「車旅日記」2005年春【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】最終日(富山-岩瀬浜-糸魚川-松本)走行距離218㎞ その2-泊駅、越中宮崎駅、市振駅、糸魚川駅、頸城大野駅、小滝駅、平岩駅、白馬大池駅、安曇追分駅
車旅日記2005年4月30日・・・泊駅、越中宮崎駅、市振駅、糸魚川駅、頸城大野駅、小滝駅、平岩駅、白馬大池駅、安曇追分駅
13:43 泊駅(4月29日の松本駅より392㎞)
いよいよ県境の町に入った。
立山連山はもう幻のような見え方ではなく、泊の町からはしっかりと見える。
裾のあたりはすっかり新緑に染まっている。
味のある駅名を持つ駅に着いた。
北陸を辿る途中に寄った駅と同じく堅固な造りだ。
駅員もいるし、売店も開いていて立派な待合所がある。
北陸本線からはそうそう日本海は見えないが、日本海とともに生きてきた情念あふれる地域。
駅を目指す人々の数は少なくない。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2017/08/3a3a41b82db81b938f01a882e16a0925-300x169.jpg)
2014年3月23日撮影
14:05 越中宮崎駅(4月29日の松本駅より397㎞)
ようやく人のいない駅に着いて、ホームに上がった。
人気のない北陸本線の停車駅。
駅を出るとすぐそこに宮崎海岸が広がる。
はっきりと水平線が見える眺めのいい海岸で、多くの人々がビーチに出て様々に楽しんでいる。
本当に素敵な眺めだ。
子供がはしゃぐ風景は平和でいい。
波打ち際を歩く磯とりの老婆の姿もある。
水平線は丸みを帯びて、地球の形を思い出す。
ここ朝日町には格別な思い出がある。
そこはここからすぐのところにある。
オレが眺めた日本海と北陸本線の線路。
あの時の思いを忘れることなく9年の歳月が流れた。
面白い人生だと思うよ。
今日は夏を思わせるような暑さ。
そしてここにいるのはいつも5月。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2017/08/27a46024357ab22d2be21e4df395e2c1-300x169.jpg)
2014年3月23日撮影
14:24 市振駅(4月29日の松本駅より402㎞)
栄食堂の駐車場。
そこがオレの思い出の場所になる。
そこに戻ることもできたが、戻らなかった。
そして未練が残った。
9年前の未練もまだ残っているのだろう。
あの女性は元気でいるのだろうか。
雪をかぶった朝日岳がトンネルの手前で鮮やかな姿をさらし、県境の表示。
ここから親不知の難所。
その難所にさしかかる前に日本海を見渡せる駅があった。
障害物が多いけど、眺めはワルくない。
線路はこれから長いトンネルをくぐる。
その闇からさっき列車がやってきて、数人の客が降りた。
この場所の伝説は源平盛衰記にまで遡る。
振り返れば大山塊の切れ端が迫っている。
この山塊は遠く木曽へとつながる。
北陸本線各駅停車の旅は糸魚川で終える。
大正元年開業という味な木札が駅舎に架かっている。
松尾芭蕉も旅の終盤にここを通過した。
15:04 糸魚川駅(4月29日の松本駅より424㎞)
天下の険、親不知を越え、凪いだ日本海とはしばらくお別れ。
北陸本線ともお別れ。
北のターミナル駅、糸魚川は穏やかな風情で、待ち人も多く、歩く人の姿も少なくない。
町中を行き交う車の音は絶えず、駅前は一大商業地域の感がある。
大きな町に着いた。
駅前の雑居ビルは埋まっていないようだが、観光センターが入るビルは明るい。
「駅そば」でもと思ったが、それはなく、汽笛一声の石碑が隅にそっとある。
2階建ての駅舎は町のシンボルと表現しても差し支えないだろう。
翡翠と断層の町、糸魚川。
オレの目的がひとつひとつ埋まっていくのを感じている。
いよいよ最終局面に入る。
天下の険を目前に控えた糸魚川は、太古から栄えてきたのだろう。
![](https://kazushiaruga.com/wp-content/uploads/2017/08/4e370b1b2024dffd46779f8cb81e076f-300x169.jpg)
2014年3月23日撮影
15:28 頸城大野駅(4月29日の松本駅より430㎞)
旅に出ると、一度はこんな駅に寄れるものだ。
狭い場所に水田が左右一杯に広がっている。
美味い米が獲れる土地だ。
村の子供によって植えられたチューリップが咲くホーム。
1本の線路が健気に日本中とつながっている。
この村に着く列車に乗れば、日本中に行けることが奇跡ともとれるが、子供たちにはそうは思ってほしくない。
だから旅立つ時は、ここから始めてほしい。
直通じゃ糸魚川南小谷間しか行けないが、待っていればその先の街に向かう列車がやってくるから。
北アルプスの大パノラマが国道上に広がっている。
8号国道では姫川渡河の際に180度の空を見た。
右の端にはやはり大山塊の切れ端がある。
それにしてもこの駅はいい。
剥げたペンキの跡が歩んだ時代を教えてくれる。
15:48 小滝駅(4月29日の松本駅より439㎞)
148号国道は快走路。
北アルプスと戸隠連山に挟まれた峡谷ロードの春は美しい。
まだ半分雲をかぶった山々が常に目の前にあった。
鋸岳、薬師岳。
見事な姿が見える。
この駅は激流の姫川を前にしている。
奈良ナンバーの軽トラックの男が先客としていて、軽く挨拶。
眺望的には他の数多の駅に劣らないものを持っている。
村には僅かな民家。
土建屋が何かを壊す音が聞こえる。
川辺に沿って。
旅はまだ終わらない。
激流の轟音は絶えない。
流れ下っていった連中は日本海に出て、打ち寄せてくる波と揉み合う運命しか与えられていない。
姫川の岸に山塊が迫っている。
ここを生活の場として残してきたのは川なんだ。
16:10 平岩駅(4月29日の松本駅より447㎞)
長い洞門をくぐり、次の村へ。
