*

「鉄旅日記」2018年師走 初日(東京-津)その1-金町、西桑名、楚原、阿下喜、麻生田、丹生川(常磐線/三岐鉄道北勢線/三岐鉄道三岐線) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/06/10 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年12月22日・・・金町駅、西桑名駅、楚原駅、阿下喜駅、麻生田駅、丹生川駅(常磐線/三岐鉄道北勢線/三岐鉄道三岐線)

2018・12・22 4:31 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都)
いい月夜だ。

彼女が写真にして送ってくれた月夜は一昨日。
月が浮かんでいることに気づくと立ち止まり、しばらく眺め、祈りが湧き、微笑みが浮かび、そして視線を前へと移す。

明日、今年最後の満月が浮かび、神島でその時を過ごす。

満願成就の予感があるこの年の暮れ。
愛しいものを想い、まだ見ぬ愛する女性を想い、一番列車に乗り込んだ。

早朝の町を何度も駅に向かってきたが、四季の内で今朝に一番多くの人を見た。

12:04 西桑名(にしくわな)駅(三岐鉄道北勢線 三重県)
北千住、日暮里、東京、三島、静岡、浜松、名古屋、桑名。

浜松までは席を得て、一年の疲れをここで取り除くかのように眠る。

曇った窓から見えた風景で覚えているのは、湯河原から熱海にかけての海辺。
かつての記憶も蘇る。

浜松から名古屋までは立ち通しだった。

雨を確認したのはどのあたりだったか。
浜松ではいく分あたたかな雨が音を立てていた。

名古屋を出る頃は雨も上がる頃。
あおなみ線や近鉄線と並走するややこしく線路が配置された鉄道地帯。
あのあたりではいつも胸が踊る。

校庭に多くの水溜まりを作った東海を濡らした雨。
今頃はオレがいなくなった東京を濡らす頃。

桑名では完全に雨は上がり、雲間から太陽も覗く。
真冬の寒さはない。

これから私鉄4線区の終着駅を目指す。
まずは三岐鉄道北勢線。

1100円のフリー切符を購入して北勢線に乗り込んでいる。
車両の幅は驚くほど狭く、列車が大きく揺れると吊革が一斉に荷台に当たり、木琴の調べのような音が響き渡る。

線路幅の狭いナローゲージ。
オレが生まれる頃まではそんな狭い線路幅の鉄道があちこちで走っていたそうだが、行き残ったのは北勢線と、あとで乗る四日市あすなろう鉄道の2線区、黒部峡谷鉄道のみとのこと。

フリー切符購入の際についてきたパンフレットによれば、JRの線路幅1067mmに対して北勢線は762mm。
近鉄は1435mmと国際標準軌を採用していて、西桑名2号踏切では3種類の線路幅を踏み越えていく。
通な情報だ。

列車はJR、近鉄線を注意深く跨ぎ、冬枯れには遠い北勢の景色の中にいる。
若者達は概して薄着でいる。

12:47 楚原(そはら)駅(三岐鉄道北勢線 三重県)
列車行き違い8分の停車。

線路の先の雲かかる山々を写し、駅から続く一本道を写す。



居住していると思われる外国人の姿は地方に行くほど目立つ。
日本人より活動的なのかもしれない。
さっき見かけた5人組はブラジル系だろうか。

ひたすら田園地帯を往く北勢線。
楚原から下る眺めは絶景と言っていい。

13:17 阿下喜(あげき)駅(三岐鉄道北勢線 三重県)
いなべ綜合高校を甲子園で見たことがある。
そこの生徒が下りていった。

かつて寄った阿下喜駅は、燕が巣を作る味気ない駅だった。
駅舎に踏み込むと威嚇のために耳許を掠め飛んできたものだ。

当時は三岐鉄道ではなく、近鉄北勢線。
知らぬうちに失意と再生を味わった沿線。

駅の統廃合または廃止移転により17駅から13駅となったが、行き違い駅の増設や列車の高速化が果たされたという。

それから10年以上が経ち、この終着駅は漆黒に生まれ変わり、川辺には柳が揺れ、少し歩けば温泉がある。



以前の風景をまったく思い出せないが、この駅周辺の変化を気に入っている。

セブンイレブンでビールを購入して駅へ戻る。
脇には転車台と古い客車が残されている。

13:45 麻生田(おうだ)駅(三岐鉄道北勢線 三重県)にて

14:26 丹生川(にゅうがわ)駅(三岐鉄道三岐線 三重県)
西桑名に戻り、隣接する桑名駅から近鉄名古屋本線で近鉄富田駅に移動。
三岐線に乗り換えて終点の西藤原を目指す計画でいた。

