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「車旅日記」2005年春【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】最終日(富山-岩瀬浜-糸魚川-松本)走行距離218㎞ その2-泊駅、越中宮崎駅、市振駅、糸魚川駅、頸城大野駅、小滝駅、平岩駅、白馬大池駅、安曇追分駅

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2005年

車旅日記2005年4月30日
13:43 泊駅(4月29日の松本駅より392㎞)
いよいよ県境の町に入った。

立山連山はもう幻のような見え方ではなく、泊の町からはしっかりと見える。
裾のあたりはすっかり新緑に染まっている。

味のある駅名を持つ駅に着いた。
北陸を辿る途中に寄った駅と同じく堅固な造りだ。
駅員もいるし、売店も開いていて立派な待合所がある。

北陸本線からはそうそう日本海は見えないが、日本海とともに生きてきた情念あふれる地域。

駅を目指す人々の数は少なくない。

2014年3月23日撮影

14:05 越中宮崎駅(4月29日の松本駅より397㎞)
ようやく人のいない駅に着いて、ホームに上がった。
人気のない北陸本線の停車駅。

駅を出るとすぐそこに宮崎海岸が広がる。
はっきりと水平線が見える眺めのいい海岸で、多くの人々がビーチに出て様々に楽しんでいる。

本当に素敵な眺めだ。
子供がはしゃぐ風景は平和でいい。
波打ち際を歩く磯とりの老婆の姿もある。
水平線は丸みを帯びて、地球の形を思い出す。

ここ朝日町には格別な思い出がある。
そこはここからすぐのところにある。

オレが眺めた日本海と北陸本線の線路。
あの時の思いを忘れることなく9年の歳月が流れた。
面白い人生だと思うよ。

今日は夏を思わせるような暑さ。
そしてここにいるのはいつも5月。

2014年3月23日撮影

14:24 市振駅(4月29日の松本駅より402㎞)
栄食堂の駐車場。
そこがオレの思い出の場所になる。
そこに戻ることもできたが、戻らなかった。
そして未練が残った。

9年前の未練もまだ残っているのだろう。
あの女性は元気でいるのだろうか。

雪をかぶった朝日岳がトンネルの手前で鮮やかな姿をさらし、県境の表示。
ここから親不知の難所。

その難所にさしかかる前に日本海を見渡せる駅があった。
障害物が多いけど、眺めはワルくない。

線路はこれから長いトンネルをくぐる。
その闇からさっき列車がやってきて、数人の客が降りた。

この場所の伝説は源平盛衰記にまで遡る。
振り返れば大山塊の切れ端が迫っている。
この山塊は遠く木曽へとつながる。

北陸本線各駅停車の旅は糸魚川で終える。
大正元年開業という味な木札が駅舎に架かっている。

松尾芭蕉も旅の終盤にここを通過した。

15:04 糸魚川駅(4月29日の松本駅より424㎞)
天下の険、親不知を越え、凪いだ日本海とはしばらくお別れ。
北陸本線ともお別れ。

北のターミナル駅、糸魚川は穏やかな風情で、待ち人も多く、歩く人の姿も少なくない。
町中を行き交う車の音は絶えず、駅前は一大商業地域の感がある。

大きな町に着いた。
駅前の雑居ビルは埋まっていないようだが、観光センターが入るビルは明るい。

「駅そば」でもと思ったが、それはなく、汽笛一声の石碑が隅にそっとある。
2階建ての駅舎は町のシンボルと表現しても差し支えないだろう。

翡翠と断層の町、糸魚川。
オレの目的がひとつひとつ埋まっていくのを感じている。

いよいよ最終局面に入る。
天下の険を目前に控えた糸魚川は、太古から栄えてきたのだろう。

2014年3月23日撮影

15:28 頸城大野駅(4月29日の松本駅より430㎞)
旅に出ると、一度はこんな駅に寄れるものだ。

狭い場所に水田が左右一杯に広がっている。
美味い米が獲れる土地だ。

村の子供によって植えられたチューリップが咲くホーム。
1本の線路が健気に日本中とつながっている。

この村に着く列車に乗れば、日本中に行けることが奇跡ともとれるが、子供たちにはそうは思ってほしくない。
だから旅立つ時は、ここから始めてほしい。
直通じゃ糸魚川南小谷間しか行けないが、待っていればその先の街に向かう列車がやってくるから。

