢崎では「駅そば」を。
町にとけこむ東南アジア人。
桐生駅で降りる。
歩いてすぐのところにある洋風建築の終着駅、西桐生駅の広い待合室でひとり待つ女性。
すぐ脇に建つ全国制覇の桐生第一高校。
桐生本町の長い商店街。
甲斐よしひろのLIVE告知ポスター。
下仁田駅は「関東の駅100選」にも数えられている味のある終着駅だった。
静かな町だったけど、いかした店もある。
東富岡駅あたりでは花火が打ち上がり、高崎では日露戦争の旅順攻略戦の際に、真っ先に高崎連隊が占領した高崎山という存在が頭に浮かぶ。
路上演奏者が奏でる音を聞きながら発泡酒を飲む男に、3人の少女。
上野までの長い車中。
桐生で購入した松本清張は、人間であることとはどれだけ醜いものであるかを、今日もまた様々な事件を元に検証していた。
ストーンズが流れている。
昨夜、当事者のすべてが酒に酔っていたが、確かに時代は動いた。
ダメでいるオレの時代も終わった。
すべて終わったんだよ。
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