駅前には酒屋があるものだ。
田舎の風景としてしっくりくる。
この駅は白馬岳の登山口にあたるらしい。
線路は一度トンネルをくぐり、いくつかの鉄橋を渡ってこの駅に到着する。
川の姿は見えないが、流れの音は凄まじい。
ホームからは観音様が見える。
親不知じゃ見えなかったけど、神はどこにでもいる。
峡谷の村に懐かしい日本の香りがする。
この旅情はどこらあたりまで続いてくれるのだろう。
この分じゃなかなか松本には着かない。
鉄橋の村にて。
16:44 白馬大池駅(4月29日の松本駅より468㎞)
小谷から信濃。
長い長いトンネルを抜ける。
姫川の流れは相変わらず激しい。
今は雪解け水の頃。
方々の山肌から名を持たない豪快な滝が、姿など構わずに水を流し込んでいた。
地図の上じゃ姫川との付き合いはもうじき終わる。
鉄道も難所を越えて、白馬から先は特急列車も走る。
ここは栂池高原の入口。
15年近く前に来たことがある。
そうか。
右手に見えているあの坂か。
上り上げた所にスキー場がある。
それにしても激しい流れだ。
もうすぐカーブを曲がって白馬行の列車がやってくる。
運転士はこれで安心できたかもしれない。
カーブを曲がって列車はやってくる。
離れがたいよ。
17:55 安曇追分駅(4月29日の松本駅より514㎞)
最後に旅情あふれる駅に辿り着いた。
いい駅だな。
寄り添うように古木が2本。
枝が赤い屋根にかかっている。
随分長いこと使っていそうな駅舎だけど、きれいに掃き清められて、煙草も吸える。
安曇野の日は暮れて、太陽はさっき山の頂に姿を隠した。
青木湖、木崎湖あたりを走る時の気分は素敵だ。
時間があれば、また寄り添っていこう。
大町を過ぎればありふれた信濃路になったが、ここに寄れてよかった。
こんな村で日暮れを待つのは素敵だよ。
駅前には小ぎれいな料理屋と古くからの料理屋。
街道の車の流れは増しているけど、ここは別世界。
素晴らしい旅情だ。
これで心置きなく松本に行ける。
今夜はそこで旧友たちとのパーティーがあるんだ。
2018年4月8日撮影
松本駅着535㎞。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】初日(東京-河口湖-新島々-長野-直江津)その2-三つ峠、塩山、酒折、塩尻、新島々、西松本、松本(富士急行/中央本線/アルピコ交通上高地線)
鉄旅日記2018年2月10日・・・三つ峠駅、塩山駅、酒折駅、塩尻駅、新島々駅、西松本駅、松本駅(富士
-
-
「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その3(東京-岩倉)-太田川、常滑、中部国際空港、上小田井、西春、岩倉(名鉄常滑線/名鉄空港線/名鉄犬山線)
鉄旅日記2015年3月7日その3・・・太田川駅、常滑駅、中部国際空港駅、上小田井駅、西春駅、岩倉駅(
-
-
「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】4日目(富良野-大館)その2-南千歳、苫小牧、登別、東室蘭、北舟岡、伊達紋別、長万部、森、新函館北斗、大館(千歳線/室蘭本線/函館本線/北海道新幹線/奥羽本線)
鉄旅日記2016年8月13日・・・南千歳駅、苫小牧駅、登別駅、東室蘭駅、北舟岡駅、伊達紋別駅、長万部
-
-
「鉄旅日記」2019年長月【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】初日(東京-盛岡)その1-金町、水戸、上菅谷、常陸大子(常磐線/水郡線)
鉄旅日記2019年9月21日・・・金町駅、水戸駅、上菅谷駅、常陸大子駅(常磐線/水郡線) 2019・
-
-
「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、上越途中下車旅&高田で友人の結婚式に参加】初日(東京-長野)-吹上、北鴻巣、長野、豊野、新井、高田、春日山(高崎線、長野新幹線、信越本線)
鉄旅日記2012年12月8日・・・吹上駅、北鴻巣駅、長野駅、豊野駅、新井駅、高田駅、春日山駅(高崎線
-
-
「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】初日(東京-大船渡)その5‐奇跡の一本松、陸前高田、大船渡(大船渡線)
鉄旅日記2020年2月22日・・・奇跡の一本松駅、陸前高田駅、大船渡駅(大船渡線) 18:20 奇跡
-
-
「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】初日-掛川、尾奈、リステル浜名湖(東海道本線/天竜浜名湖鉄道)
鉄旅日記2006年11月3日・・・掛川駅、尾奈駅(東海道本線/天竜浜名湖鉄道) 2006・11・3
-
-
「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】3日目(大分-佐賀)その1-大分、中判田、豊後竹田、宮地、肥後大津、水前寺、辛島町、熊電上熊本、上熊本(豊肥本線/熊本市電)
鉄旅日記2009年9月20日・・・大分駅、中判田駅、豊後竹田駅、宮地駅、肥後大津駅、水前寺駅、辛島町
-
-
「車旅日記」2004年秋【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】2日目(宇野-下津井-新見-津山-城崎)走行距離377㎞ その1-宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅
車旅日記2004年11月21日・・・宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅
-
-
「車旅日記」2003年晩秋・番外編【京都にて】-京都御所、宇治川公園、京都駅
車旅日記2003年11月25日・・・京都御所、宇治川公園、京都駅 2003・11・25 10:57