北アルプスの大パノラマが国道上に広がっている。
8号国道では姫川渡河の際に180度の空を見た。
右の端にはやはり大山塊の切れ端がある。

それにしてもこの駅はいい。
剥げたペンキの跡が歩んだ時代を教えてくれる。

15:48 小滝駅(4月29日の松本駅より439㎞)
148号国道は快走路。
北アルプスと戸隠連山に挟まれた峡谷ロードの春は美しい。

まだ半分雲をかぶった山々が常に目の前にあった。
鋸岳、薬師岳。
見事な姿が見える。

この駅は激流の姫川を前にしている。
奈良ナンバーの軽トラックの男が先客としていて、軽く挨拶。
眺望的には他の数多の駅に劣らないものを持っている。

村には僅かな民家。
土建屋が何かを壊す音が聞こえる。

川辺に沿って。
旅はまだ終わらない。

激流の轟音は絶えない。
流れ下っていった連中は日本海に出て、打ち寄せてくる波と揉み合う運命しか与えられていない。

姫川の岸に山塊が迫っている。
ここを生活の場として残してきたのは川なんだ。

16:10 平岩駅(4月29日の松本駅より447㎞)
長い洞門をくぐり、次の村へ。

駅前には酒屋があるものだ。
田舎の風景としてしっくりくる。

この駅は白馬岳の登山口にあたるらしい。
線路は一度トンネルをくぐり、いくつかの鉄橋を渡ってこの駅に到着する。

川の姿は見えないが、流れの音は凄まじい。
ホームからは観音様が見える。
親不知じゃ見えなかったけど、神はどこにでもいる。

峡谷の村に懐かしい日本の香りがする。
この旅情はどこらあたりまで続いてくれるのだろう。

この分じゃなかなか松本には着かない。

鉄橋の村にて。

16:44 白馬大池駅(4月29日の松本駅より468㎞)
小谷から信濃。
長い長いトンネルを抜ける。

姫川の流れは相変わらず激しい。
今は雪解け水の頃。
方々の山肌から名を持たない豪快な滝が、姿など構わずに水を流し込んでいた。

地図の上じゃ姫川との付き合いはもうじき終わる。
鉄道も難所を越えて、白馬から先は特急列車も走る。

ここは栂池高原の入口。
15年近く前に来たことがある。
そうか。
右手に見えているあの坂か。
上り上げた所にスキー場がある。

それにしても激しい流れだ。

もうすぐカーブを曲がって白馬行の列車がやってくる。
運転士はこれで安心できたかもしれない。

カーブを曲がって列車はやってくる。
離れがたいよ。

17:55 安曇追分駅(4月29日の松本駅より514㎞)
最後に旅情あふれる駅に辿り着いた。

いい駅だな。
寄り添うように古木が2本。
枝が赤い屋根にかかっている。
随分長いこと使っていそうな駅舎だけど、きれいに掃き清められて、煙草も吸える。

安曇野の日は暮れて、太陽はさっき山の頂に姿を隠した。

青木湖、木崎湖あたりを走る時の気分は素敵だ。
時間があれば、また寄り添っていこう。

大町を過ぎればありふれた信濃路になったが、ここに寄れてよかった。
こんな村で日暮れを待つのは素敵だよ。

駅前には小ぎれいな料理屋と古くからの料理屋。
街道の車の流れは増しているけど、ここは別世界。
素晴らしい旅情だ。
これで心置きなく松本に行ける。

今夜はそこで旧友たちとのパーティーがあるんだ。

2018年4月8日撮影

松本駅着535㎞。

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