でも西桑名でもらったパンフレットに載った地図を見ると、北勢線と三岐線は驚くほど近くを走っている。
最接近していると思われるのが、麻生田駅から三岐線丹生川駅間。

北勢線麻生田駅で降りて徒歩で移動。
およそ3kmほどだろうか。

坂を下りきり、振り返ると阿下喜に向かう黄色い列車が見えた。

員弁川を渡り途中コンビニに寄り、地神に敬意を払い、何気ない風景を写しながら気楽に歩いてきた。





駅を見つけて、引戸に手をかける時に小さな男の子が自転車に乗ってやってきた。
この静かな一帯で、彼の気を引く一番の場所がここで、そして彼も列車に乗りたいのだろう。
いじましく思えて、ほのぼのとした気持ちになる。

構内踏切を渡り、島式ホームに上がる風景に、この国が本来残さなければならない風景が何なのかが分かった。

貨物列車が走る三岐線。
龍が浮かぶ空を眺めながら、永遠に続けと願う。

いなべとは員弁と書くのだ。
確かに読めない。

関連記事

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その3‐仙台、北山、葛岡、山形(仙山線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月4日・・・仙台駅、北山駅、葛岡駅、山形駅(仙山線) 12:25 仙台(せんだ

記事を読む

「鉄旅日記」2007年皐月 初日(東京-米子)-静岡、豊橋、本竜野、播磨新宮、佐用、東津山、米子(東海道本線/姫新線/因美線/山陰本線)【夜汽車で東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】

鉄旅日記2007年5月3日・・・静岡駅、豊橋駅、本竜野駅、播磨新宮駅、佐用駅、東津山駅、米子駅(東海

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 2日目(防府-肥前鹿島)その4‐企救丘、志井公園、小倉、黒崎、黒崎駅前、筑豊中間(北九州モノレール/鹿児島本線/筑豊電気鉄道) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月14日・・・企救丘駅、志井公園駅、小倉駅、黒崎駅、黒崎駅前駅、筑豊中間駅(北

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その5‐肥前山口、久保田、西唐津、博多、門司港(佐世保線/唐津線/筑肥線/福岡市地下鉄空港線/鹿児島本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前山口駅、久保田駅、西唐津駅、博多駅、門司港駅(佐世保線/唐津

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月14日その1・・・指宿駅、枕崎駅、入野駅、開聞駅、山川駅、喜入駅、瀬々串駅、慈

記事を読む

「車旅日記」2005年春 最終日(富山-松本)走行距離218㎞ その1-アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅、魚津駅、石田駅、電鉄黒部駅、入善駅【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】

車旅日記2005年4月30日・・・アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅

記事を読む

「鉄旅日記」2021年皐月 最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル 【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】

鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 2日目(大船渡-釜石)その1‐大船渡、盛、綾里、唐丹(大船渡線/三陸鉄道リアス線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月23日・・・大船渡駅、盛駅、綾里駅、唐丹駅(大船渡線/三陸鉄道リアス線) 2

記事を読む

「鉄旅日記」2003年冬 最終日(博多-宇部)その2-門司港にて 【ご縁と別れがあり、34歳の誕生日を北九州で迎えた日の記憶でございます。】

鉄旅日記2003年2月16日 2003・2・16日の記憶 門司港行の鹿児島本線に乗る。 門司港レト

記事を読む

「車旅日記」2000年春 初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞ 繁華街を抜ける

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その2 ‐十島、鰍沢口、甲斐住吉、国母、常永(身延線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・十島駅、鰍沢口駅、甲斐住吉駅、国母

→もっと見る

    PAGE TOP ↑