「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】3日目(福山-呉-広島-備後落合-岡山)-福山、三原、呉、広島、三次、備後落合、東城、岡山(山陽本線/呉線/芸備線/伯備線)
公開日:
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旅話 2007年
鉄旅日記2007年5月5日
2007・5・5 8:01 福山駅(山陽新幹線/山陽本線/福塩線 広島県)
昨夜辿り着いた福山駅。
いくつもの線路が敷かれた広大な駅構内は静まりかえっていて、乗ってきた列車も静かにホームに滑り込んだ。
あの光景を鮮明に覚えている。
隣に位置する福山城の石垣に驚嘆して、駅を出ると天守閣への道を上がった。
清楚な女性がいた。
ライトアップされた天守閣を写し離れた。
福山は大きな街。
あの2号国道は何度か車で走っている。
芦田川を渡る。
花火に沸いたあの夏の日が蘇る。
そして福山が離れていく。
予定じゃ、今夜もう一度この街を経由して岡山に向かうことになっている。
9:12 三原駅(山陽新幹線/山陽本線/呉線 広島県)
三原駅に着くと最初に三原城天守台跡に上がった。
駅構内には専用通路がある。
かつての本丸を山陽本線が貫いているとのこと。
街へ。
マリーンロードを港へ。
「ゆっさ踊り」に蛸の街。
街に散見されるそうした言葉を頭に入れながら歩いていく。
港にはゆるやかな音楽が流れている。
瀬戸内だよ。
尾道糸崎間に見られた瀬戸内の景色が懐かしかった。
尾道は車窓から眺めて、街を思い出した。
あの日オレは下関を出て、尾道から松山に向かった。
オレはあと何年を旅人として生きるだろう。
港のベンチでいい加減に蘇るそうした記憶と適当に付き合いながら、ぼんやりとそんなことを思っていた。
港からは水軍ルートをたどり、来島海峡へと通じる航路がある。
そんな旅もいい。
ふと足を止めた。
古いアーケードの残る帝人通りから駅へ戻った。
11:12 呉駅(呉線 広島県)
よく晴れているが、呉越峠には今日も雲がかかる。
尾道での記憶と、呉での記憶は同じ旅のものじゃない。
あの日、広島を出て呉を経由して京都までの道を爆走した。
その日のうちに京都に着いて、彼女に会いにいったんだ。
瀬戸内が一望できる呉線の車窓風景は素晴らしかった。
戻ってきたという感慨も若干だが湧いた。
これまで、様々な町にいたものだ。
忠海、広そして呉。
軍港観光都市に大和ミュージアムができて、長蛇の列ができている。
呉駅はかつて眺めたものと同じだろうか。
もっと小振りなものだったと記憶していたが、駅ビルになっている。
もちろん記憶違いかもしれない。
駅前広場で、高野山からやってきた女性聖に小銭入れに入っていたすべてのコインを布施した。
堂々とした街だ。
世界から強豪が集まった昭和50年の世界オープン選手権は呉にもやってきた。
ジャンボ鶴田×ディック・マードック、大木金太郎×ハーリー・レイス、グレート草津×アブドーラ・ザ・ブッチャー、ラッシャー木村×バロン・フォン・ラシク、ホースト・ホフマン×ミスター・レスリング・・・。
おそらくその頃の賑わいは現在もこの街から消えてはいない。
すでに広島が近い。
たくさんの乗客が広島行を待っている。
この分じゃ座れないな。
12:03 広島駅(山陽新幹線/山陽本線/呉線/芸備線/可部線 広島県)
5月のフラワー・フェスティバル。
かつて広島に着いたのも5月だった。
そしてこの旅の折り返し地点がここ広島。
この黄金週間中に広島駅はすべて自動改札へと移行したらしい。
駅員が緊張した面持ちで客に接している。
駅前に出た。
路面電車の停留所がある。
残念だが、今日は時間がない。
芸備線始発に乗る。
急行列車の指定券を購入する。
それならビールと駅弁だろう。
懐かしい客車に乗り込むと煙草の匂い。
昔日の上野発、直江津行の情景が蘇ってきた。
しばらく眠ってしまうだろう。
13:44 三次駅(芸備線/福塩線/三江線 広島県)
霧の街と聞いていた。
中国山地に残った最後の街、三次。
乗換の時間が短い。
今回は先へ行く。
15:20 備後落合駅(芸備線/木次線 広島県)
途方に暮れた。
昨日ここにいられた時間が少なかったことが気になっていて、昨日のように塩町から福塩線経由で福山に出るつもりでいたのを、行先変更して芸備線を完乗して新見に出て、伯備線で岡山に向かうことにしたが、次の新見行は20時台までない。
ここで6時間も待たなきゃならない。
秘境駅シリーズを読んでいて、この駅がその中に数えられていることは知っていた。
あたりにはわずかだが民家はある。
しかし人の気配はない。
大昔からというわけじゃない。
ここ最近加速したという風情。
どうしようもなくなって、ここを出ていったのだと。
飲み物を自販機で仕入れることができた。
そうすることができてよかった。
車中で一緒だった広島からやってきた男性から、昔日の備後落合駅の様子を聞く。
他でも読んで知っていたことでもある。
現在は三次行が精一杯だが、かつては広島まで直通列車があり、売店もあったし、もちろん駅員が何人もいた。
だけど来るたびに廃れていく。
そしてかつてあった栄光が戻る日はないだろう。
鉄道も国道もあるが、時代に見放された中国山地の町。
駅に置かれたノートには賛辞がいくつか見られる。
オレも賛辞を記す。
しかし途方に暮れた。
さっきオレをここまで連れてきた運転手さんにこれからの処置を相談すると、彼はひとつの方法を示した。
5駅先の東城まで行けば、17時台に始発列車が出るという。
タクシーを呼んで車が来ると、さっきの広島からの男性と「お気をつけて」の交換をして乗り込んだ。
ここにも素晴らしい人情があった。
16:42 東城駅(芸備線 広島県)
タクシー代は余計な出費だったが、得がたい体験とも言える。
タクシー運転手さんは、タクシーも運転すれば、バスを運転することもあり、昨日はバスだったという。
備後落合営業所が廃止されたことも聞いた。
「駅にはまだ営業所の電話番号が残っていますよ」と伝えると、「あぁそれは。。消さなきゃ。」と言う。
桜の名所を教えてくれる。
「でも今は緑が美しいですね」と振れば、彼も頷く。
東城はなかなか素敵な町だった。
りんどうが咲き、風情のある川辺ではつがいの鴨が目を楽しませてくれる。
田植えの季節だ。
この国の山里はかくも美しい。
「今日これからも明日も、貴女にとってよい日でありますように。」
彼女にメールを送る。
23:35 岡山東横イン301号
新見に着く前に彼女から返信があった。
伯備線の車掌さんは立派な男だった。
これまでに何度も素通りした岡山にようやく着いた。
気持ちよく酔ってホテルに戻ってきた。
さっきの店では常連の役人さんなどと一緒に飲んで、とても寛げた。
会話の成り行き上、福山の人間にされて、途中からいい加減な広島弁で喋ったけど、ツッコミは受けなかった。
物識りの女将さんは、池田の殿様や皇室のことなど話題に事欠かず、年中無休で店を開けているという。
ヤクザが肩で風を切って歩く街だが、岡山ほど交通の要地はない。
明日は雨の予報だが、岡山城は見て帰る。
そして旅も終わる。
「無限カノン3部作」も明日で終わるだろう。
今日はたくさん飲んだが不思議と酔わない。
彼女の店じゃ、どうしてあんなに酔うのか。
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